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投獄された親友を救うため、ロビンは、

敵国のスパイ・ステラがアーサーと入れ替わったという情報を

広めていくー。


その作戦は順調に進んでいたー。

しかし、女王の前でアーサーになったステラが、

その場で左腕を突き刺し、血を持って忠誠を示すという行動に

出たことにより、ロビンの作戦は失敗、

ステラ(アーサー)の処断の日は逆に早まってしまう結果となったー。


処刑は二日後ー。

目前に迫る中、ステラ(アーサー)の運命はー…?


★前回はこちら↓★

<入れ替わり>あなたがスパイでわたしが騎士団長③~反撃~

王宮に仕えるメイド・シェリーは、隣国から送り込まれたスパイだった…! ステラという本名を明かし、自分の正体を明かした彼女に 身体を入れ替えられてしまい、投獄されてしまった騎士団長・アーサー。 アーサーの身体を手に入れたステラは、 そのままアーサーの身体で、フライ王国を内側から 破壊していこうと目論むー...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ステラ(アーサー)の処刑の日まであと二日。


ロビンは自分の人脈や権力ー、できうる限りのモノを使って

”入れ替わり”を実証するために動いていたー。


”アーサーは、入れ替わり直前にあの女が

 小さな球体を口に放り込んだと言っていたー。

 恐らくは、それが入れ替わるための何らかの道具ー…”


しかし、敵国であるドラゴン帝国を探ろうとしても、

そう簡単には行かないー。


「ーーまだ、信じているのですか。あのメイドを」

騎士団副団長のセレドニオがため息をつきながら

ロビンに対してそう言い放つー。


「ーロビン殿も見たでしょう?

 女王様の前での、気迫迫るアーサー様の姿をー」

セレドニオの言葉に、

ロビンは「いや、あれはーアーサーではありません」と、

首を横に振るー


「ーーーーー度が過ぎますぞ。ロビン殿ー

 貴殿まで”スパイの仲間”なのではないかと疑うものまで

 出てきていますー

 あのメイドに肩入れすることは、やめることです」


セレドニオはそれだけ告げると立ち去っていくー。


「ーーーーくっ…だが、たとえ疑われてもー

 俺は…諦めるわけには行かないー」


ロビンはそれだけ呟くと、いつまでもステラ(アーサー)を庇っていると

”ステラの仲間なのではないか”と疑われることも承知の上で、

アーサーを救うため、必死に動いていたー。


”アーサーを救えるのは、俺だけなのだからー”


・・・・・・・・・・・・・・・・・


地下牢の扉が開くー。


「ーーーーー」

衰弱した様子のステラ(アーサー)が顔を上げると、

そこには、アーサー(ステラ)の姿があったー。


「ーー裏切者の”シェリー”よー。」

アーサー(ステラ)は、あえて、ステラが名乗っていた偽名…

”シェリー”の名でアーサーを呼ぶー。


この上ない屈辱に、ステラ(アーサー)は震えながら

「どうして…どうして、こんなことをするー…!」と、

言葉を振り絞るようにして吐き出すー。


「ーードラゴン帝国は民を苦しめ、蹂躙してー…

 我が王国に侵略まで仕掛けてきているー…!

 君だって、1年間、この王国で暮らしていて、分かっただろうー?

 フライ王国は平和を愛する国ー…

 間違っているのは、君たちだ!」


ステラ(アーサー)は振り絞るようにして言葉を口にするー。


だが、アーサー(ステラ)は何も言葉を口にしないー。


「ーーー…シェリー…いや、ステラ!何とか言ってくれ!」

ステラ(アーサー)がそう叫ぶー。


それでも、アーサー(ステラ)はうすら笑みを浮かべたまま、

何も答えないー。


「ーー”ステラ”は、あなたー」

やがてー、アーサー(ステラ)は指をさしながら、

そう言葉を口にしたー。


「ーー…っ」

薄汚れたメイド服を見下ろしながら、ステラ(アーサー)は

悔しそうにアーサー(ステラ)を睨みつけるー。


「あなたは裏切者のメイド・ステラでー、

 わたしはフライ王国騎士団長のアーサー…


 ちゃんと、話をしている相手の名前を呼ばなくちゃー…」


アーサー(ステラ)の揶揄うような口調に、

ステラ(アーサー)は歯ぎしりをしながらも

「ー…アーサー…間違っているのは、君たちだ」と、

アーサー(ステラ)に対して、そう言い放つー。


他人の身体で、自分の名前を呼ぶー。

何とも奇妙な体験談ー。


「ーーー”様”」

アーサー(ステラ)の言葉に、ステラ(アーサー)は表情を歪めるー。


「ーメイドの分際で、騎士団長様を呼び捨てに許されるとでも?」

アーサー(ステラ)がそれだけ言うと、

ステラ(アーサー)は身体を震わせながら

「ーーふ、ふざけるな!」と叫ぶー。


アーサー(ステラ)はその反応にクスクスと笑うと、

「ーー真っすぐな目ーーー

 でも、真っすぐだからこそ、何も見えていないー」と、

言葉を口にするー。


「ーー…何がいいたいー?」

ステラ(アーサー)はそう言うと、

「ーードラゴン帝国は悪で、あなたたちフライ王国は正義ー?

 笑わせないでー」と、

牢屋の外から鉄格子を掴みながら、中に居るステラ(アーサー)を

睨みつけるー。


「ーーーわたしの家族は、あなたたちフライ王国に殺されたー。

 何の争いもない平和な村だったのにー、

 わたしの家族は、友達は、村の人たちはー、

 あなたたちに皆殺しにされたー」

アーサー(ステラ)の言葉に、アーサー(ステラ)は表情を歪めるー。


”シェリー”を名乗り、アーサーと出会った時のことではなく、

もっと前のことを言っているのだろうー。


「何を言っているー…俺たちは、そんなことはしない!」

ステラ(アーサー)がそう叫ぶと、

アーサー(ステラ)は笑うー。


「何を根拠に?

 あなたは、自分の王国のことを知らないー

 ”フライ王国”が常に豊かな資源に恵まれているのはどうしてだと思う?


 ”他”から、略奪しているからに決まっているでしょー?」


アーサー(ステラ)の言葉に、ステラ(アーサー)は、

「違う!俺たちは平和を愛する国だ!そんなことはしない!」と、

反論するー。


がー

アーサー(ステラ)は言ったー。


「あなたたちフライ王国には”王直属”の秘密部隊が存在するのー

 表に出来ない略奪や暗殺は、全て”そこ”がやるー。

 あなたたち騎士団はただの”お飾りー”


 そうねー

 今の女王ヴィオラも、裏で”秘密部隊”を指揮して

 略奪を繰り返しているわー。


 わたしは、あなたたちの国の秘密部隊に村を滅ぼされて

 全てを奪われたー

 

 だからー、絶対にあなたたちを許さないー。


 ーー全てを失って、行き場を無くしたわたしを拾ってくれた

 陛下のご恩に報いることが、わたしの生きる意味ー!


 だから、自分の身体を失って、あんたの身体になってでも

 わたしはドラゴン帝国のために、フライ王国の情報を

 盗み続けるー…!」


その言葉に、

ステラ(アーサー)は、険しい表情を浮かべるー。


「ーーもう騙されないぞ…君には散々騙されたー…

 そうやって、俺を動揺させるつもりなんだろうー?」

ステラ(アーサー)がそう言うと、

アーサー(ステラ)は少しだけ悲しそうな表情を浮かべたー


「ーーー嘘じゃないー…

 あなたに、家族を、友達を、故郷を全て壊された苦しみは分からないー」


そう言いながら、目から涙をこぼすアーサー(ステラ)ー


自分の顔が涙をこぼしているのを見るのは不本意だったが、

ステラ(アーサー)は少しだけ表情を曇らせるー。


「ーまぁ、信じてもらえるとは思ってないけどー…

 もう、そんなことはどうだっていいー。

 あなたは、明日、”処刑”されるのだからー」


アーサー(ステラ)はそこまで言うと、

「さよならー…アーサー様」と、だけ呟いて

そのまま地下牢の外へと出て行ってしまったー。


疲れ果てた様子で、地下牢の中で座り込むステラ(アーサー)ー。


意味もなく、胸を揉むー。

でも、もう気持ちいいとも思えないー。

明日、死ぬー。

そんな恐怖が現実味となって来るー。


いやー、

自分の死が怖いのではないー。

このまま行けば、誰も”アーサーとステラが入れ替わっている”ことに

気付かないまま、アーサーは死ぬことになってしまうー…

そうなれば、フライ王国はー…。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーそれは、本当っすか?」

新人騎士のチャーリーが、呆れ顔で言葉を口にするー。


「あぁ。”入れ替わり”のアイテムをドラゴン帝国から

 手に入れたー。

 明日、処刑の場で女王様に入れ替わりを直接お見せできれば、

 女王様にも信じてもらえるはずだー」


ロビンがそう言うと、チャーリーは

「いやぁ、はははー…またまた御冗談をー」と、笑いながら

「っていうか、なんで俺みたいな下っ端にそんな話を?」と

首を傾げるー。


ロビンは「あぁ…いや」と、誤魔化しながら立ち去っていくと、

そのまま騎士団副団長のセレドニオや、他の大臣たち、

他の騎士たちにも、それとなくそんな話をしたー。


「ーーーー…」

そんなロビンの様子を物陰から見つめるアーサー(ステラ)ー


”どういうことー…?入れ替わり玉は、陛下からわたしが

 直々に受け取ったものー…

 そう簡単に入手できるはずなんてないー”


アーサー(ステラ)は、そう思いながら

「まったく、ロビン殿にも困ったモノですな」と、呟く

副団長のセレドニオのほうを見て、愛想笑いを返すー。


「ーーそうだなー。俺は俺だというのにー」

アーサー(ステラ)は呆れ顔で笑いながらも、

少しだけ表情を曇らせるー


”ーーそんなはずないわー。

 外部の人間がそう簡単に、入れ替わり玉を入手できるはずなど

 ないものー”


アーサー(ステラ)は心の中でそう呟くと、

そのまま静かに歩き出したー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


そしてー

”処刑当日”がやってきたー


罪人の処刑が行われる王宮内の中庭のひとつに、

ステラ(アーサー)が連れられてくるー。


「ーーー…(まさか、女の身体で死ぬことになるなんてー)」

ステラ(アーサー)はそんな風に思いながら、太陽を見つめるー。


そこにやってくる女王ヴィオラ。


女王ヴィオラ率いる秘密部隊など、本当に存在するのだろうかー。

いいや、嘘だー。

あの女は、1年間も”シェリー”を名乗り、王宮のメイドとして

自分を偽って来たのだー。

嘘に違いないー。


「ーステラ。あなたは重大な罪を犯しましたー」

女王ヴィオラが、冷たい口調でステラ(アーサー)のほうを見つめるー。


「ー我がフライ王国の情報を、半年間にわたり、

 ドラゴン帝国に流し続け、王国の平和を覆そうと画策したー。

 その罪は、裁かねばなりませんー」


女王ヴィオラはそれだけ言うと、

近くにいたアーサー(ステラ)のほうを見て頷くー。


「ーーーーー」

アーサー(ステラ)は、わずかに表情を曇らせたー。


ひとつはー、

”ロビンの動き”を気にしてのことー。

昨日、ロビンが”入れ替わりのアイテムをドラゴン帝国から手に入れた”と、

騎士や大臣たちに言って回っていたことー。

ステラ自身はハッタリだと思っているし、万が一ということもあるー。

だが、今のところロビンに動きはないー。

既に、ステラ(アーサー)は間もなく処刑されるタイミングだー。

やはり、ハッタリだったのだろうと、アーサー(ステラ)は考えるー。


そして、もう一つはー…


目の前で、膝をついて

”斬首”の時を待つステラ(アーサー)ー。


だがー…


”ーーー…帝国はわたしを救ってくれたー…

 帝国のためなら、わたし自身を斬ることぐらい、

 どうってことないはずー…”


アーサー(ステラ)は、

”膝をついた自分自身”を斬ることを今になって躊躇していたー。


今まで、一度もそんなことは思ってなかったー。

躊躇せずに、やれると思っていたー。

けれど、いざ、この場に立ってみるとー…


”わたしを、わたしが斬るー”

というこの状況に、アーサー(ステラ)は動揺していたー。


「ーーーーーー…」


”シェリー…いつもありがとうー”

アーサーの優しい言葉が脳裏に浮かぶー。


「ーーーー」

1年間も共に過ごしたー。

けど、それは全て諜報活動のためー。

情などないー。

そのはずだったー。


でも、どうしてだろうー。

斬首する直前になって、こんな感情になるのはー


「どうかしましたか?」

女王ヴィオラが、そう呟くー。


「ーいえ。」

アーサー(ステラ)は雑念を振り払って、そう言葉を口にするー。


そうー。

やるんだー。

女か男かの違いなんて、些細なことー。

一介のメイドよりも、騎士団長の立場の方が、色々やりやすいー。

それもまた事実。


そんな様子を、ロビンは、じっと見つめていたー。


”ーーーーアーサー…”


やれるだけのことはやったー。

がー…短期間でドラゴン帝国の”入れ替わり”に使ったと思われる

アイテムの現物を入手することは、ロビンにはできなかったー。


相手もバカではないー。

そう簡単に機密を入手できるわけがないのだー。


しかし、それでもロビンは昨日、”ハッタリ”で、大臣や騎士たちに

”入れ替わりのアイテムを手に入れた”と言って回ったー。


そうすれば、アーサー(ステラ)が”ボロを出すかもしれない”と、

そのわずかな可能性に賭けてー。


そしてー…

最後の最後まで、根回しも、し続けたー。


街の方で、騒ぎが起きるー。

街の住人の間で何かトラブルが起きたようだー。


「ー何事です?」

女王ヴィオラが表情を歪めるー。


「ー分かりません。何か城下町でトラブルがー」

騎士の一人がそう言うと、ヴィオラは騎士たちに確認を命じたー。


”これも”ロビンの最後の抵抗のひとつー。

”時間稼ぎ”のための作戦だー。


がー…

それでも、その時はやってきてしまうー。


「ーーステラ…裁きの時ですー」

女王ヴィオラが、ステラ(アーサー)に対して言い放つー。


”ーーさよならー”わたし”ー”

アーサー(ステラ)は”自分の身体”に心の中で別れを告げて、

剣を握り直し、今度こそー、剣を振り下ろそうとしたーー


ステラ(アーサー)は、死を覚悟して目を閉じるー。

ロビンが、親友の死から目を逸らすー。

アーサー(ステラ)が”わたしの身体との別れ”に目を逸らすー


女王ヴィオラが、その瞬間をじっと見つめようとするー


がーー


「ーーお待ちくださいー」


大きな声が、その瞬間を直前のところで食い止めたー。


⑤へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


次回が最終回デス~!☆

どんな結末が待ち受けているのか

ぜひ皆様の目で見届けて下さいネ~!


今日もお読み下さりありがとうございました~~!

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