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一人暮らしのフリーター・石松 大悟(いしまつ たいご)は、

最近、密かな楽しみがあった。


それはー

アパートの隣の部屋に女子大生が引っ越してきたことだ。


別にー怪しいことをしようと言うわけではない。

何の変哲もない毎日に少しだけ

華が添えられたー。

それだけのことだ。


皮井 美咲(かわい みさき)-

”美人”と称するにふさわしい美貌の持ち主で

それを気取ることもなく、とても控えめな感じ子だー。


「あ、皮井さん、おはようございます」

大悟も、2年前に大学を卒業したばかりだし

それほど年齢が離れていないこともあって、

二人の会話はそこそこ話は弾むー。


「ねぇねぇ聞いてくださいよ~!

 友達の彼氏が3股かけていて~」

美咲が呆れたように言う。


「はは、それは流石に酷いですねー」

大悟も苦笑いしながら言う。


こうして、時々女子大生である美咲と

会話するだけでも、

大悟にとっては、それが癒しになっていた。


もちろん、美咲と特別な関係になるつもりはないし

おかしなことをするつもりもない。

当然、美咲からもそういう目では見られていないだろうー


それでも、こうして日々、近所の人として

何気ない話をするだけでも、

大悟にとっては満足だったー。


だがー。

”気になること”があるー。


それはー


「きゃああああああ!助けて!」


”また”だー。

大悟は思うー


夜になると、

かすかに、美咲の部屋から

女性の悲鳴が聞こえてくるのだー。


しかもー

その悲鳴は皮井さんの声によく似ている。


最初、何かあったのかと思い、

思わず隣の部屋のインターホンを押して

美咲の無事を確認したこともあったが、

美咲は普通に出て来て

”わたし、映画みるのが趣味なんです”と

苦笑いしていたー

”うるさくしてすみません”とそれ以降、

彼女はボリュームを下げたようだったが

それでもたまに”女性の悲鳴”が

かすかに聞こえてくるのだった。


そして、もう一つ気になることがある。


それはー

”時々、男の笑い声が聞こえること”だー。

最初は、美咲の彼氏かとも思っていたが

なんとなく、違う気がするー。

と言うのも、美咲の部屋に男が出入りしているのを

見たことがないし、

本人も以前”彼氏はいない”と笑っていたー。

もちろん、美咲が嘘をついている可能性もあるし、

彼氏が出入りしているのをたまたま

見ないだけかもしれないがー。


・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


「おはようございます~」

大学に向かうために部屋から出てきた

美咲が、大悟に気付いて挨拶をする。


「あ、おはようございます」

ゴミ出しをしていた大悟が

美咲に挨拶をする。


「---今日もお仕事ですか~?」

可愛らしい笑顔でそう尋ねてくる美咲に

「あぁ、そうですね。午後からですけど」と

大悟は答えたー


「ふふ、頑張ってくださいね」

美咲はそう呟くと、そのまま大学に向かうために

立ち去って行くー。


ピクッ


歩いていた美咲が一瞬

不気味に震えた気がした。


「---?」

大悟は”どうしたのかな?”と思いながらも、

特には気にせず、そのまま

自分の部屋へと戻って行くのだったー。


夜ー。

バイトから帰ってくると、

たまたま、美咲と鉢合わせしたー


「あれ?皮井さん…」

大悟が声をかける。


しかしー

美咲は後頭部のあたりを押さえながら

慌てた様子でアパートの方に向かって行く。


ただ事じゃない様子だったー


「だ、大丈夫ですか?」

思わず大悟が声をかけると、

美咲は叫んだ。


「触るな!」


ーと。


乱暴な口調でー。


「あ、す、すみませ…」


あまりにも後頭部を痛そうに

抱えていたので

心配になってつい触れようとしてしまったが

うかつだったー。


部屋に慌てて入って行く美咲を

見つめながら、大悟は

自分の行動を反省するのだったー


”はは…ははははは…ははははは…

 あっぶねぇ~!”


部屋に入ると美咲の不気味な声が

聞えてきたー


「---?」

大悟は不思議そうに、聞き耳を立てるー。


”あ~あぶなかったぁ…

 ”皮”が危うく腐るところだったぜ”


美咲の声ー。

隣の部屋から聞こえる声だから

はっきりと内容が聞こえなかったが

そう聞こえた気がしたー。


”そろそろ変え時かなぁ…ひひ”


「---!?」

大悟は驚くー。


突然、隣の部屋に男の声が

響き渡ったのだー


「男ー?」

大悟は首をかしげたー。


やっぱり、誰かと同居しているのだろうかー。


だが、

何かが違う気がするー


大悟は、不気味さを少し感じながらも

それ以降は特に声が聞こえてこなくなったので

気にするのをやめて、

部屋で昨日読んでいた小説の続きを

読み始めたー…。


・・・・・・・・


翌日。


「--あ、おはようございます」


ゴミだしの時間に

昨日と同じように美咲と鉢合わせした。


美咲から少し”腐臭”のような

ニオイがしている気がする。


香水の匂いでうまく

誤魔化されているが、

ほんのかすかにー

”変なにおい”がするー。


「----おはようございます…」

大悟はとりあえず挨拶を返す。


美咲の手に、痣のようなものが見えたー


「あ、、、あの…」

大悟はそこまで言いかけて口を閉ざしたー


女性にそんなことを聞くのは

失礼だろうし

”なんかニオイが”とは流石に言えないー

大悟は昔から鼻が効きすぎる一面もあったし、

余計なことは言わないほうがいいー

そもそも気のせいかもしれない。


「--わたし、昨日はちょっと急いでて、

 その、気分を害してたらすみません」


美咲が頭を下げる。


”触るな”と怒鳴った件についてだろう。


「--あ、いや、

 俺の方こそ、急に触れようとしてその、

 すみませんでした」

大悟が頭を下げると

美咲はにっこりとほほ笑んだ。


「いえいえ、お気持ちは嬉しかったですよ」


そう言うと、会釈して

美咲は大学に向かって行くー


「----」

大悟は、ふと、スカートから覗く足にも

手と同じような”痣のようなもの”が

あることに気付いた。


(な、、何が起きてるんだ…)


大悟は不安になるー

あの腐臭のようなものは一体ー?


彼氏に暴力でも受けているのだろうかー

それともー

暴力を受けた美咲が、彼氏を殺したのだろうかー


”男の声”はたしかにしたー

美咲の悲鳴も確かに聞こえたー


本人は”映画”だと否定しているが

もしやあれは、”DV”でも受けているのではないかー


大悟は不安になったー


そしてー…


夜ー。

大悟は、居ても立ってもいられなくなり、

美咲の家をノックした。


”やはり、誰か居る”


大悟はそう確信したのだったー


「皮井さん…

 すみません!いらっしゃいますか?」

大悟は部屋をノックするー


今日は休日で1日中家にいたが

まだ美咲は帰って来ていないー。


大悟の推理が正しければ

皮井さんの部屋に

”男”が居て、

その男が美咲に暴力を振るっているー。


そしてー

もしかしたら”その男”が

昨夜、殺されたかもしれないー


そんな風に大悟は思っていたー


部屋をノックしても返事がないー


ふと、大悟は部屋の鍵が

開いていることに気付くー


「……」

大悟は、思わずそのまま

中の様子を見に入ってしまったー


”何やってるんだ俺は!

 これじゃ女子大生の部屋に侵入してる

 変態じゃないか”


そんな風に思いながらー


しかしー

部屋の中はー

”まるで、一人暮らしの男”のように

散らかっていてー

”女子力0”と言うにふさわしい部屋だった。


可愛らしい小物などはひとつもない。


缶ビールの空き缶が転がっていて

煙草の箱が積まれているー


「やはり、男?」

大悟は、そんな風に思いながら、

ふとテレビの方に目をやる。


机の上には”美咲”と書かれたDVDが置かれている。


「……」

大悟は気になって、それを再生するー。


するとー


”やめて!お願い!助けて!


林のような場所で、

美咲が悲鳴を上げながら逃げている映像が

再生されたー


「きゃああああああああ!やめて!

 いやああああああ!」


美咲を掴む男の手ー


「---!!」

大悟はあることに気付いた。


”この悲鳴ー”


これは、いつも大悟の部屋に聞こえて来ていた

”女性の悲鳴”だー。

美咲の声に似ていると思っていたが

やはり、美咲の声だったのだー


「こ、、この映像はなんだ?」

大悟が冷や汗をかくー。


この悲鳴は日常的に聞こえていたー


つまりー

美咲が”自分が何者かに襲われている映像”を

毎日のように見ていることになるー


”へへへ…怖くないぞぉ~”

男の声ー

撮影者の声だ。


撮影者はカメラで逃げる美咲を撮影しながら

美咲に何かしようとしているのだ。


”やめて!お願い!助けて!やめて!”


美咲が必死にもがくー


何なんだこの映像はー?

大悟は、恐怖を感じながら

その映像に見入っていたー。


その時だったー


ガチャー


「------!」


玄関の音がして、大悟は

ドキッとしてそちらを見ると、

そこにはー

美咲の姿があった。


「---あ~あ」

美咲が呟いた。

いつもの美咲とはちがう、低い声でー。


「--もう少し、女子大生やってたかったんだけどなぁ…

 そろそろ、潮時かぁ…

 ”身体も、腐ってきたし”」


ーー!?


大悟は、人の部屋に勝手に

侵入したことを詫びることも

忘れて、美咲の方を見たー


朝見た”痣”のようなものが増えているー


「皮にすると、

 生きてるはずなのに

 どうしても、腐ってくるんだよなぁ~」


美咲が笑う。


「皮…!?

 腐る…?」


大悟が恐怖を感じながら呟くー


横ではDVDの再生が続いているー


”あぁぁ、、、た、、たすけ…”


美咲が、撮影者の男に、

手をかざされて

”後頭部”にチャックのようなものが

浮かび上がる場面が流れているー


そしてー

撮影者の男が笑いながら

そのチャックを下に引き下げるー


信じられないことに

美咲の身体が”着ぐるみ”のような

皮になっていき、

地面に力なく、垂れさがるー


「うぷっ…」

大悟は思わず吐き気を覚えるー


なんだ、この映像はー-!?!?


「---わたしの大好きな”映画”です」

美咲がにっこりと微笑んだー


「わたしが、”皮”にされちゃう瞬間の…

 ひひひ…ひひ」

美咲の様子がおかしいー


ペロリー


美咲の顔がーーー

めくれたーーー


そしてーーー


「うわああああああああああ!!!!」

大悟は、この世のものとは思えぬ

悲鳴を上げた。


美咲の顔が、皮のように

ペロリとめくれてー

中から美咲の皮を着こんでいた

”男”が現れたー


美咲の顔は、ぱっくり割れて

笑みを浮かべたままだー


「ひひひひひ…

 美しいだろう?」

テレビを指さす男ー


顔だけ出ていて

美咲の皮を身に着けたままの男ー


「--俺はさ、

 ヒトを皮にする力を持ってるんだよ。

 生まれつき、、な…ひひ」


美咲から出てきた男が笑う。


大悟は足を震わせていて、

声も出せないー


男の声が部屋からたまに聞こえていたのはー

こいつだーー

美咲の中にいるこいつがーーー


大悟はそう思ったー。


「--皮にされる瞬間の女の姿…

 美しいよナァ…


 俺はいつも女を皮にして着込むときに

 その瞬間を録画するんだー

 今、お前が見ている映像のようになー」


大悟はテレビをチラ見するー


既に、男が”皮になった美咲”を着込んで

美咲になって大笑いしているー


「ひひひひ…

 毎日、毎日、皮になる瞬間のわたしを見て

 興奮してるのさ…ひひひひひ」


美咲の皮を再び着込んだ”なにか”は

不気味に微笑んだー


「か、、皮井…さん?」

大悟はがくがく震えながらそう呟いた。


「皮井?ふふ…

 この女の本当の名前はなんだと思うぅ~?

 皮井はわたしがつけた偽名さ…ひひひ」


痣だらけの美咲が笑うー


「正解はぁ~!

 俺も知らない~でしたぁ!あはっはははは☆


 適当に可愛い女を捕まえて

 皮にしてその女になりきってるだけだからなぁ~


 え、大学?

 行ってねぇよ~へへ

 出かけてたのは男遊びするためだよ」


美咲が狂ったように笑いながら言う。


大悟は恐怖で動けないー


「あぁ、この痣?

 皮にするとさぁ、生きてるんだけど

 なんか変質するのか

 だんだん身体、腐ってくんだよねぇ。

 この女も、もう限界みたいだぁ…けけけ

 昨日はさ、腐りかけてて後頭部のチャックが

 見えそうだったから慌ててさぁ」


美咲がそう言いながら、

大悟の方に近づいて

にっこり微笑んだー


その手には、いつの間にか

ビデオカメラが握られている。


「いいね」

美咲は微笑んだー。


震える大悟。


大悟の方を見ながら

痣だらけの美咲は

静かに囁いた。


「次の”皮井さん”は、お前だよー」


と。



おわり


・・・・・・・・・・・・


コメント


今日は皮モノでした~!

皮モノは、まだまだ執筆経験が少ないので

皆様を楽しませることができるかどうかは

分かりませんが、

これからも定期的に頑張っていきたいデス~!


お読み下さりありがとうございました☆


明日は「世界初の入れ替わり手術」の続きを

予定していますー!



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