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純恋に憑依して、新たな人生を手に入れた男・竜伸。

その状態のまま、結婚し、ついには娘の梓を授かったー。


しかし、その梓は、竜伸の邪悪な欲望を受け継いだ、

”邪悪な子”だったー。


そんな梓に”秘密をばらす”と脅されながら、

10年以上もの時を過ごした母・純恋。


しかし、ある日ー、純恋は

いつものように娘の梓から、脅しの言葉を掛けられている最中に

突然、その場に倒れ込んでしまうー…


★前回はこちら↓★

<憑依>邪悪なる我が子②~欲望の成長~

純恋に憑依して、欲望の限りを尽くしていた男・竜伸。 しかし、大学時代に健吾と出会った純恋は、 健吾の優しさを前に改心ー、いつしか心の底から”女性”として、 健吾のことを愛し、結婚ー、子供まで授かり 他人の身体で幸せを手にしていた。 がー…そんな純恋から生まれた子供はー、 ”憑依された母体”から生まれた子は、...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


俺は、昔から自分が嫌いだったー。


竜伸の人生は、特別不幸だったわけでもないー。

”無難”な人生だー。


しかし、”つまらない学生時代”を過ごしー、

”つまらないおっさん”になりー、

そのまま何となく生きて、最後には何となく死ぬー…

そんな人生を送る自分のことが、大嫌いだったー。


元々、竜伸が婚活を辞めたのも、

”俺が女だったら、俺と結婚したいか?”ということを

鏡の前で自問自答した結果ー、

”いや、こんなやつありえねぇだろ”と、いう答えに

たどり着いたからだったー。


そう、竜伸はとにかく自分のことが好きではなかったー。


そんな彼が、純恋に憑依して

”可愛い自分”のことを好きになり、

おしゃれをする楽しさを知りー、

初めて”自分”のことを好きになったー。


いいやー、”この身体”は自分のものではないー。

そんなことは分かっているー。


所詮は、他人の身体を奪ったおっさんでしかないことぐらいはー。


けれどー、それでもー…

今はもうー…


「ーーーー!!!!」

純恋が、ハッと目を覚まして起き上がると、

そこは病院のベッドだったー。


表情を歪めながら、純恋が視線を細めると、

そこには娘の梓の姿があったー。


「ーーー…やっと起きたー」

梓はそう言いながら、「僕の前で急に倒れるとか、あり得ないんだけど」と、

不満そうに呟いたー。


「ーーー…梓ー」

純恋は少し驚いた表情を浮かべると、

梓は「ーー罰ゲーム」と、頬を膨らませながら、

突然、純恋に対してキスをしてきたー。


「ーんふふ…女同士のキスとか、興奮するじゃん?」

梓はそれだけ言うと、純恋から離れて、笑みを浮かべるー。


「ーーーー迷惑かけて、ごめんねー」

純恋がそう言うと、梓は「ーほんとだよー まったく」と、

言いながら立ち上がるー。


「ーーーー…」

意識を取り戻した純恋は、ふと自分の身体がまだ

”しびれている”ことに気付くー。


「ーーーどうしたんだよ?」

梓が不満そうに表情を歪めるー。


が、純恋は「なんでもないよ」と、誤魔化すと、

そのまま梓は「ーーは~、急に倒れられるとかマジで迷惑」と

うんざりした表情を浮かべながら、言葉を口にするー。


「あ~~イライラするし、クラスの男子と放課後に遊ぼー」

梓は、そんな言葉を口にしながら、

「ー僕なら、誰でも誘惑できるからねー」と、邪悪な笑みを浮かべるー。


”遊ぶ”が、何を意味しているのか悟った純恋は、

「ー自分をもっと大事にしてー」と、言葉を口にするー。


かつて、”純恋に憑依して、やりたい放題をしていた竜伸”が、

現在の夫である健吾に言われた言葉だー。


「ーーーは? 

 他人の身体を乗っ取ったママに言われたくないんだけどー?」


梓は不満そうにそう言葉を口にすると、そのまま立ち去っていくー。


「ーーーーーー…」

”邪悪な娘”ー…

自分が”憑依された母”だから、娘にもあんな影響を与えてしまったー。


全ては、自分のせいー。

けれどー…どんなに邪悪な娘であろうと、

娘は娘ー。

もう、身も心もすっかり女であり、”母”である純恋からすればー、

娘の梓の幸せを祈らずにはいられなかったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


意識を取り戻した純恋の体調不良は続いたー。


病院によればー

検査でも異常はないものの、

身体に”謎の拒否反応のようなもの”が起きているのだと言うー。


「ーーんだよー…

 早く、帰ってきて、僕を楽しませてくれよー」


今日もお見舞いにやってきていた梓が不満そうに言うー。


相変わらず今日も、年頃の女子高生らしく

とてもおしゃれなのに、言動は完全に男のような感じで、

その違和感が半端ない梓ー。


「ご、ごめんなさいー」

純恋が申し訳なさそうに言うと、

梓は「チッ」と舌打ちをしながら、

面倒臭そうに鞄から、何かを取り出したー。


「ーーなに?」

純恋が不思議そうに首を傾げると、

「ーーママの体調不良ー。それじゃね?」と、梓が言葉を口にしたー。


足を組んだまま、面倒臭そうに純恋にそれを読むように

促す梓ー。


そこにはー”憑依薬”使用後の副作用などについて

記載されていたー。


そもそも”憑依薬”などというものは、世間でも表ざたになっていないー。

しかし、梓はどういうわけか、こんな情報を見つけて来たのだー。


「ーーママ、憑依してからもうかなり経ってるだろ?

 ーーだから、それじゃないかって」

梓は足を組んだまま、そう言葉を口にするー。


純恋は、今一度書類に目を通すー。


そこには”長期間の憑依により、身体が拒絶反応を起こし、

体調不良を引き起こす可能性がある”と、書かれていたー。


そして、最悪の場合、最後には身体ごと死に至る可能性もある、とー。


しかしー…そこには”治療法”も明記されていて、

”憑依薬”を追加で摂取することにより、再び”安定”すると記述されていたー。


「ーーー梓ー…もしかして、これ、わたしのためにー?」

純恋が驚いた様子で言うと、

梓は目を逸らしながら、

「ー僕のおもちゃが壊れると困るってだけだよ」と、言葉を口にするー。


がー…純恋はそれを”娘の気遣い”だと解釈して、

「梓…本当にありがとうー」と、言葉を口にするー。


梓は「ーう、うるさいな…キスして口を塞ぐぞ!」と、

少し苛立った様子で言葉を口にしながらもー、

「ーーーでも、憑依薬、どうやって手にれるんだよ?」と、

不安そうに言葉を口にしたー。


確かに、もう当時憑依薬を購入したサイトはとっくに閉鎖されていて

どうすることもできないー。

しかし、この身体で憑依薬を探すこともできないし、

まさか娘の梓に探してもらうわけにもいかないー。


いくら、竜伸の邪悪な意思を引き継いだ娘だとは言え、

身体自体は、まだ高校生だし、体力もそんなにあるわけではないー。


「ーーーーーーーーーーーーーーー」

純恋は険しい表情を浮かべながら、

”手に入るといいね”と、そんな言葉を口にしたー。


それからもー…

純恋の体調は悪化していくー。

梓も必死に憑依薬を手に入れようと探し回ったー。


がーー


「ーへへへ…お嬢ちゃんー…こんなところに何のかなー?」

夜の町で情報収集をしていた梓は、

不良三人組に絡まれてしまっていたー。


「ーや…や…やめて下さい!」

梓は怯えた表情を浮かべながら、

後ずさるー…。


必死に逃げようとするも、梓が思っている以上に、

自分の身体は”貧弱”だったー。


途中で転んでしまい、男に腕を乱暴に掴まれ、

悲鳴を上げたところで、たまたまパトロール中だった

警察官が助けてくれたものの、

梓は、身を以てその恐怖を体験しー、

これ以上、自分で”憑依薬”のことを調べるのは、

難しい状況になってしまったー。


「ーーーチッー…」

イライラした様子の梓は髪を掻きむしりながら、

自分の部屋から飛び出して、父・健吾がいる1階へと向かうー。


「ーお、梓ー。どうした?」

晩御飯後の跡片付けをしていた健吾が、梓に気付いて言葉を口にすると、

梓は意を決した様子で、「パパー…怒らないで、聞いてほしいの」と、

言葉を口にするー。


梓は”パパ”の前では小さい頃からずっと、本性を隠しているー。


なぜならーー…。


「ーーーーどうしたんだ?」

健吾が首を傾げると、

梓は深呼吸してから、言葉を口にしたー。


「ーーママはーー…」

梓はそこまで言うと、”母・純恋がずっと前から”憑依されている状態”だと、

父・健吾に説明したー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーー…これが、人の人生を奪った罰かー…」

身体の拒否反応が悪化し、純恋の体調はますます悪化していたー。


しかしー…医師も”憑依”などという現象は把握しておらず、

”原因不明”のまま、純恋の体調は悪化していくばかりで困惑していた。


そんな中ー…

娘の梓がやってきたー。


「ーーーー梓」

純恋がそう言葉を口にすると、

梓は気まずそうに背後を見つめたー。


後から入って来たのは夫の健吾ー。

その手には”謎の容器”が握られていたー。


「ーーー…純恋…”憑依薬”だー」

健吾が言うー。


「ーーえ…」

純恋はハッとして、梓のほうを見るー。


梓が”夫”の健吾に憑依のことを話したのだとすぐに悟ったー。


「ーーーーー…け、健吾ー……」

純恋は、呆然として夫の健吾を見つめるー。


今までずっと隠していた憑依ー。

自分の妻がー…愛していた女性が、

”出会った時から見知らぬおっさんに憑依されていた女”だと

知ったらー…健吾はさぞショックだろうー。


目から自然に涙があふれ出すー。


「ーーーわたしはーーー」

純恋がそう言いかけながら、夫の健吾の顔を見るとー、

健吾はー…笑っていたー。


「ーえ…」

純恋が唖然とするー。

そんな純恋に対して、健吾は優しい口調で言葉を続けたー。


「ーこれがあれば、治るんだろ?」

とー。


「ーー…け、健吾ー…でも…」

純恋は戸惑いながらそう言うと、

健吾は笑ったー。


「ーーとっくに、知ってたー…

 でも、言わなかったー」


健吾の言葉に、純恋は驚くー。


「ーーーーもちろん、最初は驚いたさー。

 でもー、純恋と梓の会話ー…

 聞こえちゃったんだー。

 もう、10年以上前にー…」


健吾のそんな言葉に、

梓は恥ずかしそうに目を逸らすー。


健吾は、結婚して娘の梓が生まれたあとー…

”妻の純恋と娘の梓”が憑依のことについて話しているのを

聞いてしまったのだー。


最初はもちろん、激しく動揺したー。

けれどー、健吾は思ったー。


”俺が出会った時点で既に憑依されていたなら、

 俺の好きな純恋は、今の純恋なんだー”


とー。


そして、結婚して子供を授かるまでの間の思い出を振り返りー、

”少なくとも、今の純恋は家族を傷つけようとしているわけではない”と、

そう判断し、ずっと黙っていたのだったー。


「ーー……わたしも…まさかパパが知ってるなんて、思わなかったー」

梓がそう言うと、

純恋は「健吾ー…」と、涙目で夫のほうを見つめるー。


「ー大丈夫ー。俺と純恋ー、それに梓の絆は変わらないー」

健吾は優しくそう微笑むと、

「これ、手に入れるのすごく苦労したんだぞ?」と、

笑いながら”憑依薬”を、純恋の方に差し出すー。


「ーこれがあれば治るって梓が泣きながら言うからー…

 死に物狂いで探したんだー」

健吾のそんな言葉に、純恋は涙を流しながら頷くと、

「本当に、ありがとうー」と、憑依薬を”接種”したー。


結果ー…

純恋の体調はみるみるうちに回復ー…

再び元気を取り戻したのだったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


退院した純恋はこれまで通り”母”として、”妻”として

家に帰宅したー。


「ーー…ーーー…その、無事でよかったー。

 これからも、”色々”楽しませてもらえるからさー」


娘の梓が、笑いながら母の純恋のところにやって来るー。


「ーーー梓も、色々とありがとうー」

純恋が入院中のことで、改めてお礼の言葉を口にすると、

制服姿の梓は首を横に振ったー。


「ー僕はただ、”おもちゃ”が壊れるのがイヤだっただけだよ」

梓はそう言うと、純恋のほうを見つめながら

少しだけため息をついたー。


「ーー僕さー、小さい頃からパパのことは好きだったけど、

 ママのことは嫌いだったー。

 ー憑依のこと、知ってるからじゃなくてー、

 とにかく、嫌いだったー」


梓のそんな言葉に、純恋は少しだけ表情を曇らせるー。


「ーーでも…やっぱ、ママが倒れた時、思ったんだー。

 死なないでーってー」


梓はそれだけ言うと、純恋のほうを見つめてから

「ーーこんなに可愛いのに、中身はおっさんみたいに

 変態な僕だけどさー…

 でもー、僕がこうして楽しんでられるのも、

 ママが産んでくれたからだもんなー」と、

言葉を口にするー。


「ー梓…」

純恋が、娘の梓のほうを見ながら、その名を口にすると、

梓は笑ったー。


「ーだから、産んでくれてありがとうー。

 まだーー…死ぬなよー」


梓はそう言うと、時計を見て

「学校、行かないと」と、恥ずかしそうに立ち去ろうとするー。


「ーーーーー…」

が、何かを思ったのか、玄関の前で立ち止まると、

梓は振り返ったー。


「僕もー、今は男を恋愛対象として見れないしー、

 女に興奮しちゃったりしてるけどさー…


 いつかはー…ママみたいに”女”になれるかなー?」


梓の言葉に、純恋は少しだけ考えてから笑ったー。


「ーーー…ふふー、

 大丈夫ー。梓は元々、自分の身体で生きてるんだからー」


純恋のそんな言葉に、梓は笑うと

「行ってきますー」と、いつもより穏やかな口調で言葉を口にして

学校へと向かったー。


”パパにばらすー”

そんなことを言いながらも、これまで一度も父親に純恋の秘密を

実際に口にすることはなかった梓は、

”邪悪な我が子”などではなかったのかもしれないー。


”純恋”に憑依した竜伸の欲望を受け継いで生まれた梓ー。


だからこそー…

梓は”パパ”である竜伸は好きで、”ママ”である純恋のことを

嫌っていたのかもしれないー。


純恋に憑依した竜伸自身、純恋に憑依する前の”自分”が

大嫌いだったからだー。

竜伸のそういう部分も受け継いでいるとすればー、

”ママ=竜伸”が嫌い、となるのも頷ける気がするー。


そしてー、純恋に憑依している竜伸は、

夫である健吾のことを、本当に愛しているー。


だから、竜伸の欲望を受け継いだ娘・梓も、

パパのことは大好きなのかもしれないー。


そんなことを思いながら、純恋は鏡を見つめるー。


「ーーーーー」

”人の身体を奪った”罪は永遠に消えないー。


その結果、”邪悪な欲望”を娘に受け継がせてしまった罪も、消えないー。


けれどー、ならばせめて

良い妻ー、良い母として、人生を全うしたいー。

せめて、健吾と梓のことだけは、傷つけずに、幸せな人生を送っていきたいー。


そしてーーーー


いつか、”この世を去る”

そんな日が来た時はー、

謝りたいー。


この身体の、本来の持ち主ー

そう、”純恋”にー。


”ーー俺も一緒に、謝るからー”

夫・健吾は、退院後、そう言ってくれたー。


いつの日か”あっち”に行ったときには、

一緒に謝ってくれるー、とー。


純恋は、こんな”邪悪なわたし”の側にいてくれる

夫ー、そして娘の梓に改めて感謝しながら、

二人のことを、この先も絶対に裏切らないと

改めて心に誓って、今日も頑張ろう、と、静かに呟くのだったー。



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


最終回でした~!☆

邪悪な欲望を受け継いでしまった娘とも和解して

明るいエンドになりましたネ~!

(乗っ取られた純恋本人にとってはバッドですケド…)


ここまでお読み下さりありがとうございました~!☆


ちなみに、順番的には今日は「貴様の名は」だったのですが、

入れ替わり⇒入れ替わりと続いてしまうので、

先にこちらのお話を書きました~!

「貴様の名は」を忘れてるわけではないので安心してくださいネ~!

(※できる限り同じジャンルが続かないように調整することがあります~!)

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