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「ーーーそういうことー…やめろって言ってんだよ!」

綺麗な黒髪の可愛らしい少女が、乱暴な口調で叫ぶー。


まるで、男のようにー。


その少女の反対側に立っていたクラスメイトの

春日 麗子(かすが れいこ)は表情を歪めるー。


「はぁ…?何なのよ!あんたー!

 …あんたには、関係ないでしょ!」


そう叫ぶ麗子ー。


しかし、男のような口調で叫んだ少女ー

高村 美優(たかむら みゆ)は、

「ーーいいから、麻美をいじめるのをやめろって言ってるんだよ!」と、

声を荒げるー


美優は、誰にでも優しくー、穏やかで、何でもできてー

クラスで一番の人気者ー


その美優に、クラスメイトの中野 麻美(なかの あさみ)をいじめている

いじめっ子・麗子が呼び出されていたのだー。


”クラスのやつらや、先生にはバレないようにしていたはずなのにー”

麗子がそう思っていると、美優は、

冷たい目で麗子を見つめながら、麗子に囁いたー


「ーーー逆に、クラス中でお前をいじめてやろうかー?」

とー。


「ーーー!!!」

麗子は、ビクッとするー。


美優の”人気”は凄いー

もしも、クラスで”ランク”のようなものを付けるのであれば、

美優はトップクラスのランクに位置するような子だー。


その美優を敵に回したら、麗子とてー…


「ーーー…わ…わ…わか… わかったー」

麗子は屈辱と恐怖からぶるぶると震えー、

それ以降、”麻美”をいじめることは絶対にしないと約束したー


「ー約束、したから」

美優が、”普段とはまるで別人のような”表情でそう言い放つとー

そのまま麗子を置いて立ち去っていくー。


一人歩きながら

美優は呟くー


”ー麻美ー…”お兄ちゃん”が、お前のこと絶対守ってやるからなー”

とー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ただいま~!」

ランドセルを背負った麻美が帰宅するー


麻美はー、

小さい頃から病弱で、大人しい性格だったー


それ故、だろうかー。

”いじめ”を低学年の頃からずっと受け続けて来たー。


一方、麻美の兄である、中野 孝也(なかの たかや)は、

麻美とは正反対の活発で明るい性格ーーーー


ーーーーーだったのだがーー


高校に入学して少ししてから、

突然不登校の引きこもりになってしまい、

部屋から出て来なくなってしまったー


父親は麻美が小学校に入る前に病気で亡くなりー、

現在は母親と兄、そして麻美本人の三人暮らし。


小学校高学年と高校生ー

少し歳の差があることー、そして父親がいないことから

麻美にとっては、兄であり、父親のようなー、

そんな頼れる存在だった”兄”が、

突然部屋で引き籠るようになってしまったのだー


常に部屋に引き籠っているわけではなく、

出て来る時は出て来るし、

麻美と会えばとてもー

そう、過保護すぎるぐらいに親切にしてくれるもののー

兄が学校に行かなくなった理由は分からないー。


けれどー

同時期ー…


麻美にとって頼れる”味方”が出来たー。


それが、クラスメイトの美優だー。


元々、美優は”クラスの人気者”という感じの子でー、

接点はほとんどなかったー。

教室の隅っこにいる麻美からしてみれば、

美優は”雲の上の存在”だったのだー。


”いじめ”には加担していないとは言えー、

麻美にとって”何ともない”ただのクラスメイトの一人だったー。


がー

ここ最近になって、突然そんな美優が態度を豹変させたのだー


「麻美は、わたしの大切な親友!」と、

突然麻美を溺愛するようなそんな行動を見せはじめー、

麻美をクラスの輪に、半ば強引に引き込んだー


”クラスの人気者”であった美優は、その立場を利用して、

麻美をいじめていた麗子も丸め込みー、

麻美を助けたのだったー


「ーあ、ありがとうー」


”もういじめられることはないから”

そう、美優に言われた時、麻美は心底驚いたー


「ーーーへへ…いいってー

 だって麻美はおrーーー」


美優はそこまで言いかけると、

何度か咳き込んでから、

「ーだって麻美は、わたしの大切な大切な親友だもん!」と、

笑みを浮かべたー。


それから先も、美優は麻美のことを

まるで”妹”のように可愛がりー、

麻美は無事に小学校を卒業したー。


中学も美優と同じ学校ー。

美優は変わらず、麻美を過保護なまでに守ってくれてー

そのおかげで、小学校時代とは違いー、

そこそこの友達も最初からいる状態で、

自分に自信を持つことができたー。


「ーーー麻美ー」

教室の外から、麻美の姿を見つめながら

美優が少しだけ微笑むとー

「”お兄ちゃん”は、いつでも麻美の味方だー」と

小声で囁いたー


ーーー美優はーー

麻美の兄・”孝也”に憑依されていたー。


「ただいま~~~!」

中学での1日を終えて、帰宅した美優ー。


美優は晩御飯やお風呂を済ませると、

そのまま部屋の方に向かうー


”そういえば、美優って寝るの早いよね~”

学校でも、よくそんなことを言われるー。


「ーー当たり前だろー」

美優は夜の8時を示す部屋の時計を見つめながら小声でそう呟くとー

「”俺の身体”に戻らなくちゃいけないんだからー」

と、笑みを浮かべてから、「うっ」とうめき声をあげてー

そのままベッドの上で、意識を失いー、気絶したー。



「ーーーーー…ふぅ」


孝也は”自分の身体”に戻って来たー。


妹の麻美が”いじめ”を受けているー


麻美がまだ小学校に通っていた頃、そう聞いた孝也は

強い怒りを覚えたー。

だが、高校生の自分が小学校に乗り込んでいくわけにはいかないし、

仮に、いじめっ子の麗子とかいう子を懲らしめてもー

またー”孝也が見ていない場所で麻美をいじめる”可能性は十分にあるー。


とは言え、孝也が妹に付き添って登校するわけにはいかないし、

そんなことをすればつまみ出されるだろうー。


そこでー

孝也は考えたー。


”麻美のすぐ側で、一緒にいてあげる必要があるー”


とー。


その方法を、死ぬ気で考えー、

色々調べた結果、たどり着いたのが”憑依薬”だったー。


孝也は、一度飲めばいつでも幽体離脱できる身体に

自分を変異させることができる”憑依薬”を入手ー、

それを躊躇することなく使いー、

結果ー、”いつでも幽体離脱して霊体になれる”ようになったー


そして、麻美の学校にこっそりと霊体の状態で赴きー

”どの子の身体を乗っ取るのがいいか”

数日間、観察したー


観察の結果、”麻美と同じ中学に行くこと”が決まっていて

かつ、クラスでそれなりの影響力がある子ー…

そう、美優を選んだー。


男子でも良かったのだが、

”より自然な形で麻美の側にいられるのは女子だ”と、

そう判断し、

孝也はその日の夜ー


「ーーーーーー」

自宅で勉強している最中の美優に、”憑依”したー


「ーーひっ…!?」

勉強中だった美優が、机に座った状態のまま

激しく身体を震わしー、持っていたペンを落とすー。


しばらく苦しそうにしていた美優は、

やがて笑みを浮かべるとー

「これでー麻美の側にずっといられるー…」と

嬉しそうに笑ったー


まさか美優は、この日ー

自分の身体を乗っ取られてーそれ以降の人生を奪われてしまう

などとは、夢にも思っていなかっただろうー。


しかし、あの日以降ー

美優は、”孝也のもの”になってしまったー


”自分が幽体離脱している間”は、孝也の身体は抜け殻に

なってしまうー。

それを隠すために、孝也は”不登校”になり、

部屋に引き籠るという生活を始めたー。


自分の人生に大きな傷はついてしまうがー

それでも良かったー


大事な大事な妹の麻美を”すぐ側で”守ることが

できるのだからー


それからはー

朝、美優に憑依して、夜の8時には”寝る”という

早寝の設定で美優から抜け出しー、

そして夜の8時以降は自分の身体で生活ー

その後、翌朝には再び美優でー、という生活を繰り返しているー。


美優の意識は心の奥底に封じ込めてあるためー

何週間も放置しない限り、そう簡単には目覚めないー。


こうして、孝也は妹の麻美を守り続けて来たー


”親友の美優”としてー。


「ーーーーーーーーど、どうしたのー?」


ある日ー、

麻美が恥ずかしそうに美優の視線に気づき、

顔を赤らめるー


「ううんー

 麻美、可愛いなぁ~って思ってー」

美優がそんな風に言うと、

麻美は「そ、そんな~」と、恥ずかしそうに笑うー。


「っていうか、美優ちゃんはどうして

 わたしのこと、そんなに気に入ってるの?」

少し不思議そうに美優に確認する麻美ー


「ん~~~~~~?

 それはね~~~…」


美優は少しだけ考えてから、

麻美に抱き着くと「麻美はわたしの女神だから~~~!」と

嬉しそうに麻美とじゃれ合い始めたー


”あぁー麻美ー

 こんな近くで麻美のことを守ることができるなんてー

 お兄ちゃん、幸せだぞー”


この幸せが、ずっと続けばいいのにー。

そんな風に思いながら、美優に憑依した兄・孝也は

今日も幸せいっぱいだったー。


憑依したての頃は、つい”男”の仕草や言葉が

表に出てしまうことも何度かあったけれどー

最近はそれも克服したー


今では正真正銘の女の子になれたと思うー。


夜はー”自分の身体”に戻りー

二重生活を送っているために、

時折、”トイレ”で混乱したりー、

頭がバグりそうになることはあるものの、

何だかんだでこの生活も上手く言っていたー。



がーーー

それは”ずっと”は続かなかったー。


3年生になりー

妹の麻美が所属している美術部の顧問が変わったー。

それまで、麻美と接点はなかった先生だがー、

この杉淵(すぎぶち)という先生は、

何故か麻美のことを目の仇にするようになったのだー。


杉淵先生からの嫌がらせを受ける麻美ー。

美優として、麻美を杉淵先生から守ろうとするも、

”美優”は、子供ー。

教師という職権を乱用する杉淵先生を

止めることは難しかったー


それどころかー


「高村ー…お前、俺に何か文句でもあるのか?」

杉淵先生はそんなことを言い始めたー。


「ーーで…ですから!どうして麻美を目の仇にするんですか!」

美優は声を荒げるー


「うるさい!」

杉淵先生は、”美優”の身体ではどうにもできなかったー


今までのように”いじめ”から守るのとは違うー

中学に入ってからも”人気者の美優”であり続けー、

その立場を利用して、麻美をクラスの中で

”穏やかな立場”でいられるよう、あらゆることをしてきたー。


麻美の兄・孝也は元々明るい性格でクラスの中心人物であったことから、

美優の身体でも同じような立場になることはたやすいー

どうすれば男子受けが良いか、女子受けが良いかも理解しているー


だがー”相手が先生”となるとー…


原因は分かったー。

杉淵先生は、元々素行に問題のある先生で、

部活中にとある男子生徒に体罰を加えていたー。


そのことを、麻美が偶然目撃してしまったことからー

嫌がらせが始まった様だったー。


嫌がらせはエスカレートしていき、

麻美はみるみる元気を失っていくー


「ーーいい加減にしろよ!」


ある日の放課後ー

意を決して、杉淵先生と”対決”した美優ー。


「何だぁ?その口の利き方は!」

そう叫ぶ杉淵先生は、美優をグーで殴りつけたー


「ーーーあ、あんたー教師でいられると思うなよ!

 これ…これ、問題行為だぞ!」


美優として振る舞うことも忘れ、感情的に叫ぶ

美優に憑依した孝也ー。


そんな美優に

「なんだぁお前ー?そんな言葉遣いー」と、

不満そうな杉淵先生ー。


そしてー

杉淵先生は笑みを浮かべながら言ったー


「ー俺は親戚に教育委員のお偉いさんがいるんだよー

 だから、何をしても む・だ」


とー。


「ーーー!!」

美優は”俺がどうこうできる相手じゃー”と、心の中で思うー。


どうすることもできないままー

麻美への嫌がらせはさらにエスカレートー。


麻美はふさぎ込むようになってしまうー


「ーーーー」

そんな麻美の様子を、夜ー、自宅で見つめながら

孝也は自分の身体で、麻美に声をかけたー


「ーーお兄ちゃんが、守ってやるー」

とー。


”麻美のこと、頼んだぞー”


小さい頃ー

病気で死んだ父の言葉を思い出すー


「ーー守るよー。父さんー」

孝也はそう呟くとー

”禁断の手”に出たー。


部屋に戻りー

幽体離脱をしーーー


調べておいた杉淵先生の自宅に向かうー


そこで、杉淵先生の身体に憑依しー、

乗っ取った杉淵先生の身体のままー

近くの繁華街のビルの屋上に向かったー


「ーーーーー」

杉淵先生に憑依したまま、孝也は呟くー


「ーー麻美は、俺が守るー」

とー。


孝也はー

”悪魔”の道を踏み出したー


憑依した杉淵先生をビルの屋上から飛び降りさせー

落下し始めた直後ー、

孝也は杉淵先生の身体から抜けたー


「ーーーっ!? え!?」

恐怖に歪む杉淵先生の顔ー。

直後、杉淵先生の意識は途絶えたー。


・・・・・・・・・・・・・・・


「ーー俺は守るー麻美をー

 どんな手を使ってでもー」


妹を溺愛する兄・孝也の中で

この日”悪魔のような心”が目覚めたのだったー。


②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


今月最初のお話は”デビルお兄ちゃん”デス~!


A案とB案が私の中にあって、

最初、A案で少し書いたのですが、

こっち(今回実際に書き終えた方ですネ~)の方が、

いい気がしたので、こちらにしました~!☆


没になった方は、デビルお兄ちゃん完結後に、

通常の更新枠とは別で、おまけでこっそり公開する予定デス~!笑

(※連載中に没版も載せると混乱しそうなので、終わってから…☆!)


今月も、色々なお話を執筆していくので、

ぜひ楽しんでくださいネ~!

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