Home Artists Posts Import Register

Content

罪を犯した人間が送られてくる

”人間洗浄センター”。


そこでは、洗浄員たちによって、

罪を犯した人間が”皮”にされて、

善人になるように”思考などを塗り替えられて”いたー。


そんなある日、

人間洗浄センターに、洗浄員・悟の幼馴染である樹里という女が

やってきてー…?


★前回はこちら↓★

<皮>キレイ キレイ①~心の洗浄~

「ーーーーーー」 広々としたその施設では、 様々な年代の男女が、作業を行っていたー。 ある者は、施設内の清掃ー ある者は、施設の一角で、子供の世話ー。 またある者は、パソコンを前に、何か映像を見つめたりしているー。 そこはー、”人間洗浄センター”の異名を持つ、 秘密の施設ー。 表向きは、”親に捨てられた子供...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


幼馴染・樹里と皮にして着こんだ悟は、

戸惑いの表情を浮かべていたー。


樹里とは、中学時代まで一緒で、卒業後は

それっきりだったが、小さい頃は”好きだった”相手でもあり、

初恋の相手でもあるー。


そんな相手を”着る”というのは、とても複雑な気分だったー。


まずはー”人助け”の喜びを説く動画を見るー。


樹里を着て、これを見ることで、

無防備になった樹里の脳に”本人の自我や意識”に何の抵抗も

されることなく”善の喜び”を刻み付けることができるー


「ーーー…それにしても、松永さんー…変わらないなー」

時折、画面が暗くなった際に、画面に反射する樹里の顔を見つめるー。


既に、20代になった樹里ー。

しかし、その容姿はあの頃と、大きく変わっていないー。


今でも、樹里の姿を見るとドキッとするー。


「ーーーー…なんか、ごめんなー」

樹里の声で、そんな言葉を口にするー。


”どんな罪”を犯したのかは、洗浄員には基本的には知らされないー。

罪の内容によっては、洗浄員が同情してしまい、

”洗浄”に支障をきたすことがあるからだー。


「ーーー…」

樹里は動画を見終えると、洗浄センター内の身寄りのない高齢者を

保護している区画に行くと、高齢者たちの介護を行うー。


”樹里の身体”で人助けの喜びを感じー、

樹里がまた”善”に染まっていくー。


だがーー

悟は”好きだった幼馴染”を本人の意思とは関係なく、思考を捻じ曲げていく行為に

罪悪感を感じていたー。


今までも”罪悪感”のようなものがなかったと言えば嘘になるー。

しかし、今回の場合は幼馴染が相手、ということもあって、

より、その罪悪感が強いー。


「ーーーーへへへー その子、可愛いなぁ」

軽い感じの男性洗浄員・隼吾の言葉に、

樹里は照れくさそうに「そ、そ、そうですかねー?」と、顔を

赤らめながら苦笑いするー。


「やっぱアレかー?洗浄中の自由時間で、

 胸、揉んだりしちゃうのか?」

隼吾のそんな言葉に、

樹里は「し、し、しませんよ!」と顔を真っ赤にしながら言うー。


”小さい頃好きだった樹里になって、樹里の胸を揉むー”

そんな想像をすると、つい興奮せずにはいられないー。


「ーははは…俺は結構遊んじゃうけどなぁ~

 あ、もちろん”洗浄員法”は守った範囲内で、な」

隼吾がそう言うと、

「ーーーそんなことして、脱いだあとのその子が

 変態になっちゃったらどうするんですか~?」と、

凶悪犯”黒上 丈”の皮を着ている、悟の同期・萌美が言葉を口にするー


「ははははー大丈夫大丈夫…今のところ、そういう子はいないから、セーフ!」

隼吾がそう言うと、

樹里は「ーあんまり、やりすぎちゃダメですよー」と、

言葉を口にしてから、時計を見つめるー。


「あー、じゃあ俺はそろそろ上がりますー

 お疲れ様でしたー」


樹里の髪が自分の手に触れるのを感じながら、

樹里を着た悟はドキッとするー。


洗浄員は、必ず”異性”を着るー。

その理由としては、決して変態的な理由ではなく、

”その方が、相手の脳に早く影響を与えること”が

研究から判明しているからだー。


その理由は具体的にはまだ分かっていないが、

同性が同性を着るよりも、異性を着た方が、

数日ほど早く”着た相手”が染まることが分かっているー。


だからこそ、男性である悟が、樹里をー、

女性である萌美が、凶悪犯の丈を着ているのだー。


「ーーねぇねぇ、明日香ちゃんー

 ”洗浄”されるってどんな気分なの?」

丈を着ている萌美が言うと、

”洗浄経験者”である女性洗浄員の明日香はー、

「え~…”今までのわたしは、何てバカなことをしたんだろう”

 って思ったりー、あとは、前のわたしが、わたしじゃないようなー

 そんな感じですねー」と、笑いながら言葉を口にするー。


この明日香自身、前に罪を犯して”罪人”として、

皮にされて、”洗浄”された経験を持つのだー


「ーとにかく、”前のわたし”が嫌いになって、恥ずかしくなっちゃう感じですー。

 でも、わたしは今のわたしの方が好きですし、

 洗浄されることは、素敵なことだと思いますよ」


にこっ、と微笑む明日香ー。


しかし、この明日香も”無理矢理”思考を捻じ曲げられているだけー。

”洗浄”を受けていなければ、恐らく”今”も、

”ギャル”として男を騙したり、悪い男とつるんで罪を犯したり

していたのかもしれないー。


それでも、

今の明日香は幸せそうだし、明日香が罪を重ねることもないー。


これはー、きっと”いいこと”なのだー。


丈を着ている萌美は、改めてそんなことを思いつつ

「じゃあわたしも、失礼しますー」

と、そんな言葉を口にして、洗浄センターの外に向かって歩き出したー


そしてー、

洗浄員専用の”寮”に帰宅した萌美ー


洗浄員たちは”洗浄中”は、専用の寮を使用するー。

自分の持ち家がある洗浄員もいるものの、

洗浄中は”罪を犯した人間”の皮を着ているため、

そのまま帰宅すれば、当然、近所の住人から

”住んでいる人と違う人が帰宅している”と、不審に思われてしまうー。


そのため、洗浄員が誰かの”皮”を着ている最中は、

洗浄センター内に設置された寮で過ごしているー。


そういう仕組みのためか、

基本的には洗浄員は若い人間が多く、独身の人間が多いー。


「ーーーーただいま~」

自分の寮に、凶悪犯・丈の姿で帰宅した萌美ー。


「ーーふぅ…男の人の身体だと、お風呂とかは楽だよねー。

 髪も短いしー」


そんなことを呟きながら、

「ーー途中で脱ぐことができれば、楽なのになぁ」と、

少し愚痴を呟くー。


”クククー”


「ーー?」

ふと、謎の笑い声が聞こえたー。


「ーーー…」

しばらく周囲を見渡す丈ー。

だが、異変はないー。


もう一度ため息をつくと、

”ククククククククー”と、また笑い声が聞こえたー。


「ーーー!? だ、誰かいるのー!?」

丈の声で叫ぶ萌美ー


するとーー

目の前に”萌美”が、姿を現したー


髪の一部を赤く染めた、派手な印象の萌美ー

”いつものわたし”じゃない”わたし”がそこに立っているー


「な…あ、あなたはー?」

丈の姿のまま、萌美がそう言い放つと、

”もう一人の萌美”は、ニヤリと笑ったー


”ーーお前は、これから闇に染まるー

 洗浄されるのは、お前だー”


と、そう、萌美に対して指を指しながらー。


「ーーーな、何を言ってるのー…!? えっ!?

 あなたは誰ー!?」

丈を着たまま、萌美がそう叫ぶとー、

”悪い萌美”はクスッと笑みを浮かべるー。


そしてー、

そのまま”悪い萌美”は消えたー。


「ーーー……な、…何…今のー?」

戸惑う丈ー。


”わたし”が、もう一人いるはずがないー。

今のは、幻ー。


だがー、今までに経験したことのない”謎の現象”に

丈を着ている萌美は、不安の表情を浮かべることしかできなかったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーーーー」

幼馴染・樹里の皮を着ている悟は、

昔の樹里のことを思い出していたー。


「ーーーーーーー…くそっー」

樹里の身体でそう呟く悟ー。


そしてー、ソワソワした様子で部屋をウロウロするー。


今までも、数々の女性を”洗浄”してきたー。

洗浄員になる前に”研修”も受けているし、

今までは淡々とその仕事をこなして来たー。


しかし、実際に知り合いや、幼馴染が”洗浄対象”

やってきたのは初めてだったー。


しかも、樹里は単なる幼馴染ではなく、

悟にとっては”初恋”の相手でもあるー。


「ーーーー…(少しぐらい、いいよなー…?)」

ルール上、”やむを得ない事態”があれば、途中で皮を一時的に

脱いでも良いことにはなっているー。


”理由は、後でつければいいしー”

そう思いながら、悟は樹里を脱ぐと、そのまま樹里を”人間”に

戻したー。


「ーーーぁ…」

樹里が意識を取り戻すと、悟は心配そうに樹里のほうを見つめるー


「ーーー”洗浄”って言うのはー、終わったの?」

樹里のそんな言葉に、悟は表情を歪めるー。


「ーーいや、…まだ途中なんだけどー…

 ずっと意識がないのも、怖いかなって思ってー」

悟が困惑した様子で、そんな言葉を口走ると、

樹里は少しだけ笑いながら、

「ーー高峰くんは、やっぱり今でも優しいんだねー」と、

そんな言葉を口にしたー。


「ーーーー…」

樹里は少しだけ周囲を見渡すと、

「なんだか、わたしがわたしじゃなくなってくようなー

 不思議な気分ー…

 これが、”洗浄”とかいうやつの効果?」と、

首を傾げながら言うー。


悟は”洗浄”を受ける側になったことはないー。

困惑の表情を浮かべながらも

「たぶんー…でも、樹里は樹里だからー、大丈夫」と、

そんな言葉を口にすると、

樹里は少しだけ表情を歪めたー。


「ーーー…ーあのさー…

 本当は聞いちゃいけないんだけどさー…


 樹里ー…何、したんだ?」


緊張した様子で悟がそう呟くと、

樹里が自虐的に笑ったー。


「ーーーーわたし?ーー

 わたし、妹がいたでしょ?覚えてる?」

樹里の言葉に、悟は「あぁ、覚えてるよー」と、

そんな言葉を口にするー。


「ーーー妹ー…葵(あおい)がねー、

 ストーカー被害に遭って、わたしがその人とお話に行ったのー」


樹里はそう言うと、目を閉じながら言ったー。


樹里の妹・葵はストーカー被害に遭っていて、

次第にその行為はエスカレート、

最終的には命の危険を感じるような段階まで進んでしまったのだと言うー。


見かねた樹里は、葵と共に警察に相談ー。

しかし、警察は動かなかったー。


そのため、樹里が直接、その男と話し合いに向かったのだとー。


「でも、あいつは、話が通じるような相手じゃなかったー」


樹里のそんな言葉に、

悟は「ーーそれで…その人をー?」と、言葉を口にすると、

樹里は首を横に振ったー。


「ーわたしは別にー…

 でも、向こうが襲い掛かってきて、わたしが必死に

 逃げようとして、アイツを突き飛ばしたらー、

 アイツー…コンクリートに頭を打って、そのままー」


樹里が悲しそうにそう呟くー。


”樹里の話が本当なら”

”洗浄”の対象になるほどの罪ではない気もするー。


もちろん、人の命を奪ったことは罪ではあるがー、

”人間洗浄センター”に送られてくるのは、

基本的に”常習性のある人間”や、

”そのまま社会復帰させれば再犯の可能性が高い人間”など、

もっともっと問題のある人間だー。


それなのにーー

どうして、樹里がー…?


「ーその話は、本当なのか?

 聞いた限りでは、俺たちの”洗浄”の対象になるとは思えないけど」


悟がそう言うと、

樹里は自虐的に笑ったー


「ーふふー…”多分”なんだけどー…

 その人が、どこかの偉い人の息子だったからー」


樹里のそんな言葉に、

悟は表情を歪めるー。


「ーーーなんか、有名な議員か何かの息子だったみたいでー…

 だから、わたしがどんなに葵のストーカー被害を相談しても

 何の対応もしてくれなかったしー

 事件後も、相手のことは何も出ないで、

 わたしだけが100%悪者にされちゃったー


 それで、その、”洗浄”の対象になったみたいー。

 わたしみたいな都合の悪い人間は、処分しようって、

 そういうことじゃない?」


樹里は、もう諦めたかのような表情でそう言うと、

「ーほら、”洗浄”の続き、しちゃってー。

 高峰くんには迷惑かけたくないし」と、笑うー。


がー、

そんな樹里の手は小刻みに震えていたー


「ーーー…怖いのか?」

悟が尋ねるー。


樹里は「怖くなんかー」と、最初は笑っていたものの、

やがて、我慢できなかったのか「怖いー…」と、目に涙を浮かべながら

そう言葉を口にするー。


「ーーーー……わたし、自分が自分でなくなってるー

 もうー”洗浄”の効果が出てるんだよねー。

 きっと、洗浄が終わったら、わたしー…」


樹里が震えながらそんな言葉を口にするのを見て、

悟は、思わず言葉を口にしたー


「ーーもう、”洗浄”はしないー」

とー。


「え?」

樹里が、涙目のまま悟を見つめるー。


「ーーあと数日間、樹里のことを”洗浄してるフリ”をしてー

 そのまま解放するー。

 これ以上、樹里を洗浄したりはしないー」


悟のそんな言葉に、樹里は驚きながら

「で、でも、そんなことしたら、高峰くんがー!」と、

そう言葉を口にするー。


”洗浄”とやらにもルールがあるはずー。

洗浄対象相手を見逃すなんてことをすれば、悟はー


「ーはは、大丈夫ー。バレないようにやるからー。

 樹里が、これ以上樹里でなくなっちゃうのなんて、

 見てられないしー

 そういう事情があるならー」


悟がそう言うと、

樹里は「ーわたしが、嘘をついてるかもしれないよ?」

と、言葉を口にするー。


「ーいや、俺は樹里を信じるー」

悟がそう言い放つと、樹里は少し戸惑ってから

”ありがとうー”と、そう言葉を口にしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


「おはようございますー」

いつものように”何食わぬ顔”で挨拶をした

樹里を着ている悟ー。


浦川所長が挨拶を返してくるー。


”ーこの施設に送られて来てるのはー

 本当に”罪の度合いの高い”人間だけなのだろうかー”


そんな不信感を抱きつつ、

”洗浄”を進めているフリをしつつ、樹里の身体で、

悟は”何もせずに”時間をつぶし始めたー。



③へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


不穏な空気が色々と漂っていますネ~!


次回が最終回デス~!

最終回の結末も、ぜひ見届けて下さいネ~!!★

Files

Comments

No comments found for this post.