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「ちょちょちょちょちょ、タイム!タイム!」

香里(亮真)は、可愛い声でそう叫んだ。


ビルの屋上ー


そこには、一組の男女。

男のほうは、ビルの端っこに立ち、今にも飛び降りそうな状況だー。

女のほうは、男の自殺を止めようとしているー


しかも、本人たちは”入れ替わっている”


男子大学生の亮真と、女子大生の香里は

路上で偶然ぶつかってしまい、

身体が入れ替わってしまったのだった。


”これから自殺しよう”としていた香里は

亮真の身体になってしまっても

お構いなしに、自殺しようとしていた。


香里(亮真)は何とかしようと

必死に頭をフル回転させる。


このままだと、亮磨の身体のまま

香里は飛び降りてしまい、

2度と元には戻れなくなる。


スカートから覗く足に風が当たって

なんだかスースーする。

綺麗な髪が風でなびくー

せっかく入れ替わったのだから、

髪とか胸とか足とか堪能してみたいー


そんな気持ちは亮真にもあったし、

今も、スカートをはいている自分に

ドキドキしているー


けどー

そんな場合じゃなかった。


「俺の身体で飛び降りないでくれ!」

亮真は心の中でそう叫んだ。


「---もういいですか?わたし、死ぬので」

亮真(香里)は

女言葉を男の身体で口にすると、

飛び降りる体制に入った。


「--ま、待ってくれ!

 き、君が死んだら、絶対誰か悲しむし、

 生きてさえいれば、何だってできる!

 死んだらそこで終わりだぞ!」


香里(亮真)は

女の声でそう叫んだ。

普段香里が出さないような力強い声。


「早まっちゃだめだ!」

香里(亮真)はどこかわざとらしくそう叫んだ。


亮真(香里)はその言葉を聞きながら

虫唾が走った。

テンプレートのような言葉だ。


誰かが悲しむ?

生きていればなんだって出来る?


自殺するほどに追いつめられた人間のことを

何もわかっちゃいない。


”自殺を考えたことのない立場からの

 安っぽい言葉は、どんなに叫んでも、響かない”


亮真(香里)は腹が立ってきて叫んだ


”あんたにわたしの何が分かるの?”

香里は内心でそう思いながらー。


「わたし、そういう安っぽい言葉嫌いなんだよね!」

「俺、こういう安っぽい言葉嫌いなんだよな!」


二人は、同時に同じ言葉を口走った。


「え…?」

亮真(香里)は驚いて背後を振り向く。


香里(亮真)が苦笑いしながら言う。


「いや、さっき俺が言ったみたいな

 ありきたりの言葉? 

 よく見るけどさ、俺、ああいうの嫌いなんだよね。

 

 死にたい人には死にたいだけの理由が

 あるんだと思うし、

 分かったような口を聞くのもなんだか違うと思うし。


 誰かが悲しむぞー!とか

 生きてたら何でもできるぞー!とかさ、

 そんな言葉で響くなら、自殺なんて

 しようとしないだろ?」


香里(亮真)が綺麗な髪を

掻き毟りながら言う。

風でなびくロングヘアーは、慣れていないとジャマくさい。


「ーー俺が君の自殺を止めに来たのは、

 君に死んでほしくないからじゃない」


香里(亮真)はそこまで言うと

叫んだ。


「とにかく、俺の身体を返してくれー!」


とー。


亮真(香里)は依然として屋上の淵に

立ちながら振り返る。


「ーー俺の身体返してくれれば、別に

 あとは飛び降りるなりなんなり

 してくれてもいいからさ」

香里(亮真)の言葉に

亮真(香里)は唖然とする。


「わ、わたしのことは心配してくれないの?」

ーと。


香里(亮真)は即答した。


「うん。」

と、シンプルにー。


「はぁ?」

亮真(香里)は思わずカッとなった。


「じゃあ、何? 

 あなたに身体を返して、あとは

 飛び降りろってことですか?」


亮真(香里)の言葉に香里(亮真)は

苦笑いしながら言う。


「いや、飛び降りろとは言ってないよ…

 身体を返してくれれば

 俺はここから立ち去るから、

 あとは君の好きにして…」


香里(亮真)は自分の口から

女の声が出ていることにまだ慣れず

少し戸惑う。

正直、声を出すだけで少し興奮する


「わ、わたしに死ねってことですね!」

亮真(香里)は叫んだ。


(面倒臭いやつだな…)

亮真は思う。

なんだかメンヘラ系な気がしてきた。


「…その身体あげますから。

 別にエッチでもなんでもしてください!」

亮真(香里)はそう叫ぶと

再び飛び降りようとする。


「いやいやいや、待て待てって!」


亮真(香里)の動きが止まる。


「し、正直さ、ここまで走って来て

 スカートはふわふわしてなんか

 違和感バリバリだし、

 スースーしてて落ち着かないし」

香里(亮真)が言うと

亮真(香里)は答える。


「ズボン履けばいいじゃないですか」


香里(亮真)は”そういう問題じゃねぇ”と思いながら続ける。


「か、髪も長くてジャマだし

 視界を遮るし」


「-切ればいいじゃないですか」


「-…む、胸…!違和感凄いし

 なんか重い気がするし、下向くと興奮するしー…」


「-人間、慣れですよ」


何を言っても

淡々と返事を返してくる亮磨(香里)


「だぁぁぁぁあ~~~!

 とにかく俺の身体を返してくれ!

 友達とか、俺の家族とか、

 心配するから、返してくれぇ!」


香里(亮真)が

口から唾をまき散らしながら叫ぶ。

今、自分が女性であることを気にしているヒマが

ないほどに、必死だった。


「---入れ替わっちゃったこと打ち明ければいいじゃないですか」

亮真(香里)が言う。


「うん。全部カンペキ」

なぜか亮真(香里)が勝手に納得して

満足そうに飛び降りようとする。


「おおぉぉぉい!勝手に納得するなぁ!

 つか、入れ替わった何て言って信じてもらえると思ってるのか?」

香里(亮真)が大声で叫ぶ。

普段大きな声を出さない香里の喉は痛みを

発し始めていた。


「いちいちうるさいですね」

亮真(香里)が振り向く。


「--うるさいじゃねー!俺の身体を返せ!」

香里(亮真)が叫ぶ。


「----」

「----」

2人は互いに見つめ合ったまま、こう着状態になるー。


(こいつ、わたし、死ぬから女子か?)


香里(亮真)は、

賭けに出ることにした。


がに股でずかずかと歩きだした香里(亮真)


「---こ、来ないで!飛び降りますよ!」

亮真(香里)が叫ぶ。


いいやー

君は飛び降りないー

まだ、死ぬ決心がついていないー


亮真はそう思いながら、亮磨(香里)の手を

引っ張った。


しかしー


「あれ…?」

今の亮真は香里の身体ー。

亮真の身体の方が力強く、

自分から相手の手を掴んだはずの

香里(亮真)が地面に押し倒される

格好になってしまった。


「きゃっ…?」

思わず変な声を出してしまう香里(亮真)


香里(亮真)があおむけになり、

亮真(香里)がその上で四つんばいの

ような状態になっている。


「……」

「……」


”きゃっ”とか変な声出ちゃったじゃねーか!と

香里(亮真)は思いながらふと、亮磨(香里)の

身体を見つめた。


「--な、なんで勃ってんの?」

香里(亮真)が指をさすー


亮真(香里)のアソコが勃起していたー


「ふぇぇぇ!!?!?

 し、知らないですよぉ!

 わたしは何も!?」


顔を真っ赤にいて、亮磨(香里)が言う。


”おいおい、俺の身体でその反応やめてくれよ

 吐き気がする”


亮真はそう思いながら、

”そろそろどいてもらえるかな?”と呟く。


屋上で立ち上がる2人ー。


なんとか、ビルの端から遠ざけることができた。


「こ、これ、どうにかならないんですかぁ?」

亮真(香里)が顔を真っ赤にしている。


「し、知らないよ…」

香里(亮真)も何故か顔を赤くして目を背ける。


「--じ、じゃあ、わたし、死にますから!

 ごきげんようです!」


訳の分からないことを言いながら

亮真(香里)は再びビルの端に向かう


「おぉぉぉぉぉぉい!待てって!」

香里(亮真)が叫んだ。


ど、どうすりゃいいんだ?

やっぱこいつ死ぬ気だ。

もう、まずい

早くしないと


亮真は頭をフル回転させる。

この子が死のうとしている原因は何だったか?


確か、失恋ー

あと就職活動ー


亮真は、飛び降りを阻止したい一心で、

叫んだー


「俺の彼女になってくれ!!!!!!」

とー


自分でも何を言っているか

よく分からなかったが

とにかく、そう叫んでしまった。


「・・・・・はい?」

亮真(香里)が振り返る。


「--と、とにかく…か、、身体を返してくれ

 君、失恋したんだろ?だ、だったら

 俺が代わりになる!

 あと、就職!、身体を返してくれたら

 俺が養ってもいい…!だから…!」


香里(亮真)が必死に叫ぶと

亮真(香里)が顔を真っ赤にして近づいてきた


「じゃ、、、じゃあ、よろしく、、、です」


はぁ!?

亮真は思わず叫んだ。

切り替わりはやっ!?

つか、いいのかよ!とー


「--じ、じゃあ、身体、返して」

香里(亮真)が言う。


亮真(香里)が、「はい…」と呟く。


こういう時は、

もう一度ぶつかって元に戻るー

亮真はそう提案した。

入れ替わりの王道だ。


亮真(香里)と

香里(亮真)は

屋上の反対側から走り、

思いっきり激突したー


・・・・・・・・・・・・・・・


「…いってぇ~!」

胡坐をかきながら叫んでいるのは、

香里だったー


「---わたしだって、痛いですよぉ」

亮真が呟くー


思いっきり正面衝突したのに

戻れなかったー。

ドラマとかでは、もう1回ぶつかって

戻れるはずなのに、と香里(亮真)は

ラフな格好で嘆く。


二人はとりあえず亮真の家に移動して

今後のことを相談するのだったー



それからー

2人は付き合い始めた。

がー、元には戻れず

香里は亮真として

亮真は香里として

暮らすことになってしまった。


程なくして、亮磨の家で、二人は

同居することになったー。


「今日は遅くなるから…」

香里(亮真)が言う。

女の身体にはまだ慣れない。

と、言うか早く戻りたい


「えぇ!?遅くなるんですか?」

亮真(香里)が叫ぶ。


「さ、寂しいとわたし、死んじゃいますよ!?」

亮真(香里)が叫ぶ。


「--はぁ…」

香里(亮真)は溜息をついた。


いつ、元の身体に戻れるのだろうかー。

しかも、この香里という子ー

なんか、すぐに死にたがるし、

元々そういう子なのかもしれないー


LINEの返事が遅れると

”これから死のうと思ってますです”とか

送られてくるしー…。


香里(亮真)は溜息をついたー


当分、女体を堪能する気分には

なれそうもないー



おわり


・・・・・・・・・・・・・・


コメント


なんとか自殺は阻止できましたネ~!

めでたしデス!

私の作品なので、読んでくださった皆様の中には

どうせどっちか(もしくは両方)死ぬんだろ?と

思ってた人もいるのではないでしょうか~?笑


お読み下さりありがとうございました☆

次回の入れ替わりモノも楽しみにしていてください☆

(次は入れ替わり以外の予定デスー)


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