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ギャルの真綾と入れ替わってしまった天才外科医・伸樹ー。


やむを得ず、入れ替わった状態のまま生活を続ける中ー、

真綾になった伸樹は、真綾は想像以上に医学の知識をー…

いいや、想像以上どころか、まるで医療の世界を目指していたかのようなー

医師顔負けの知識力を身に着けていることを知るー。


そんな状況が続き、伸樹になった真綾は、”オペの本番”だけは避けつつ、

”病院の先生”として振る舞う日々を続けるー。


だが、ある日ー。

真綾にあることを確認しようと病院にやってきた真綾(伸樹)が、

伸樹(真綾)の目の前で倒れてしまいー…?


★前回はこちら↓★

<入れ替わり>名医だけど手術はできません③~理由~

バズの事故に巻き込まれて、 偶然、同じバスに乗っていたギャル・真綾と入れ替わってしまった 天才外科医の伸樹ー。 伸樹になった真綾は、元に戻る気があまりない様子で、 ”お金持ってそう!” ”偉い先生に慣れる!”などと、 そのまま伸樹の身体で生活を始めようとするー。 入れ替わった翌日ー 伸樹として病院に出勤した...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「先生!長谷川先生!」

看護師が叫ぶー。


「ーーーー………ーーー」

伸樹(真綾)は表情を歪めるー


脳出血で倒れた真綾(伸樹)ー

不幸中の幸いか、病院内で倒れたため、すぐに緊急手術の準備が整ったー。


そして、この場にいるのは

”パーフェクト・ドクター”の異名を持つ天才外科医の伸樹ー。


だがーーー


”どうしよう…あたし、どうすればー”


今、この場にいる天才外科医・伸樹は

”身体は名医だけど、中身は手術できないギャル”ーだった。


しかも、不幸なことにこの病院の他の”手術可能な医師”は

全員別のオペを行っているか、病院を離れているかしていて、

今、手術できるのは”中身がギャル”の伸樹だけだったー


”ーーーどうしようー”

真綾は”この状況”、どうすれば良いかを知っているー


真綾は元々、”医師”を目指していたー

小さい頃、ある先生におじいちゃんを救ってもらった際にー

”わたしも、こんな人になりたい”と、そう思ったのがきっかけだー。


そして、真綾は死ぬ気で勉強したー。


だがー”医師になる夢”は叶わなかったー。


お金ーーーー…の、問題ではない。


”実家”の問題だーー


父親は大の病院嫌いー。


「医者になんてなるな!」と、頑固に言い放ちー、

実家の和菓子屋を継ぐようにと、しつこく言い放ってきたのだー。


そんな父親と対立する日々が続きー、

ついに真綾は”医者になる”夢を諦めざるを得ない状況になってしまったー。


父親は、真綾の夢に反対するだけではなく

”妨害”まで行ってきたのだー。

そこまでされてしまったら、もう、どうすることも出来ないー。


そこから、真綾は捻くれてしまったー。

それまで真面目な風貌だった真綾は一転してギャルのようになり、

遊び歩く日々を送ったー


”こんな格好のあたしじゃ、接客なんて無理無理!”と、

和菓子屋を”継がない”理由を口にしてー、

遊び歩く日々を送ったー。


”夢”を諦めるために、ただただ遊び呆けようとしたー。


けれどー

”勉強”だけはやめられなかったー。


もう意味がないー

そう思いつつも、医者としての勉強を続けー、

真綾はここまでの知識を身に着けていたー。


「ーーーーーーー」

伸樹(真綾)は目を開くー


”このまま、あたしの身体を放置してたらー

 先生は死んじゃうかもしれないしー

 助かったとしても、後遺症が残る可能性が高まっちゃうー”


脳の出血で倒れた真綾の身体を救うためには

”時間との勝負”になるー。


”ーあたしは今、先生の身体だからー

 法律的に無免許医にはならないよねー”


伸樹(真綾)は、手に汗を握りながらそんなことを思うー。


医師になる夢を、捨てざるを得なかった真綾はー

何度も何度も何度も何度も、数えきれないほど

”空想の世界の中で”オペをこなして来たーー。


知識はあるー。

やり方は、分かるー。


「ーーーーー……」

伸樹(真綾)は色々考えた末に、目を見開くー。


「ーーこれより、笹野 真綾さんのオペを開始しますー」

伸樹(真綾)は、そう言い放ったー。


使う医療器具を、隣の助手に口走りー、

的確な指示を出していくー。


”やったこと”は、ないー

でも、知識は誰よりもあるー。


「ーーーー…!」


がー、”知識”だけでどうにかなる世界でないのも医療の世界ー。


実際にメスを握り、手術を行うのと、

机の上で学ぶ知識ー、実技で学ぶ知識は全然違うー。


本番ならではの緊張感ー、

生々しい人間の感触ー

そういったものを、全て乗り越えることができなければー、

手術は成功しないー。


伸樹(真綾)は、早速不安を覚えるー。


知識があっても”経験”がないー。

そんな状態で、オペを成功させることができるのだろうかー。


ここでやらなきゃ、真綾になった伸樹は死ぬー。


もしかしたらー

”入れ替わっていなかった場合”でも、

あたしは今日倒れたのかもしれないー。


そんな風に思うとー

余計に”先生を身代わりにするみたいでーなんか、イヤだしー”と、

いう気持ちが強まって来るー。


もし、失敗すれば、”伸樹”の天才外科医としてのキャリアは

恐らく終わるー。


だがー、だからと言って、ここで逃げ出したら、

真綾の身体と、伸樹の心は、終わるー。


もう、退くことはできないー


そう思いながら、ハッと、あることに気付く伸樹(真綾)ー


”手がー…!?”


手が”勝手に”動いているー。

いいやー、自分の意志で確かに動かしているーー

けれど、”勝手に動いているような”

そんな感覚に襲われるー


”ーー身体が覚えてるってことー?”

伸樹(真綾)は、伸樹の手を見つめるー。


そう、”数々のオペ”をこなして来た伸樹の”身体”にはー

手術の手さばきが染みついていたー。

例え、入れ替わって中身が変わろうともー

”身体が覚えている”

そんな感覚は、抜けることなく、中身が真綾になっても、

伸樹の身体にしっかりと残っていたー


”これならー”

伸樹(真綾)は今一度、引き締まった表情を浮かべると、

助手や看護師たちに指示を下していくー。


手順は知ってるー。


そしてー

”先生の手”があればー。


このオペをこなすことが出来るー


”先生ー…あたしが助けてあげるからー

 死なないでー”


そう思いながらー

”自分の身体”のことよりもー

”中身である先生”のことを心配しながらー

伸樹(真綾)はついにー

脳出血で倒れた真綾(伸樹)のオペを、

完璧に終了させたー


「ーーーお疲れ様でした」

伸樹(真綾)は、堂々とそう言い放つと、手術室から

まるでドラマのように颯爽と立ち去りながらー

”くぅ~…あたし、かっこ良すぎでしょ”と、心の中で笑みを浮かべたー。



「ーーおやー」

ちょうど、前日に”真綾が押し付けた”オペを終わらせたDr川井も

別の手術室から出て来るー


「ーー君にオペの予定はなかったはずだが?」

Dr川井の言葉に、伸樹(真綾)は充実した表情を浮かべながらー

「突然、病院内で倒れた子の緊急オペを行っていました」と、

安堵の表情で答えたー


「ーそうか。お疲れさんー」

Dr川井は珍しく上機嫌で伸樹(真綾)をねぎらうと、

そのまま立ち去って行ったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーー」

真綾(伸樹)が、病室で目を覚ますー。


「ー……私は…?」

思わず、”自分の身体”のつもりでそう言葉を口にするとー

たまたま様子を見に来た看護師にー

「中村さんー」と、いつもの調子で声をかけてしまうー


「あ」

すぐに、”自分の口から出た声”で、

自分が入れ替わっている状態だったことー、

そして、伸樹になった真綾と話している最中に、急に

呂律が回らなくなって、手が動かなくなりー倒れたことを思い出すー


「ーーえ?」

”中村さん”と呼ばれた看護師が、患者からいきなり

知り合いみたく呼ばれたことに少し驚く様子を見せるー


「あ、いえー……」

真綾(伸樹)は、戸惑いながら

自分の喋り方や、手の動きなどを確認するー


”自分が何故倒れたのか”ー

それを、真綾(伸樹)は医師として、瞬時に理解していたー。

そして”後遺症”は恐らく残らないであろうことも理解したー


「先生を呼んできますねー」

”中村さん”がそう言いながら立ち去っていくと、

「まさか、川井先生に助けられるとはー」と、

真綾(伸樹)は苦笑いしたー。


がー、病室にやってきたのは、伸樹(真綾)だったー


「先生…よかったー」

安心した様子の伸樹(真綾)ー


「ーーえ…もしかして、君がー…?」

真綾(伸樹)がそう言うと、

「ーーー…ごめんなさいー…あたし…本当はいけないの、分かってたんだけど、

 執刀できるのが、あたししかいなくてー」

と、申し訳なさそうに言葉を口にしたー


「ーーーー…」

驚いた様子の伸樹(真綾)はやがてー、

「いや、ありがとうございますー。君は命の恩人です」と、

安堵の表情を浮かべたー。


伸樹(真綾)は、少し間を置いてからー、

自分の境遇を語り始めたー。

医師の道を目指していて、それを諦めたことー

半分自暴自棄になって”ギャル”をやってたことー

その知識と、先生の身体に染みついていた感覚のおかげで、

オペを成功させることができたことー。


それを聞くと、真綾(伸樹)は

「やっぱり君はーーそうだったんですねー」と、頷くー。


倒れる直前、聞こうとした疑問が晴れたー


やっぱりこの子は、医師を目指していたのだとー。


そして伸樹(真綾)は、

”小さい頃”におじいちゃんを助けてくれた”先生”がー

伸樹であることも伝えたー


「あたしー…先生を見て、医者になりたいと思ったのー」

とー。


「ーーーー…君はー…あの時のー」

真綾(伸樹)はそこまで言葉を聞くと、

静かに頷くー


真綾は、10歳の頃ー、伸樹に”おじいちゃん”を救ってもらったのだー。

おじいちゃんを救う伸樹の姿を見て、

医者になりたいー…と、そう思ったー。


「ーー今度は、私の方が救われましたねー。

 ありがとう」


真綾(伸樹)は、穏やかな表情でそう呟くと、

「ううんー…全部、先生のおかげー」と、微笑むー。


医師を目指して、知識を身に着けたのも、きっかけは

”伸樹がおじいちゃんを救ってくれた”からこそー。

それが無ければ少なくとも真綾は、医師の道に進むことは

なかったと思うー。


今回だってそうー。

急に倒れてしまった真綾(伸樹)を助けることができたのはー、

”伸樹の身体”が、オペの感覚を覚えていたことだったー。


「ーーーいいやー私の力じゃありませんよ」

真綾(伸樹)は笑いながら言うー。


「ーー君が今まで必死に勉強してー

 そして、君がオペをしてくれたからこそー

 私はこうして助かったんだー

 君の身体もー


 だからー……もっと自分に自信を持っていいー

 本当に、ありがとうございますー」


そんな、真綾になった伸樹の言葉に、

伸樹(真綾)は少しだけ照れくさそうに

「あたしこそー…ありがとうー」と、言葉を口にしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


それから数か月ー。


伸樹は、”天才外科医”として再び数々のオペをこなし、

患者の命を救っていたー。


一方の真綾は、ギャルを”卒業”し、今からすっかり穏やかな感じの

風貌に変わっているー。


伸樹はまた”人助け”をしたー


だがー、今回は命を救うのではなく、

”夢”を叶える形でー。


「ーーお久しぶりです」

伸樹が言うと、真綾は少しだけ微笑んでから

カフェのテーブルに着席したー。


「ーーー最近も、順調みたいですねー」

真綾がそう言うと、

伸樹は「はいー。おかげ様でー」と、笑うー。


「ーーーー」

そう返事をした伸樹は、少しだけ笑うとー

「それにしてもー…」と、

真綾のほうを見つめたー


「ーーーなんだかー、

 ”自分なのに、自分じゃない”みたいですねー」


と、笑うー。


「ーーはははー勝手にイメージチェンジしちゃって

 申し訳ないー


 …しかし、”私は”変わらないですねー」


真綾がそう言うー。


そうー

二人はーーー…

”まだ”入れ替わった状態のままだったー。


あの日ー。

手術により命を救われた真綾(伸樹)は、

伸樹(真綾)と話し合いをして結論を出したー


それはーーー

”入れ替わった状態のまま、このまま生活すること”だったー。


真綾が入れ替わった当初から言っていた

”この身体のまま過ごす”という言葉は、本気だったー。


入れ替わった状態のままー

その決断をすれば、時間的に言えば、

真綾は20年近く、人生を”損”することになるー。


それでも、真綾の意思は固かったし、

そこまでの意思の固さを見せられた以上ー、

何より、この子が一生懸命学んできた努力に報いてあげたかったー


そうして”入れ替わった状態のまま”未来へ進んでいくことを決断したー。


真綾は、伸樹の身体のまま外科医としてー、

伸樹は、真綾の身体で大学生として、また、学び直しー


”元に戻る方法”も一向に分からなかったしー、

お互い、前に進む道を二人は選んだー。


伸樹の”身体”にはオペの感覚が染みついていてー

これまで必死に勉強してきた真綾の知識と組み合わさったことでー

”これまでの伸樹”と変わらぬ天才外科医ぶりを発揮した。

”中身”が変わっても、”パーフェクト・ドクター”は健在だったー。


絶対に叶わなかった夢を叶えることができた真綾は、

伸樹の身体で、人々を救う日々に、喜びと生きがいを感じながらー

充実した日々を送っている。


一方の真綾(伸樹)は、

大学に通いながら、生活を続けているー。

真綾の言っていた通り、父親が猛反発しているため

医師になることはできないかもしれないがー

それでも、何らかの人助けになることをしていきたいと、

現在は模索している最中ー。


「ーーーーー」

目の前にいる伸樹(真綾)のことを見つめるー。


色々複雑な思いはあるけれどー

真綾の夢を叶えてあげたー

これもまた、一種の人助けー。


それに、真綾なら、多くの患者を自分と同じように

救うこともできるはずだー。


真綾がいなければ、伸樹はあの時、

脳出血で真綾の身体ごと死んでいたかもしれないー


”自分は、一度死んだ身ー”

そんな風に思いながら、真綾(伸樹)は、

また新たな道を歩み始めることを決意していたー。


雑談を続ける二人ー

そんな中、ふと、伸樹(真綾)が言葉を口にするー。


「先生ーあたし、また新しい夢ができました」

伸樹(真綾)がそう言うと、

真綾(伸樹)は「ん?」と、興味深そうに首を傾げるー。


「ーーーどんな夢ですか?」

真綾(伸樹)が尋ねると、

伸樹(真綾)は静かに返事を口にしたー


「いつかー自分の診療所を作ってー

 そこで、先生と一緒に働きたいですー」


とー。


そんな言葉に、真綾(伸樹)は、穏やかに頷くと、


「ーはははーその時はぜひー」と、笑みを浮かべたー



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


ドクターとギャルの入れ替わりでした~!☆

今回は平和的(?)な入れ替わりでしたネ~!


お読み下さりありがとうございました~!

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