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1学期も進み、梅雨の季節へと突入したー。


翔太(綾)は、クラスメイトで美術部の仲間でもある

倉守詩音の問題をー、

綾(翔太)は、カードゲーム部の新入部員からの偏見から生じた

トラブルをそれぞれ解決しながら、

日常を過ごしていくー。


しかし、梅雨空の中、また”あるトラブル”に

2人は直面しようとしていたー…。


☆前回はこちら↓☆

<入れ替わり>僕とわたしの不思議な青春㉙~苦手~

社会科見学は終わりー、 翔太(綾)は、同じ美術部の生徒・倉守 詩音の力になろうと、 詩音の親との話し合いに同席し、詩音の家庭の問題を解決させることに 成功したー。 いやー、やっとスタートラインに立てたー、というところだろうかー。 それでも、”友達”の力になれたことを翔太(綾)は 心の中で喜ぶー。 そしてー...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


★主な登場人物★


遠藤 翔太(えんどう しょうた)

C組生徒。大人しく、奥手な性格の持ち主。綾と入れ替わってしまう。


星村 綾(ほしむら あや)

C組生徒。可愛らしい雰囲気に、明るい性格の持ち主。翔太と入れ替わってしまう。


神田 哲真(かんだ てつま)

C組生徒。翔太の中学時代からの友人。女子は苦手。


星村 美桜(ほしむら みお)

綾の妹。今年から高校生になり、高校に通っている。


敷島 郡司(しきしま ぐんじ)

C組生徒。いつも含みのある言動が多い、人間観察が趣味の生徒。


霧崎 理子(きりさき りこ)

C組生徒。男子相手でもお構いなしにスキンシップをするフレンドリーな性格。


★脇役も含めた人物紹介はこちら↓★

<人物紹介>僕とわたしの不思議な青春~登場人物図鑑~

長編入れ替わりモノ 「僕とわたしの不思議な青春」の 登場人物図鑑デス! 連載前に予告として掲載した、 主人公たちのクラス名簿の内容に加え、登場する教員や その他の人物もご紹介しています~! ※ネタバレは控えめ(漫画や小説の最初の方のページに書かれている  人物紹介ぐらいの内容…)デス~!  最初にクラス名...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


季節は梅雨真っただ中ー…。

翔太(綾)は、傘を差しながら、

同じクラスの敷島郡司と共に下校していたー。


”男子”の身体になったことで、こうして男子と”同性”として

一緒に過ごすことができるようになったのは、

”綾”からすれば、初めはとても新鮮だったー。


綾本人としては、特に接し方を変えているつもりは

ないのだけれどー、前はどことなく男子との間に

”見えない壁”があったような気がするー。

言葉に言い表すのは難しいけれど、どことなく

無意識のうちに”遠慮”されているようなそんな感じー。


それが”翔太”の身体になったことで無くなったー。

そんな気がしていたー。


「ーーところで、最近二人はどうなんだい?」

敷島郡司が、そんな言葉を口にするー。


昨年には、翔太と綾の秘密を知っている、として

思わせぶりな発言をしていた男子生徒ー。

結局、”知っている”のは入れ替わりのことではなく

綾と翔太が二人でいることが多いために、

”付き合っているのではないか”と、誤解しての言葉で、

今も郡司は入れ替わりのことを知らないー。


「ーーえ…どうってー?」

翔太(綾)が苦笑いすると、

「はははー隠しても無駄だよ。星村さんと付き合ってるのは

 お見通しなんだからー」と、郡司が言葉を口にするー


「ーあははは…

 ーーーーでも、まだ付き合ってないよ。

 ”今はまだ”ーダメだからー」

翔太(綾)はそう言葉を口にするー


”告白されるなら”自分”からじゃなくてー…”

それが、昨年のクリスマスの約束ー。


だから、今はまだ付き合うことはできないー。


「ーー今はまだ?

 はははー、思わせぶりな発言だなー」

そんなことを口にしながら笑う郡司ー。


翔太(綾)は「ー敷島くんこそ、岡崎さんとはどうなの?」と、

そう言葉を口にするー。


郡司の彼女は同じクラスの報道部の部員・岡崎 香奈枝ー。

小柄でショートヘアーの、ちょっとドジなタイプの子だー。


「ー相変わらず、振り回されてるよー

 でも、まぁ、僕も嫌じゃないしー

 香奈枝に振り回されるのは慣れてるからなー。


 むしろ、僕じゃないとついていけないというかー」


郡司が笑いながらそう呟くと、

翔太(綾)は「ーそういえば、岡崎さんのこと名前で呼ぶように

なったんだー」と、笑うー。


「ーーぅ… ま、まぁーそれはー」

照れくさそうに目を逸らす郡司ー。


”翔太”の親友である哲真は、”翔太の身体になった綾”にも

親切にしてくれるし、時間が合えば一緒に帰ることもあるー。

が、哲真の次ぐらいに今現在親しい男子は、この敷島郡司や、

かつてイジメを受けていた丸岡富雄、あとは哲真繋がりで

カードゲーム部に所属している足立幸也あたりだろうかー。


今日も、そんなうちの一人、郡司と下校していた

翔太(綾)ー


がー

その時だったー。


近くの公園で、別の高校の複数の生徒が、

集まっているのが見えたー。

どうやら、一人が”いじめ”を受けているように見えるー。


「ーーー…あぁ…あれは、隣町の学校だなー」

郡司がそう呟くー。


翔太(綾)が、いじめられている感じの子の方を

見つめながら、複雑そうな表情を浮かべるー。


”おら!あんた生意気なんだよー!”

”いつもいつもいい子ぶって!”

”うざいんだよ!”


罵声を浴びせられている少女ー。


郡司は「ーあ~あ…ー可哀想にー」と、

呟きながら首を横にするー。


そんな会話をしながら、歩いていると、

”いじめられている子”の顔が翔太(綾)たちの

歩いている場所からも見えーーーー

翔太(綾)が、瞳を震わせたー


”えー……み、美桜ーー???”


公園でいじめられているのはー

”綾”の妹・美桜ー。


入れ替わって以降、”姉妹”として接することはできなくなって

しまったけれど、去年のクリスマスをはじめ、

上手く機会を作って、時々会うことはできているー。


「ーーーーー……どうかしたのか?」

郡司が首を傾げるー


「ーー…え……ご、ごめんー

 ちょっと急用を思い出しちゃったから、

 敷島くんは、先に帰っててー」

翔太(綾)がそう言うと、郡司は首を傾げながら

「ーーん?あ、あぁ、じゃ、また明日ー」と、そう言いながら

立ち去っていくー。


郡司が去っていくのを待ちー、

美桜の方に近付こうとすると、

もういじめっ子たちは姿を消していて、

美桜が、滑り台の下で落ち込んだ様子でしゃがみ込んでいたー。


「ーーー…」

”美桜!だいじょうぶー!?”と、叫びたくなったー


けれどー、”美桜”にはまだ入れ替わりのことは明かしていないー


いいやー、明かすつもりは、今のところないー。

何故ならーーー……


「ーーーー…星村さんの、妹さんー…?」

翔太(綾)がそう言葉を口にするー。


色々、複雑な思いを抱えながらー。


すると、目に涙を浮かべてしゃがみ込んでいた妹の美桜が

顔をあげてー、

「あ…お、お姉ちゃんのー……… え、遠藤さんー」

と、美桜は言葉を口にするー。


翔太のことを勝手に”お姉ちゃんの彼氏”だと決めつけている美桜は、

そう呟くと、慌てて涙を拭きながら

「ーみ、見られちゃいました?」と、照れくさそうに笑うー。


こんな時でも、健気に笑う美桜ー。


美桜は、高校に入ってから”いじめ”を受けていたのだー。


それを、”綾(翔太)”にも隠しているー。


翔太(綾)は、美桜のことをぎゅっとしてあげたい気持ちに

なりつつも、”今は遠藤くんの身体だから、それはできないよねー”と、

我慢しながら、「いじめ…られてるの?」と、傘を

美桜の方に差し出しながら言葉を口にするー。


少し濡れている状態の美桜は、

「ーーちょ…ちょっとだけー…あ、でも、大丈夫なんですー」と、

笑いながら立ち上がると、そのまま頭を下げて、立ち去ろうとするー。


「み、美桜ーーちゃん」

自分の妹に”ちゃん”付けをすることに違和感を感じながら

そう言葉を口にすると、

「ーー”お姉ちゃん”には、相談しなくていいのー?

 いじめのこと、誰かに相談したー?」と、

心配そうに言葉を口にする翔太(綾)ー。


つらいー。

入れ替わったあとに、辛いことも、楽しいことも、色々あるー。

嫌なことばかりじゃないー。


でもー、

”何より辛いこと”の一つがー…

”美桜を前に、お姉ちゃんでいられないこと”ーーー。


今の”わたし”は、他人ー。

美桜からすれば”お姉ちゃんと仲良しな男子”でしかないー。


美桜から、”遠藤さん”と呼ばれてー、

美桜のことを”美桜ちゃん”と、他人のように呼ぶー。


それが、とてもつらいー。


雨の中、涙が溢れそうになるのを堪えながら、

美桜の方を見つめていると、美桜は笑いながら呟くー


「ーー遠藤さんってなんだか、

 時々”お姉ちゃん”みたいですよねー」

とー。


「ーーー…!」


もちろん、美桜は入れ替わっている、という意味で

言っているのではないー。

”お姉ちゃんと同じで、心配性ですねー”というような意味での言葉だー。


だがー、

翔太(綾)は思うー。


”わたしならー…ここにいるよー…”

とー。


それでも、言えないー。

…美桜のためにもー。


「ーーお姉ちゃんに心配かけたくないですしー

 お姉ちゃんには言わないで貰えますかー?」

美桜は、傘を手にしたまま、寂しそうに、

けれども無理に元気に振る舞いながら言うー。


「ーーーーひ、一人で苦しんだら、ダメだよー?」

翔太(綾)がそう言うと、美桜は笑いながら、

「こう見えてわたし、メンタルつよつよなんで、

 思ったより苦しんでないんです!」と、自慢するような仕草を

しながら言葉を口にしたー。


「ーーー……美桜……」

思わず小声でそう呟く翔太(綾)ー

美桜は、雨の中、頭をぺこりと下げるとそのまま立ち去っていくー


「ーーー…大事な時に…近くにいてあげられなくて…ごめんねー」

翔太(綾)はそう呟くと、一人悲しそうに涙を流したー



「ーーーーー……」

少し離れた場所で、その様子を見つめていた

さっきまで一緒に下校していた敷島郡司は、

そのまま、翔太(綾)に声をかけることなく、その場を後にしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


今日も雨ー。

翔太(綾)は、綾(翔太)に美桜のことを相談したー。


「ーそういえば…最近何か元気なかったようなー…

 それに、ちょっと前に腕に痣があってー…

 美桜ちゃん本人は、体育の授業で打ち付けたとか言ってたけどー」


綾(翔太)が申し訳なさそうにそう言うと、

翔太(綾)は「やっぱり美桜、いじめられてるんだー…」と、

悲しそうに呟くー。


”お姉ちゃんに言わないでください”とは言われたけれど、

そもそも”わたしがお姉ちゃんだから、もう聞いちゃったよ…”と、

綾(翔太)にも相談することにした翔太(綾)ー


そのことも伝え、本人の前ではとりあえず知らないフリを

しておいてほしい、と口にする翔太(綾)ー。


「ーーごめん。美桜ちゃんのことは星村さんになった僕が

 責任を持ってみてないといけないのにー


 僕…兄弟とかいないから、そういうところ、疎いのかもー」


綾(翔太)が申し訳なさそうに言うと、

翔太(綾)は「ううんー…遠藤くんのせいじゃないよー」と、

言葉を口にするー。


「ーーそういえば、前から思ってたんだけど、

 美桜ちゃんには”入れ替わり”のこと言わなくていいの?」

綾(翔太)が、不思議そうに言葉を口にするー。


現状”入れ替わり”のことを知るのは、当事者以外では2人のみー。

翔太の親友の哲真と、綾の親友の穂乃果だけだー。


綾の妹である美桜には、まだ入れ替わりのことは伝えていないー。


「ーーー…言えないよー…

 ”友達”と”姉妹”は違うからー…」

翔太(綾)は、悲しそうにそう言葉を口にすると、

「ー神田くんとか、穂乃果は、”家では一緒”じゃないけどー…

 美桜の場合は、同じ場所で暮らしてるでしょ?」

と、そう続ける翔太(綾)ー


「入れ替わりのことを美桜に伝えれば、

 美桜からしたら”家族じゃない人”とずっと一緒に暮らすことに

 なっちゃうしー、

 それに、美桜のことだから気にして色々しようとするだろうしー…

 美桜を苦しめることになっちゃうかもしれないからー…」


翔太(綾)のそんな言葉に、

綾(翔太)は「そっかー…それもそうだねー…」と頷くー。


気付かれた場合は別として、

そうでない場合、入れ替わりのことを打ち明ければ、

美桜は”他人”と同じ家で暮らすことになり、

相当、気を使わせることになってしまうー。


知らなければ、知らない方が美桜の負担にならないはずー。

そういう判断だー。


かと言って、”住む場所まで交換”するとなると、

綾の両親、翔太の両親にまで入れ替わりを伝えることになるし、

もっと大事になってしまうー。

色々な人に迷惑や負担をかけることになるし、

当然”身体は他の家の子供”が住んでいればお互いの近所の目もあり、

どんどんどんどんことが大きくなるー。


当然、”入れ替わり”など信じない人も出てくるだろうし、

入れ替わりの話がどんどん広がれば

そのうち、”入れ替わり”という前代未聞の現象に、

報道関係の人が集まりだしたり、冷やかしにやってくる人まで

近所をウロウロし始めたりー、

”今のような生活”が維持できなくなる可能性もあるー。

翔太と綾にとっても、それは地獄だろうしー、

2人の家族、さらには友達にまで迷惑をかけるかもしれないー。


”入れ替わり”を広げるには限界があるー。

広げすぎれば、二人の日常は完全に破壊されてしまうかもしれないー。


そしてー、

”家族”に打ち明けるのと”友達”に打ち明けるのではまた違うー。

友達なら、距離感を変えることもできるー。

けれど、家族の場合…同居している家族の場合、

”中身がお姉ちゃんじゃない”と分かっても、距離感を極端に

変えることは難しいー。


だから、翔太(綾)は、美桜に入れ替わりを打ち明けていない状態を、

続けていたー。

つらいけれど、打ち明ければ、美桜が辛い思いをするー…

とー。


「ーー僕の方でも、色々方法を考えてみるよー…

 もちろん、星村さんから聞いたってことは言わないから」

綾(翔太)がそう言うと、

翔太(綾)は申し訳なさそうに「ごめんねー。美桜のことで巻き込んで」と、

そう言葉を口にしたー。


「ーあははー、大丈夫だよー。

 1年以上も一緒に暮らしてると、もう本当の妹みたいなものだしー 

 僕にとっても、もう大事な存在だからー」

綾(翔太)が笑うー。


その言葉に、翔太(綾)は少しだけ複雑そうな表情を浮かべるー。


入れ替わっている時間が長ければ、長いほどー

だんだん、色々なことが変わっていくー。


もしー、もしも、今”元に”戻ったらー…


”遠藤くんは、急に妹がいなくなったように感じたりしちゃうのかなー…”

翔太(綾)は、そんなことをふと思うー。


それにー、自分自身も”美桜”のことは大事だけれどもー

だんだんとー……”美桜ちゃん”と、呼ぶのが

しっくりと来ている自分が、心のどこかにいるー。


「ーーー…」

仮に明日、元に戻れたとしても、もうー、

”はい、元通り”とはいかないぐらい、長い時間

”遠藤 翔太”として過ごしてしまったー。


それはきっと、翔太も同じー。


「ーーー…どうかした?」

綾(翔太)の言葉に、翔太(綾)は「う、ううんーなんでもない」と

誤魔化すと、少しだけ寂しそうに笑みを浮かべたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


どうにか、いじめを受けている美桜を救い出すことは

できないかどうかー。


そんなことを考えながら、日々を送る二人ー。


が、同じ学校にいるならともかく

”別の学校”に美桜が通っている以上、介入するにも限度があるー。


入れ替わりを知る哲真や穂乃果にも相談したもののー、

2人もやはり、頭を悩ませていたー。


そんな中、放課後のカードゲーム部の部室で、

綾(翔太)は、新入部員の松岡 啓二にあることを相談されたー


「ーーこ、この前、渡海先輩って人にキレられちゃってー」

啓二が、少し怯えた様子でそう言葉を口にするー。


この前まで、”綾”のことを”姫扱いされたくてカードゲーム部に入部した”と

決めつけていた後輩・啓二ー。

綾(翔太)とは既に和解したものの、そのあと、

綾に執着している転校生・渡海 和之から”脅された”のだー。


そのことを相談する啓二ー。


「ーーえぇ…ご、ごめんねー?

 渡海くんにはよく言っておくからー…」

綾(翔太)がそう言うと、

哲真も「アイツ、星村さんのことになると過激だからなぁ」と、

呆れ顔で呟くー。


結局、翌日に渡海 和之と話をする機会があり、

啓二とは和解していることを伝えて、

”怖がらせるようなことはしちゃだめ”と、言い放つと、

和之は”綾”の言葉だからか、素直に「ごめんー。」と、

謝罪の言葉を口にしたー。


「でも、僕は星村さんを守りたいんだー。

 星村さんのためなら、僕は何でもするー」


相変わらず過激な和之ー。


和之と話していると、どうしても昨年の文化祭で

男に襲われた時のことを、何故か思い出してしまうー。


がー、仕方がなく後輩の啓二に手を出さないようにお願いすると

和之は素直に応じて、その場を後にしたー


「ーーーーー…」

立ち去っていく和之を見つめながら、綾(翔太)はふと、

”美桜ちゃんのことー…渡海くんにお願いすればー…”と、

そんなことを思ってしまうー


恐らく”綾”からお願いすれば、美桜のことを

”どんな手段を使ってでも”守ってくれる気がするー


がーー…

すぐに、綾(翔太)は首を横に振ると、

”何考えてるんだ、僕はー”と、その考えを一蹴したー。


”星村さんの妹を傷つけるなんて、許せない!”とか言い出して

大変なことになる気がするー。

その手段は使わない方がいいと考えながら、

綾(翔太)は静かにその場を後にしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


美術部の部室では、

倉守 詩音が、いつものように、

楽しそうに絵を描いていたー。


最近の詩音は、前よりも笑顔が増えた気がするー。

”家庭の問題”が、少しは前向きになったからだろうかー。


「ーあれから、どう?」

翔太(綾)がそう言葉を口にすると、

詩音は「君のおかげで、母さんともなんとか和解できたしー、

兄さんも定期的に様子を見に来てくれることになったよー」と、

改めてお礼の言葉を口にする詩音ー。


「ーーボクも、ようやくボクらしく生きることができるかもー

 君のおかげだー」

詩音はそこまで言うと、

少し、髪の伸びた詩音を見て、翔太(綾)は微笑むー。


「ーーーん?」

詩音が翔太(綾)の視線に気付くと、

翔太(綾)は「あ…、、えっと…髪、少し伸ばしたんだなぁってー」

と、言葉を口にするー。


「ーーははー、ボクにはやっぱ似合わないかなー?」

照れくさそうに笑う詩音ー。


「ーそ、そんなことないよー

 今の倉守さんの方がいきいきしてる気がするー」


翔太(綾)はそう言うと、詩音は穏やかに笑うと、

そのまま描いている最中の絵に集中し始めたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


それから数日後ー。

”美桜”のいじめの根本的な対策は取れないままー、

綾(翔太)は、家で美桜のことを何とか元気づけようとしているものの

やはり、美桜はどことなく元気がないー。


「ー美桜ちゃんをいじめてる子にガツンと言ってあげることは

 できるけどー…

 仕返しされたり、余計にエスカレートするかもしれないもんねー」


昼休みの時間ー。

翔太、綾と色々話をしている最中に、

穂乃果がそう言葉を口にするー。


かと言って、四六時中、美桜の様子を見ていることもできないー。

翔太たちが”力”で、美桜をいじめている女子たちを懲らしめても、

”その後”が怖いー。


「ーーーー親とか、先生の力を借りるしかないかもなー」

哲真がそんな言葉を口にするー。


”美桜ー…”

翔太(綾)が、悲しそうな表情を浮かべるー。


がー、

その時だったー。


「ーーーーちょっといいかなー?」

背後から、敷島郡司に声を掛けられて、

振り返る翔太(綾)ー。


「ーーえ?僕?」

翔太(綾)が不思議そうに言うと、

郡司は、すぐ近くの使われていない教室を指差すと、

その中に入るように促すー。


そして、中に入ると同時に、

「ーー…星村さんの妹を助けたいんだろー?」

と、郡司が言葉を口にするー


「え…う、うんー…で、でもどうして知ってるの?」

翔太(綾)の言葉に、郡司はこの前、一緒に下校した際に、

あのあとも近くで見ていた、と、少し申し訳なさそうに呟くー。


「ーーー…あ、そ、そうなんだー…」

翔太(綾)が少し戸惑いながら頷くー。


すると、郡司は言葉を口にしたー。


「ー星村さんの妹を助けるために

 ”強力な助っ人”を見つけたよー。」


その言葉に、翔太(綾)は「え…?助っ人?」と、戸惑うー


郡司は静かに頷くとー、

「ーー霧崎さんー」と、そう言葉を口にしながら

教室の入口の方を見つめたー。


「ーーはいはい!あたしが助っ人だよ」

クラスメイトの霧崎 理子ー。

誰にでもフレンドリーな性格で運動好きの女子ー。

男子が相手でも構わずスキンシップするタイプの子で

距離感がバグっているー、等と言われているー。


”翔太”も、入学直後にフレンドリーにされて戸惑った経験があるー。


「ーーー霧崎さんが、助っ人ー?」

翔太(綾)が、困惑した様子で首を傾げると、

理子は得意気な表情を浮かべながら、翔太(綾)の手を掴み、

「もう安心していいよ!」と、自信満々に言葉を口にしたー。


「ーーー……?? ーーー…?」

翔太(綾)は、さらに戸惑うー。


”霧崎 理子”とは、

翔太も綾も、”特別親しい”わけではない。

美桜との接点もないはずだー。

その理子が、どういう意味で助っ人なのだろうかー。


そう思っていると、理子は笑いながら

「あははー”あたしが何の役に立つの?”って顔だね!」と、

翔太(綾)をパンパンと叩きながら言葉を続けたー


「あたしー、男兄弟がたくさんいて、

 兄が一人、弟が二人いるんだけどさ、

 あたしの弟の一人が、星村さんの妹と同じ学校に

 通っていて、同じクラスなんだよね~」


理子のそんな言葉に、翔太(綾)は「え…」と、

驚きの表情を浮かべるー。


「ーー僕と、香奈枝の”情報収集能力”役にたつだろー?」

郡司は得意気に笑うー。


聞けば、”綾”の妹がいじめを受けていて、

翔太と綾がどうにかしようとしていると知った郡司は、

元々人間観察が趣味な自分の情報網と、

彼女であり、報道部に所属している香奈枝の協力を得て、

”美桜”と繋がる人間がいないかどうかを探しー、

結果ー、霧崎 理子の弟の一人が、

綾の妹・美桜と同じ学校、同じクラスであることを突き止めたのだー。


そして、理子に協力をお願いし、理子も快く

それを引き受けてくれたのだと言うー。


「ーーーで、でも、霧崎さんの弟さんが、

 みー……、ほ、星村さんの妹と同じクラスだったとしてもー

 いったいどうやっていじめをー?」


翔太(綾)が不思議そうにそう言うと、

理子は翔太(綾)に顔を近づけながら笑ったー。


「あたしの弟ー、淳伍(じゅんご)

 滅茶苦茶イケメンだからー」


理子がそう呟くー


「ー?????」

翔太(綾)が、頭にハテナを浮かべると、理子は言葉を続けたー


「ーあたしの弟、クラス中の女子からモテモテみたいだからー、

 星村さんの妹をいじめていることをあたしの弟が注意すればーー

 いじめ、止まると思うよ?」


理子の思わぬ提案に、翔太(綾)は、

驚いた様子で瞬きすると、理子は「まぁまぁ、あたしに任せて」と、

笑みを浮かべたー。



㉛へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


★2-Cの日常★


梅雨のとある日ー。


「ーーー」

綾(翔太)と、哲真が廊下を歩いていると、

B組の生徒の末永 拓斗と、二階堂 倫太郎の二人が

雑談しているのがたまたま聞こえたー。


スキー教室の際に、翔太(綾)と伊藤 菜々美が一緒にいたことを

目撃して、付き合ってるだの何だの揶揄って来たことのある生徒たちだ。

それ以外に接点はないものの、この二人の評判は良くないー。


「ー俺の彼女がさ~、生理がどうこう言って

 いつも大げさなリアクションして面倒臭いんだけどー」

拓斗の言葉に、「いいよなぁ~女はー」などと、倫太郎は笑っているー。


そんな言葉が耳に入り、

哲真は”そういや、遠藤も星村さんの身体になったってことはー?”と、

そんなことを心の中で少しだけ思うー。


そんな哲真の視線に気づいたのか、綾(翔太)が、

少し恥ずかしそうにしながら、

「ーーーま、まぁ…男子はああ思うよねー」と、苦笑いするー。


「ーー僕も星村さんになるまで、全然何も分かんなかったけどー…」

綾(翔太)は、笑いながら、

”最初はホントにびっくりしたし、星村さんに滅茶苦茶相談したー”と、

説明したー。


「ーーやっぱ、お前もそういうの、あるんだなー」

哲真が”今までそういう話、聞いたことなかったから”と、言うと、

綾(翔太)は「あるけどー…教室でわざわざ言わないよー」と、苦笑いするー。

どうやら、裏で入れ替わった二人で色々相談していたようだー。


「ーーそんな、辛いもんなのか?」

哲真が不思議そうに言うと、

綾(翔太)は「ーう、うんー…」と、照れくさそうに頷くー。


自分が男子である時にはまったく分からなかったし、

彼女がいたことがなかった翔太からすれば、

尚更、”触れたことのない未知の世界”だったからこそ、驚いたー。


「ーー末永くんの彼女さん、大変そうだなぁ……」

決して”甘え”ではないほどのあの不快で不調な感じー。

全然平気!という子も当然、クラスにもいるけれど、

結構きつい人には、本当にきついー。


翔太は”知らない立場”も、”体験する立場”も、両方を

知っているからこそ、複雑な気持ちを抱くー。


「ーーま、まぁ…なんか、お前も色々大変なんだな…」

哲真が、戸惑いながらそう言葉を口にすると、

綾(翔太)は「う、うんー。色々大変だよー」と、

少し恥ずかしそうにそんな言葉を口にしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


ついに第30話に到達しました~!☆

いつもの長編なら、そろそろ終盤なタイミングですが、

僕とわたしの不思議な青春は、(作中の時間で)三年間を描くので、

まだ”もうすぐ半分”ぐらいのタイミングですネ~!


今日もお読み下さりありがとうございました~!


今日はこのあと、夕方~夜の初めごろに、

今後の新作発表もお届けするので、興味があれば

そちらもチェックしてみて下さいネ~!

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