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北川 律雄(きたがわ りつお)はー

”結婚”を目前に控えていたー。


結婚式当日に、婚姻届を提出する予定になっていてー

正真正銘、式の当日に”結婚”するつもりだー。


だが、そんな彼はー、

悩んでいたー。


”本当に、俺、このまま結婚していいのかなー?”

とー。


マリッジブルー。

結婚を目前にして、急に不安な気持ちになったり、

気分が落ち込んだりしてしまう状態のことを示す言葉ー。

最悪のケースでは、マリッジブルーをきっかけに破局に

いたってしまうカップルもいるほどー。


「ーーーー俺ーーー…本当にこのままー」


だがーーー

彼の場合ー、律雄の場合は、

”かなり特殊”な、マリッジブルーだったー


それはー


「ーー俺…このまま”女”として結婚していいのかー!?!?」


長い黒髪を揺らしながら、首をぶんぶん横に振りー

”考えるな俺!”と、自分で自分に言い聞かせる彼はー


”新郎”ではなく”新婦”のほうだったー


そう、彼はー

”夫”になることではなく、”人妻”になることを前に、

マリッジブルーになっていたのだったー。


♪~~~~


そんなことを考えていると、インターホンが鳴り、

我に返った律雄は、慌てて「は~い!」と、

インターホン越しに応答して、宅配便が来たことを確認するー。


結婚を前に色々と必要なものが増えて来て、

色々とネットでも購入したりしているー。

そのうちの一つが、ちょうど自宅に届いたのだー。


「北川 梨桜(きたがわ りお)さんでお間違いありませんか?」

配達員にそう聞かれた律雄は、「あ、はい、そうですー」と、

答えながらサインをして、そのまま荷物を受け取るー


「ご苦労様でした~」

律雄はそう言うと、玄関の扉を閉じて

届いた荷物に書かれた宛名を見つめたー


”北川 梨桜”ー


”女”になったあとの新しい名前ー。


彼はー…

”北川 律雄”は、

確かに元々は男だったー。


しかし、今は女装しているわけでもなく、

他人に乗り移ったりしたわけでもなくー、

正真正銘、生物学的に”女”だー。


アソコにアレはついていないしー、

胸は大きくなったし、声も完全に女の声だー。

まだ、試したことはないが、主治医によれば

妊娠もできるとのことだー。


そうー

彼は高校時代に突然、女体化してしまったのだー。


それは、突然やってきたー

ある日の朝、目を覚ました時には、もう女になっていてー、

男の象徴とも言えるアレがなくなっていてー、

必死にズボンの上からアソコを触りー、

服を全部脱いで確認して、悲鳴を上げたのを覚えているー。


膨らんだ胸を何とか”元通りにしよう”と、

必死に壁に自分の胸を押し付けたのも覚えているー。


無論、そんなことをしても胸が小さくなるわけなどなくー、

もはや、律雄は完全に”女の子”になってしまっていたー。


原因は不明ー。

思い当たることはほとんどなかったー。

医師の診察も受け、ようやく”状況を理解してくれる先生”を

見つけ、しばらくお世話になったが、

元に戻ることはできないままー、時間ばかりが過ぎたー。


そしてー

女体化してから1ヵ月ー。

主治医の先生は言ったー。


身体の内部は完全に”女性”のものに変わっていて、

中身も外見も完全に生物学的に”女性”であるとー。


その上で、

”もう元に戻ることはできない”とはっきり医師に宣告された

律雄は”男として生きていくこと”を諦めたー。


どんなに望んでも、もう元に戻ることはできないー。

高校生の時にその現実を突きつけられた彼は、

”女”として生きる道を選んだー


まだ、人生の半分も過ぎていないー。

これから先、ずっと”俺は男だ!”と叫びながら生きていくのかー、

それとも”女体化したこと”を受け入れて女として生きていくのかー、

その選択を強いられた際に、律雄は”女として生きていくこと”を

選んだのだー。


主治医も、前代未聞の”女体化”を前に戸惑いつつも、

精一杯、色々サポートしてくれたー


名前もそのうちの一つー。

”律雄”という名前は、流石に男性的すぎるー。


もちろん、女性が律雄と名乗っていても良いものの、

いらぬトラブルを避けるために”つ”だけを抜いて

”莉桜”という名前を用意して貰ったー。


戸籍上も今ではしっかり”北川 梨桜”ー


急な女体化に戸惑いつつも、大学生になってからは

”律雄が男だった時代を知る人間”も周囲にはいなくなりー、

普通に”女子”として生きて来たー。


そして、今ー。

女体化してから5年が経過し、大学を卒業した翌年ー、

高校時代の親友・康樹(やすき)との結婚を目前に控えていたー。


康樹は、女体化した律雄を、高校時代からずっと支えてくれていたー。


”クラスメイトが突然、女になったー”


そんな事態を前に、まだ高校生だった当時ー、

周囲は揶揄ったり、興味本位で色々聞いてきたりー、

嫌な思いもたくさんしたー。


女子の制服を着て行けば笑われたし、

”俺は男なんだ!”と叫べば、「いやいや無理があるだろ」と言われたり、

男子トイレに入れば”目のやり場に困る”と言われー、

女子トイレに入れば変態扱いされー、

体育の授業もやはり、男子からは”目のやり場に困る”と言われて

女子からは”こっち来るな”と、言われたー


更にはー、当時、付き合っていた彼女の恵理子(えりこ)からも、

別れを告げられてしまったー


”ごめんー、本当にごめんなんだけどー…

 もう、律雄のこと、彼氏としては見ることができない”

と、そうハッキリ言われたー


「俺のほうこそごめん…女になっちゃってー」

そんな返事をしたことを今でもハッキリと覚えているー。


しかもーーー

男子の一部は興味本位から

”胸を触らせてくれよ”だとか”キスしてみたい”だとか

”スカートをめくらせてくれよ”だとか、

色々なことを言われたー


正直、それも辛かったー。


もちろんー

男子の中には、もし自分と同じように女体化すれば

触られて喜ぶようなやつもいるかもしれないー。


だが、少なくとも律雄はそうではなかったー


それまで、あまり深く考えたことはなかったがー、

胸を触られたり、スカートをめくられたりー

”女子として”、強く”嫌だ”と思ったー


がーーー

それを拒むと「男のくせにー」と言われたり、

「いいじゃないか ケチ臭いな」と言われたりー…


あの頃は、本当に大変だったー。

元々いじめを受けていただけでもなく、

寧ろ”クラスの中でも友達が多い部類”に入っていた律雄は

女体化したことで”全く異なる環境”に置かれることに

なってしまったのだったー。


そんな中ー、

唯一”変わらなかった”のが、親友の康樹だったー。


「ーーお前だけは、何も変わらないな」

ある日、女体化した律雄が疲れ果てた様子で言うと、

「ーだって、お前はお前だろー」と、

康樹は少しだけ笑いながら答えたー


「ーははは、ホント、いつも冷静だよなお前はー」

律雄が可愛い声でそう笑うと、

康樹は「ーー他のやつらが騒ぎすぎなんだよー」と、笑ったー。


”ものすごく可愛くなってしまった親友”を前にしても、

康樹は”いつも通り”ー。


そんな康樹の気配りー…いいやー

別に気配りでもなく”素”だったのかもしれないけれどー

それが、ありがたかったー。


彼とは、大学に進み別々の学校になってからも

連絡を取り合いー、定期的に会っているうちにー

律雄の中に”恋愛感情”がいつしか芽生えたー


自分でもー

”信じられねぇ”と、思いつつもー

”女として生きていく”ことを既に受け入れていた律雄はー、

”梨桜”として、康樹に告白したー


康樹は「えっ!?」と、初めて驚いた様子を見せながらー

「マジかー」と、しばらく考え込んだ末に、

「ーー俺なんかで良ければ」と、頷いたー。


「ーえっ!?マジで!?」

今度は告白した律雄の方が驚くー


すると、康樹は「いやぁ、だってーお前といると楽しいしー」と

笑いながらー、

「それにー俺ならお前のこと、よく分かってるからさー。

 支えていくこともできるだろ?」と、優しい言葉を口にしたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


そしてーーーー

大学を卒業しー、先月、康樹からプロポーズされて、

今に至るー。


律雄としても康樹のことは今でも大好きだったし、

付き合い始めてからも、康樹は変わらず、

親友としても、彼氏としても、とても暖かい人だー。


それなのにー


「ーはぁ~~~~~~」

深くため息をつく、律雄ー。


鏡を見つめるー。


そこには”大人の女性”になった律雄の姿ー


「ーとっくに女として生きていく決意を決めたはずなのにー」

律雄はそう呟くと、

「もうわたしは律雄じゃなくて梨桜ー わたしは梨桜、わたしは梨桜ー」

と、自分に言い聞かせるように言葉を何度も口にしたー。


今でも、男言葉を使うことはあるがー、

5年も女をやっていると、だんだんとそっちに慣れて来るー


ここ数年は、もう”男だった頃の喋り方”をする方が

違和感を感じるぐらいにはなっているー。


康樹からプロポーズされた時には

嬉しくて涙を流したぐらいだし、

結婚にも前向きだったー。


だが、その日が近づいてくるにつれて

日に日に”不安”な感情が強まってきているー。


”ーこのまま結婚したら、何だか自分が自分でなくなってしまうような気がする”


そんなことを考えたりー、


”こんな、急に女になったとか、得体の知れないやつが相手で

 康樹は本当にいいのかなー?”


と、考えたりもするー。


とにかくネガティブな考えが次から次へと頭の中に

浮かび上がって来ては消えていくー。

そんな状況に陥ってしまっているー。


「ーーあ~やめやめ!こんなことばっかり考えていても

 仕方ないし!」


自分のネガティブな考えを振り払うかのように、律雄はそう叫ぶとー

「わたしは梨桜梨桜梨桜梨桜梨桜ー

 これから、康樹の妻になって幸せになるの!」と

何度も何度も自分に言い聞かせるようにして呟いたー


けれどー

”マリッジブルー”なのだろうかー。

不安な気持ちはさらに強くなりー、

律雄は、康樹を呼び出して、その気持ちを素直に吐き出したー


「ーーーはははー、そっかー

 気づいてやれなくてごめんな」


康樹はそう言うと、

「俺は、梨桜の気持ちを一番大事にしたいと思ってるし、

 梨桜がもう1回じっくり考えたい、って言うならー

 俺はいくらでも待つよー。

 その結果、梨桜がどんな答えを出したとしても、

 俺は怒らないし、梨桜の考えを尊重するー」

と、そう優しく言葉を付け加えたー


「ーなんか、ごめんねー」

梨桜がそう言うと、康樹は「いいっていいって」と笑ったー。


女体化してー、

”梨桜”という名前を手に入れてからも、康樹はずっと律雄のことを律雄と

呼んでいたー。


だがー、女になってから2年ぐらいが経過した頃だっただろうかー。


だんだんと、思考が女性的になっていくにつれてー

”梨桜って呼んで欲しい”という気持ちが芽生えー

「ーーり、律雄じゃなくてー…り、梨桜って呼んでもらえるかなー?」と

そう相談してからは、康樹は律雄のことを、”梨桜”と呼んでいるー。


最初は男言葉で”女体化する前”と同じように話していた律雄も

今ではすっかり女として、康樹と会話をしているが、

康樹はそれに合わせてくれているー


「ーーーー俺は、梨桜と一緒になりたいー。

 でも、俺は梨桜の気持ちを大事にしたいー。


 だから、俺はいくらでも待つよー

 慌てず、ゆっくり考えて行こうな!」


康樹のそんな言葉に、梨桜は「うんー」と頷くと

その日はそのままいつものように過ごしたー。


”康樹と一緒にいると楽しいー”

心の底からそう思えるー


今のこの複雑な気持ちもー

きっと”マリッジブルー”なのだろうー


「ーーーー」

帰宅した梨桜は、鏡で自分の姿を見ながら思うー


いいやー

”俺は男だ”と、いう自分の中のどこかに残っている”潜在意識”に

よるものなのだろうかー。


これは本当に、マリッジブルーなのだろうかー。


そんな風に思いながら、梨桜は

「もうわたしは梨桜よ!律雄じゃない!」と、

元男の自分との狭間で悩んでいるー

そんな自分に言い聞かせるようにして、そう言葉を口にしたー。



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


女体化男子の女体化した直後ではなく、

結婚直前を描くお話デス~!


果たしてマリッジブルー(?)を抜け出せるのでしょうか~?

続きはまた次回デス~!


今日もありがとうございました~!!

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