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1年前ー、彼女の雫は勤務していた研究施設の事故に巻き込まれたー。


その際に、研究中だった寄生虫が外部に漏れることを恐れた会社は、

雫ら、数名の研究員を残したまま研究所を封鎖ー、

雫たちは地下に幽閉されてしまったー。


それから1年ー、彼氏で、雫との結婚も約束していた晴信は、

単身、封鎖された研究施設に忍び込む方法を見つけ、

その中へと忍び込んだー。


しかし、その中にいたのは、寄生虫に身も心も支配され、

寄生虫の女王となった雫だったー。


☆前回はこちら↓☆

<寄生>見捨てられた彼女①~幽閉~

「ーーー美琴(みこと)ちゃんは、どうだったー?」 帰宅すると、同棲中の彼女・川島 雫(かわしま しずく)が、 そんな声を掛けて来た。 「ー今日もーー、”身体”は元気そうだったよ」 彼氏の岩井 晴信(いわい はるのぶ)が、そう言いながら笑うと、 「ーーーそっかー」と、雫が少しだけ切なそうに笑ったー。 晴信...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーー雫ー…

 助けに来るのが、遅くなって、本当にごめんー」


晴信は、雫を説得しようと、そんな言葉を口にするー。


禍々しい黒いドレスのようなものを身に纏う雫は、

冷たい目を晴信に向けながら、イスに座ると、

”女王”と言わんばかりに、足を組んで高圧的な態度を示すー。


「ーーでも、俺はー、この1年、雫のことを忘れた日なんてなかったー

 どうすれば雫を助け出せるかどうか、あらゆる手を尽くして来たー」


晴信はそう言い放つと、雫のほうをまっすぐと見つめるー。


「ーーー助けに来るのが遅くなっちゃったのは、本当に

 申し訳ないと思ってるー。

 でも、雫のご両親も心配してるー。

 一緒に…一緒に帰ろうー」


晴信は目に涙を浮かべながら、そう言い放つー。

先程、雫の体内から”寄生虫”が出入りする光景を目にしている晴信は

”雫”が普通の状況ではないとは思いつつも、

言動からすると、”本人の自我”も残っている可能性に賭けー、

そんな言葉を発したー。


だがー、雫は悪女のように笑い始めるー


「ーーあっははははははー…

 でも、晴信はそうでもー、”人間ども”は、わたしを捨てたー。

 わたしを、わたしたちをこの地下に幽閉したー」


雫はそう言い放つと、笑みを浮かべながら、

晴信を見つめるー


「ー今のわたしを突き動かしているのは、人間どもへの復讐心だけー。

 だからわたしは”この子”を受け入れて、女王になったー」


目を見開いて、嬉しそうに笑う雫ー。


「ーう…嘘だー…!雫が自分の意思でそんなことー

 そんなことするわけがないー!」


晴信は叫ぶー。


雫は寄生虫に乗っ取られているー。

”雫の記憶”を読み、雫のフリをしている卑劣な”虫”ー


そう思いながらも、必死に雫本人の意識に呼びかけるようにして叫ぶー。


「ーーほらー…ご両親も、心配してるー」

晴信が、スマホを手に、”雫の両親”から預かったメッセージを再生するー。


周囲には、別の男性研究員が2名ー。

その2名の動きも警戒しながら、雫にその映像を見せ付けるー。


”ー雫ー。助けに来るのが遅くなっちゃってごめんねー”

”ー雫ー。どうか無事でいてくれー”

雫の母親と父親が、それぞれそんな言葉を口にするー。


しかしー、雫はそれもあざ笑ったー。


「ーわたしを見捨てた癖にー。人間なんてどいつもこいつも、同じー」

雫の目に強い憎悪が走るー。


「ーわたしはー、お前たち人間を許さないー…

 晴信ー…あんたも含めてー」

雫の目には憎しみが込められていたー。


”雫”が、こんな表情をすることができるのかー、と驚いてしまうぐらいに、

恐ろしい顔ー。


あの頃の優しい笑顔は、もうそこにはないー


「ーほ、本気でー…本気でそんなこと思ってるのかー…?雫ー」

晴信は思わずそんな言葉を口にしてしまうー。


”雫は、操られているだけー”

そう、思いたいー。


だが、同時に今、”喋っている雫”が、本人の意思で喋っているのだとしたらー?


そんなはずはないと思いつつもー、

”もしかしたら?”と、いう不安に駆られていくー。


「ーー分かってるー。確かに、俺は雫を助けに来るまでに

 こんな時間がかかってしまったー

 俺はダメな彼氏だー…

 

 でも、信じてくれー

 俺が今日、ここに来たのは、雫を、そして他の皆さんを助けるためー…」


晴信はそこまで言うと、

目に涙を浮かべながら、雫のほうを見つめたー。


「ー雫… 生きてて本当に良かったー」


心からの、そんな言葉を雫に投げかけるー。

雫は少しだけ瞳を震わせながら、

イスから立ち上がったー。


がーー…


「ーー女王様ー」

女性スタッフが入ってくると、雫に何やら耳打ちをするー。


そしてー

雫の表情が、鬼のような形相に変わったー


「ーー騙したなー…人間!」

雫が怒りの形相で、晴信を睨みながらそう叫ぶー。


「ーーえっ…?な、何のことだよ!?」

晴信が咄嗟にそう叫ぶと、雫は

「武器を持った人間がこの中に侵入したー」と、

そう言い放つと、突然、狂ったように笑いだしたー


「そっかそっかー

 晴信は、わたしを殺しに来たんだねー

 女王になったわたしをー」


笑いながら、そう言葉を口にする雫ー。


「ーーち、違う!お、俺は、俺は何も知らない!」

晴信はそう叫ぶー。


”武装した人間”が、4名ほど、晴信の後を追う形で

この中に入って来たのだというー。


確かに、そんな状況では雫たちに疑われるのも無理はないー。

しかし、晴信は本当に何も知らないー


”くそっー…俺が侵入したことに誰かが気付いて、

 特殊部隊か何かを送り込んできたのかー?”


晴信はそんな風に考えるー。

”偶然”とは考えられない。


恐らくは、晴信を追って、部隊がこの中に入ってきたのだろうー。

目的は、もしかしたら晴信自身かもしれないー。


「ーーーー晴信ー。”女王”になったわたしを騙すなんてー…

 絶対に許さないー」


雫はそう言い放つと、目を赤く光らせながら

歩き始めるー。


「ーし、雫!ま、待ってくれ!

 お、俺の後に誰かが入って来たなら、俺が説得する!

 みんなには絶対に手出しはさせない!約束する!」


晴信が雫を追いながらそう叫ぶー。


「雫!頼む!話を聞いてくれ!

 俺は本当に一人でここに来たんだ!

 雫たちを傷つけるつもりはーー…


「ーうるさい!どいて!」

雫は、乱暴に晴信を突き飛ばすと、

そのまま、武装兵たちが入って来るであろう通気口付近まで

歩いていきー、笑みを浮かべるー


「ーー人間めー…絶対に許さないー」

憎しみの言葉を口にする雫ー。


押し飛ばされた晴信が、痛む身体を起こそうとしたその直後だったー。


晴信が入って来たところから、

”特殊部隊”の兵士が4名ほど入って来たー。


「ーー侵入者を捕獲、邪魔するものは一掃しろー」

兵士の一人が、そう言い放つー。


容赦なく、銃弾を放つ兵士たちー。


「や…やめろ!!やめろーーー!!!」

晴信がそう叫ぶー。

しかし、その声は銃弾と、寄生虫たちの戦いによってかき消されるー。


研究所内の部屋の一室から、大量の寄生虫が姿を現しー、

兵士たちを取り囲むー。


兵士たちは必死に抵抗しながら、

寄生された男性研究員二人を射殺するー。


がー…

やがて、寄生虫の軍団に取り囲まれて、

まるで触手のような形になった寄生虫に、

4人とも拘束されてしまうー。


拘束された4人を見て、雫は冷たい視線を浴びせるー。


「ーーわたしたちを、閉じ込めただけではなくー、

 こんな風に、命まで奪いに来るなんてー。」


雫はそれだけ言うと、

寄生虫たちに向かって”女王”として命令を下したー。


「まずは、そいつを処刑なさい」

とー。


「ー!!!!」

晴信が真っ青になりながら、雫に駆け寄るー


「ーーお、おいっ!し、雫!

 ほ、本気で言ってるのかー!」


晴信がそう叫ぶ間にも、

寄生虫たちが、捕らえた兵士の一人の首に巻き付き、

”処刑”しようとしているー。


笑みを浮かべながら、それを見つめる雫ー。


「ーーおい!雫!やめろ!!やめろってば!」

晴信は、雫の肩を掴み、雫を揺さぶるー。


「ー雫は…雫は、人の命を簡単に奪うような人間じゃないだろ!!」

泣き叫ぶようにして、晴信がそう言い放つー。


が、雫は止まらないー。


「ーーー今のわたしは、喜んで人も殺すのよー」

雫が邪悪な笑みを浮かべるー。


そしてー、苦しむ兵士に近付いていくと、

雫は、この世のものとは思えない冷たい声で囁いたー


「死ね」

とー。


その声はー、確かに”雫”の声だー。

しかし、同一人物とは思えないぐらいに、冷たい声ー。


”女王”となった雫の命に従った寄生虫たちが、

捕らえた4人の兵士のうちの一人の息の根を止めたー。


「ーーくくくく…ふふふふふー…

 あはははははははははっ!」


嬉しそうにー

”悪の女王”のように笑いだす雫ー。


「ーーひっ…た、た、助けてくれー」

残る3人の兵士の一人が、命乞いをすると、雫は笑みを浮かべながら

その男に近付いていくー。


「ーー雫!やめろ!頼むからやめてくれ!

 君はこんなことする子じゃないー!」

晴信が、必死にそう叫ぶと、

雫は振り返って、足で壁ドンをして、晴信に顔を近づけたー。


「ー”人間への憎しみ”が、わたしを変えたのー。

 今のわたしは、晴信の知るわたしじゃないー。」


雫は睨みつけるようにして晴信を見つめながらそう言うと、

そのままクスッと笑みを浮かべて、兵士の方に向かって

再び歩いていくー。


「ーーどうして、ここに来たの?

 全部、答えなさいー」


雫が高圧的にそう言い放つー。


兵士の一人は、悲鳴を上げながら雫に向かって

全てを口にするー。


自分たちは、秘密機関に所属する特殊部隊で、

この研究所から”誰も外に出さないように”命令を受けているのだとー。

そして、今日、晴信が研究所内に、特殊なルートから侵入したのを察知し、

晴信を追い、この研究所に来たのだとー。


「ーふぅんー

 じゃあ、わたしたちではなく、晴信を追って

 この中に来たのね?」


雫はそう言うと、笑みを浮かべながら、

「拘束を解いてあげなさい」と、

正直に話した兵士を解放させるー。


少し安堵する晴信ー

”大好きな彼女”の平気で人を殺めるような姿は見たくないー。


がー…


雫は、突然その兵士にキスをするとー、

体内に寄生している”寄生虫の女王”が、分泌した毒を、

口からその兵士に流し込んでいくー


悲鳴を上げる兵士ー


「ー女王とキスできるのよ?喜びなさいー」

雫はそう言うと、さらにその兵士に毒を送り込んでいくー。


「や…やめろおおおおお!!」

晴信が、雫に突進しようとするー。


が、雫は「邪魔って言ってるでしょ!」と、

晴信を突き飛ばすと、そのまま2人目の兵士の命を奪ったー。


「ーー…人間に見捨てられたわたしたちの怒りー

 あなたたちに分かるかしら?」


雫は残る二人の兵士を見つめながら、睨むようにして

そんな言葉を口にするー


「ーわたしたちは、真面目に働いていただけなのにー

 あなたたち人間は、わたしたちを見捨てたー。

 だからわたしは、この子たちを受け入れて”女王”になったー


 ふふっ…ふふふっ…あははははははっ!」


雫はそう言い放つと、大量の寄生虫を手に巻き付けて

ブレード状にすると、それを何度も何度も兵士に突き刺したー


返り血を浴びながら笑う雫ー


”こんなの、雫じゃないー”

晴信はそう思いながら、必死に叫ぶー。


「雫…!目を覚ましてくれ!寄生虫に”そうさせられている”だけなんだろ!?

 頼む!雫!

 俺だ!助けに来たんだー!」


晴信が必死に叫ぶもー、

今の雫には、その言葉は届かないー。


雫が”自分の意思”でこんな残酷なことをするはずがないー。

これは”寄生虫”に言わされているー、させられているだけなのだとー、

晴信はそう信じながらもー

”もしかしたら雫は本当に変わってしまったのかもしれないー”という

わずかな不安も抱くー。


「ーーーふふ」

4人の兵士全員を始末すると、雫は晴信の方に向かって歩いて来たー


「ー次は、晴信の番ー」

とー。


「ーーし、雫ー…」

雫を見つめながら、晴信は震えるー。


他の”寄生された職員”たち、2人も雫の背後に控えていて

とても逃げられそうにないー。


「ーーー…雫ー…

 今年、結婚しようって約束したよなー 

 覚えてるか?」


観念した晴信は、そんな言葉を口にするー。


「ーーーー」

雫は、少しだけ表情を歪めるー。


「ーーー…本当だったらー、こんな事故がなければー

 今頃ー…俺たち、幸せになれてたのかなー?」


涙目で、晴信がそう言い放つと

雫は、そんな晴信を鼻で笑ったー。


「ーわたしは今、とっても幸せー

 だってー、わたしは”女王”なんだものー」


クスクスと笑う雫ー。


そして、雫は晴信に蹴りを加えると、

「ーお前たち人間は、わたしたちを見捨てた!」と、

憎しみの言葉を吐き出しながら、殴る・蹴るの暴行を続けたー。


例え雫が変わってしまったのだとしてもー、


「ーーー雫ー…」

晴信はボロボロになりながら、雫のほうを見つめるー。


「ーわたしは”女王様”よー?

 気安く呼ばないで」


雫はそう言うと、晴信を踏みにじるー。


そしてーー

笑みを浮かべながら、先ほどと同じように、

寄生虫たちを手に集めて、ブレード状に変形させると、

それを晴信に向けたー。


「ーー愚かな人間ー

 最後に言い残す言葉は、あるかしらー?」


雫のそんな言葉に、晴信は涙を流しながら

言葉を口にしたー。


「ーーーー愛してるー」

とー。


「ーーーー…?」

雫の表情から笑顔が消えるー。


「ーー俺、いつまでも雫のことが、大好きだー…」


晴信は涙を流しながらー

真っすぐ雫のほうを見つめながら、

そう、言い放ったー


「ーーーーーー!!!!!」


その時だったー


雫が突然、頭を抱えてその場に蹲るー。


「ーーー!?!?!?」

晴信が驚いて雫のほうを見つめると、

雫は苦しそうにしながら、振り絞るように声を発したー


「ーーーー げ、 てーーー」


その言葉は、ハッキリとは聞き取れなかったー。


だがーー、

雫は、最後その言葉を口にしたー。


それは、今度はハッキリと聞こえた。


”逃げてー”


とー。


晴信は「雫!?雫なのかー!?」と、咄嗟に叫ぶも、

すぐに雫は雄たけびのようなものを上げて立ち上がったー。


「雫ーーー」

晴信はグッと拳を握りしめると、そのまま雫の反対側に向かって

走り出すー。


”ーー雫ー、やっぱり、君は、君のままなんだなー…”

晴信は、”本当の雫”がまだちゃんと存在していることに希望を抱きながら

研究所の一角へと逃げ込むー。


”俺は、雫を置いては逃げないーけどー”


「ーーー…1対1で、なんとか話ができる状況を作れればー」

そう思いながら、晴信は雫の前からいったん離れー、

”なにか方法はないかどうか”周囲を見渡しながら、

薄暗い研究所の中を走ったー…。



③へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


寄生されてしまった彼女にも、

まだ本来の心が…!


どうなってしまうのかは、この先の展開を

楽しみにしていて下さいネ~!


今日もありがとうございました~!

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