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彼女の香織は憑依されているー。

そのことを知ってしまった光昭は命を狙われることになったー。


が、光昭の命を狙っていたのは、香織ではなく、

光昭の幼馴染であり、光昭に好意を抱いていた晴美のほうで、

秘密を盗み聞きしていた晴美は、罪を香織に押し付けて

光昭と香織の仲を引き裂こうと目論んでいたのだったー…。


しかし、

全ては、解決ーーーしたかのように見えたその日の夜ー、

光昭の背後には再び不気味な影が迫っていたー。


そうー

光昭の命を狙っていたのは”晴美”だけではないー。

”もう一人”いたのだー…

その邪悪な影が、光昭に迫るー…。


☆前回はこちら↓☆

<憑依>知らないほうがいいこともある③~真相~

彼女の香織が、何者かに憑依されているー。 そんなことを知ってしまった光昭は、 その直後から、”命”を狙われ始めることになるー。 執拗に命を狙われる中、光昭は何とか 香織に連絡を取ると、 ”ちゃんと話をしたい”と、話をする約束を取り付けるー。 ”香織は、本当に香織なのかー” そんな、疑問を抱きながら香織に指定さ...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


鉄パイプを手に、バイクに乗りながら

帰宅中の光昭に迫る人物ー。


以前も、光昭を一度襲撃した

フルフェイスヘルメットの人物だー。


「ーーー!」

光昭も、バイクの音に気付き、咄嗟に振り返るー。


すると、そこには鉄パイプを地面にこすりつけながら

音を立てて、向かってくるバイクの姿があったー


「ーぐっ…く、くそっ!」

慌てて何とかそれを回避する光昭ー。


勢い余ったバイクはそのまま近くの壁に激突しー、

運転していた人物は、その直前にバイクを飛び降りて

光昭のほうを見つめたー


「あ、あんたは、誰なんだー」

光昭がそう声をかけるー。


しかし、フルフェイスヘルメットの人物は答えないー。


前回失敗した反省を生かしてか、今度は

折り畳みのナイフを手にしているその人物ー


「ーーー…」

光昭は身構えるー。

が、自分はあくまでも普通の男子大学生だー。

ナイフを手にした相手に素手で立ち向かって

どうにかできる自信は、正直なところ、ないー。


「ーーー…ぬ、沼津さんじゃないよなー…?」

幼馴染の晴美の名を呼ぶ光昭ー。


正直、”こんな予感”はどこかでしていたー。


香織の秘密を知ってから”命”を狙われてきた光昭ー。


が、バイクで襲撃のような”本格的に命を狙う”

ような行為もあれば、

学校内で”滑る何か”を床に撒いて転倒させてきたり、

ボールが飛んで来たりするような

”悪質な子供のイタズラ”とでも呼ぶべきだろうかー

そんな行為もあって、

光昭は少しだけ疑問を感じていたー。


その”差”がありすぎるー、とー。


当初、晴美が犯人だと聞かされた時には

光昭は”学校内では過激な行動を控えていたのだろう”と、

そう判断していたが、違ったー。


”犯人”は二人いたのだー。

晴美がやっていたのは、学校内での

悪く言えば”低レベル”な嫌がらせとでも言うべき行動の数々ー。


しかしー、

今、目の前にいる人物は違うー。

本気で、光昭を殺しにかかってきているー。


「ーーー死ね」

”男”だー。

初めて声を発した相手ー。

その声は”男”の声だったー。


ナイフを手に、近付いてくるヘルメットの男ー。

光昭は咄嗟に抵抗しようとするも、格闘技のような技を

叩きこまれて、すぐに地面に叩きつけられてしまうー。


「ー安心しろ。一撃で楽にしてやるー。

 せめてもの情けだー」

男はそう言うと、ナイフで人間の弱点を引き裂こうと、

ナイフを光昭の方に向けるー。


「ーぐっ…や…やめろ!」

光昭がそう言いながら、ヘルメットに覆い隠された男の

ほうを見つめるー。


しかしー、もう成す術はなにもないー。


”ーーーこんなところでー…俺は死ぬのかー”

光昭はそう思いながら目を閉じるー。


がー、その時だったー。

突然、男の身体が後ろに引っ張られるーー。


「なっ!?」

男が驚いた声を上げると、

背後から、ヘルメットの男を引っ張った人物が

男のナイフを正確に蹴り飛ばしー、

ナイフは音を立てて路上に転がったー。


「ーーー…!!」

倒れていた光昭が身体を起こすとー…

そこには、香織の姿があったー


「か、香織ー!?」

光昭が驚くー。


ヘルメットの男から光昭を救ったのは、

”憑依されている彼女”の香織だったのだー。


「ーーーー光昭ー間に合ってよかったー

 怪我はない?」


いつものように微笑む香織ー。


「ーーあ、あぁ…ちょっと手を擦りむいたぐらいー」

光昭が苦笑いしながら言うと、

香織はにこっと微笑んでからー

「ーちょっと、少しの間、ごめんねー」とだけ言葉を口にすると、

笑顔を消してヘルメットの男のほうを睨んだー


「ーーー…何のつもりだー?”近藤”ー」

香織が口調を豹変させて、鋭い言葉をヘルメットの男に投げかけるー


”ごめんね”と言ったのはー、

素を見せることに対してのようだー。


「ーーー…こ、近藤ー?」

光昭が少し離れた場所で呟くー。


”「ーでも、あのバカがー…

 …ううん、ごめんー。

 わたしのことを知る”近藤(こんどう)”が、

 わたしのスマホに連絡してきたのを、光昭は見てしまったー」”


近藤ー

そう、香織が言っていた男の名だー。

香織に憑依している男の旧友で”憑依”を唯一知る人物ー。


”憑依して今日でちょうど3年だなー。その女の身体はどうだ?”

と、メッセージを香織のスマホに送って来ていた人物ー。


光昭の命を狙っていたー

いや、”本格的に命を取りに来ていた”のは、

この近藤だったのだー。


「ーーーーク…ククククー

 なんだなんだ?彼女ごっこでもしてんのかー?」

光昭を襲撃した男が笑いながらヘルメットを脱ぎ捨てるー。


白髪交じりの鋭い目つきの男だー。

この男が”近藤”なのだろうー。


「ーー誰が、彼を殺せなんて言った?」

香織が不満そうに言うと、近藤は笑うー


「おぉ、おぉ、怖いなぁ

 そんな可愛い子にそんな怖い顔させちゃだめだろ?」


近藤はそこまで言うと、

香織の方に向かって歩きながら言葉を続けるー。


「別に、言われてはねぇけど、俺のミスでお前の憑依が

 知られちまったー。

 だから、大事になる前に責任を取って”処理”しようとしただけじゃないか」


近藤がそう言うと、

香織は「そんなこと必要ないし、頼んでもないだろ」と、

近藤を睨みつけるー


光昭は、そんな様子を見つめながら

”いつもとまるで違う香織”の姿を見て、

改めて、香織は憑依されていることを確信するー。

自分と出会う前から、憑依されていた、ということをー。


「ーーーククククーー

 それにしてもー、随分可愛くなっちゃってまぁ」


近藤は笑いながらそう言うと、香織の胸に突然手を触れるー


「ーっ」

香織が不意打ちに少しだけ驚いた表情を浮かべると、

近藤は「お?今、感じちゃったりしたのか?」と、笑みを浮かべたー。


なおも、近藤を睨みつける香織ー。


今度はしばらく香織を見つめていたものの、

やがて「まぁいいー。あのガキを処理するー」と、ナイフを拾って

再び光昭の方に向かおうとしたー。


がーーー


香織が、近藤の腕を掴んだー


「ー光昭には絶対手出しさせないー」

とー。


「ーーあぁ?お前、何、”心”まで女になってんだよ?あぁ????」

近藤が不満そうに声を荒げるー。


「だったら、お前も一緒に殺してやる!」

そう叫んだ近藤は、香織の首を絞め始めるー


しかしー、

香織は咄嗟に近藤の急所を蹴りつけると、

そのまま普段とはまるで別人のような動きで、

近藤に体術を仕掛けていくー。


「ーーか…香織ー…!」

光昭は、香織が自分を守るために戦ってくれている姿を見つめるー。


もう、香織の中身がどうとか、今、この瞬間はどうでもよかったー。

只々、香織が無事であって欲しいー。

そう願いながら、自分にも何かできないかどうか、光昭は周囲を見つめるー。


「ーーククククー、俺はお前のために海外の取引先から

 その怪しげな憑依薬を取り寄せてー、

 お前のために、憑依後もずーっと、ずっと黙っててやったんだー

 それなのになんだー?」


近藤はいつの間にか拾っていた鉄パイプで、香織に襲い掛かりながら

そう言葉を口にするー


香織が、いつもとは別人のような鋭い目つきで近藤を睨みながら

戦いを続けて居るー


「ーまさかお前、”女”としてあんなガキに惚れちまったんじゃないだろうなー?

 へへっ 本気かよー?

 お前、言ってたじゃねぇかー

 女になったら、女同士で色々楽しみたいってよ!」


近藤のそんな言葉に、香織は攻撃を防ぎながら言うー。


「そうだよー。

 今の俺は、もうこうやって、男”として喋ってる自分が、

 心の底から大っ嫌いなんだよー」


香織がそう言い放つと、近藤は笑うー。


「ーへへへへ、身も心も”香織ちゃん”ってか?笑わせるぜー」


近藤がそう言いながら鉄パイプを振り上げるー。


がーー

香織は近藤に格闘技のようなものを叩きこむと、言葉を発したー。


「ーー今の俺はーー

 いいえ、わたしはーーー

 光昭のことがー大好きなの!!!」


そう言い放つ香織ー。

一撃を喰らい、倒れる近藤ー


「ーーーー」

光昭は、そんな様子を呆然としながら見つめるー。


「ーーー…光昭ー…

 ご、ごめんねー

 こんな姿、見られたくなかったのにー」


香織が恥ずかしそうにそう呟くとー、

光昭は、照れくさそうに「何もできなくてごめんー」と、

言葉を口にしてからー

「助けてくれて、本当にありがとうー」と、

そんな、お礼の言葉を口にしたー。


香織は、晴美の件が解決したあとに、

”本当に、あの子”だけ”の仕業なのかなー?”と、何となく疑念を抱き、

光昭の周囲を警戒していたのだと言うー。


そしてー、”近藤”に襲撃された光昭をこうして救出することが出来たー。


「ーーーーー…か、葛城ィぃ…」

倒された近藤が苦しそうにそう言葉を口にするー。


”香織”に憑依している人物の名前は”葛城”と言うのだろうかー。


けれどー…

”葛城”と呼ばれた香織は少しだけ寂しそうに笑うと、

近藤のほうを振り返って、意を決したように言葉を口にしたー。


「ーーわたしは杉咲 香織ー。

 ーー”葛城”は、もうこの世にいないー」


とー。


”過去の自分”との決別ー。

香織に憑依した男・葛城 政義(かつらぎ まさよし)は

この日ー、過去の自分を完全に捨てることを決意したー。


もう、迷わないー。

もう、戻らないー。


「ーーー……っ…」

近藤は表情を歪めると、悔しそうにしながら、

”香織”のほうを見つめるー。


「ーーー変わっちまったなお前はー…

 その女の身体を乗っ取って、喜んでた頃のお前はー…


近藤はそう言葉を口にすると、

小声で”バカがー”と、呟いてから、

今一度香織を、そして光昭を睨みつけたー。


「ーーー今のお前には失望したよー

 興覚めだー。

 小娘ごっこをしてたきゃ、勝手にしろー」


近藤は、香織にそんな言葉を投げつけると、

今度は光昭の方を見つめたー。


「ーーその女がどんな好きでも、

 所詮、”中身”は男だー

 お前はいつか、必ず後悔するぞー…」


そう、言葉を発しながらー。


だが、近藤の言葉に、光昭は少しだけ笑うと、

「後悔なんてしないー。絶対にー」と、

強い決意を胸に、そんな言葉を口にしたー。


「ーーーーーー」

近藤は、二人を改めて見つめるー。


”「別に、言われてはねぇけど、俺のミスでお前の憑依が

 知られちまったー。

 だから、大事になる前に責任を取って”処理”しようとしただけじゃないか」


「そんなこと必要ないし、頼んでもないだろ」”


近藤は、香織に言われた言葉を思い出すー。


近藤が光昭を殺そうとしたのはー、

”自分のミスで憑依のことを知られてしまったからー”だ。

香織に憑依している”葛城”も、それを望んでいるとそう思ったからだー。


自分が、光昭を始末して、

香織に憑依した葛城は”今まで通り”誰にも憑依を知られることなく

生きていくー。

そういう環境を作ろうとしたからだー。


もし、数年前だったらー、

香織に憑依した葛城が確実に”消せ”と言ったー。


がー、香織として何年も過ごしてー

彼は変わったのだろうー。


”俺の知るお前は、もういねぇってことだなー”

近藤は心の中でそう呟くと、

少しだけ苦笑してから、二人に言葉を口にしたー。


「”普通の大学生のカップル”に用なんざねぇー…

 どうやら人違いだったようだー。邪魔したなー」


近藤はそう呟くと、痛む身体を押さえながら、

倒れたままの自分のバイクを起こすと、香織の横を通り過ぎる際に

静かに言葉を口にしたー


「ー好きにしなー

 俺とお前はもう”絶交”だー」


とー。


香織は、近藤のほうを少しだけ見つめるー。


だが、近藤の表情は意外にも穏やかだったー。


”絶交”ー

俺はもう関わらないから、好きに生きろ、と

そんなメッセージー。


「ーー……」

香織は少しだけ微笑みながら頷くと、

近藤はそのまま何も言わず、バイクに乗って走り去っていったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


全てが終わりー、

光昭と香織の関係は”今まで通り”ー


あれから、光昭は”憑依”のことを何も聞かずー、

香織も”憑依”のことは何も語らなかったー。


幼馴染の晴美は、光昭を避けるようになってしまったものの、

それ以上は何もして来なかったー。


やがて、大学を卒業し、光昭と香織は結婚したー。

子供も授かり、幸せな家庭を築き上げた二人ー。


そしてー、光昭は”香織の両親”にとても親切にしー、

香織の両親が世を去るまで、とにかく全力を尽くして

義理の母と義理の父を支えたー。


”娘さんを奪っちゃってごめんなさいー”

光昭には、そんな思いがあったー。


”本当の香織”は、憑依されて人生を奪われてしまったー。

光昭は、それを知った上でそのまま付き合いを続けて、結婚したー。

光昭と出会った時点で、香織は既に憑依されていて、

光昭にとっては”今の香織こそが、香織”だったー。

あの件で、”今の香織”に悪意はないことは分かったし、

その後も、強い信頼関係で結ばれているー。


とは言え、”本当の香織”が人生を奪われた被害者であるのは事実。

”もう抜け出せない状態”だとも聞いたし、

どうすることもできないとは言え、それでも周囲の人を

騙し続けているのは事実ー。

けれど、だからと言って”香織は憑依されている”なんてことを

周囲に伝えれば、周囲を傷つけるだけー。


だから、光昭はせめてもの償いとして

”香織の両親”を死ぬまで笑顔でいさせてあげたいー、と

そう思い、一生懸命に尽くしたー。

香織もそれを理解し、何も言わずに、一生懸命親孝行をした。


それが、一人の人生を憑依で奪った”責任”だと信じてー。


やがてー、香織の両親は寿命を全うし、この世を去ったー。


そしてー、もう一つー。


今日も仕事を終えて、家に向かいながら光昭は思うー。


”いつの日か、自分たちも寿命を迎えるその日が来たらー”


本当の香織に謝りたいー。

絶対に許してはくれないだろうけれど、

”本当の香織”を憑依で奪った”今の香織”と一緒に、

精一杯、本当の香織に謝りたいー。


そのためにも、命ある限り、今は一生懸命人生を生き抜いて、

”奪ってしまった人生を背負うもの”として、

精一杯頑張っていきたいー。


「ーーただいまー」

帰宅する光昭ー。


家の中から、香織と二人の子供が出迎えるー。


光昭は穏やかに微笑みながら、

”今の香織”の人の身体を奪った罪も、秘密も含めて

何もかもを一緒に背負って生きていくことを

改めて、心の底から誓ったのだったー。



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


2人の間柄が引き裂かれることなく、

無事に結ばれるエンドの結末でした~!☆


憑依されてしまった

香織本人からしてみたら、バッド以外の何物でもないですケド…☆


ここまでお読み下さりありがとうございました~~!☆

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Comments

たそがれ

憑依されてる事を知ってて、その上でその相手を受け入れちゃうのって、見方によっては、憑依人の共犯者みたいな物ですよね。 いくら謝ったところで、許される訳ないし、偽善としかいいようがない気がします。 それにしても、このタイプの話って、女側が男に憑依されてるみたいなパターンばかりで、男側が女に憑依されてるとかみたいなパターンはあまりないですよね。 彼氏の中身が元女の憑依人で、それを受け入れる彼女みたいな話も面白そうな気がします☆ あるいは、彼氏も彼女も両方それぞれ憑依されてるみたいな憑依人同士のカップル(お互いに憑依してることは知らない感じで)というのも面白そうですが。

無名

いつもありがとうございます~!☆ そんな感じで悩むお話(共犯みたくなっちゃう部分で…)も以前書いたような記憶があります~笑 確かに、彼氏側がそういうことになっている パターンのお話は私の作品の中ではなかったような…★ それを書いてみるのも確かに面白いかもですネ~!