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野々宮 加恋(ののみや かれん)は、今日も悩んでいたー。


彼女には、彼氏がいるー。

その彼氏、同じ学部の新崎 奈津雄(しんざき なつお)は

とても優しい性格の男子大学生で、

加恋からすれば、”初めての彼氏”にあたる人物だ。


一方、奈津雄の方は過去に付き合ったことのある彼女もいるものの、

大学入学時点で既に別れていて、

本人曰く、彼は”大学に入ってから初めての彼女”とのことだったー。


がー…

加恋は”どうして新崎くんは、わたしなんかとー…”と、

そう、日々悩んでいたー。


友達の泰恵(やすえ)は、

”加恋は、ほら、何か守ってあげたくなる感じがあるし!”と、

そんな風に言っていたが、それでもやっぱり、

”加恋は自分に自信を持てずにいたー。


小さい頃から奥手で、臆病で、ネガティブな考えが

どうしても先行してしまうタイプの加恋ー。

これまでにも、何度も何度も”自分を変えたい”と、そう思い、

チャレンジしてみたこともあったけれどー、

やっぱり、自分の性格はそう簡単には変えられずー、

ついに大学生にまでなってしまったー。


大学生になって、初めての彼氏ができたのも”奇跡”で、

たまたま大学内で一緒になることも多く、時々話したりするうちに

意気投合して、今に至っているもののー

正直、加恋自身、”どうしてわたしが新崎くんと付き合えているの?”と、

未だにそう思っているー。


「ーーーーーー大丈夫か?」


「ーーえ?」


そんな言葉を、彼氏の奈津雄にかけられてハッとする加恋ー。

また、色々な不安を頭の中でぐるぐる考えてしまって、

無言になっていたー。


今はちょうど昼休みー。

彼氏の奈津雄と共に一緒にお昼ご飯を食べている最中だったー。


「ーー…う、うんーだ、大丈夫ー」

加恋がそう言うと、

奈津雄は「それなら良かった。なんかボーッとしてたみたいだからー」と、

そんな言葉を口にしながら、穏やかな笑みを浮かべるー。


「ーーご、ごめんなさいー」

加恋の言葉に、奈津雄は慌てた様子で

「いや、いや、謝ることじゃないよー?

 加恋の調子がいつも通りなら、俺も安心だし」と、

すぐにそう言い放つー。


「ーーーう、うんーー」

加恋はそれだけ言うと、沈黙しながら昼食を口に運び始めるー。


奈津雄はしばらく間を置くと、加恋との話題を考えながら、

再び言葉を口にするー。

それに答える加恋ー。


結局、ほとんど奈津雄から話題を振って貰って、

加恋がそれに返事をするー。


そんな、お昼の時間になってしまったー


「ーー…ごめんねーいつも、退屈させちゃってー」

加恋が申し訳なさそうに言うと、

奈津雄は「いやいや、全然ー。こっちこそ、俺の話ばかりでごめん」と、

逆に申し訳なさそうに言葉を口にするー。


奈津雄と別れ、大学内を歩く加恋ー


”こんなんじゃ、振られるのも時間の問題だよねー…”

加恋は、そんな風に呟くー。


他の子みたいに、自分に少しは自信を持ちたいー。

他の子みたいに、もっと積極的になりたいー。

他の子みたいに、もっともっと、もっとー。


そんなこと思いながら、”自分を変えよう”と、いつも思うー。


けれどー

結局何も変われないままー、時ばかりが流れていくー。


しかしー…

そんなある日のことだったー。


「ーー面白そうなものを見つけたー?」

加恋が不思議そうに言うと、

加恋の友人で、オカルト系のサークルか何かに所属している

真紀(まき)が、独特な雰囲気の笑みを浮かべながら

言葉を口にしたー。

いつも髪が少しボサボサで、特徴的な眼鏡をかけている子だー。


「ーうん、加恋、”変わりたい”って言ってたじゃんー?」

真紀の言葉に、加恋は頷くー。


確かに、真紀にはいつもそういう相談をしているー。


「ーーこれとかどうかなってー」

真紀がそう言いながらスマホを手に、何かを表示させた画面を

見せてくるー。


その画面を見た加恋は、表情を歪めるー


「え…”洗脳”…?何これー?」

加恋の言葉に、真紀は「サークルの調べ事してる最中に偶然

見つけたんだけどー」と、前置きした上で、

”人を支配することができる洗脳術”について記述された

サイトを見つけたー。


「ーーーーーー」

しばらく、そのサイトを見つめる加恋ー。


古から伝わる”禁忌の呪文”を唱えながら、相手の目を見つめ続けることで

その相手を洗脳、思想や、行動などを支配することができると、

そう書かれていたー。


「なんか、怪しい団体とかがこういうの使ってるんだって」

真紀は、いつもの独特な笑い方をしながらそう言葉を口にすると、

加恋は困惑した表情を浮かべながら首を傾げたー。


「あ…あのさ…、これ、わたしとどういう関係がー?」


加恋の疑問は最もだったー。

”もう少し、明るくて積極的な自分に変わりたい”と、

そう願っている加恋。


しかしー、それとこの”洗脳術”とやらに何の関係があるのだろうか。


「ーーま、まさか、真紀ちゃんがわたしを洗脳するってことー!?」

ビクッとして加恋がそう言うと、

真紀は「あははー、違う違うー」と、首を横に振りながら

サイトを見せるー。


”他人への悪用厳禁”


「ーーって、書いてあるでしょ?

 まぁ、ルール破る人はいるんだろうし、本物かどうかは

 知らないけど、わたしは加恋にそんなことするつもりはないしー」


真紀がそう言うと、加恋はホッとした様子を見せるー。


が、そうなってくるとますます”これがわたしと何の関係があるのか”

分からなくなってくるー。


「ーーー…あ、あのー…じゃあ、これ、わたしと関係なくないー?」

加恋が申し訳なさそうに言うと、真紀は「ノーノー!関係あるのよこれが」と、

笑みを浮かべながら言葉を続けたー。


「ーーー”鏡”に映る自分を見つめながら、”これ”やってみたらー、

 ”自分が思う自分”に変われるかもよー?


 ほらー、それなら”他人への悪用厳禁”ってルールも守れるし、

 誰にも迷惑もかけないでしょ?どう?」


真紀の楽しそうな顔ー。


加恋はそんな真紀を見つめながら

「ーーわたしを揶揄ってるでしょ~?…

 そんなの本当に効果あるわけないじゃんー」と、

呆れ顔で首を横に振ったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


その日の夜ー


「ーーーただいま~」

帰宅した加恋は、自分の部屋に入り、

大学の荷物を片付けると、スマホを手にひと息つくー。


「ーーーーーー」

彼氏の奈津雄からのメッセージを確認すると、

加恋は、またネガティブなことを考えてしまい、

ため息をつきながら返事を返すー。


返事を返し終わると、ふと、鏡に映る自分の姿が目に入ったー。


”「ーーー”鏡”に映る自分を見つめながら、”これ”やってみたらー、

 ”自分が思う自分”に変われるかもよー?


 ほらー、それなら”他人への悪用厳禁”ってルールも守れるし、

 誰にも迷惑もかけないでしょ?どう?」”


ーーそんな、真紀の言葉を思い出すー。


「ーーーー…」

さっきのサイトは、真紀から教えてもらったー。


そのサイトを開き、”こんなのあるわけないじゃんー”と、思いながらも

”変わりたい”という想いから、

そのサイトに書かれた”呪文”を唱えながら、

サイトに書かれた通りのタイミングで言葉を口にするー


「ー”お前は”かわいいー」

「ー臆病な”お前”はもういないー」

「ー”お前は”積極的な女だー」


加恋はそんな言葉を”鏡に映る自分”を見つめながら呟くー。


サイトに書かれている術は、”他人に使うことを想定”しているため、

相手のことを”お前”と言うように書かれているー。


加恋は”自分”を洗脳しようとしているのだがー、

その場合はなんて言えばいいのか分からなかったし、

サイトに書かれている通り、鏡の向こうの自分に向かって

”お前”と、そう呼びかけたー。


「ーーー!」

すると、鏡に映る自分の目が赤く光ったー。


いやー、恐らくは自分自身の目が赤く光ったのだろうー。


そしてー…

加恋はビクッと震えたー。


「ーーーこんなの…効果あるわけないよねー」

こんな、あまりにも現実離れしたものを信じてしまうなんてー、と、

少し心の中で自虐的に笑いながら加恋は

鏡から離れるー。


がーー

既に加恋は”自分自身”に、洗脳されていたー。


翌朝ー

加恋は鏡を見つめながら「ーーなんだか今日はいつもより可愛く

見えるようなー」と、少しだけ笑うー。


「ーーふふ…昨日、あんなことしたからそう思えるだけだよねー

 気のせい気のせいー」

きっと、昨日”洗脳”の呪文を試したからそんな風に思うだけー、と、

そう思いながら加恋は大学へと向かうのだったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーうんうん!それでね~」


昼休みー

加恋は嬉しそうに彼氏の奈津雄に向かって

色々な話を振っていたー。


今日は、信じられないほどに頭の中に話題が浮かんでくるー。

いつもとは違って、自分自身が遠慮がちになってしまうことなくー、

奈津雄と話をすることができるー


「ははー今日の加恋は元気だなぁ」

奈津雄が穏やかに笑うと、

加恋は「え?そうかなぁ~?」と、恥ずかしそうにしながらも、

いつもとは違う、少し自信すら感じさせるような笑みを浮かべながら

「ーー新崎くんに心配かけないように、わたしももっと

 変わらなくちゃって思って!」と、そう言い放つー。


嘘のように、心が澄み渡っているー。


”すごいー…ホントに効果あるのかもー”

加恋は、オカルト系サークルに所属する真紀から教えてもらった

洗脳術が本当に効果があったのかもしれないと、思い始めるー。


真紀とは別の友達・泰恵も

「今日の加恋は、なんだかいつもと違って生き生きしてるよねー!」と、

笑っていたー。

”ネガティブなオーラを感じないっていうか、そんな感じー!”

泰恵はそう言ってくれたー


「すごいー…」

帰宅した加恋は笑みを浮かべながら、鏡を見つめるー


「ーーー明るい表情のわたしのほうがー、

 確かにかわいいかも♡」

加恋は”生まれてはじめて”自分のことを可愛いと思ったー。


普段の加恋であれば、ここで”おかしい”と感じたかもしれないー。

しかしー、今の加恋にはもう、

そんなことすらも考えることができなかったー


「ーもっともっと、自分に自信を持てるかもー…!

 もっともっと、可愛くなれるかもー!」


加恋は嬉しそうに微笑みながら、

”また”昨日教えてもらった洗脳の呪文を使い始めるー。


「お前はかわいいー」

「お前は臆病なんかじゃないー」

「お前は自信に満ち溢れているー」


そんな言葉を呟きながら、加恋の目が赤く光るー


「ふふふふー…わたし、どんどん可愛くなってく気がするー」

加恋はニヤニヤと笑みを浮かべながら、

自分に自惚れるような素振りを見せると、

そのまま”さらに”自分に対しての洗脳を続けたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


数日後ー


加恋の友人・泰恵は、加恋の変化に気付くー。


「ーなんか最近、おしゃれになってないー?」

泰恵がそう言葉を口にすると、

加恋は「ふふー分かる?」と、得意気な表情を浮かべたー。


イヤリングにペンダントー

ちょっとしたネイルー

今までの加恋には、どれも見られなかった光景だー。


しかし、泰恵は少しだけ心配そうに、

「あんまり、無理しちゃだめだからねー?」と、

言葉を投げかけるー。


彼氏の奈津雄に嫌われてしまうのではないか、と

いつも悩んでいたのを知っていた泰恵から見れば、

”彼氏のために、無理をしている”ようにしか見えなかったー。


が、当の加恋は「えへへー大丈夫大丈夫ー」と、笑いながら

「ーわたし、自分の魅力に気付いちゃって!」などと、

普段の加恋なら絶対に言わないような言葉を口にしているー


「ーー加恋…」

泰恵がいつも言っていた、”加恋の守ってあげたくなるような感じ”は、

失われー、そこには妙に自信に満ち溢れた加恋の姿があったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーありがと!真紀ちゃんのおかげで、わたし、

 生まれ変わることができたよ!」


その日の夕方ー。

オカルト系のサークルに所属する友人・真紀の元を訪れた

加恋は、そんな言葉を口にするー


「ーーーえ」

いつものようにボサボサな髪を触りながら

真紀が、きょとんとした表情を浮かべるー


「ーーーほら、例の洗脳!」

加恋がそう言うと、

真紀は「あー…あははは」と、

いつものように独特な笑い声をあげると、

「ーただのおまじないだと思うけど、効果があったなら良かったー」と、

そんな言葉を口にするー。


真紀も、本気で”洗脳”とやらができるとは思っておらず、

友人の加恋が元気になるのであればー、とおまじない的な意味合いで

教えただけー。

しかし、目の前にいる加恋は、本気で信じている様子で、

少し戸惑った表情を浮かべるー


”まぁ、加恋が信じてるならそれはそれでいっかー

 おまじないとか占いは信じた方が効果あるしー”


真紀はそう思いながら、

「でも、あんまりのめり込みすぎないようにした方がいいと思うよ~」と

いつものように軽い調子で言うと、

加恋はクスッと笑ったー。


「ー可愛いわたしに嫉妬してるの?」

とー、少し嫌味っぽい言葉を口にしながらー


「え…?」

真紀は戸惑うー。


加恋はそのまま一方的に少し雑談をしてから

立ち去っていくー。


「ーーーー…加恋?」

今までの加恋に感じたことのない嫌味な態度に、

真紀は少し首を傾げながらも、

「ま、まぁ自信を持つのはいいことだよねー」

と、そう呟いてそのままサークルの活動場所へと

向かうのだったー


②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


自分を”洗脳”してしまうという異色(?)のMCモノデス~!


早速、物語中でも効果が出てきてしまっている様子で、

この先がちょっと心配ですネ~笑


この先、どんな風になっていくのかは、

また次回のお楽しみデス~!


今日もお読み下さりありがとうございました~~~!!

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