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家族と共に幸せな生活を送っていた清美は、

”自分が、本当は清美ではない”ことを思い出してしまったー。


かつて、自分を兄貴と呼び、慕っていた男”ヤス”との再会によって、

自分は”この身体に憑依した別人”だということを思い出したのだー。


”清美の記憶”と、”元の自分の記憶”

2つの狭間に戸惑いながらも、

清美は、ヤスと共に陰で会う日々を続けるー。


しかしー…?


☆前回はこちら↓☆

<憑依>そうだ、俺は極悪人だった②~2つの顔~

夫と、息子に囲まれ、何不自由のない 幸せな生活を送っていた清美ー。 しかし、ある日…彼女は自分のことを”兄貴”と呼ぶ謎の男・ヤスと出会い、 思い出してしまうー。 自分は、”本来の清美”ではなく、 大学時代の清美に憑依した”極悪人”であったことをー。 本当の自分を思い出した清美は、豹変しー、 本性を露わにしてヤ...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーおかあさん、行かないでー…」

息子の秀太が、そんな言葉を口にするー。


「ーーーーーー~~…」

清美は表情を少しだけ歪めるとー、

心の中で”ガキが”と、思いながらも母としての感情も

芽生えて、複雑な心境になりながら、

秀太の頭を撫でるー。


「お母さん、お仕事に行くだけだからー、ね?」

清美がそう言うと、秀太は「ほんと~…?」と、

心配そうに言葉を口にするー。


清美に憑依している”篤弘”が記憶を取り戻したあの日ー、

清美は、ヤスと共に夜まで欲望の限りを尽くしたー。

家族なんて、捨てるつもりだったー。


けれどー…

家に帰ってきて、心底心配していた夫・英輔や

息子の秀太を見て、清美は”それ”ができなくなってしまっていたー。


悪いことは、何でもしてきたような自分がー、

まさか、こんな気持ちになるとはー


「ーーー絶対帰ってくるー。約束」

指を出して、息子の秀太と指切りをすると、清美は微笑みながら

そのまま夫の英輔にも声をかけて、

家の外へと出たー。


今日は土曜日ー。

英輔は仕事が休みだが、清美は、今日、欠勤した他のパートに代わり、

シフトが入っていたー。


「ーおぅヤスか?

 パート終わりに少し会おうぜ?」


清美がスマホを手に、そんな言葉を口にするとー

”いいんすか?”と、ヤスが心配そうに言うー。


「へへ、いいさー。1時間ぐらいシフトが伸びたって言えばー、

 どうとでもなる」

清美は家で見せていた表情とは別人のような表情を浮かべながら

そう呟くと、パート後にヤスと会う約束をして、

そのままパート先のスーパーへと向かったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


パートが終わると、アジトの隠れ家にやってきて

ヤスと合流した清美ー。


清美が、パート先で購入したプリンを食べながら

ヤスと雑談をしていると

「兄貴、甘いモノだめじゃなかったっすか?」と、

笑いながら言葉を口にするー。


「ーん?あぁ、”味覚”がな、俺の身体とは違うんだよー。

 もちろん、甘いモンがダメだったってことは

 思い出したけどよー

 この女の身体だと、旨いんだよ」


プリンを口に運びながら、清美は「あ~~~…」と、

美味しそうに微笑むー


「ーーーーー」

少し顔を赤らめるヤスー。


「? んだよ?」

清美がプリンをスプーンに乗せながらそう言うと、

「いや…あの、今の兄貴、滅茶苦茶可愛かったっす」と、

照れくさそうに言うー。


「ーハッ、バカなこと言ってんじゃねぇよ」

清美は笑いながら、プリンを再び口に運ぶと、

「ーーわたしが、食べさせてあげよっか♡」と、

揶揄うような口調で言葉を口にするーー


「ーーーーーー~~~~~!!」

ヤスは、そんな清美を見て、鼻血を噴き出して

そのままその場に倒れ込んでしまったー


「おい!ったくー、相変わらずだなー」

清美はプリンを食べるのを中断して、ヤスを起こすと

「す、すみませんー可愛すぎて、つい」と、笑いながら言葉を口にしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「鼻血は落ち着いたか?」

清美がそう言いながら食べ終えたプリンの容器を片付けるー


「は、はいーす、すいませんでしたー

 兄貴の前でこんな無様な姿を晒してー」

ヤスがそう言うと、

清美は「ったくー、お前はいつになっても”バカ”だなー」

と、鼻で笑いながら言葉を口にするー


「ーーーーへへー…」

ふいに、ヤスが笑うー。


そんなヤスを気色悪い、と言いたげに見つめながら

清美は「何笑ってんだよー」と、言葉を口にすると、

ヤスは「いやー、そんな綺麗な人になっても、兄貴は兄貴なんだなって」と、

嬉しそうに笑ったー。



清美に憑依している篤弘とヤスの出会いはー、

当時、夜の街で遊び歩いていたヤスが、

荒れくれ者たちにボコボコにされていた時のことだったー。


夜の街で知り合った女に”借金があって”と相談されて、

本気にしたヤスは、必死に危ない仕事をして、カネを稼ぎー、

その女に貢いでいたー。


しかし、その女は、ワルと繋がり男を騙していた悪女でー

単純なヤスは、それに気づかぬまま、男たちに悪事に加担させられ、

破滅の道を歩んでいたー。

自分の悪事に気付いて、足を洗おうとしたことで、男たちが逆上、

ボコボコにされていたのだー


そこにー、

偶然通りがかった篤弘はー、鬼のような強さで、

その男たちを簡単に倒しー、ヤスを救出したー。


それがー、篤弘とヤスの出会いだったー


「あ、ありがとうございますー!」

救われたことにお礼の言葉を口にするヤスー


「ふんー別にお前を助けたわけじゃねぇー

 大人数で一人をボコボコにしてる奴らが気に入らねぇから

 ぶちのめしただけだー」


篤弘のそんな言葉に、

「ーーあ、あ、兄貴って呼んでもいいっすか?」

助けられたヤスはそう言い放つー。


篤弘は煙草を吸いながらヤスを睨むと、

「好きにしろ」と、言葉を口にしたー。


この頃から、どこの組織にも属さず、気に入らない奴を

ぶちのめす、そんな生活を送っていた篤弘ー。


「ーーーーしかし、どうしてアイツらに一方的に

 痛めつけられてたんだー?」


篤弘がそう聞くと、ヤスは事情を説明したー。


”惚れた女の借金を返すため”

とー。


それを聞いた篤弘は笑ったー。


「バカすぎだろー」

そう、言葉を口にしながらー


「ーーーその女、恐らくいろんな男にそういうこと、言ってるぞ?

 お前のことなんか、もう覚えちゃいねぇかもしれない」

篤弘がそう言うと、ヤスは少しだけ笑いながらー

「それでもいいっすー…好きな相手の力になれるならー、俺はそれでー」

と、静かに言葉を口にしたー。


「ククー、正真正銘のバカだなお前はー」

そんな言葉を口にすると、篤弘は

「ま、その命、大事にしろよ」とだけ言って、

そのまま立ち去って行こうとするー。


そんな、篤弘をヤスは呼び止めたー。


「ーーま、待ってくださいー 兄貴ー…!」

ヤスがそう叫ぶと、

篤弘は立ち止まるー。


「ーお、俺ー、兄貴のような人になりたいっすー…!

 兄貴にー兄貴の弟子にして下さい!」


唐突にそう叫んだヤスー。


「ーーおいおい、俺は弟子なんか取ってねぇし、

 俺はどこの組織にも属してねぇ、ただの極悪人だぞ?

 俺になんか、憧れるんじゃねぇよ」


篤弘はそれだけ言うと、そのまま再び歩き始めるー


だがー、

ヤスはそれでも食い下がったー。


「ーー兄貴が弟子にしてくれるまで、

 俺、兄貴についていきますから!」


そんな言葉に、篤弘は大きくため息をつくとー、


「ーお前みたいなバカがいると、足手まといなんだよ」

と、冷たく突き放すー。


しかしー

ヤスは言ったー。


「ーバカはバカでも、兄貴の盾ぐらいにはなれるハズっす」

と、嬉しそうにー。


「ーーー…俺のために命をかけるつもりかー?

 正真正銘のバカだなー

 ま、ついてきたきゃ、好きにしろー」


それがー

篤弘とヤスの出会いー。


そして、その時ー

”運命”は決まっていたのかもしれないー。



「ーーと、そろそろ帰らねぇとなー」

清美に憑依している篤弘がそう言いながら立ち上がると、

ヤスは少しだけ寂しそうな表情を浮かべたー。


「ーー兄貴はーー

 この先、どうするつもりっすか?」


ヤスの言葉に、清美は立ち止まるー。


「ーーーー」

少し、間が空くー。


「ー言ったろ?”母親”の立場を利用してー、

 こいつの夫と息子、何かに利用できねぇか考えてるってー」


その言葉に、ヤスは「へへー流石は兄貴」と笑うー。


清美は少しだけ笑うと、そのまま「またな」と、

立ち去っていくー。


「ーーーーーーー」

アジトに一人残されたヤスは、ため息をつくー。


”以前の兄貴”ならー…

”即答”していたー。

迷わず、夫と子供を”悪だくみ”に利用していただろうー。


けれどー、

今の兄貴はー…


「ーーーーそんなつもり、ないっすよねー…兄貴ー」


”清美”になった篤弘はー、

夫の英輔と、息子の秀太を傷つけるつもりはないー。


そんな、気がしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーただいま~!」

清美は帰宅すると、夫の英輔と雑談をしながら、

スーパーで購入した食材を手に、

「今日は秀太の大好きな、カレーライス♡」と、

笑顔で微笑むー。


「え~?ホントに?やった~!」

喜ぶ秀太ー。


そんな息子の顔を見て、清美は心の底から微笑むー。


一度は捨てようとした家族ー。

”俺はー、極悪人”だー。


だがー、それでもー……


「ーーーーー」

カレーを作りながら、ふと笑顔を消す清美ー。


”このまま”

清美として生活するのかー、それとも篤弘として生活するのかー。


”両方”ー

それは、できないー。

身体は一つなのだからー。


そんなことは分かっているー。


けれどーーーーー



「ーーーーえ~?大丈夫なんすか?こんな時間までー?」


”優しい母親”を演じながらー、

ヤスと会い、欲望の限りを尽くすそんな日々を送るー。


今日も、秀太を送ったあとに、ヤスと”隠れ家”で合流して

お楽しみをしたー。


しかしー


「ーーーっと、やべぇーつい気持ちよすぎて夢中になっちまったー」

乱れた格好の清美が立ち上がると、

「ー送り迎えまで、時間ないんすよね?」と、

ヤスが慌てた様子で言うー。


「ーーあぁ、くそっ!家の片づけもしないといけないしー」

清美が慌てて帰る準備をしながら、そう呟くー。


”家の片づけをする”前提の清美の言葉に、

ヤスは、また、少し寂しさを覚えるー。


それでもー、それを顔に出さずに笑うとー、

「兄貴ー、俺がバイクで家まで送るっすー

 そうすりゃ、間に合うでしょ?」と、言葉を口にするー


「ーへへ…わりぃな」

清美はそう言いながら、ヤスのバイクに乗るとー、

ヤスは清美を乗せて、バイクで街を疾走したー。


「ーーくくくー会ったばかりの頃はよくバイクでも飛ばしたよなー」

清美が笑いながら言うと、

ヤスは落ち着かない様子で、笑いながら「そうっすねー」と、言葉を口にするー


「ーんだよ?なんかソワソワしてねぇか?」

清美がヤスの後ろでそう言うと、

「ーーーむ…む…胸が当たるんすよ!兄貴の胸が!」と、

ヤスが恥ずかしそうに叫ぶー


「ーーーーー!」

清美もヘルメット越しに少し顔を赤らめると、

「へ、変なこと意識すんじゃねぇ!俺は俺だ!」と

清美は叫んだー。



やがてー

清美の家に到着すると、

ヤスはバイクに乗ったまま

「じゃ、兄貴ー”母親業”頑張って」と、笑いながら

手をあげて走り去っていくー。


清美は笑いながら手をあげて返事をすると、

秀太のお迎えに行くために、慌てて家に駆け込んでいったー。



だがーーーー


”あらーーー…秋村さんー?”


その様子を、偶然、近所の”噂好きのおばさん”が

目撃してしまっていたー

”夫以外の男”のバイクに乗って、家まで帰って来ていた

清美の姿をー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


その後も、清美は

”二重生活”を続けたー


”わたし”として、夫の英輔と息子の秀太と送る幸せな日々ー。


「ーーーチッー」

入浴中に、自分の身体に”男”としてドキドキしていることに

舌打ちをする清美ー。


「ーわたしは…家にいるときはわたしなの!」

清美は不愉快そうにそう呟くー。

どうしてもー、

どうしても”俺”としての記憶を取り戻してしまった以上ー

今まで通りとはいかないー。


清美本人の自我が戻ったわけではないー。


”清美の記憶を持ち、清美として生きる俺”と

”元々の俺”

自分の中に二つの自分がいるような、そんな感じだー。


そしてー

影ではヤスと会い、欲望を貪る日々を送るー。


しかしーー

ヤスは、だんだんと理解し始めていたー


”兄貴は、秋村清美として生きることを心のどこかで望んでるー”

ヤスには、そう見えたー


時々、英輔と秀太の話をするときーーー

”兄貴”はとっても嬉しそうなのだー

母の顔になっているー。

そんな風に、思えたー。


「ーー兄貴…”無理して”俺と会わなくてもいいっすよー?

 俺、兄貴が幸せならそれでいいっすからー」

ヤスがそう言うと、清美は少しだけ笑ったー


「へへー何言ってんだよ?

 妻を演じてるのは悪だくみのためだって言ったろ?」


清美は邪悪な笑みを浮かべるー。


だがー

”そう言ってるだけ”で、もう1か月近く経過したー


”何も”進んでいないー。

何も、悪だくみなどしていないのだー。


「ーーーーへへー」

ヤスは少しだけ笑うと、清美は「次は、明日のパート帰りにな」と、

呟いて、そのまま立ち去って行ったー



「ーーーーー…」

ヤスは暗い表情を浮かべながら”あること”を、一人企て始めていたー…。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーただいま~」

清美が帰宅すると、

夫の英輔が、悲しそうな表情で清美を見つめながら

「ー少しだけ、いいかなー?」と、

言葉を口にしたー


「えー…?」

清美が首を傾げながら、英輔と共に部屋を移動すると、

英輔は申し訳なさそうに口を開いたー


「ーなんかさー、近所の田口(たぐち)さんがー

 清美が若めの男と一緒にバイクに乗って家に帰ってくる姿を

 何度か見たってー…

 何度も何度も俺にそう言うんだー…


 別に、友達とか、そういう相手なら俺は全然構わないんだけどー…

 秀太もいるからさー…

 一応ーーー、確認だけはした方がいいのかなって」


英輔のそんな言葉に、

清美は表情を歪めるー。


”チッー、あのババアかー”

近所の噂好きのおばさんのことを思い出しながら、清美は

少しだけ考えるとー、

「ーが、学生時代の、と、友達ー…

 そういう相手じゃないし、わたし、浮気とかしないから」

と、だけ言葉を口にしたー。


うしろめたい気持ちが、爆発しそうになるー。


けれどー、英輔は「そっかー。じゃあ、大丈夫」と、笑ったー


「え…そ、それだけー…?」

清美が不思議そうに言葉を口にすると、

英輔は「清美がそう言うんならー、俺は信じるよ」と、

何の嫌味もなく、笑ったー。


「ーーでもほら、聞いておいた方がいいと思っただけだからー」

英輔はそれだけ言うと、それ以上、何も聞かず

いつも通りの日常に戻るー。


”実際にはーー”

ヤスと隠れて会いながら、遊びまくっているのにー…


英輔は、何の疑いも持たず、

清美の言葉を信じてくれているー。


そんな英輔を見てー

清美は自分の心がぎゅっと締め付けられるような思いを

抱くのだったー


・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


パート帰りに”ヤス”の元に向かった清美ー。


しかしー

隠れ家に入ると同時にーー

ヤスは突然ー

清美に銃を向けて来たー


「ーーーあ?」

清美が表情を歪めると、

ヤスは銃を向けたまま、静かに呟いたー


「ーあんたはもう、兄貴じゃねぇー」

とー。


④へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


次回が最終回の予定デス~!

どのような結末を迎えるのか、

ぜひ見届けて下さいネ~!


今日もありがとうございました~~!☆!

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