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「ーーーはぁ~…今日も疲れた~」

派手な格好で、アクセサリーを身に着けた女が、

玄関の扉を開けて、家に入ると同時にそう呟いたー。


おしゃれな髪型ー

しっかりとメイクの施された可愛らしい顔立ちー、

少し派手なキラキラした服装ー。


とても目を引きそうな美人の彼女が、家に入ってくるとー

そんな彼女の帰りを待っていたのはーーー

ソファーに寝そべってスマホをいじっているボサボサ頭の女だったー


「ーーーあ~~~おかえり~~~~」

のんびりとした口調でそう呟くボサボサ頭の女ー。


「ーーただいまー」

そんな彼女を見つめながらキラキラしたおしゃれな女の方が

そう呟くとー、

「ーーそれにしてもー”同じ顔”なのに別人だよなー」と、

男のような言葉遣いで言葉を発したー。


「ーーーーん~~~~~? たしかに~」

笑うボサボサ頭の女ー


よく見るとー

二人の顔は”全く同じ顔”だったー。


しかし、片方は綺麗に着飾っておしゃれをして、

キラキラしたオーラを放っていてー、

もう一方は、ボサボサ頭で、パジャマ同然の服を

だらしなく着ながら、眠そうにあくびをしているー。


二人はーー

”双子”ではないー

ましてや”他人の空似”でもないー。


「ーーーーーはははー全くー、明梨(あかり)は本当に変わらないなぁ」

そう言いながら、キラキラした方の女がそう呟くと、

明梨と呼ばれたボサボサ頭の女の方が、帰宅した女のほうを見つめながら

「ーわたし、永遠のニートだし~~~」と、少しだけ笑ったー


「ーーーは~~少しは俺の身にもなってくれよ~」

キラキラした格好の女はそう言うとー、

突然、服以外ーー

身体の部分が全身、ドロドロした液体のような人型に変わりー、

一瞬にして”男”の姿に変わったー。


「ーーーー”女”として”男”の接客するの、疲れるんだからさー」

キラキラした服装の女がー、男の姿に戻ったー。


彼はー

石塚 昌磨(いしづか しょうま)ー。

ボサボサ頭の女ー、明梨の”彼氏”だー。


大学時代、付き合い始めた彼女の明梨と、現在、同棲生活を送っており、

いずれは結婚も考えているー。


「ーーいいじゃん~~~!

 せっかく手に入れたその便利な力、使わなくちゃ~」

と、明梨は笑ったー。


昌磨はー

”他人に変身する力”を持っているー。


大学卒業後、就職した製薬企業の向上で”会社の設備保全”がいい加減だった

ことが原因で、事故が起きー、

その時に実験中だった大量の薬剤を浴びてしまったー。


幸い、命は助かったものの、昌磨は

”超常的な力”ー

他人に変身する能力を手に入れたのだー。


その事故で、昌磨以外の巻き込まれた社員十数名が死亡、50人近くが

怪我をしたことで、工場は閉鎖ー、会社も事実上の倒産状態となり、

昌磨は失職したー。


バイトをしながら、なんとか彼女の明梨を支えつつー、と思っていたところ、

昌磨から”変身能力”を打ち明けられた明梨は、

”じゃあさ、わたしの姿使って、仕事とかしてみたら?”と

提案してきたのだー。


”夜の仕事”は、とても稼げるー。

昌磨さえ嫌じゃなければ、わたしの姿を貸してあげるからー、

夜、わたしの姿で働いて来たらどう?、と、

明梨が提案したのだー。


変身能力を悪用する気がなかった昌磨は、最初でこそ拒否したものの

「お金がないと~!生活していけない!」と、明梨が

怒り出したため、渋々、明梨の申し出を受け入れて、

今に至っているー。


仕事の時間になると”明梨”に変身してー、

”明梨”として夜の仕事をしてー、

帰宅すると、”元の姿”に戻るー。


そんな生活を続けているー。


「ーーーーーーーって、しまったああああ!!!!」

変身を解いて、明梨から昌磨の姿に戻った昌磨が声を上げるー。


着替える前に変身を解いてしまったためー、

”夜のお仕事”モードの女物の服を着たまま、

男に戻ってしまったー


「ウォェッ…」

自分に女装は似合わないし、その趣味もない昌磨にとっては

自分がそういう服を着て、アクセサリーをぶら下げている姿を

見るのは、苦痛以外の何物でもなかったー。


「ーーも~~!ドジなんだから~」

ソファーに横たわりながら、明梨がスマホを見つめながら

そう叫ぶと、「仕方ないからもう1回!」と、昌磨は

明梨に触れて、明梨の姿に変身すると、慌てて着替え始めたー


「に、してもーわたしってば”素材”がいいから

 そうやっておしゃれすると、滅茶苦茶美人だよね」


明梨がスマホを机に置いてそう言うと、

明梨の姿をした昌磨が「はははー…確かにお店のお客さんも

すっごい褒めてくれるよー」と、苦笑いするー


「ーーーん~~~~~~…やっぱ別人」

明梨が、明梨に変身した昌磨の姿を

じろじろと見つめるー


「や…やめろよ恥ずかしいー

 そ、それに着替え中なんだけどー…」

明梨の姿をした昌磨がそう言うと、

明梨は「わたしが、わたしの身体を見るのは自由でしょ」と、

笑いながら言うー。


「~~~~~~~~」

顔を赤らめながら”本物に着替えを見られる偽物”の

気分を味わいつつ、なんとか”いつもの自分の服”を着ると、

そのまま変身を解いたー。


「ーーふ~~~~…これでよし、とー」

ようやく昌磨は安堵のため息をつくと、

そのまま台所に向かうー。


台所には使い終えた食器とコップの山ー。


彼女ー…

明梨が、昌磨が仕事に行っている間に出した洗い物だー。


明梨は”ニート”だー。

しかし、家のことも何もやらないー。


働きもせず、家のことも何もせず、

昌磨に対して全てを任せっきりー…

そんな、状態ー。


しかし、昌磨は嫌な気持ちになりながらもー

それを我慢して、笑顔で明梨に接しているー。

どんなにストレスが爆発しそうになっても、

それを我慢して、笑顔で明梨に接しているー。


彼女もー”昔”は、こんなではなかったからだー。


大学生の頃ー、

明梨はとても一生懸命だったー。

将来の夢を目指して、本当に毎日努力をしていたし、

輝いていたー。


だがーーーー

明梨の”夢”を応援してくれていた父親が、突然倒れたー


原因は、脳梗塞ー。


”明梨の作ったケーキを食べるのが、楽しみだなー”

そんな風に、明梨の夢を応援してくれていた父ー。


幸い、命は助かったものの、

その後遺症で、父は記憶障害を起こしてしまいー、

お見舞いに来た明梨に対して

「どちら様ですか?」と、いう残酷な言葉を投げかけたー。


しかもーーーー

明梨にとっては最悪なことにー、

3歳年下の”妹”・美音(みおん)のことだけは

何故か覚えていてー、

”自分だけが忘れられて”しまったー。


医師が言うには抜け落ちた記憶と、そうでない記憶があって、

お父さん本人がそれを選んだわけじゃないー、と

説明してくれたものの、

”わたしだけが忘れられた”ことに、明梨は強くショックを受けー、

壊れてしまったー。


夢を応援してくれる人がいなくなりー…

生きがいを失ってしまった明梨は、

堕落した生活を送るようになりー、

就職活動も放棄して、ニートとなりー、今に至るー。


今では、明梨はー

「どうせ頑張ってももうお父さんはいないし」

などと、繰り返すようになってしまったー。


そんな過去を知っているからこそー…

父親が倒れる”前”の明梨を知っているからこそー、

昌磨は、明梨に強く言うことは出来ずー、

面倒を見ている状態だったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーー”まだ”明梨ちゃんと同棲してるのかー?」


週末ー。

久しぶりに大学甚大の親友、富岡 亮介(とみおか りょうすけ)と

会う約束があったため、待ち合わせ場所のファミレスで合流した昌磨ー。


昌磨と久しぶりに再会して、最初に言い放った言葉が”それ”だったー。


「ーーまぁ…なー。」

少し気まずそうに、昌磨がそう呟くと、

亮介は「早いうちに”区切り”を付けた方がいいぞー」と、言葉を口にするー


「それが、お前のためー。それに明梨ちゃんのため、だー」

亮介のそんな言葉に、昌磨は悲しそうに表情を歪めるー。


「ー確かにー…今は正直、”酷い彼女”だって思うよー。

 でもー…俺は明梨がああなった事情を知ってるしー…

 だからー…俺が支えてあげないと、ってー」


昌磨が言うー。


昌磨・明梨・亮介は大学入学前から面識があるー。

昌磨は明梨と高校時代も一緒でー、

亮介は小さい頃、明梨と近所に住んでいた幼馴染だったー。


だがー、亮介の方は、大学時代の明梨の父親の件以降、

明梨とは距離を置いているー。


「ーその気持ちは分かるー。

 でもなー、昌磨ー

 このままじゃ、お前、壊れるぞー。

 

 会うたび、会うたびに顔色が悪くなってるー。

 お前だって、例の事故で体調にいつ異変をきたしても

 おかしくないんだー

 無理はすんなー」


亮介のそんな言葉に、昌磨は「ーー俺、顔色悪いか?」と、

心配そうに呟くー。


「ーーあぁ。自分じゃ自覚もできてねぇってのはー

 マジでヤバい状況だからなー?」


亮介が釘を刺すようにして言うー。


「ーーーーーー」

不安そうな表情を浮かべる昌磨ー。


「ーーー明梨ちゃんは、もう、昔の明梨ちゃんには戻らねぇよー。

 壊れた人間は、そう簡単には元には戻らないー」


亮介がそう呟くー。


「ーー知ってんだろ?”俺の姉貴”ー」

亮介のそんな言葉に、昌磨は険しい表情を浮かべながら

「ー相変わらず、なのかー?」と、言葉を口にするー。


亮介は頷くー。


亮介の姉は、とても優しく、面倒見の良い子だったのだがー

交通事故に巻き込まれた際に、足を負傷しー、

自分で歩くことができなくなりー、人が変わってしまったー。


今でも会うたびに、弟の亮介を罵倒するのだというー。


”またわたしを笑いに来たんでしょ!?”

とー。


「ーーーー”いつかは昔に戻ってくれるかもしれない”なんてー

 ーーーー幻想なんだ」


亮介が悲しそうにそう呟くー。

昌磨が神妙な表情を浮かべているとー、


「ーと、わりぃわりぃ、せっかく久しぶりに会ったのに、

 こんなクソみたいな話しちゃってー。


 でー、どうよ?最近、趣味のほうはー?」


と、亮介は明るい話題に切り替えて、

そのまま話を弾ませたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーは~い、じゃあ、今日もよろしくぅ~」

ボサボサ頭の明梨がそう言いながら、昌磨に近付くー。


昌磨が明梨に触れてー、

一瞬”液体人間”のようになると、そのまま明梨の姿に変身したー。


1秒もないが、そこそこ不気味な光景でもあるー。


「ーーーーーさて、とー」

明梨の姿に変身した昌磨は”ぶかぶかの服”を見つめながら

苦笑いするー。


”昌磨”の姿から”明梨”に変身すると、

昌磨の方が身体が大きいために、いつも”着ている服”が

ぶかぶかになってしまうー。


それを脱ぎ、また”夜の仕事”に向かう準備をするー。


「じゃあ、いってきます」

明梨の姿で、昌磨が言うと、

明梨は「ーーはいはい~」と、スマホでゲームをしながら

昌磨に目を合わせることもなく、雑に返事をしたー


「ーーーーー」

イラッとしたー。


けれど、昌磨は笑顔を浮かべて、明梨の姿のまま

穏やかに家の外に向かうー。


この”イラッ”が、だんだんと膨らんでいるー。

しかし、昌磨はそれを自覚できていないー。



「ーーーえ~~?ほんとですか~?すご~い♡」

”女”として夜の仕事に勤しむ昌磨ー。


明梨は、”とても美人”だー。

家にいる”本物”は、だらしないがー、

こうしてちゃんとしていれば、とても綺麗だー。


男性客と楽しく話をしながら、

明梨の姿をした昌磨は”女”を武器に仕事をしていることに

快感すら覚えるー。


「ーーーー」

女子トイレの中で、

ふと、”自信に満ち溢れた明梨の顔”を見つめるとー、

明梨に変身している昌磨は嬉しそうにクスッと、笑みを浮かべたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


そしてーー

そんな生活が続いたある日ー


「ごめ~ん! 

 なかなか推しが出て来なくて~~~

 全部、お金使っちゃった♡」


テヘッと笑う明梨ー。


信じられないことが起きたー。


明梨がー、

給料日直後に”給料”をほぼ全てー

スマホのゲームに課金して使ってしまったのだー


明梨曰くー、

”今手に入れないと、わたしの”推し”が手に入らないー”とかなんとかー。


なかなかその”推し”とやらが、

ガチャで出なかったためにムキになって、

お金を全部使ってしまったのだ、と言うー。


「ーーは…はぁ…?あ、明梨ー…そ、それは流石にー」

昌磨はそう声を発するー。


”信じられない”という表情を浮かべながらー


だが、明梨は笑ったー


「ーわたしの姿 使っていいから、

 もっとお金稼いで来てよ!

 ね?がんばれがんばれ~!」


と、全く反省する態度を見せずにーーー


「ーーーふ…ふざけるなよ!!!!!!!」

昌磨は思わず大声を出したー。


明梨に対して”はじめて”キレたー。


昌磨がすぐにハッとしてー

「あ、ご…ごめんー」と、謝ると、

明梨は驚いた表情を浮かべた直後にー、

昌磨に対して言い放ったー


「ーーーうるさい!!!

 ”化け物”のくせにー!」


とー


「ーば…ばけもの…?」

唖然とする昌磨ー。


「そうよ!他人に変身できるなんて、どう考えたって”化け物”でしょ!

 わたしは”化け物”と一緒に暮らしてあげてるの!

 お金ぐらい、黙って稼いで来なさいよ!」


明梨はそう言うと、急に泣き出してヒステリックに

喚きながら、部屋の物を投げ始めるー


「ーーーーー…」


だがー

昌磨は、呆然としていたー


「ーーばけものー」


そんな風に思われていたのかー。

ずっと、明梨のために頑張って来たのにー。


そうかー、化け物か。


昌磨はそう呟くと、明梨に近付いてーー

明梨に触れると、黙って明梨に変身したー。


「ーちょっと!何よ!」

叫ぶ明梨ー。


だがー、昌磨はそんな明梨に対して

返事をすることもなく、そのまま呆然とした表情で、

玄関の方に向かっていきー、そのまま家を飛び出したー。


「ちょっと!!!!ねぇ!!!!」

叫ぶ明梨ー。


けれどー

明梨の姿をした昌磨は、戻らなかったー


「ーーーははー、俺は、化け物か。」

明梨の姿のまま、昌磨はそう言うと、そのまま夜の闇に姿を消したー。



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


ダークな雰囲気漂う他者変身モノ…!


果たして二人は幸せになれるのでしょうか~?

それとも、このまま崩壊してしまうのでしょうか~?


それは、次回のお楽しみデス~!


今日もありがとうございました~~!

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