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勇者の末裔・ラッセルと、

闇の力を使いこなす女魔王・ヴェネッサ。


その二人が、魔王城の最終決戦の際に力のぶつかり合いによって

入れ替わってしまったー。


ヴェネッサになってしまったラッセルは魔王の城で、

ラッセルになってしまったヴェネッサは近くの村で、

互いにとって”敵”の真っただ中で生活することになってしまうー…


★前回はこちら↓★

<入れ替わり>勇者と魔王の屈辱的な日々①~決戦~

「ーーーくっ…つ、強いー」 禍々しい邪悪なオーラの漂う魔王城ー。 その”魔王の魔”で、 勇者ラッセルは、勇者の剣を手に、魔王に立ち向かっていたー。 「ふふふふー  今、降参すればわたしのしもべにしてあげても、いいのよー?」 妖艶な雰囲気を持つ女魔王・ヴェネッサが、 クスクスと笑いながらそう呟くー。 「ーーふ...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーラッセルさん!今日もお疲れ様でしたー」

ラッセルの仲間の一人、巫女・ローズが微笑むー。


魔王城から少し離れた場所にある辺境の村ー…

ラッセル一行が宿泊しているその村で、ローズが微笑むー。


「ーーはぁ… はぁ… はぁ… はぁ…」

魔王ヴェネッサ(ラッセル)は、その村に向かって走っていたー。


「ーー早く… 早く… 早くっ…!」

髪を邪魔そうに払いのけながら、

「あぁ!もう、髪も邪魔だし、胸があると違和感凄いしー」

と、愚痴を呟くヴェネッサ(ラッセル)ー


この大きさでもこんなに気になるなんて、

魔王の胸がもっと大きかったらもっと大変だったなー、などと

苦笑いしながら、ようやく村の入口にたどり着くー。


”俺が魔王の身体になってたってことはー

 恐らく、俺の身体には魔王ヴェネッサがいるー…

 早く、なんとかして伝えないとー”


ヴェネッサ(ラッセル)は表情を歪めるー。


「ーーーーこの姿で、信じてもらえるのかー…?」

自分の、禍々しい装飾の指輪をはめた手を見つめながら、

”それでも、行かないとー”と、

ヴェネッサ(ラッセル)は、仲間のローズかグレン、

どちらかに話をしようと二人の姿を探すーーー


がーーー


「ーーーーえ」

ヴェネッサ(ラッセル)は、呆然とするー。


そこには、赤に染まった巫女服姿で倒れ込んでいるローズの姿ー


そしてーーー


「ーーーき…貴様ぁ…!!!」

思わず声を上げるヴェネッサ(ラッセル)ー


そこには、血のついた剣を手に佇むラッセル(ヴェネッサ)の

姿があったのだー。


「ーーーおやおや、勇者様ー。遅かったわねー」

ラッセル(ヴェネッサ)が笑うー。


「ーこの女は、わたしをあんただと思って、このザマさー」

ラッセル(ヴェネッサ)はそう言いながら、

倒れ込んでいるローズを見つめるー。


瞳を震わせるヴェネッサ(ラッセル)ー。


するとー


「ーー大変だ!!!!!

 ローズが!!ローズが!!!」


突然、ラッセル(ヴェネッサ)が叫び出すー。


すぐに村人や、仲間のグレンが駆け付けると、

グレンも倒れているローズを見て、震えながら

「ロ、ローズ!」と叫ぶー。


ニヤリと笑みを浮かべるラッセル(ヴェネッサ)ー


「ーーーテメェ…魔王…!

 テメェがローズを!」

怒りに震えるグレン。


そんなグレンを前に”違うんだ!”と叫ぶヴェネッサ(ラッセル)ー


”ククククー さぁ、殺し合うのよー 仲間同士でー…!”

ヴェネッサの笑い声が聞こえるー


そんなーー


そんなーーーー


嫌だーーーーー!!!!



「ーーー!!!!!!!!!!!!!」


ガバッと起き上がると、

そこは、”魔王の部屋”だったー


「ーはぁ…はぁ…はぁ…

 ゆ、夢ー…」

ヴェネッサ(ラッセル)は、冷や汗をかきながらそう呟くー。


そうー、

今の光景は”夢”ー。


しかしー…


”早く何とかしないとー。

 俺が魔王になってるってことは、やっぱり俺はー…”


ヴェネッサ(ラッセル)は、不安そうな表情を浮かべるー。


夢は夢ー

が、このままだとあの夢は正夢になりかねないー。

早く、仲間に状況を知らせないとー


「ーーおはようーーーお姉さまー」


「ーー!?!?!?!?」

ビクッとして、ヴェネッサ(ラッセル)が声のしたほうを

振り向くと、そこには銀髪の美少女ー

普段は禍々しい黒い鎧に身を包み、”ガロン”と名乗っていた子が、

その場にいたー。


「ーーえ… えっ…え、お、おはようー」

ヴェネッサ(ラッセル)が慌てた様子で言うー。


”ガロン”は、これまで男だと思っていたー。

と、いうのも戦闘中は一切喋らなかったし、

鎧で身を包んでいたためだー。


が、実際はこんなに可愛らしい子が中身だったのだー。


それにー

”ガロン”は人間なのだというー。

人間の両親に森に捨てられて、”魔王の森”と呼ばれる区画を一人で彷徨い、

低級の魔物に襲われていたところを、

このヴェネッサが助け出したのだと言うー。


「ーーー…だいじょうぶ?」

心配そうにヴェネッサ(ラッセル)を見つめるガロン。

”ガロン”は本名なのかどうか分からないが、とりあえず

心の中ではそう呼ぶしかないー。


「ーー…お姉さま、うなされてたからー」

ガロンがそう言うと、ヴェネッサ(ラッセル)は咄嗟に

「に、人間の罠にはまる夢を見てー」と、誤魔化すー。


「ーーー……ーーー…わたし、人間きらいー」

ガロンがそう呟くー。


「ーーー…」

ヴェネッサ(ラッセル)は、そんなガロンのほうを見つめるー。


親に捨てられ、魔物の救う森に放り出されー、

ヴェネッサに救われたこの子にとっては、人間は”敵”なのだろうー。


「ーーーどうして、人間はわたしたちを滅ぼそうとするのー?

 ーーどうして、お姉さまの命を狙うのー?」


悲しそうに呟くガロンー。

そんな彼女を慰めると、

ヴェネッサ(ラッセル)は、悪い夢を見たことで

身体が汗ばんでいることに気付くー


「そーー…そういえば…お、お風呂…みたいなものはー」

ヴェネッサ(ラッセル)が気まずそうに言うと、

泣き止んで、いつものように無表情な感じに戻ったガロンは、

「ーーお姉さま、お風呂好きだもんね」と、呟くー。


”よかったー。お風呂はあるのかー”

そう思いながら、ヴェネッサ’(ラッセル)がお風呂に向かうことを告げ、

部屋の外に出ると、

人型の、”執事”のような雰囲気の魔物が姿を現したー。


「ヴェネッサ様ー。お加減はよろしいですか?」

”その声”に、ヴェネッサ(ラッセル)は少し表情を歪めるー。


”この声、どこかでー”

そう思いながら、すぐにハッとするー。


そうだー、

2人の幹部ー…”紫色の鎧のほう”の声だー。


そう思いながら、その男ー…幹部・ズールのほうを見ると、

ズールは「ご入浴ですかなー?準備はできておりますー」

と、静かに頭を下げたー。


思ったよりもずっと高齢で、礼儀正しい人物ー。


「ーーー(調子狂うなぁ)」

滅ぼすべき”悪”とは思えないー。

だが、魔物の存在で、人類存亡の危機に直面しているのは事実ー。


”敵”を警戒してだろうかー。

ズールが前を歩き、魔王城の中にある浴場まで

案内してくれたー。

人間から見れば、禍々しい感じの景観だが、

なるほど、これはなかなか心地よさそうに見えるー。


「ーーでは、ごゆっくりー。

 何か異常がございましたら、すぐにそちらの魔警報を

 ご利用になられてくださいー」

ズールはそう言いながら頭を下げるー。


「ーーあ、ありがとうー」

ヴェネッサ(ラッセル)は思わずそう言葉を口にすると、

ズールは「勿体ないお言葉ー」と、頭を下げ、そのまま

立ち去っていくー。


やがてー、入浴を始めるヴェネッサ(ラッセル)ー。


「ーーー~~~~~」

ヴェネッサの身体にドキドキしながら、

”何、敵の魔王にドキドキしてんだ俺はー”と、ツッコミを

入れながら、お風呂につかるー。


「ーーーー」

ガロンも、ズールも、悪いやつには思えないー。


「ーーーーーーはぁ…何か…

 この先、あの二人と戦うのが、知れば知るほど

 イヤになりそうだなぁ…」


ヴェネッサ(ラッセル)は、少し困惑した表情を浮かべながら

そんな言葉を口にしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーーー」


夜ー


魔王城から少し離れた村では

ラッセル(ヴェネッサ)が、宿場の自分の部屋で

表情を歪めていたー


「ふんー…闇の魔術も使えないなんて、貧弱な身体ねー」

ラッセル(ヴェネッサ)がそう呟くー。


「ーー…でも、この身体じゃ、うかつに動けないわ…」

ラッセル(ヴェネッサ)はそう言葉を口にしながら

悔しそうに、表情を歪めるー。


勇者の仲間であるグレンやローズの命を奪おうにも、

この村には王宮の騎士団の一部も駐留しており、

下手な動きをすれば”中身が入れ替わっている”ことに

気付かれる可能性もあるし、

そうでなくても、”勇者さまがご乱心だ!”みたいな展開に

なってしまえば、入れ替わりに気付かれなくても

ひっ捕らえられてしまい、そこで終わりになってしまう可能性も

十分に考えられるー。


そのようなことは、避けなくてはならないー。


「ーーーズールやガロンにこのことを伝えたいけどー」

そう呟きながら、ラッセル(ヴェネッサ)は、部屋に置いてある

勇者の剣を見つめるー。


「ーーー」

それを掴むラッセル(ヴェネッサ)ー


がーーー


「ーーーーぐっ… く… うぅぅぅぅ」

異常な重みを感じて、苦痛に表情を歪めるラッセル(ヴェネッサ)ー


”勇者の剣”には分かっているのだー。

今、自分を手にしている人間が”仕えるべき人間ではない”と、

いうことにー…。

勇者の剣が、”今のラッセル”を拒んでいるー。


「ー生意気な剣め!」

ラッセル(ヴェネッサ)は苛立って勇者の剣を部屋の端に放り投げると、

「何とかチャンスを見つけてー」と怒りの形相で言葉を口にしかけたー


「ーーーん?」

ふと、ラッセル(ヴェネッサ)は、窓の外を見つめるー。


勇者の仲間、巫女・ローズがキョロキョロしながら

宿場を離れていくー。


「ーあの女ーこんな遅くに何をー?」

ラッセル(ヴェネッサ)はそう呟くー。


「ーーー…いや、これはチャンスかもしれないわー」

ラッセル(ヴェネッサ)は笑みを浮かべると

勇者の剣とは別の剣を手に、宿場を飛び出したー。


”ローズ”を殺すチャンスだー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーー」

宿場から少し離れた場所までやってきたローズ。


その後を尾行するラッセル(ヴェネッサ)ー


やがて、ローズは村から少し離れた小屋のところまで

やってくると、「ー出ておいで」と、そう呟いたー。


「ーー?」

ラッセル(ヴェネッサ)は、ローズを始末するタイミングを伺うー。


がー、そのまま見ているとローズの近くに、

下級の”魔物”である、猫のような容姿の魔物が姿を現したー


”ーーなんだ、あの女?”

ラッセル(ヴェネッサ)がそう思っていると、

ローズは「これしか持ってこれなかったけど、ごめんねー」と、

そう言葉を口にしながら、”あえて残した晩御飯”を、

”魔物猫”に与えるー。


「ーーーーーーふふ…」

ローズは、ご飯を食べる”魔物猫”を見ながら笑うー。


ローズを始末するため、物陰からその様子を見ていた

ラッセル(ヴェネッサ)は剣を握りしめていた手を

少しだけ緩めるとー、

「ローズ…」と、声をかけたー


「ひっ…ひゃぁっ!?」

ローズがびっくりして振り返るー


「ーーら、ラッセルさんー…ど、どうしてここにー?」

気まずそうな雰囲気のローズ。


ラッセル(ヴェネッサ)は「そいつはー?」と、

魔物猫の方を指差すと、ローズは気まずそうに

「こ、こ、この子は…え、えっとー」

と、魔物猫を守ろうと、ラッセル(ヴェネッサ)の前に立ちはだかるー


「ーーー…そいつは人間の敵の”魔物”だぞー?」

ラッセル(ヴェネッサ)がラッセルのフリをしながら言うー。


ローズは、そんな言葉に震えながら

「わ、分かってますー。分かってますけどー、この子、怪我をしててー」と、

魔物猫の方を指差したー。


どうやら、ローズは仲間に内緒で、”魔物”を匿っている様子だったー。


「ーーーーーーー…」

ラッセル(ヴェネッサ)は、ローズを斬ろうと剣に手を掛けようと

したもののー…

その手を剣から離しー、少しだけ笑みを浮かべたー


「ーーー…優しいんだなー」

と、そう呟きながらー。


しばらくその光景を見つめていると、

ローズは「あ…みんなには言わないでもらえますかー?」と

申し訳なさそうに言葉を口にするー。


「ー”魔物”に家族を殺された方もいるのでー…

 そういう人たちを困らせたくないですし、

 この子も危険に晒すことになってしまいますからー」

ローズのそんな言葉に、ラッセル(ヴェネッサ)は

「ーー…あぁ、分かったー」と、だけ言葉を口にするー。


「ーーーーー」

所詮、人間は人間ー。

この小娘も、魔物猫を保護しているのは

きっと”かわいいから”でしかないだろうー。


がー


「ーーーーわたしは誇り高き魔王だー。

 不意打ちで葬るような真似はしたくないー。それだけよー」


結局、ローズに何もすることなく宿に戻った

ラッセル(ヴェネッサ)は、自分に言い聞かせるかのように

そんな言葉を口にしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ヴェネッサも、ラッセルも、先の戦いで受けた傷を

癒すために、時を必要としていたー。


お互いに、相手の陣営で過ごすしかない日々ー。


しかしー

そんな”均衡”を崩す出来事が、この日ー…

起きていたー。


「ーーーヴェネッサ様ー」

普段は紫の鎧を身に纏っている魔王軍の幹部・ズールが

ヴェネッサ(ラッセル)の元にやって来るー。


「ーー何かあったの?」

”ヴェネッサ”として振る舞いながら、ラッセルがそう言葉を口にすると、

ズールは「ガロンが、一人で勇者の滞在する村にー」と、

気まずそうに言葉を口にしたー


「ーー…ガロンがー?」

ヴェネッサ(ラッセル)が表情を歪めるー。


”魔王”をお姉さまと呼び、懐いているガロンー。

彼女が、一人、勇者の滞在する村へと向かったというのだー。


「ーーーですが、あの村には王宮の騎士団も滞在していますー。

 いかにガロンであっても、返り討ちに遭うだけですー」

ズールがそう言うと、

ヴェネッサ(ラッセル)は、困惑の表情を浮かべながら、

「ガロンは、どうして一人でー?」と、言葉を口にするー。


「ーーー”アデン”が余計なことを吹き込んだのかとー」

ズールのその言葉に、「アデン?」と、思わず聞き返してしまう

ヴェネッサ(ラッセル)ー


ズールは、簡単に闇魔導士アデンについて説明するー。


闇魔導士アデンは、魔王軍の参謀で、魔術部隊と率いる長ー。

しかし、昔から魔王ヴェネッサとは折り合いが合わず、

よく意見が衝突しているのだと言うー。


「ーそ、そうだったわー」

ヴェネッサ(ラッセル)はそう言葉を口にしながらー、

”恐らくは、魔物たちの中の権力争いだなー”と、

心の中で呟くー。


このまま放置すれば、”ガロン”は、グレンやローズたち、

それに王宮騎士団によって倒される可能性が高いー。

いかに、”ラッセル”の中身が魔王ヴェネッサだとしても、

変な行動を起こせば正体がバレるだけだし、

仮にガロンと共闘したとしても、

”勇者の力”を、魔王ヴェネッサが使いこなせるとは思えないー。


”こっち”が、魔王の力を上手く使えないのと同じ状況のはずだー。


そうなればー、ガロンは確実に葬ることができるー。


このまま、放置しておけばーーー


けれどー


「ーどこへ?」

ズールがそう言うと、

ヴェネッサ(ラッセル)は呟くー。


「ガロンを助けにいくー」

とー。


「ーー!?」

ズールは少しだけ驚いた様子を浮かべながら、

「ーわたしは、あの子を見殺しにできないー」

と、ヴェネッサ(ラッセル)はそう呟いたー


魔物は敵ー

放っておけば”魔王軍幹部”の一人を葬るチャンスー。


なのにー…


ヴェネッサ(ラッセル)は、

親に見捨てられて魔王に拾われ、魔王軍の幹部として

戦っているあの少女を放っておくことはできなかったー。


”本来の仲間たち”が滞在している村に向かうヴェネッサ(ラッセル)ー。


”自分自身”そして、”仲間たち”との

再会の時は近付いていたー…



③へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


入れ替わった状態のまま、相手陣営で過ごす日々…

2人とも、ちょっぴり心境に変化を感じつつ…な、状態デス~★!


この先もどうなっていくのか、ぜひ見届けて下さいネ~!


今日もお読み下さりありがとうございました~!

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Comments

飛龍

お互いの力が上手く使えない事で"敵"の中から脱出できない理由付けにもなりつつ、魔王の部下が人間だったり勇者の仲間が魔物猫に優しくしてたりと分かり合えそうな雰囲気も出てきたのが良いね。続きが楽しみです!

無名

ありがとうございます~~!☆ 少しずつ、分かり合えそうな雰囲気に…★ まだまだ色々あるので、今後も楽しんでくださいネ~!☆!

lqbz5

Hope to see the part 3 soon

無名

ありがとうございます~! 第3話は明日(1/11)に書きますネ~! 楽しみにしていて下さい~★!