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馬渕警部の機転により、琴美に憑依したナイトメアを

一時的に退けることに成功した龍平ー。


そんな中、馬渕警部は”強力な助っ人”を呼んだと、龍平に告げたー


その助っ人とは、龍平の彼女・亜香音だったー。

ナイトメアに憑依されて、犯罪に手を染めさせられて

逮捕されてしまった亜香音。


しかし、龍平が精神的にも限界に来ていると判断し、

馬渕警部が強引な手を使い、亜香音を何とか釈放させー

龍平と再会させたのだったー。


久しぶりの彼女との時間を楽しむ龍平ー。


けれどー、戦いはまだ、終わっていないー。


Nightmare desire episode.18-


☆前回はこちら↓☆

<憑依>ナイトメア・デザイア⑰~希望~

憑依、憑依、憑依ー。 ”ナイトメア”の異名を持つ犯罪者”城戸 悠斗”の憑依は止まらないー。 一度は守ったはずの琴美まで憑依されてしまい、 さらには龍平は、琴美の身体を武器とした ナイトメアの罠にはまり、危機的状況に陥ってしまうー。 しかし、そこに馬渕警部が駆け付け、 琴美を麻酔銃で攻撃ー。 強制的に眠りに落...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


主な登場人物


森本 龍平(もりもと りゅうへい)

大学生。彼女の亜香音と楽しい学生生活を送っていた。


狭霧 亜香音(さぎり あかね)

大学生。龍平の彼女。ナイトメアに憑依されていた。


小野寺 瑠香(おのでら るか)

龍平の幼馴染。小悪魔的な性格の持ち主。憑依されて消息を絶ってしまう。


馬渕(まぶち)

”デビルトラッカー”の異名を持つ刑事。高圧的な態度が目立つ。


”ナイトメア”(城戸 悠斗)

裏社会で暗躍する謎の人物。


今泉 貞治(いまいずみ さだはる)/伽藍 稔(がらん みのる)

ナイトメアと同じ孤児院出身の犯罪者たち。


染谷 真凛(そめや まりん)

ナイトメアと同じ孤児院出身の女。裏社会で暗躍している。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーー本当に、色々ありがとうー」

観覧車から景色を見つめながら、亜香音がそう呟くー


「いやー…俺は結局何もできなかったー。

 亜香音が憑依されていることにも、最初は気付けなかったしー…」

龍平はそこまで言うと、

「でも、とにかくー良かったー」と、

亜香音のほうを見つめながら安堵の表情を浮かべるー。


「あの馬渕さんって人が、相当無理してくれたみたいー。

 なんか、自分の首をかけたとか言ってたしー…」

亜香音がそんなことを呟くと、龍平は「そっかー」と、少し

複雑そうに景色を見つめるー。


馬渕警部は、口は悪いし、態度も正直、良くないー。

けれど、いざという時には頼りになるし、

悪い人ではないー。


それにー、亜香音を釈放するために、

自分の刑事生命までかけてくれているのだー。


「ーーー…じゃあ、あの人がクビにならないように

 俺も頑張らないとなー」

龍平がそう言うと、亜香音は「龍平…」と、

心配そうに呟くー。


人に憑依する力を持つ犯罪者”ナイトメア”ー


本来、その”ナイトメア”を追うべきなのは

龍平ではないー。

警察のはずだー。


しかし、ナイトメアをはじめとする

孤児院”家族の花園”の生き残りたちは、

政府と繋がりの深い団体が行っていた”実験”の犠牲者でもありー、

警察の上層部にも繋がりの深い人間がいる故に、

警察組織は動かないー。


だからー

龍平が戦うしかないのだー。


”ナイトメア”に目をつけられてしまった以上ー。

黙っていれば、次々と身の回りの人間が憑依されてー

蹂躙されてしまうー。


「ーーーわたしも、戦うー」

亜香音が、決意をしたように呟くー。


「ーーあ、亜香音ー…

 無理しちゃだめだー、亜香音がまた憑依されたらー」

龍平がそう言い放つと、

亜香音は目に涙を浮かべながら龍平のほうを見つめたー。


「ーーーーーーでも、その人のことー

 ナイトメアって人のこと、許せないよー」


そう言いながら、亜香音は悔しそうに言うー。


「ーわたしー…人殺しまでさせられちゃったんだからー」と、

自分の手を見つめながら、悔しそうに涙をこぼす亜香音ー。


「ーー亜香音ー…」

龍平は悲しそうに亜香音のほうを見つめるー。


龍平は”ナイトメア”の憑依を何度も見て来たー。

だが、”憑依”されたことはないー。

憑依された感触も分からないしー、

憑依された後の”怖さ”も想像することしかできないー


「ーーー…」

ぐっ、と、握りこぶしを作ると、

亜香音は「でもー…わたしは復讐とか、仕返しとかしたいわけじゃないの」と

少し冷静さを取り戻して言葉を続けるー


「ーわたしみたいにー

 こんな思いをする人ーー、これ以上、増やしたくないのー」


亜香音は自分の手を見つめるー


この手は、汚れてしまったー。

例えー、”乗っ取られていた”のだとしてもー

この手が、人を殺したー


この手を見る度に、それを思い出しー、

夜になる度に、怖くなって泣き出したくなるー


でもーーー


「ーー…龍平ー…

 もし、もしも次にわたしが憑依されたらー

 全力でやっつけてー」


亜香音が龍平にそう言い放つー


「ーー亜香音ー…」


観覧車が、地上に近付いていくー。


亜香音は少しだけ微笑むー。


「ー彼女が悪い子になってたら、

 ちゃんと、止めてね?」


そんな風に言葉を口にする亜香音ー。


龍平は少しだけ微笑むと、

「わかったー。悪い亜香音なんて、俺も見たくないからなー」と、

優しく呟きながら、亜香音のほうを見つめたー。


「ー亜香音が憑依されたら、絶対に止めるー。」


そう呟くと、亜香音は安心したように頷くのだったー。



”逃げる”という選択肢は、龍平にも、亜香音にもないー。

ナイトメアがいる限り、二人は狙われるー。

そして、警察は動かないー。


”ナイトメアを捕まえるー”

それしか、龍平たちに平穏な日々が戻って来ることは、ないのだからー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「へへへへー

 アイツの彼女が釈放されたみたいだなー」


瑠香は煙草を吸いながら、パソコンで何かを確認して、笑みを浮かべるー。


「ーーーまた憑依するのか?」

仲間の今泉貞治が苦笑いしながらそう言うと、

瑠香は「いいやー…」と、笑いながら煙草の火を消すー。


「ーーあの彼女にも見せてやるかー」

瑠香は邪悪な笑みを浮かべながらそう呟くー。


龍平の彼女・亜香音は”憑依されていた”だけで、

自分以外の憑依された人間をまだ、見たことはないー


”憑依された女”をあの女に見せてやろうー。

そう思いながら、瑠香は根城にしているバーの外へと向かって歩き出すー。


「ーーークククー

 俺に憑依されて生まれ変わった”瑠香”で、

 ちょっと遊んでくるぜー」


そんな瑠香を、貞治は苦笑いしながら

「お前も物好きだなぁ」と、首を横に振ったー。


瑠香はそのまま、扉を開けて外へと向かうー。


「ーーーーーー」

”ナイトメア”は、その場その場を楽しむことしか考えていないー。


だが、自分は違うー。


「ーーーーーーーー」

今泉貞治には”目的”があるー。


そのためにはー

”ナイトメア”こと城戸悠斗と、伽藍稔の力が必要だー。


「ーーーーー!」


「ーーーへぇ、ここがアタリかー」


憑依された瑠香がアジトにしているバーを出て行ってから数分ー。

今泉貞治のいる場所に、見覚えのある男が入って来たー


「これはこれはー刑事さんー

 先日はどうもー」


今泉貞治がパソコンを閉じて笑みを浮かべると、

馬渕警部は銃を構えながら「動くな」と、

鋭い声を発したー


「ーーーーー…」

今泉貞治が両手を挙げるー。


ナイトメアらと同じ孤児院出身の女犯罪者・染谷真凛から

龍平が教えてもらった”ナイトメアたちのアジト”ー

その5か所の調査を進めていた馬渕警部は、

ようやく”アタリ”を引いたのだったー。


「ーーーどうして、この場所が?」

貞治が言うと、馬渕警部は「勘ーー…と言ったら?」と、

挑発するような口調で言い放つー。


「ーーそれはあり得ませんねー

 大方、染谷が漏らしたのでしょう?」


スーツ姿のまま、両手を挙げながら言う貞治ー。


確かに、貞治の言う通り、

この場所はナイトメアらと同じ施設出身の染谷真凛から

聞かされた場所だー。


「ーーーあの女を信用すると、痛い目を見ますよ?」

貞治がそう言うと、

「ー奴が何かを企んでるなら、それもぶっ潰すまでだ」

と、馬渕警部は即答したー。


「はははー、シンプルな考え方ー。

 悪くないー」


貞治はそれだけ言うと、

「ー”ナイトメア”はどこにいるー?」と、

馬渕警部は銃を向けながら言い放つー。


「ーーー残念ながら、さっき出て行ったばかりですよ。

 今から追えば、追い付けるかもしれませんね」


今泉貞治は銃を向けられながらも、余裕の笑みを浮かべているー。


”こいつの能力はー

 あの不気味な音楽ー

 確かー”ー悪魔円舞曲(デビル・ワルツ)ー”とか言ったかー…”


馬渕警部はそう思いながら、

少し手を動かそうとした今泉貞治に対して「動くな!」と、叫ぶー。


「ーーーーー」

貞治は少しだけニヤッと笑うとー、

「ー俺を殺しても、ナイトメアは止まりませんよ?」と、呟くー。


「ーあぁ、だろうよー」

馬渕警部も、それには同意だったー。


この今泉貞治を殺そうが、”ナイトメア”こと、城戸悠斗は止まらないだろうー。


だがーー


「ー”ブレイン”たるお前を殺せば、やつの動きに影響は出るだろうさ」

馬渕警部がそう言い放つー。


”ナイトメア”こと、城戸悠斗は”快楽”をひたすら楽しむタイプの男だー

行動に計画性があるとは思えないー。


”知略”の部分を司るのは、ナイトメアではなく、この今泉貞治のはずだー。


もう一人の伽藍稔も、”不死身”なだけで、

知性は感じられないー。


「ーーー…ははははー…まぁ、それはそうですけどねー

 ただ、刑事さんー

 俺と、城戸の最終目的は、別ですー。」


今泉貞治はそう言うと、両手を挙げながら呟くー。


「ー城戸ー、あいつは、裏社会で主に密輸などに携わりながらー

 気に入らないやつがいれば、今回のように

 徹底的にその相手を”楽しみながら”痛めつけるー。


 それだけですー。

 アイツに、大きな目的はないー。


 人生は一度きりー。

 ただ楽しめればいい、そう思ってるやつです」


今泉貞治がそう説明すると、

馬渕警部は「じゃあ、お前の目的は何なんだ?」と、

キツイ口調で言い放つー。


「ーー俺がー”裏社会の情報屋”として動き回ってることは

 知ってますよね?」


貞治の言葉に、馬渕警部は頷くー。


「裏社会には、色々な情報が転がってるー。

 くだらないカスのようなネタから、大物の黒い話までー

 色々ですー。


 俺はね、刑事さんー

 ”俺たち”を、こんな風にしたー

 あの孤児院で俺たちを”モルモット”のように扱った挙句ー。

 消し去ろうとした”黒幕”をあぶり出してー

 天誅を与えようとしてるんですー」


今泉貞治は少しだけ笑いながら言ったー。


”家族の花園”ー

その孤児院出身のナイトメアたちはー、

”とある人体実験”まがいのことに利用された挙句、

そのことが明るみに出そうになったために、

あの施設ごと”処分”されたー。


その生き残りがナイトメア、今泉貞治、伽藍稔、染谷真凛ー。


今泉の目的は

”あの施設の実験”に関わっていた”大物”をあぶり出し、

抹殺することー


そしてーー


「ーーすべてを明るみに出してー

 然るべき人間に、地獄の裁きを与えるー。

 それが、俺の最終目標ですー」


今泉貞治は、そのために”裏社会の便利屋”として暗躍しながら

あの事件の黒幕を探っていたー。


「ーーあの施設で俺たちに投与された薬によって

 俺たちは超人的な能力を身に付けましたー


 でもねー、刑事さん。

 正直、俺の悪魔円舞曲(デビル・ワルツ)は大したことないー。


 捕まればそれで終わりだし、

 ”黒幕”が全力で俺を消しにかかれば、俺はすぐにこの世から

 消されるでしょうー


 でもー…そうはなっていないー」


今泉貞治はそこまで言うと、笑みを浮かべるー。


「ーー”ナイトメア”ー

 あいつの”憑依能力”をみんな、恐れているからー」


今泉貞治は笑うー。


孤児院で非人道的な実験を繰り返していた

”政界の大物”なる人物が、その生き残りを消さない理由は

ただ一つー


”ナイトメア”こと城戸悠斗の憑依能力ー。


身体を乗っ取られてしまえば、何も抵抗することは出来ずー。

されるがままになってしまうー。


しかも、黒い霧状になっている彼にはダメージを与えることすら

ままならずー、手の出しようがないー。


今泉貞治は、”ナイトメア”の能力を盾に、自分の身を守っているのだー


”俺に手を出せば、”ナイトメア”の憑依で、全てが滅茶苦茶になるー”

と、そう、脅しながらー。


「ーだから、警察も、誰もー

 俺や、伽藍にも手出しはできないー」


今泉貞治はそこまで言うと、

「城戸の能力は、まさに、神だー」と、不気味な笑みを浮かべたー。


「ーーーーー」

馬渕警部は鼻でそれを笑うと、

銃を今泉貞治に改めて向けたー。


「でも、俺はテメェをここで撃ち殺すこともできるー」

馬渕警部がそう言うと、

今泉貞治は少しだけ笑みを浮かべたー


「ーーおやー、

 刑事さんだって、”上層部”には不信感を抱いているはずですか?」


貞治の言葉に、馬渕警部は表情を歪めるー。


確かにー上司の穂村管理官をはじめとする、

上層部の不振な動きは気に入らないー


「ーーーどうです?俺と手を組みませんか?刑事さんー」

今泉貞治が両手を挙げたままそう呟くー。


しかしー


「それは、それー

 これは、これー、だー


 俺はテメェみたいなやつも気に入らないー」


そう言うと、馬渕警部は今泉貞治に向けて銃をーーー


「ーーー!?」

その直後、横で大きな音がしてー、

馬渕警部が咄嗟に自分の右側から出て来た影に銃を向けたー。


「ーーー!!!!」


伽藍稔ー。

これまで何度も姿を現した”不死身の男”ー


何度殺したと思ってもー

その都度蘇り、立ちはだかるー


パァン!


銃声が響き渡るー。


だが、伽藍稔は顔色一つ変えずー、

馬渕警部に強烈な蹴りを食らわせるー。


バーの壁に叩きつけられて、銃が床に転がり落ちるー。


ドス、ドス、ドス、と

伽藍稔がその巨体を揺らしながら近づいてくるー。


容赦なくー、馬渕警部を殺そうとする伽藍稔ー。


だがーーー


「ーーいい加減にー…邪魔くせぇな!」

馬渕警部がそう叫びながら、隠し持っていたもう一丁の銃で、

伽藍稔の頭を撃ち抜くー。


「ーーーっ…!」

目を見開いて、その場に倒れ込む伽藍稔ー。


「ーーさすが刑事さんー」

拍手をしながら、笑みを浮かべる今泉貞治ー。


伽藍稔を倒した馬渕警部が、

今泉貞治のほうを見つめるー。


しかし、今泉貞治は、

馬渕警部が伽藍稔と戦っている間ー、

今泉貞治は既に、”悪魔円舞曲(デビル・ワルツ)”を使う準備を

整えていたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


同時刻ー


龍平は、亜香音と共に自分の家に向かっていたー。


二人で話し合い、しばらくの間は二人で過ごすことにしたー。

”ナイトメア”にどちらかが憑依されてもー

残った一方が、それに立ち向かうためにー。


お互いに一人暮らしである以上ー

”家族”と同居しているわけではないのはー

ある意味では、幸いだったのかもしれないー


「こんな形で、同居することになるなんてー」

龍平が苦笑いすると、

亜香音は「将来の予行練習かな?」と、少しだけ

楽しそうに笑ったー。


そんな言葉にドキッとしながらも、龍平が玄関の扉を

開けようとしたその時だったー。


背後から不気味な”女”の笑い声が聞こえたー。


「ーーー!!!!」

龍平と亜香音が振り返るとー、

そこには”ナイトメア”に憑依されたー

幼馴染の瑠香の姿があったー


「ーーる…瑠香ちゃんー!?」

亜香音のそんな言葉に、すぐに龍平は亜香音を

自分の背後に移動させると、亜香音を守るようにして

瑠香の前に立ちはだかったー


「ーーへへへへー…釈放されたんだねー

 おめでとうー」


瑠香はニヤッと笑いながらー

胸元を見せ付けるかのような、赤いパーティドレス姿で

微笑んだー


「ーーるー…瑠香ちゃんーその格好はー」

亜香音が困惑しながら言うー。


龍平はすぐに「憑依されてるー」と、

亜香音に伝えると、

目の前にいる”憑依された瑠香”を見て、

明らかに動揺した様子を見せるー。


”自分が憑依されていたトラウマ”を思い出してしまうと同時にー

”よく知る子”が憑依されているのを見る恐怖ー


それを、亜香音は同時に味わっていたー。


「ーーー何の用だー?」

龍平が険しい表情でそう言いながらー、

馬渕警部から受け取った麻酔銃と同等の効果を持つ

ペンをポケットから取り出そうとするー。


しかし、瑠香は「お~っと」と、言い放つと

自分の首筋にナイフを突き立てたー。


「ーー!」

龍平が手を止めるー。


「ーーる、瑠香ちゃん!?」

亜香音が驚いて声を上げるー


「ー俺に憑依されてたお前なら分かるだろー?

 こいつは逆らうことはできねぇ」

瑠香は自分を指差しながら愉快そうに笑うー。


亜香音は震えながら、そんな瑠香のほうを見つめるー。


”瑠香”の身体なのにー

普段の瑠香とは、表情も、口調も、何もかもが違うー。


あまりに、ショッキングな光景ー。


”知り合いが憑依されている”という状態を

目の前で見ることはー

想像以上に、つらいー。


「ーーークククー安心しろよー

 今日は少し”お話”をしに来ただけだー」


瑠香が偉そうな口調でそう言うと、

その綺麗な手を差し出して、”ペン”を渡すように言い放ったー


「ーーー…ーー」

龍平は迷うー。


麻酔弾を放てるペンをこいつに渡せばー

自分が眠らされて、また亜香音が憑依されー、

瑠香も、亜香音も奪われてしまうかもしれないー。


それはー

できないー。


だがー、従わなければ、瑠香は自ら首につきつけたナイフでー…


「ーーーーーーーわかったーーー

 でも、これは渡せないー」

龍平が言うと、瑠香が表情を歪めるー。


「ーーー”話”があるって言ったよなー?

 俺が、これを使わなければー

 文句はないはずだー」

龍平がそう言うと、自分の家の郵便受けにそれを放り投げるー。


「ーーーこれでーー俺はお前を眠らせることはできないー」

龍平がそう言い放つー。


ギリギリの交渉ー。

瑠香が殺されないようにしながらー

麻酔弾を放つペンをなんとか渡さずに済むようにするためー


ギリギリの駆け引きをする龍平ー。


瑠香はククク、と笑うとー

「まぁいいー、別にそれを奪いに来たわけじゃないからな」と、

笑みを浮かべるー。


そしてー、

「ー外で話すのもアレだし、ちょうどいいー

 お前の家の中で”話”をしようじゃないか」と、瑠香は

龍平の家の扉を指差したー。


「ーーーー」

龍平は頭をフル回転させながらー

”このまま外で話すべき”かー、

”ナイトメアの言う通り家の中に入るべきか”迷ったー。


だがー、家の中のほうがーー

瑠香が”変なこと”をさせられても、周囲に見られるリスクは低いー。


龍平は、憑依された瑠香の要求に応じると、

亜香音のほうを見て

「ーあれはいつもの瑠香じゃないー。気を付けて」と、

小声で注意を促すー。


頷いた亜香音ー。


不気味な笑みを浮かべる瑠香と共に、

龍平と亜香音は、龍平の家の中に入っていくー。


”どうせ、ロクな話じゃないー”


そう思いつつも、これは”瑠香の身体を取り返す”チャンスでもあるー。


龍平は、なんとか隙をついて、瑠香を眠らせることが

できないかどうかー。

そう思いながら、憑依された瑠香を家の中に招き入れたー。


”俺はどんな手段を使ってでも、お前を止めて見せるー”

龍平は、決意を新たに、不気味な笑みを浮かべる瑠香のほうを見つめるー。


そっちがその気ならー、

こっちも手段を択ばないー。


俺は、俺の大事なものを護るためー

全力で、お前を叩き潰すー。


龍平はぐっと拳を握りしめるー。


そんな龍平の様子を見て、瑠香は笑みを浮かべると、

亜香音のほうを見つめたー


「ねぇーー亜香音ちゃんー

 わたしを助けたいー?」


瑠香の口調を真似ているものの、

その声には悪意が滲み出ているー。


「ーーーー」

亜香音は、悲しそうに瑠香のほうを見つめるー


「だったら、一つだけ方法があるの」

クスクスと笑う瑠香ー


「ーーお前がこの女の代わりに、俺に身体を捧げるんだー」

瑠香がニヤァ、と笑みを浮かべながらー

亜香音にそう言い放つー


「ーーえ…」

困惑する亜香音ー。


「ーーこの女を見捨てて自分が助かるかー、

 自分が犠牲になってこの女を助けるかー。

 さぁ、どうする?」


”ナイトメア”は、人を苦しめることに快感を感じているー

亜香音の答えは、どっちでもいいー


どっちでもー


その反応がー

困惑する反応こそが、楽しいのだからー


”意地悪”な悪意に満ちた質問を亜香音にぶつけて、

憑依されている瑠香は、

悪意を隠そうともせず、歪んだ笑みを浮かべたー



⑲へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


”憑依”という強大な力にどう立ち向かっていくのか、

反撃のスタートと、さらに激化していく憑依を、

ぜひ楽しんでくださいネ~!


今日もありがとうございました~!

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