Home Artists Posts Import Register

Content

数年前から、認知症を患っている祖父の幸太郎。


その症状は次第に悪化していき、

ついに、孫娘の千穂は大好きなおじいちゃんである幸太郎から

”お前は誰だ”と、冷たい言葉を投げかけられてしまうー。


そんなある日ー

お見舞いにやってきた千穂は、突然祖父の幸太郎が暴れ出した際に

祖父と共に転倒してしまいー、

”認知症のおじいちゃん”と入れ替わってしまうー…。


”若い孫娘の身体”になった祖父は、全ての記憶がハッキリとした

状態に戻り、慌てて孫娘・千穂に謝罪するー。


がーー

今度は、おじいちゃんの身体になった千穂に異変が起きるのだった…。


★前回はこちら↓★

<入れ替わり>消えていく記憶①~大切な人~

「ーーー誰だ、お前はー」 高齢の男が、病室に入って来た女を見ると同時に、そう言い放ったー。 「ーー…お…おじいちゃんー…わたしだよー…」 いつかは、こんな日が来ると思っていたー。 祖父の幸太郎(こうたろう)は、認知症だったー。 孫娘の花森 千穂(はなもり ちほ)は、 口の中が急激に乾き、身体が震えるのを感...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーー誰?」

祖父・幸太郎になった千穂が、

病室に入って来た千穂(幸太郎)を見て言い放つー。


「え…」

飲み物を買いに行っていた千穂(幸太郎)は、

病室に戻ってくると同時に発された幸太郎(千穂)の言葉に

呆然とするー


「どちら様ですか?」

幸太郎(千穂)が言うー。


「ーーな…ち、千穂ー…お、俺だー

 おじいちゃんだよー

 ほらーー…」

千穂(幸太郎)がそう言うと、

ベッドに横たわっていた幸太郎(千穂)が、苦笑しながら

言い放ったー


「ーおじいちゃん? 

 あなたがー?

 どう見ても、大学生か、高校生に見えますけどー?」


幸太郎(千穂)の言葉ー。


確かに”千穂”の身体は大学生だー。

それは合っているー。

いや、しかしー


「ち、千穂ー…ま、まさかー」

千穂(幸太郎)はすぐに気づくー


”まさかー…俺の身体になったことで、千穂が認知症にー…!?”

とー。


孫娘の千穂と入れ替わった幸太郎は、

千穂の身体になった瞬間、”記憶がハッキリと”したー。

同時に、自分が孫娘に対して言ってしまった酷い言葉の数々も思い出し、

謝罪したー。


だがーー

”孫娘の身体になった自分の記憶がハッキリとした”ということはー…


”祖父である幸太郎の身体になった千穂”にはー

逆のことが起きるーーー…


「ーーち、千穂…し、しっかりしろ!」

千穂(幸太郎)が叫ぶー。


幸太郎(千穂)は「い、いきなり何なんですか!?」と

困惑の声を上げながらもがくー


「俺だ!千穂!

 さっき”入れ替わっちゃったばかり”だろ!?

 千穂!

 しっかり、するんだ!」


千穂(幸太郎)が必死にそう叫ぶと、

幸太郎(千穂)が、ハッとした表情を浮かべー、

すぐに「お…おじいちゃん…?」と、我に返った様子を見せたー


「ーー千穂ーーよかったー」

千穂(幸太郎)が、安堵した様子で幸太郎(千穂)を

抱きしめると、幸太郎(千穂)は

「わ…お、おじいちゃん、やめてよ~!」と、笑ったー。


「ーーわ、”わたし”に抱き着かれるなんてー…

 何だか不思議な気分ー」


そう言いながらも、幸太郎(千穂)は調子悪そうに、

千穂(幸太郎)のほうを見つめたー


「ーーーー……”こう”だったんだねー」

幸太郎(千穂)が呟くー


「今、わたしー…

 本当に何も分からなかったー

 頭がふわふわしてー

 何もー。


 ”わたし”の姿を見ても、何も分からなかったー」


幸太郎(千穂)がぎゅっと拳を握りしめるー。


本人の努力だとか、そういう問題ではないー

”本当に”目の前にいるのが誰だか分からなかったー


幸い、今は急に記憶が引き戻されはしたもののー

あのままー…永遠に何も分からなくなっていたと思うとー…


「ーーー…千穂ーーー…」

千穂(幸太郎)が心配そうに幸太郎(千穂)を見つめながら呟くー。


「ーーー……おじいちゃんー…

 こんなに怖くて、辛かったんだねー」


幸太郎(千穂)は目に涙を浮かべながら言うー。


”忘れちゃう”ことの辛さー

それでいて、”忘れている”間は

怖いとか、悲しいとか、そんな気持ちは微塵もなく、

寧ろ何だか逆に気持ちがいいようなーー

ふわふわした不思議な感覚ー


自分が”死に向かっている”感じがしてー

ものすごく、怖くなるー。


「ーーー辛い思いをさせて、すまんー」

千穂(幸太郎)が手を握ると、

「すぐに、元に戻れるようにするからー」と、

病院の先生を呼びに行こうとするー。


「ーーーあ、うんー…

 それでー…何だったっけ?」


幸太郎(千穂)が笑いながらそう言い放つー


さっきまで、不安そうな表情を浮かべていた幸太郎(千穂)の

不自然な笑顔ー。


それを見て、千穂(幸太郎)は強い不安を覚えながら

病室を飛び出すー。


病院の先生に”入れ替わり”のことを報告して、

早く元に戻してもらわないと、取り返しのつかないことに

なるかもしれないー。


そう思いながらー。


「ーーーーーー」

廊下を歩き出してから少しすると、

落ち着かない様子でスカートを触る千穂(幸太郎)ー


「ーーまさか、死ぬ前にスカートを履くことになるなんてなー…

 …これ、落ち着かないなぁ」

千穂(幸太郎)はそう呟くと、

「それにしても、やっぱ若いと身体がよく動く」と、

一人呟くー。


ここ数年の幸太郎は身体も自由にはならなかったし、

それ以前も、やはり年齢と共に身体は衰えていたー。


急に女子大生の身体になったことでー、

身体が”圧倒的に”動くようになりー

言いようのない感動を覚えたー。


「ーーーーー」

ふと、”このまま”ならーーー

と、一瞬思ってしまう千穂(幸太郎)ー


人間、誰にでも欲はあるしー、

”死が近い”身体から、急に”まだこの先も長い時間がある若い身体”に

なればー、そんな思いが出てきてしまうのも無理はないー。


だが、千穂(幸太郎)は首を横に振るー


「これは俺の身体じゃないー

 ちゃんと、俺は俺の身体に戻らないとー」


とー。


”またー”

動かなくなるー


”またー”

頭に霧がかかったかのような状態になるー


そう考えただけで、正直、怖いー。


千穂の身体が小刻みに震えているー。


”千穂”が怖がっているのではないー。

中身である自分自身が怖がっているのだー。


「ーーーバカなことを考えるなー

 孫に死ぬことを押し付けて生きるなんてー

 恥もいいどころだ」


自分で自分にそう言い聞かせると、千穂(幸太郎)は

病院のスタッフに声をかけて

”入れ替わってしまった”ことを相談した。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーはははは、

 そんなこと、起きるわけないじゃないですかぁ」


幸太郎(千穂)が笑いながら言うー。


千穂(幸太郎)は、先生と共に病室に戻り、

唖然としていたー。


「ーーせ、先生ー。本当に俺たち、入れ替わってしまってー」

千穂(幸太郎)がそう言うと、

担当医の笠倉(かさくら)先生は、苦笑いしながらー

首を横に振ったー


「面白い孫娘さんですねー」

と、幸太郎(千穂)に対して言い放つー


「まごー…?」

幸太郎(千穂)は違和感を感じたのか少し首を傾げるも、

ハッキリと現状を思い出せなかったのか、

「わたしに~孫なんていませんよぉ!ははははは」と、

愉快そうに笑ったー。


”わたしには孫はまだいないー”

そんなことまでは分かってもー

それ以上がハッキリ思い出せないー


「せ、先生!は、話を聞いて下さい!」

千穂(幸太郎)が、慌てて笠倉先生に向かってそう叫ぶー


”入れ替わり”

そんなことを、簡単に信じて貰えるはずがなかったのだー。


そうー

笠倉先生は、千穂(幸太郎)の言葉を真剣に受け止めては

くれなかったのだー。


それも、無理はないー。

いきなり”入れ替わってしまって”なんて言われても、

”はいそうですか”などと言う医師はいないだろうー。


「すみませんー。失礼します」

笠倉先生が穏やかに笑いながら立ち去っていくー


「ーーーーー」

呆然とする千穂(幸太郎)ー。


そんな様子を見て幸太郎(千穂)は、

「ーーユウくん、来てくれてありがと~」などと

訳の分からないことを言っているー。


完全に、記憶が混乱しているー


”こ、このままじゃー”


そう思った千穂(幸太郎)は、

入れ替わった時のように、幸太郎(千穂)と転倒しようとー、

何とかその状況を作り出そうとするー


「ちょっと!何するんですか!」

幸太郎(千穂)がそう叫ぶー。


それを無視してー、無理やり幸太郎(千穂)の腕を引っ張ると、

先程と同じようにー、千穂(幸太郎)は二人で

病室の中で転倒したー


ーーーーーがーーー


先程のように、身体が入れ替わることはなく、

元に戻ることは、できなかったー


「ーーーーーーはぁ… はぁ… はぁ… はぁ…」


日没を迎えてー、

幸太郎(千穂)が苦しそうに息を吐き出し始めるー。


先程までのように、普通に会話できる状態ではなくー、

かなり、苦しそうだー。


病院の先生たちがやってきて、千穂(幸太郎)は

病室から出るように言われてしまうー


「ーー早く…早く何とかしないとー」

千穂(幸太郎)は焦りを感じるー。


入れ替わる直前まで、幸太郎は、

”記憶”に霧がかかったかのようにー、

不思議な状態に陥っていたー。


”正気”に戻った今だからこそ思うー

自分自身は、まるで常に夢を見ているかのような

ふわふわした状態で、

生きているのに、ここにはいないー。

そんな、不思議な感覚だったー。


そしてー


”俺はもう長くないー…”

千穂(幸太郎)は、ぐっと拳を握りしめるー。


「ーーこのままじゃ、千穂を代わりに死なせてしまうー」

そう思った千穂(幸太郎)は、病院の外に向かって歩き出したー。


「ーー千穂ー…絶対にー…絶対に死なせはしないー」

千穂(幸太郎)はそう思いながら、歩き出したー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーどうしたんだー?緊急の話ってー」

千穂(幸太郎)は、兄の誠を呼び出したー。


千穂(幸太郎)の目に涙が溢れるー。


”孫”との再会ー。

色々な思いがこみ上げてくるー。


「ーーー本当にすまなかったー」

千穂(幸太郎)が突然頭を下げるー。


孫である誠のことも、やはり千穂のことと同じように

”誰だか分からない”状態になってしまい、

酷いことを言ったー。

そのことを詫びる千穂(幸太郎)ー


「ーーえ?え?い、いきなりどうしたんだー?」

戸惑う誠。


当たり前だー。

中身は幸太郎でも、身体は誠から見れば妹の千穂なのだからー


「ー落ち着いて聞いてほしいー。

 ー俺はー俺は千穂じゃないー

 おじいちゃんなんだー」


千穂(幸太郎)が真顔でそう言い放つと、

誠は「えっ…!?えええっ!?」と、声を上げるー。


しかし、すぐに苦笑いしながらー

「き、急にそんな冗談を言うなんて、珍しいなー千穂」と、

言葉を口にするー。


”やっぱ、そう簡単には信じて貰えないかー”

千穂(幸太郎)はそう思いながら、

咄嗟に自分の両胸を触ったー。


「なっ!?」

妹の突然の奇行に驚く誠ー。


千穂(幸太郎)は、自分でも”孫娘の胸を揉んでいる”

この状況にドキドキしながら、言葉を続けるー


「ち、千穂がこんなことすると思うかー!?

 誠、頼む!時間がないんだ!信じてくれ」


千穂(幸太郎)がなおも胸を揉み続けるのを見て、

誠は顔を真っ赤にしながら、

「ーーちょ、ちょ、ちょっと待ってー

 わ、分かったから落ち着いてくれー」と、言葉を

口にしたー。


「ーーー…ほ、本当にー…おじいちゃんなのか?」

誠のそんな言葉に、千穂(幸太郎)は胸から手を離すとー

「ーーーどうか、話を聞いてほしい」と、

言葉を口にしてから、千穂との間に起きた出来事を口にしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーえぇぇ…う、嘘…ですよね?」

彼氏の悟志にも、事情を説明したー。


兄の誠が、”妹とおじいちゃんが入れ替わった”ということを信じてくれたあと、

二人で話し合って、千穂の彼氏である悟志にも状況を説明ー、

協力をお願いしたのだー。


「ーいや…どうやら本当みたいなんだー」

兄の誠が、妹の彼氏である悟志にそう説明すると、悟志は

「じ…じゃあ、身体は千穂なのにー

 中身は、千穂のおじいさんってことですか?」と、

誠に困惑しながら言い放ったー


「ーーーあ、あぁー」

誠が戸惑いの言葉を口にするー。


”妹の彼氏”ということで、暮らしている場所は違うが、

誠と悟志には何度か会ったことがあり、

これが初対面ではないー。

そのせいか、会話は割とスムーズに進んだー


「ーーーーーーーーー」

千穂(幸太郎)が、じっと悟志のほうを見つめるー


「ーーな、なんですか…?」

悟志が”千穂に見つめられている”ような気がしてドキッとしながら

気まずそうに言い返すと、

「きみが、千穂の彼氏かー」と、千穂(幸太郎)が言い放ったー


「お、おじいちゃんー

 悟志くんは、悪い子じゃないし、大丈夫だよ」

兄の誠がすかさず庇うような言葉を口にすると、

千穂(幸太郎)は「ふんーどうだか」と、少し不貞腐れたような

表情を浮かべたー。


千穂がいつも見せない表情に少しドキッとしながら

悟志は戸惑いの表情を浮かべるー。


「千穂と元に戻るまでの間、君のことを見極めさせてもらうー」

千穂(幸太郎)が腕組みをしながらそう呟くと、

誠が「おいおいー、おじいちゃんー」と、呆れ顔で笑うー。


「ーーいや、いいですよー

 わかりましたー

 おじいさんにも認めてもらえるように、頑張ります!」


千穂の兄・誠の心配を他所に、

悟志はそんな言葉を張りきった様子で口にすると、

誠は心配そうに首を横に振ったー。



気を取り直して、三人は

”千穂と幸太郎”が元に戻るための方法を探しつつー、

幸太郎になってしまった千穂の様子を、時間があるときには

定期的に確認しに行くことを、決めたー。


残された時間は、少ないー


このままでは、千穂は

”おじいちゃんの代わりに死ぬ”ことになってしまうー。


「ーそんなことは、させないー」

千穂(幸太郎)はそんなことを呟きながら

”孫娘”と元に戻る方法を探すため、歩き始めたー。


③へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


次回が最終回デス~!


おじいちゃんの代わりに、何も分からくなりつつある千穂を

救うことはできるのでしょうか~?★


ハッピーエンドか、バッドエンドか、

どっちになるのかも含めて、楽しみにしていて下さいネ~!


今日もありがとうございました~★★!

Files

Comments

No comments found for this post.