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”姫百合青果店”ー。


1年ほど前にできたそのお店は、

昔からその場所に存在する黒原青果店を廃業寸前にまで

追い込むほどの人気ぶりを見せていたー。


しかしー、

”異様に”繁盛する姫百合青果店ー

そのお店の野菜には、”人を支配する寄生虫”が仕込まれているー。


そうとは知らずにそれを口にしてしまった妻・優美香は豹変ー。

困惑した夫・誠太は、姫百合青果店のことを調べ始めるー。


しかし、その先に待っていたのはー…


★前回はこちら↓★

<寄生>虫食い野菜①~潜みし者~

「クククククー…」 その八百屋の野菜には”寄生虫”が忍び込んでいるー。 「ーーーさぁ、行っておいでー」 笑みを浮かべながら、野菜に寄生虫を置くー。 寄生虫は、レタスの中にー、キャベツの中にー、 そして、トマトの中にー、 色々な野菜の中に潜り込んでいくー。 人間の目には”やっと”見えるか見えないかぐらいの 小さ...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーー」

白菜を丸かじりしながら、笑みを浮かべる優美香ー。


帰宅した誠太は、戸惑いの表情でそんな優美香を見つめるー。


「ーんふふふふふ…ふふふふふふふふ」

野菜を散らかしながら、野菜を食べ続ける優美香ー。


「ー優美香ー……正気に戻ってくれー…頼むー」

誠太は、たまらずそんな言葉を呟くー。


優美香だけではないー。

あの姫百合青果店で購入した野菜を食べてからおかしくなった人間は

”他”にもいるー。

そのことを知った誠太は、姫百合青果店の”野菜”あるいは

お店に何かあるのではないかと、そう考えていたー。


明日はちょうど、”彼女の様子がおかしくなった”男子大学生と

直接会って情報を交換することになっているー。

何か、ほんの少しでもいいー。優美香の異変の原因に繋がることが

分かればー


「ーーーーーー」

優美香は、バナナをくちゅくちゅと舐めながら

笑みを浮かべているー。


妙にイヤらしくバナナを舐める優美香ー。


クスッと笑いながら、

「男って、こういうの好きなんでしょ?」と、

優美香が笑みを浮かべるー。


「ーー優美香ー…」

呆然とする誠太ー。

今、目の前にいるのは、優美香であって優美香ではないー。

確実に”何かが”おかしいー。


「ーーーーーーーー…」

そんな中、優美香はピクッと震えると、笑みを浮かべるー。


そしてー、台所の方に置かれていた

トマトを手にすると、優美香は笑みを浮かべたー。


「ー誠太ー…このトマト、美味しいよー?」

優美香が笑いながら、トマトを誠太の方に近付けてくるー。


バナナを時々ペロペロと舐めながら微笑む優美香ー。

行儀も悪いし、ポタポタと唾液を垂らしたりしていて、

”見るに堪えない”姿だー。


「ーー…ーー…い、いいよー。俺は」

誠太がそう言うと、優美香はさらに誠太に対してトマトを

近付けてくるー。


「いいから、食べなよ」

とー。


「ーいいって!」

誠太は、イヤな予感を感じながら顔を背けるー。


”ーーチッー 頑固な人間だなー”

優美香に”寄生”している寄生虫がそう呟くー。


姫百合青果店の野菜”すべて”に寄生虫が潜んでいるわけではないー。

そのため、優美香が野菜を買って来た際にも、

”寄生虫が潜んでいる部分”を食べた優美香だけが支配され、

誠太は無事だったー。


だがー

この”トマト”には寄生虫が忍び込んでいるー。


”主”からの命令で、

誠太を支配するためにー。


「ーーいいから、食べなさいよー。美味しいから」

優美香が不機嫌そうに、誠太の腕を掴むー。


しかし、誠太は「いいって!何でそんな無理に食べさせようと

するんだよ!」と、必死に叫ぶー。


「ーいいから、食えよ」

優美香が真顔でそう言い放ったー。


「ゆ…優美香ー」

誠太はビクッとして優美香を見るー


「食えって言ってんだよー…人間!」

優美香に寄生している寄生虫は、

優美香のフリをするのも忘れて、そう言葉を口にするー。


「ーーー…ーお前…だ、誰だー…!

 ー優美香は…優美香はそんな喋り方しない!」


誠太は咄嗟にそう言い放つー。

今までも、優美香の振る舞いに異変は感じていたが、

たった今、”無理矢理トマトを食べさせようとしてくる”優美香を見て

確信したー。

これは、優美香じゃないー、とー。


「ー誰ってー???

 ふふふふー… 優美香に、決まってんじゃんー」


優美香は少しハッとした様子でそう言うと、

「ーいいから、トマトを食えって言ってるの」

と、無理にぎこちない笑顔を作りながら、

脅迫じみた口調でそう言い放ったー


「ーーーーー」

誠太は、そんな優美香を見つめながらー…


「じゃあ、食べるよ」と、

トマトを受け取るために手を伸ばしたー。


そしてーー

優美香からトマトを受け取ると同時に、誠太は

玄関の方に向かって走り出したー


「ーなっ!?」

優美香が驚くー。


「ーーー優美香…!必ず元に戻してやるからなー…!」

誠太はそれだけ言うと、トマトを手にしたまま、家から飛び出すー。


”ーあんなにムキになって、俺にトマトを食べさせようとする理由はなんだー?

 このトマトに、何かあるとしか思えないー”


誠太はそう思いながら、トマトを手にしたまま

今日はもう夜遅い、と、近くのビジネスホテルを探し当てて、

そこで一晩を過ごしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


男子大学生との待ち合せ場所に向かう誠太ー。


そこにやってきた男子大学生は、公之(きみゆき)と名乗ったー。


だがー、公之は笑いながら言ったー。


「ーすみませんー。どうやら、俺の勘違いだったみたいでー」

公之の言葉に、誠太は「え?」と言葉を口にするー。


彼女の様子がおかしいという件も、

彼女がレタスを生で食べていたという書き込みも、

勘違いだったと、公之が突然言い出したのだー。


「ーーー…そ、それは、どういうー?」

誠太が言うと、公之は「俺、彼女と少し前に喧嘩しちゃいましてー。

それで、彼女、不機嫌になって俺の気を引こうとしてたみたいでー」と

説明し、”昨日、仲直りして、誤解だったと気付いた”と、そう説明したー。


イマイチ、釈然としないまま、公之と別れる誠太ー。

誠太は仕方がなく”トマト”を手に、そのまま歩き出したー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーただいま」

虚ろな目のまま彼女・愛の家にやってくる公之ー。


まるで、悪女のような格好をした彼女・愛(あい)が

不気味な笑みを浮かべながら

「おかえり。わたしのしもべー」と、ニヤニヤしながら

公之の頭を撫で始めるー。


”レタスを丸かじりし始めた彼女”・愛は

寄生虫に寄生されて以降、女王のような振る舞いを

するようになってしまったー。

愛に寄生した寄生虫の”趣味”なのだろうー。


そしてーー

昨晩、”愛”に寄生している寄生虫は”主”からの連絡で、

彼氏の公之が”誠太”に会おうとしていることを知り、

口に含んだ寄生虫入りの野菜を、突然キスしながら、

公之の口の中に送り込んだのだー。


「ーーーふふふふふふ…

 あなたはもう、永遠にわたしのしもべー」

眼鏡をかけた物静かな女子大生だった愛は、もういないー。

女王様のように高飛車で妖艶になった愛に、

”寄生された公之”は、まるでペットのように這いつくばって、

只々、撫でられながら喜びの表情を浮かべたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


誠太は”次”の行動に出ていたー


「このトマトを調べてくれ」

誠太の言葉に、誠太と同じ大学出身の友人・達也(たつや)は

表情を歪めるー


「ーいや、確かに俺の職場なら調べられるけど、何でー?」


”食品の成分分析”などを行う企業に就職した友人を頼り、

”トマト”の中を調べようとしていたのだー


「ーー…このトマトを売ってた八百屋の野菜を食ってから

 優美香の様子がおかしいんだー。

 頼むー。調べてくれないかー?」


誠太が必死に頼み込むと、友人の達也は少しため息をついてから

「わかったー。お前の頼みなら」と、そう言葉を口にしたー。



そしてーーー

”寄生虫”が、トマトの中から発見されたー。


”人の脳に巣くい、人を支配することが出来る”

そんな、寄生虫がー。


海外の奥地で、数十年前に一度だけ目撃情報が寄せられたことのある

”伝説の寄生虫”とも呼ばれる存在で、

友人の達也によれば”これ…食ったらやばいぞー…?寄生虫に乗っ取られる”

とのことだったー。


これで、確信したー。

優美香は”寄生”されてしまったのだとー。

そしてー、姫百合青果店の店主・萌奈はこの寄生虫を

何らかの目的で野菜の中に忍び込ませて、客を支配しているのだとー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


誠太は、黒原青果店を訪れていたー。


「き、き、き、寄生虫ぅ?」

驚く店主の宗吉ー。


「はいー。姫百合青果店の野菜の中に寄生虫が確認されましたー。」

そう言いながら、誠太は顔馴染みの青果店の店主・宗吉に

そう言葉を口にするー。


「じ、じゃあ、何だー

 そ、それを使って、寄生させた人間を自分の店の客にしてー…

 それでー繁盛させてるってことかいー?」


宗吉は唖然とするー。


誠太は、通りの向こうにある姫百合青果店を見つめながら

「ーー…分かりませんー」と、答えるー。


”姫百合青果店”が、野菜に寄生虫を仕込み、

人に寄生させている理由は分からないー。

だが、寄生された優美香は、寄生されてから

妙に姫百合青果店に通うようになったのは事実だー。


やはり、集客が目的なのだろうかー。


「ーーじゃ、お、大塚の親父もー」

少し前に、”近所のラーメン店の店主も向こうに行くようになっちまった”と

愚痴っていた宗吉がそう呟くー


「恐らくはー」

誠太がそう言うと、宗吉は「ー…そういうことならー」と、

怒りの形相で「誠太くん!俺も一緒に姫百合に行くよ」と、

声を上げたー


「え?で、でも店はー?」

誠太が戸惑いながら言うと、「店番は娘に任せるから大丈夫さ」と、

宗吉は笑いながら、「お~い!」と、自宅になっている

2階部分に向かって叫ぶー。


宗吉の娘・誉(ほまれ)が降りて来ると、

宗吉は「少し俺は誠太くんと一緒に用事があるから」と、

そう呟いたー。


娘の誉に店を任せ、誠太と共に姫百合青果店にやってきた宗吉ー。


「ーーいらっしゃいませ~!」

店主の萌奈がいつものように笑顔で微笑むー。


誠太は、そんな萌奈を見つめると、

「ーー…この店のトマトから”寄生虫”が検出されたんですがー…

 何か、ご存じですか?」と、そう言葉を口にしたー。


「えっ!?寄生虫ー?何ですかそれー」

萌奈は余裕の表情で微笑むー。


”あくまでも、とぼける気かー”

誠太はそう思いながら、友人の達也から貰った調査記録ー、

そして、”姫百合青果店”で野菜を購入して食べた人が

豹変したというネットの書き込みのいくつかを、

そのまま萌奈に見せつけたー。


「どういうつもりなんだー? え?」

黒原青果店の宗吉は、戸惑いの表情を浮かべながら尋ねるー


しばらく、誠太から受け取った資料に目を通していた萌奈ー。


が、萌奈は「し、知りません!」と、表情を歪めながら

資料を突き返して来たー。


「俺の妻は、ここの野菜を食べてからおかしくなったんです!

 知らないなんてことはないはずですよ? 

 元に戻す方法を教えてください!」


誠太がそう叫ぶー。


が、萌奈は「ほ、本当に何も知らないんです!」と、

困惑の表情を浮かべるー。


萌奈は、”おばあちゃん”が農家として野菜を作っていて、

小さい頃から野菜や果物が大好きでー、

おばあちゃんを通じて知り合ったたくさんの農家の人たちの協力を得て、

”大好きな野菜と果物”を売るこの”姫百合青果店”を作ったのだと言うー。


「ーわたし、野菜と果物が大好きなんです!

 大好きなものに、そんな…寄生虫なんて入れると思いますか!?」

萌奈が涙目で叫ぶー。


「ーーそんなお涙頂戴な話をされてもー…こっちも困るんだよ!」

黒原青果店の宗吉が困惑した様子で叫ぶー。


「ーーわたしは、わたしは絶対に知りませんー!」

萌奈はなおも、そう叫ぶー。


結局、話は平行線を辿り、萌奈はついに最後まで

寄生虫のことを”知らない”の一点張りだったー。



その日は、諦め、誠太はビジネスホテルへと戻ると、

”早く、優美香を助け出さないとー”と、

何とかこの状況を打開する方法を考え始めるー。


証拠を突き付けても、店主の萌奈があの状況だとー、

あとはーー


「八百屋の場合はどこに連絡すればいいんだー…?

 保健所…?」


誠太は、そう呟きながら険しい表情を浮かべたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


その日の夜ー。


悲しそうな表情のまま、店を閉める萌奈ー


”姫百合青果店”の店主・萌奈は、

心底、野菜と果物が大好きでー、

今の時代にあえて青果店に挑戦しただけー。


寄生虫なんて、知らないー。


店の人気が出ていたのは、萌奈の人柄とー…

積極的に動画の配信や、現代的なことを一生懸命繰り返しー、

野菜と果物の質にも拘り、萌奈自身もたくさん勉強して

知識を身に着けたことによる”積み重ね”ー


寄生虫なんて、本当にー…

知らないー。


「ーーーへへへへ」

背後から声が聞こえて、萌奈が振り返るー。


「ー小娘が、”俺の店”を潰そうとするから、

 こうなるんだよー」

背後に立っていたのはー、

反対側の通りの”黒原青果店”の店主・宗吉ー。


「ーーーつ、潰そうとー…?わ、わたしはそんなー」

戸惑う萌奈ー。


宗吉は「ーお前の店のせいで、俺の店の売上は大変なことに

なってるんだ!潰そうとしてるのと同じことじゃないか!」と、

そう叫ぶー。


そしてーーー


「ーだから、先月から”あんたのところの野菜”に、

 ”可愛いうちの子”を、潜ませたんだー」


宗吉は笑いながら、”寄生虫”を手にするー。

野菜に潜ませているものより、少し大きめの寄生虫だー。


「ーーひっ…?」

萌奈が目に涙を浮かべるー。


「ーさ、さっきのは、あなたがー!?」

萌奈が昼間のことを思い出しながら叫ぶー。


「そうだよー。俺が娘を使って、あんたのところの野菜に

 寄生虫を寄生させてたのさー。

 ”あんたの店の悪評”を立たせるためになー」


宗吉は、それだけ言うと、

笑みを浮かべながらー、

萌奈の腕を掴むー


「ひっ!やめてください!」

怯えた表情を浮かべる萌奈ー。


がー、宗吉はそのまま持っていた寄生虫を萌奈の口の中に捻じ込んだー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


数日後ー


”姫百合青果店”に、複数の個所から通報を受けた

保健所や、警察官が訪れていたー。


誠太や、”他の被害者たちの家族”も通報しー、

姫百合青果店の野菜には”危険な寄生虫”が潜んでいると、

そんな話が広まったのだー。


「ーーふんー…そうよー。

 わたしが野菜に寄生虫を仕込んだのー」


笑いながら、開き直った態度を取る萌奈ー。

寄生虫に寄生され、支配されてしまった萌奈は

”わたしが犯人”だと、堂々と警察たちの前で言い放つー。


「ーーーーあ~~~あ、バレちゃったー

 ほら、さっさとわたしを逮捕でもなんでもすれば~?」

挑発的に笑う萌奈ー


「ーー萌奈ちゃん…!どうして!

 野菜と果物をあんなに愛してた萌奈ちゃんが…どうして!」

萌奈のことを可愛がっていた商工会の会長が悲しそうに叫ぶー


「ーふふ?どうしてー?

 野菜なんて、わたしにとってはただの金儲けの道具ー」


寄生虫に寄生された萌奈は、

自分の信念すら踏みにじる言葉を”嬉しそうに”口にするー。


「ーーうふふふふっ… うふふふふふっ 

 あはははははははっ♡」


連行されながら、集まった野次馬たちに指を突き立てて

笑みを浮かべる萌奈ー


萌奈はーー

”自分の店の野菜や果物に、禁忌の寄生虫を持った

 最悪の女店主”として、逮捕ー、

全国に悪女としてその名が知れ渡ってしまったーーー



”本当の黒幕”のことなど、誰も知らずにーーー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーへぇ、よかったじゃないかー。

 きっと、大丈夫さー」


後日ー。

お店にやってきた誠太に”いつものように”普通に

言葉を口にする宗吉ー。


宗吉はーー

数か月前ー、

海外から輸入した果物に”外来種”である”人を支配する寄生虫”が

潜んでいるのを知らず、それを食べてしまったー。


寄生虫に入り込まれ、寄生された宗吉は、

寄生虫と”取引”をしたー。


人間に寄生する手伝いと、繁殖の手伝いをする代わりにー、

”俺の店を潰そうとする姫百合青果店”を滅茶苦茶にしてやりたいー。

とー。


そして、宗吉は娘の誉を自身の身体の中で”繁殖”させた

寄生虫を使い、支配して、手駒にしたー。

誉を使い、姫百合青果店の野菜に寄生虫を忍び込ませ、

姫百合青果店の野菜を食べた人間の一部を支配させたー。

それが続けば、必ず”姫百合青果店の野菜を食べてから

身近な人の様子がおかしい”と言いだす人間が増えていくー。


案の定、そうなって、姫百合青果店の店主・萌奈は

落ち込んでいたー。

そして、最後に事件沙汰になる直前に、

萌奈自身に寄生虫を寄生させ、萌奈を支配、

”わたしが犯人よ!”と開き直らせて、

世間に萌奈を悪女だと知らしめて、

萌奈の店も、尊厳も、評判も、何もかもを奪い去ったー。


全ては、自分の店を守るためー。


常連客の誠太は、何も知らずに

「これから、優美香が入院中の病院にお見舞いに行って来ますー。

 まだ、寄生虫の駆除の方法は分かりませんけどー…

 いつか、必ず」と、宗吉にそんな報告をするー


「ーーははは、大丈夫さー。

 誠太くんは、いつも頑張ってるからなー

 きっと、いいこともあるさ」


宗吉がそう言うと、誠太は「ありがとうございますー」と、

言葉を口にしてから、

「でもーこれで、宗吉さんのお店もまた、繁盛しそうですねー」と、

何も知らないまま”姫百合青果店”のあった建物のほうを見つめたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


りんごを丸かじりしている優美香ー。


妻・優美香はまだ”寄生虫”に支配されたままー。

脳の中に入り込んでいる寄生虫を取り除くー、あるいは駆除する方法を

現在、警察と病院側が協力して探している段階ー


「ーー…毎日来るなんて、暇な人間ね」

優美香は呆れ顔でりんごをかじりながら、

汚らしく果汁を床に垂らすと、

お見舞いに来た誠太のほうを見つめるー。


「ーーー何とでも言えばいいさー。

 ーー優美香が元に戻るまで、俺は毎日ここに来るー」

誠太がそう言うと、優美香は鼻で誠太を笑いながら

りんごを再びかじり始めるー。


そんな優美香を見つめながら、誠太は

”絶対、助け出すからなー”と、

改めて優美香を元に戻すことを決意するのだったー


・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「♪~~~~」

競合店の”姫百合青果”が潰れて

鼻歌を歌い、ご機嫌な宗吉ー。


だがーーー


”ーーー夢は叶ったか?”

宗吉に寄生している”寄生虫の王”がそう言葉を口にするー。


寄生虫たちにテレパシーのような力で情報を共有していたのは

宗吉に寄生しているこの”王”ー

他の寄生虫たちからは”主”と呼ばれているー。


「ーへへ…ありがとよー

 あの小娘の店がつぶれて、あとはーー」


宗吉がそこまで言うと、

寄生虫の王が呟いたー


”ーー夢が叶ってよかったなー。

 我々も、お前のおかげで随分と繁殖しー、

 宿主となる人間を増やすことができたー”


とー。


「へへへーそりゃよかったー」

宗吉が笑いながら、そう呟いて、

今日も店の片づけを終えると、

寄生虫の王は静かに言葉を口にしたー


”お前の役割は終わったー。

 ご苦労だったなー


 最後に夢が叶って、良かっただろうー?”



「ーーーえ」

宗吉が、呆然とするー。


寄生虫と自分は”持ちつ持たれつの関係”

そう思っていたのは、宗吉の方だけだったのだー。


翌朝ー、

宗吉は店舗内で脳を破壊された状態で見つかりー、

無残な最期を遂げたのだったー。



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


青果店の野菜の中に潜む寄生虫のお話でした~!★


店主・宗吉のお店”黒原青果店”の名前の由来は、

腹黒(はらぐろ)の漢字を並び替えて

人間の苗字っぽくしただけですネ~笑

こっちが悪者だという伏線でした~★


お読み下さりありがとうございました~!★!

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