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時は進んでいくー。

2年目の春も、元に戻れないまま

去年と同じように日々を送る二人ー。


そんな中、翔太(綾)は、去年から同じ美術部で活動している

クラスメイト・倉守詩音の母親と初めて顔を合わせたー。


以前、詩音から聞いていたように、彼女の母親は、

詩音のことを、詩音の兄にあたる”和也”と呼び、

男として振る舞うように強要していたー。


そんな詩音のことを心配する翔太(綾)ー


そしてー、社会科見学の日ー…

詩音は顔に痛々しい怪我をした状態でやってきたのを見て、

翔太(綾)の不安は、さらに膨らむのだったー…


☆前回はこちら↓☆

<入れ替わり>僕とわたしの不思議な青春㉗~家庭~

入れ替わってから1年ー。 1年前と同じ条件で、元に戻れないかどうかを試した二人ー。 しかし、結果は失敗ー。 同じ条件で階段から転落しても、元に戻ることはできなかったー。 そんな中、綾(翔太)は”元に戻ったあと”の夢を見たー。 ”綾”として過ごした1年間を失い、まるで色を失ったかのような そんな日常に戻った夢を...

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★主な登場人物★


遠藤 翔太(えんどう しょうた)

C組生徒。大人しく、奥手な性格の持ち主。綾と入れ替わってしまう。


星村 綾(ほしむら あや)

C組生徒。可愛らしい雰囲気に、明るい性格の持ち主。翔太と入れ替わってしまう。


神田 哲真(かんだ てつま)

C組生徒。翔太の中学時代からの友人。女子は苦手。


倉守 詩音(くらもり しおん)

C組生徒。中性的な風貌の持ち主。美術部に所属している。


星村 美桜(ほしむら みお)

綾の妹。今年から高校生になっている。


★脇役も含めた人物紹介はこちら↓★

<人物紹介>僕とわたしの不思議な青春~登場人物図鑑~

長編入れ替わりモノ 「僕とわたしの不思議な青春」の 登場人物図鑑デス! 連載前に予告として掲載した、 主人公たちのクラス名簿の内容に加え、登場する教員や その他の人物もご紹介しています~! ※ネタバレは控えめ(漫画や小説の最初の方のページに書かれている  人物紹介ぐらいの内容…)デス~!  最初にクラス名...

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「ーあ、あの、倉守さんー」

社会科見学での移動中ー、翔太(綾)は詩音に声をかけるー


「こういう博物館も、たまにはいいものだねー」

詩音は、社会科見学で訪れている歴史博物館の展示物を

見つめながら、そんな言葉を口にするー


「ーー…そ、その顔の傷ー…ほ、本当に大丈夫ー?」

翔太(綾)がなおも心配そうに食い下がるー。


「ーははは。大丈夫さー

 それより、あっちの展示、見たかい?

 縄文時代のーー」


またもや話を逸らそうとする詩音ー


「ーーーー話を逸らさないでよー」

翔太(綾)が、悲しそうに唇を噛みしめながら言うー。


「ーーーその”顔”ー何があったのー?」

翔太(綾)の言葉に、詩音は表情を歪めるー


「ーはははーだから、転んだだけだよー」

詩音はそれだけ言うと、足早に立ち去ろうとするー。


「ーー…違うよねー…

 本当にそうだったら、倉守さんは、そんな風に

 話を逸らしたりしないー」


翔太(綾)が、そう言葉を口にすると、

詩音は立ち止まるー。


「ーーボクは、いいんだー。

 今では全然違和感ないし、慣れたって

 この前も言ったはずだよ?」


振り返りながら、そう言い放つ詩音ー


「ーーーーだったらー」

翔太(綾)は、悲しそうに詩音のほうを見つめるー


「ーだったらー、だったら何で”そんなに悲しそうな”顔をしているのー?

 だったらなんでー、この前、倉守さんのお母さんと会った時、

 僕が話を合わせるために、”倉守くん”って呼んだ時ー

 悲しそうにしてたのー?」


翔太(綾)はそう言い放つー。


思わず、”綾”の素が出てしまったものの、

元々、翔太の喋り方自体も、男っぽさ全開な喋り方ではないためー、

そんなに不自然な感じにはならずー、

詩音も特に気にする様子もなく、話を続けるー。


「ーーーーー…それは」

詩音が目を逸らすー。


そうー、この前、美術展の帰りに、詩音の母親・幸子と遭遇した際に、

翔太(綾)は、咄嗟に詩音に話を合わせて

”倉守さん”ではなく”倉守くん”と呼んだー。


けれどー

その時、詩音は唇をぎゅっと噛みしめて、

とても悲しそうな表情を一瞬浮かべていたー。


翔太(綾)は、それを見逃さなかったー。


「ーーー君は凄いなー。

 よく、周りを見てるー

 まるで”優しい女の子”みたいに、気配り上手だよー」


詩音はそれだけ言うと、

翔太(綾)は少しだけドキッとするー。


詩音の言う通り、”中身”は、女子だからー…。


「ーーーーー…ーーー…

 ボクだって、”こんなの”嫌に決まってるー…


 でもー、仕方ないだろ?

 家ではボクは”男”にならないといけないー。


 そうやって自分を偽って偽って偽って偽り続けるうちにー、

 ボクはもう、”こう”なっちゃったんだからー!


 ボクだって、福井さんみたいにいっぱい恋愛してみたかったし、

 高倉さんみたいにおしゃれだってしてみたかったし、

 星村さんみたいに、女子同士で友達を作って楽しく過ごしてみたかったー


 でもーーー

 ボクはーー、ボクはーーー」


詩音は、初めて翔太(綾)の前で感情を露わにしたー。

いつもクールで”爽やかな男子”みたいな振る舞いをしていた詩音が、

始めてー…


「ーーー倉守さんー」

翔太(綾)が悲しそうに詩音を見つめるー。


「ーー君に何が分かるのさー?

 家で”兄さん”として過ごしてないと、ボクはー」


詩音のそんな言葉に、翔太(綾)は

「ーー僕にだってーー…」と言いかけてハッとするー。


”そうやって自分を偽って偽って偽って偽り続けるうちにー、

 ボクはもう、”こう”なっちゃったんだからー!”


自分を、偽って偽って偽ってーーーー…

綾だって、そうー。

入れ替わってから1年ー。

ずっと、人前では”翔太”として過ごして来たー。


本当は、”女子”なのに”男子”として過ごして1年ー。

もうー、自然と口から”僕”と出るようになっているー。


だから、イヤと言うほど分かるー。

形は違っても、”わたしじゃない僕”を演じて来たのだからーー


「ーーわかるよ!!!」

翔太(綾)が叫ぶー。


「ーーーーー~~っ…」

詩音が目に涙を浮かべたまま、翔太(綾)を見つめるー


「ー分かる…僕には…僕には分かるんだよー…

 僕だってー……」


翔太(綾)は、一瞬”入れ替わり”のことを口にしそうになるも、

思いとどまって、詩音を見つめるー


「ーー”僕”は選べないー

 でも、倉守さんはーーー

 倉守さんはまだ”選べる”んだー


 進む道をー…!」


翔太(綾)は言葉を続けるー


確かに、お母さんのことは本当に大変だと思うー

けれど、だからと言って、”ずっとこのまま”でいいのー?と

必死に詩音に問いかけるー。


兄の和也に相談するなり、方法は色々あるはずー


それにーーーー


「ーー僕だってーー倉守さんがそうしたいならー、

 一緒に倉守さんのお母さんに話をするから!

 

 だからーー…

 そんな、そんな辛そうな顔で、自分を偽らないで!」


翔太(綾)がそう言うと、

詩音は心底驚いた様子で「ーーえ、遠藤くんーーー」と、

表情を歪めたー



「ーーー…あれ…?」

別の行動班で、偶然、同じ歴史博物館を訪れた

綾(翔太)が、翔太(綾)と詩音の姿を見つけて、

不思議そうに首を傾げるー。


がーー


「ーーしーーーーっ」

物陰に隠れていた哲真が、綾(翔太)を止めるー。


「ーーーえ?神田くんー?」

綾(翔太)が首を傾げると、

「ー今は、そっとしておいてやれー」と、哲真は

そんな言葉を口にするー。


綾(翔太)は戸惑いながら

頷くと、そのまま翔太(綾)と詩音の会話を

哲真と共に物陰から聞くー。



「ーーーーーボクだってー…

 ”普通”に過ごしたいさー……」


詩音が涙目で言うー。


「ーー…だったらー…

 倉守さんだってー…あの絵の”鳥”みたくなれるよー…!

 

 倉守さんは”選べる”んだからー!」


翔太(綾)はそう叫ぶー。


前に美術展を訪れた際に詩音は言っていたー。


”「ー鳥かごの中に囚われていた鳥が、自由を手にした瞬間を

 描いた絵だよー」”


とー。


詩音が好きな、あの絵と同じー


”倉守さんは自由になれるー”と、

そう、必死に叫ぶ翔太(綾)ー


「ーーーーーー…」

詩音の頬から、涙が床に零れ落ちるー。


「ーーーー………ありがとうー」

詩音は涙を拭きながら、そう言葉を口にすると、

「ボクーーー…頑張ってみるよー

 その変わりー」

と、言葉を続けながら、翔太(綾)のほうをまっすぐと見つめたー


「その変わりー…ーーー…

 君のことーーー…頼ってもいいかなー?」


詩音のそんな言葉に、翔太(綾)は

「ーーー当たり前だよー。僕たち”友達”なんだからー」と、

そんな言葉を口にしたー。


「ーーー……って、周りに誰もいなくてよかったー…

 他のお客さんの迷惑になっちゃうところだったー」

翔太(綾)が、明るい雰囲気を取り戻そうと、

そんな言葉を口にすると、詩音も笑いながら

「ははー、そうだねー」と、いつものように穏やかに言葉を口にしたー。



「ーーーはは…やるじゃんー」

哲真が物陰からそんな様子を見ながら、そう呟くと、

綾(翔太)は「ーーやっぱ星村さんは凄いなぁー…」と、

感心した様子で、二人の様子を物陰から見つめながら、

”でもーーー”と、

”僕の身体”と、”倉守さん”が親しくしているのを見て

少しだけ複雑な表情を浮かべたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


社会科見学は終わりー、

詩音は、兄・和也に連絡を取り、

自分の状況を素直に打ち明けたー。


そしてー、後日、

兄の和也は、わざわざ妹の詩音の

こっちの地方までやってきて、

共に、母・幸子と話をしてくれたー。


母は当然取り乱したー。


けれどーーーー


「ーー母さんーー

 ボクのことも、ーーー

 ボクのことも、ちゃんと見てーーー

 お願いだよー…」


詩音が必死に頼み込むー。


詩音から助けを求められて、兄・和也とも話を付けた上で

同席した翔太(綾)も、「お願いしますー」と、

詩音の母に頼み込むー


「ーーーーーーー……」

詩音の母・幸子は、しばらく口を閉ざしていたものの、

やがてー、

「今まで…ごめんねーーーー」と、

目に涙を浮かべながら、静かに詩音を抱きしめたー。


倉守 詩音は

ようやく、”鳥かご”から解き放たれて、自由を手にしたのだったー。


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数日後ー


「ーー改めて、お礼を言わせてほしいー」


美術部の活動が終わると、

翔太(綾)に対して、詩音がそんな言葉を口にしたー


「あ、あははー僕は全然ー…

 倉守さんのお兄ちゃんが、思ってた以上に頼りになる

 お兄ちゃんって感じだったしー

 僕はただいただけだからー」


翔太(綾)がそう言うと、

詩音は「それでも、ありがとうー」と、そう言葉を口にしたー。


「ーーー…どういたしまして」

翔太(綾)は素直にそう言葉を口にすると、

「ーーでも、ボクももう、これが染みついちゃったからねー…。

 すぐには変われないと思うけど、

 これからは自分に正直に生きることができそうだよー」と、

そう、照れくさそうに笑ったー。


”すぐには、変われないー”

その言葉に、翔太(綾)は

”わたしが元に戻ったときー、わたしは、すぐに”星村 綾”としてー

 普通に生活に戻ることはできるのかなー?”と、

改めて不安を覚えるー。


けれどー、今は”友達”が、自由になれたことを喜びたいー。

そう思いながら、詩音のほうを見て微笑むー。


やがてー…

校舎を出て、別々の帰り道を歩き出すと、

ふと、詩音が立ち止まって、翔太(綾)のほうを見つめたー


「ーーー君も”選べる”ようになるといいなー」

詩音が、それだけ言葉を口にするー。


詩音は、それ以上は聞かなかったー。


入れ替わりのことを、詩音は知らないだろうし、

流石に気づいてはいないだろうー。


けれどー、”翔太(綾)”にも、何か事情があることは

察したのかもしれないー。


そんな詩音に対して、翔太(綾)は少しだけ寂しそうに微笑みながらー

「ーうんー」と、そう答えるのだったー。


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「ーーーチッ…」


それから少しして、2年生最初の中間試験が行われたー。


不愉快そうに表情を歪めるクラス一番を目指す渡辺 大樹ー。


”僕は、一番でなくてはいけないんだー”

大樹は心の中で歯ぎしりをしながらそう言葉を口にするーー。


がー…大樹はこのクラスになってから、

腹黒女子生徒の守屋 智花の負け続けているー。


今回こそは、と、息巻く大樹ー。


そんな中、綾(翔太)はテストを受けながらあることに気付くー。


”ーー…やっぱり…入れ替わったころよりも僕ー…

 問題がさらにすらすら解けるようになっているようなー…”


綾(翔太)は、そんな異変を覚えるー。


元々、綾の身体になってからは”物覚え”が早かったー。

悔しいけれど”頭の回転”とでも言うのだろうかー。

頭の良い・悪いには”個体差がある”ということを

入れ替わった後に、イヤというほど実感させられたー。


そしてー…

1年以上、入れ替わったまま過ごしていた翔太は、

”綾の脳”を使うことに慣れ、最初よりもより、”頭を効率的に”

回転させることができるようになっていたー。


…それはー、翔太になった綾も同じー。

最初は”翔太の脳”を使っての勉強に苦戦していた翔太(綾)ー。


しかし、最近では”翔太の身体での勉強方法”をすっかり身に着けて、

今では安定した高得点を記録できるようになっているー。


既に、二人は”テストの点数は加減せずに、お互い好きなように勉強する”と、

最初とは違う方針でテストを受けていて、

当初のように”わざと点数を抑える”とか、そういうことは

しなくなっていたー。


「ーーー…くっそぉおおおおおおおお!!!」


テストの返却日を迎え、大樹が怒りの形相で机を叩くー。


「ーーーわたしが1位ですわー。

 平民の皆さんも、もっと頑張ってくださいねー」


転校生のお嬢様・神宮寺 真莉愛が”悪気なく”そう呟くー。

英才教育を小さい頃から受けて来た彼女は、成績も超優秀だったー。


がー、

”もっと頑張ってください”と言う言葉は、

真莉愛からすれば”何の悪気もないエール”のつもりだったものの、

ただの”嫌味”にしか周囲には聞こえていない。


「ーー神宮寺さんー…すごい!おめでとう!」

今まで1位を何度も取っていた守屋 智花が笑顔でそう言葉を口にすると、

「平民なのに2位の守屋さんもすごいですわ!」と、

真莉愛はパチパチと拍手をしたー


「ふふふ…ありがとー」

”表面上”は穏やかな優等生の智花が微笑むー


”な、なんか殺気が漂ってるような…?こ、こぇぇ…”

近くの座席でその会話を聞いていたお調子者の男子・栗原 誠一は

青ざめながら、智花と真莉愛のほうを見つめるー。


2人とも笑顔だが、目は笑っていないー。

特に、智花の方の目はヤバいー。

誠一は直感的にそんな風に感じたー。


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「ーーーただいま~~」

綾(翔太)が家に帰宅すると、

「ーお姉ちゃん!おかえり!」と、

制服姿の妹・美桜が姿を現すー。


綾の妹・美桜も今年から高校生ー。


翔太(綾)が”そっか~美桜も高校生かぁ~…”などと

寂しそうにしていたので、ついこの間、

綾(翔太)は制服姿の美桜の写真を、翔太(綾)に送っているー。


”妹”の”お姉ちゃん”ではなくなってしまうー…

兄弟のいない翔太にはその苦しみは分からないけれど、

綾のために、できる限り”美桜”との接点も持たせてあげたい、と

翔太はこれまでもずっと配慮を続けて来たー。


「ーー高校生活は、順調?」

綾(翔太)がそう言葉を口にするー。

1年も経つと、やはり”本当の妹”のようにかわいく思えて来るー。


「ーーうん!!順調順調ー!」

そう言葉を口にする美桜ー。


相変わらず、美桜は元気の塊のような子で、

その元気な振る舞いには、いつも綾(翔太)も癒されているー。


がーーー


「ーーー…あれ?美桜…それはー?」

綾(翔太)が、ふと、美桜の腕に見えた”痣”のような跡を

見つけてそう言葉を口にすると、

美桜は「え?あ、これはー、体育の授業で打ち付けちゃって!テヘッ」と、

照れくさそうに笑うー。


「ーあはは…美桜ってばー…気を付けてよ?」

綾(翔太)がそう言葉を口にすると、

美桜は笑いながら「お姉ちゃんと違ってわたし、ドジだしー!」と、

そんな言葉を口にして、そのまま部屋の中へと戻って行ったー。


「ーーーーーーーー」

部屋に入った美桜から”笑顔”が消えるー。


「ーーーーーー」

そして、少しだけ寂しそうに、一人「お姉ちゃんー」と、

言葉を口にしたー…。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


数日後ー。


「でも、あんたはよくやってると思うよー

 わたしだって、気付かなかったんだしー」


綾の親友・山井 穂乃果と喋りながら

部室に向かう綾(翔太)ー


「ーでも、綾の身体でカードゲーム部はちょっとな~…

 なんで、綾がカードゲーム部!?ってずっと思ってたけどー」

穂乃果が少しだけ不満そうに言葉を口にするー


「ご、ごめんー」

綾(翔太)が戸惑いながら謝罪の言葉を口にするもー、

穂乃果は「いいよいいよー。二人で話し合って決めたことなんでしょ?」と、

少しだけ笑うー。


「ーあ~でも、綾と入れ替わるんなら、わたしが

 入れ替わりたかったなぁ~」

穂乃果はそんなことを呟きながら、

「わたしが綾になったらーふふふ…」と、危険な笑みを浮かべるー


「ちょ、ちょっと、山井さんー」

綾(翔太)が苦笑いしながら言うと、穂乃果は「あははー冗談!」と、

手を振りながら「じゃ、部活がんばってー」と、

そのまま立ち去っていくー。


少しだけ笑いながら、綾(翔太)は、いつものように

カードゲーム部の部室に入るー。


そこには既に親友の哲真や、クラスメイトのイケメン男子・足立幸也ー、

それに、部長らがいつものようにカードを楽しむ姿があったー。


「ーーーお、星村さんー」

部長の石島恭一も、綾(翔太)に気付き、いつものように

手をあげて軽く挨拶をするー。


綾(翔太)も、いつものように挨拶を交わしながら、

今日もカードゲームを楽しもうとすると、

新入部員の松岡 啓二が、綾(翔太)に声をかけて来たー。


「ーー星村先輩って、部のエースみたいな扱いですけどー、

 実際、たいして強くないですよねー


 なんていうかー…部の唯一の女子だから、姫的な

 扱いを受けているだけっすよね?」


入部当初から、”綾”をなぜか目の仇にする啓二は、

そんな言葉を口にしたー。


「ーーーえ…わ、わたしはそんなー…

 姫とか、女とかじゃなくてー…

 ただ、カードが好きなだけー」


綾(翔太)は、”まぁ、僕、中身は男なんだけどー”と、

思いながらそう言葉を口にすると、

啓二は綾(翔太)を鼻で笑ったー


「ーどうせ、男子に囲まれて姫みたいな扱いをされて、

 自分に酔ってるんじゃないですか?


 ー自分がチヤホヤされるためだけに

 カードゲームを穢さないでほしいなぁ」


啓二のそんな言葉に、部長の恭一が「おいっ!松岡くん」と、

啓二を止めようとするー。


がー


ムッとした綾(翔太)は

「ーそんなこと言うんだったらー

 わたしと勝負してみる?」と、自分のカードを手に

言葉を口にするー


「ーおい、あんなやつほっとけ」

哲真が小声でボソッと、綾(翔太)に言うと、

綾(翔太)は「ーー神田くんーごめん。でも、心配しないでー」と、

それだけ言い返すと、

哲真とクラスメイトの幸也が見つめる中、

まだ、一度も勝負したことのない新入部員・啓二に勝負を挑んだー。


「ーははは

 ”お姫様”の癖に、俺に勝てるとでもー?

 俺は、中学の頃は大会にも何度も優勝してますー

 遊び半分の星村先輩とは違うんですよ」


啓二のそんな言葉に、綾(翔太)は、さらにムッとしながらも、

それを受け流して、生意気な後輩部員との勝負に臨むのだったー



㉙へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


★2-Cの日常★


”人生なんて、死ぬまでの暇つぶしー”

翔太たちのクラスメイトの一人、藤沢 孝弘は

ずっとそう思って来たー。


どうせ、人は最後には死ぬー。

小さい頃、近所に住んでいた大金持ちのおじさんが

孤独死し、嘔吐物を垂れ流して死んでいた姿を見てしまった彼は、

そんな考えを持って、これまで生きて来たー。


がー


「ーーー…ーーーー」

放課後ー、テストで”2位”になって、転校生のお嬢様・

神宮寺 真莉愛に煽られるようなことを言われて、

一人激高しているクラスメイト・守屋 智花を偶然見かけて

孝弘は笑みを浮かべるー。


「ーーー今のクラスは、ホント、暇つぶしになるなー」

そう呟く孝弘ー


普段は穏やかな優等生の守屋 智花ー。

ほとんどのクラスメイトは、彼女の”裏”に気付いていないだろうー。


しかし、孝弘は知っているー。

かつて、不良男子の柳沢祐樹をはめた時も、智花は

裏で色々と手をまわしていたー。

彼女は、”表”と”裏”があまりにも激しすぎるー。


どうやらー、自分は表裏の激しい女子が好きなようだー。


そんな風に思いながら孝弘は、

「ーあの生意気なお嬢様ー…今度は絶対に潰してやるからー!」

と、一人で悔しそうに呟く智花の姿を、気付かれないように見つめるとー、

「ーー怖い怖いー」と、満足そうに笑みを浮かべながら

そのまま智花に声をかけることなく、立ち去って行ったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


今年の長編はこれで最後ですネ~!☆!

来年も引き続き「僕とわたしの不思議な青春」を、執筆していきます~!☆

ぜひ楽しんでくださいネ~!☆


長編はこれで(今年)最後ですが、

更新は、もちろん年末年始も休みなしで毎日更新なので、

欲望のひと時を楽しんでいただけると嬉しいデス~!


今日もありがとうございました~!☆!


★関連話★

(※こんな話あったの、いつだっけ?という場合の参考にして下さいネ~)

倉守さんの過去 ⇒第10話、第27話

藤沢 孝弘の過去 ⇒第19話

カードゲーム部の後輩の初登場 ⇒第27話

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