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後輩の森下 加奈(もりした かな)から、

呼び出された先輩・岩本 雄星(いわもと ゆうせい)は、

困惑の表情を浮かべていたー。


加奈は、同じ”演劇部”で活動している後輩にあたる子で、

とても可愛く、成績も優秀、優しい性格の持ち主であることから、

”人気者”な子だー。

雄星が部長を務めている演劇部でも、とても一生懸命に

活動を頑張っているー。


そんな加奈に、放課後、呼び出された雄星は、

”告白でもされるんじゃないか?”と揶揄って来た友達に対して

”そんなわけないだろ”と、笑いながらも、

ちょっとだけ期待しながら、この場にやってきていたー。


がー…その”ちょっとだけ”の期待は打ち砕かれたー。


”わたしって可愛いですよね?”から始まり、

”人気過ぎて身体が一つじゃ足りない”などという話を聞かされるー。


「この前の週末も、明日香(あすか)ちゃんたちから、

 週末遊びに行こうって誘われたんですけどー

 バイト先の先輩からも新しくオープンしたケーキ屋に

 一緒に行こうって誘われててー…

 あと、弟がカラオケに行きたいって言って来てるのでー…

 その…身体が足りないんですー」


そんなことを口にする加奈ー。


決して、”友達多い自慢”をしているわけではなく、

加奈は、部長である雄星とそれなりに仲が良く、

互いに信頼関係もあるからこその言葉だー。


それは雄星も理解はしているー。

加奈自身、優しい性格だからこそ、

”たくさん誘われれば、どれかを選ばないといけないし、

 断らないといけない”ことに心を痛めているのだろうー。


がー、雄星は

「俺は一体何のために呼ばれたんだ…?」と、疑問も抱くー。


こういう話をしたいのであれば、わざわざ放課後に

呼び出さずとも、明日と明後日は部活もあるし、

部活の間にでも話せばよいことなのではないかー、と、

そんな疑問さえ覚えるー。


しかし、そんな疑問を抱いていると、

加奈は突然、衝撃的な言葉を口にしたー。


「なのでー、先輩もわたしになりましょう!」

加奈が、ドヤ顔で笑みを浮かべながら

謎の液体が入った容器を机の上に置くー


「ーーーーー」

口をぽかんと開けたまま、困惑の表情を浮かべる雄星ー。

この後輩が何を言っているのか、理解できないー。


加奈は、可愛くて、成績優秀で、何でもできて、優しいタイプの子だが、

時々”頭のネジが抜けているのではないか”と不安になることもあるー。

今がまさに、その瞬間だー。


「ーーそれ…何…?」

雄星がイヤな予感を感じながら、謎の容器を指差しながら言うと、

加奈はニコニコと微笑みながら言葉を続けたー。


「ーこれは”他人に変身できる薬”です!

 ネットで”忙しすぎて身体が足りない”って検索したら出て来たんです!」


加奈の得意気な表情とは裏腹に、

さらに不安そうな表情を浮かべる雄星ー。


「ーー…いやいやいや…で…それ、買ったの?」

雄星がそう言うと、加奈は「はい!」と笑うー。


「ーーこれを使って、先輩が”わたし”に変身して

 わたしになってくれれば、

 ”わたしが二人”になりますよねー?

 そうすれば、人気者のわたしも、少しは手が足りるようになると思うんです!」


加奈が、何の躊躇もなくそんな言葉を口にするー


例えば、友達とバイト先の先輩と弟から同時に、

遊びに誘われたりした場合、”加奈がひとり”だと、

3人のうち二人からの誘いは断るか、延期しないといけないー。

しかし、雄星が加奈に変身して、”加奈がふたり”いれば、

3人のうち、二人と遊べるようになるー。


加奈は、そう言いたいようだー。


思わず、唖然としながら

「ーーい、いやいやいやいやーー…ごめん、それはちょっとー」と、

苦笑いする雄星ー。


ネットで買った”自称・変身薬”の怪しい薬なんて飲みたくないー。


「え~~!何ですか~?

 先輩、”森下さんになりたい!”って言ってましたよね?

 先輩の夢は叶いますし、

 わたしの悩みも解決しますし、WinWinじゃないですか~?」


加奈の言葉に、雄星は「ーえ…も、森下さんになりたいなんて

俺、言ってなーーーー」と、言いかけて言葉を止めたー


”やべっー”

雄星は心の中で、以前、部活が終わった後に

部員たちと一緒に駅前のスイートバーガーに寄った時の会話を

思い出すー。


”俺も、森下さんみたく人気者になりたいなぁ~”

そんな言葉を冗談で口にしたことがあるー。


”加奈になりたい”ではなく、

”加奈みたいな人気者になりたい”と言ったのだがー、

加奈には違う解釈をされてしまったようだったー


「い…いやいやいや、あれはー…!」

雄星が必死に声を上げると、

加奈は「ーわたしに変身して、わたしの代わりに、

わたし一人じゃできないことを手伝ってほしいんです!」と、

今一度お願いするような口調で、雄星を見つめるー


「ーー…え…えぇ…で、でもさ、

 ーーその変身薬とかいうやつ、本当に変身できるの?」

雄星が問うー。


「ーーはい!そう書いてありました!」

加奈が、満面の笑みで答えるー。


ネットに書かれている情報を鵜呑みにしてしまうなんて、

とても不安だー。


「ーーーー仮に俺が森下さんの姿に変身して、

 森下さんの手伝いをするとしてもー…


 ーーそうなると、俺は”森下さんの姿”で、

 何でもできることになっちゃうよなー?

 例えばーー…森下さんの姿で、

 森下さんのフリをして俺の友達に告白したりとかー…

 森下さんの姿でコスプレしたりだとかー…


 ーーーそういう不安は、ないのかー?」


雄星は、あまりにも無警戒な加奈が心配になり、

そう言葉を口にするー。


”他人を自分と同じ姿に変身させるー”

それは、色々なリスクのある危険な行為だー。

それを、加奈はちゃんと分かっているのだろうかー。


極端な話、

”加奈の姿で凶悪犯罪を起こす”ことだってできてしまうのだー。

そうなれば、加奈は何もしていないのに凶悪犯になってしまうー。


がーー


「ーーあははー。もちろん、それは分かってますよ~!

 でも、先輩なら大丈夫ですよね?」


加奈がそう言い放つー


「ー先輩のことを信頼してるからこそのお願いなんです!」

とー。


可愛い後輩に信頼されているー。

なんだか、悪い気はしないー。


しかしー


「い、いやいやいや!危ないー森下さんのペースにはまるところだったー…!

 俺に森下さんのフリをする自信なんてないし、

 絶対、友達とか、弟さんとかにバレるって!」


雄星は戸惑いながらそう言い放つー。

加奈の姿に変身して”加奈の代わりに”加奈の手が回らない部分を補うー。

…そんなこと、できるはずがないー。

絶対にバレるー。


「ーふふ でも先輩、わたしの”こういう面”知ってますよねー?

 だから大丈夫です!

 とにかく勢いで、”森下 加奈”を演じれば何とかなりますよ!」


”絶対ならないしー!”


そうツッコミを入れたくなりながらも、

「ーで、でも、その変身薬、毒とかだったら、どうするんだー?

 ネットで購入した怪しい薬なんてー」と、

言葉を続けるー。


しかしー

その時だったー。


「百聞は一見に如かずですよ!先輩!

 えいっ!」


そう言いながら近づいて来た加奈は

有無を言わさず雄星の口に、

変身薬入りの容器をそのまま咥えさせたーーー


「むぐぐぐっ!?」

驚く雄星ー。


防御する間もなく、口に入った変身薬が

喉の奥に入り込んでいくのを感じるー。


「ーーげほっ!!げほっ…!」

思わず咳き込みながら、

「ーこ、こ、これ…ー…本当に大丈夫なのかー?

 っていうか苦ッ…」と、

いかにも”苦いです”という表情を浮かべるー。


「ーーえへへ…!セーフ!毒じゃなかったですね!」


”セーフじゃないよ!”と、心の中でツッコミを入れながら

雄星は「も、もうどうせ飲まされちゃったし、なるようになれだ!」と、

開き直って「どうやって変身するんだー?」と、言葉を続けるー。


加奈は「さっすが先輩!」と、嬉しそうに言葉を口にすると、

「”変身”するには、変身薬を服用後、変身したい相手を1分以上

 見つめるー…って、説明書には書いてありますねー」と、

持参した変身薬の説明書に書かれた英語を読んでいたー。


どうやら、英語で書かれた説明書だが、全部読めるようだー。

頭のネジは外れている気がするが、加奈はとても頭がよく、

成績は優秀ー。以前、演劇部の活動でも

英語劇を和訳したこともあり、英語の実力は確かなものであることは

雄星も知っているー。


「ーただ、変身薬を飲んで最初に1分以上見つめた相手にしか

 変身できないので、慎重にわたしを見つめて下さいね!」


どうやらー、”変身薬”を飲んで

最初に1分間見つめた相手に変身できるようになるらしく、

同じ変身薬で、何度も何度も他の人に変身できるようには

ならないとのことだったー。


「ーー…で…、元の姿に戻れるんだよな?」

雄星が一応、心配になってそう言葉を口にすると、

「はいー。変身した後に自分の姿を思い浮かべながら

 目を閉じることで、変身解除できるみたいですねー…

 あとは、最初に変身した相手にはそれ以降は

 いつでも変身できるみたいなのでー」と、加奈は

説明書を見つめながらそう言葉を口にしたー


「と、いうことで改めて!

 わたしのこと、1分間じーっと見て下さいね!」と、

加奈は嬉しそうに微笑んだー。


「ーーーー」

「ーーーーー」

「ーーーーーーー」


加奈をじーっと、見つめる雄星。

だんだん恥ずかしくなってくるー…。


がー、やがて1分が経過するとー


「ーー!?!?!?!?」

雄星は、自分の身体にこれまで感じたことのない

全身が”溶ける”ような違和感を感じたー


「ーな、なんだこれ…!?えっ!?えっ!?」

その感触に驚く雄星ー。


目の前にいる加奈は

「せ、先輩がー、わたしになっていく!?」と、

驚いた様子だー。


みるみると身体が変化していきー、

やがてー…


雄星は”加奈”の姿になったー


「ーー………」

自分の身体を見下ろす雄星ー。


視線の先には胸の膨らみや、セーラー服が見えて

思わずドキッとしてしまうー。


「ーーあ…」

”変身するとき”に着ていた服は、教室の床にそのまま

”落ちている”状態になっていることに気付く雄星ー。


「ーー…す…すごい…本当に森下さんの姿にー」

ドキドキしながらそう呟く加奈の姿になった雄星ー。


まさか、本当に変身できるとは思わなかったー。


髪にも、胸にも、服にも、スカートにも、

”声”にも、何もかもにドキドキしながら、

唾をゴクリと飲み込むと、

「あ…あのさー…緊張がやばいんだけどー…」と、

加奈になった雄星が呟くー。


「ーーー…あははー…そんなに緊張しなくてもー」

加奈は苦笑いしながらそう言うと、

「ーこれで、先輩も今日から”わたし”としても

 過ごせるようになりましたね!」と、嬉しそうに笑うー。


「ーーあ…あぁ…

 で、でもさ、これってー…

 俺に何の得がー?」


加奈になった雄星が思わずそう呟くー。


”人気者で手が足りない加奈”が、

もう一人”自分”を増やして、手をまわしたい、というのは分かったー

が、加奈の手伝いをして、何の得があるのだろうかー。


「ーーえへへー…

 先輩、わたしになりたがってたじゃないですか~?」

加奈がそう言い放つー。


そして、さらに言葉を付け加えるー。


「誰も見てないところでなら、

 ”何をしても”構いませんから!

 

 わたしみたいに可愛い後輩の”姿”で好きなことをできちゃう!

 とっても嬉しいですよね??? ねっ!」


とことん強引な加奈ー。


「ーー~~~ーーな、何をしてもいいってー…

 例えば、俺が隠れた変態だったりしたら、

 家でこっそり、森下さんの姿のまま胸を揉んだりするかも

 しれないぞー?」


心配そうにそう言葉を口にする加奈になった雄星ー。


がー…


「あははは!そのぐらい大丈夫ですよ!

 だって、わたしの姿に変身してるだけで、先輩、

 別にわたしの身体を使ってるわけじゃないんですから!


 触られても、別にわたしは何も困りませんし、感じませんから

 大丈夫です!」


加奈の言葉に、

「そ、そんなもんなのー…?」と、戸惑う加奈姿の雄星ー。


同じ部屋に”加奈”が二人いるー。

そんな異様な光景が広がる中、

加奈は「じゃあ、先輩!わたしの手が足りなくなったときは

よろしくお願いします!」と、

かなり強引に”加奈”の手伝いをさせられることになってしまったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


数日後ー。


早速、加奈から連絡が来たー。


仲良しな弟とカラオケに行く予定になっていたものの、

バイト先の先輩が体調不良で休み、バイトに行くことになってしまったため

”カラオケ”の方に向かって欲しいとのことだったー


「ーーえぇ…?弟さんの前でいきなり森下さんのフリをするとか

 ハードルが高すぎるんだけどー」


雄星がそう言うと、

”バイトは大変ですしー、カラオケなら先輩もついでに楽しめると思うので!”

と、電話の向こうの加奈はそう言ってきたー。


続けて、有無を言わさず待ち合わせの場所や、

色々な注意点を聞かされてー、

雄星はそのまま”加奈”に変身すると、

加奈の姿のまま、ドキドキしながらカラオケに向かうことになってしまったー


加奈の弟・直治(なおはる)と、合流した加奈姿の雄星は、

「ーー…な、直治ーーー…今日は楽しもうね!」と、

ぎこちなく言葉を口にするー。


”好きな歌を歌っていい”と、本物の加奈から言われていたためー、

”加奈の声”で好きな歌を歌うー。


”あぁぁ…森下さんの声で歌うとかー…

 森下さんのフリをする前に、ドキドキで頭がおかしくなりそうだー”


そんなことを思っていると、

「姉さん、顔、赤くないー?」と、直治が戸惑いながら笑うー。


「えぇぇ!?そうかなぁ!?」

加奈姿の雄星がそう言うと、

「っていうか姉さん、今日アニソン多くないー?」と、

アニメの曲を多く歌っている姉に違和感を抱いたような言葉を

口にするー。


「ーーえっ!?えぇぇ!?

 き、今日はそういう気分だから!

 あはははっ!」


本物の加奈みたく強引に勢いで乗り切ろうとする加奈姿の雄星ー


”絶対、そのうちボロを出すだろ これ…”


そう思いながらも、雄星は”加奈の声” ”加奈の姿”で歌えることが

だんだん楽しくなってきて、

それなりにカラオケを楽しむのだったー…



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


後輩の無茶振りで、

後輩の姿で”忙しい後輩の代わり”をすることになってしまったお話デス~!


色々問題が起きそうな気配…★!


続きはまた次回デス~!


今日もありがとうございました~~!!

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