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とある居酒屋を経営する若い夫婦は、

毎年1回、年越しの瞬間に”飲むと入れ替わるお酒”を飲んで

身体を1年ごとに交換しながら生活していたー。


坂根 美智雄(さかね みちお)と、その妻・清美(きよみ)ー


”飲むと入れ替わる謎のお酒”皇漢”ー

しかし、今年は去年までとは少し違う事情を抱えていたー…。


★昨年のバージョンはこちら↓★

<入れ替わり>大晦日の交換2021①~今年の二人~

とある居酒屋を経営する若い夫婦ー。 坂根 美智雄(さかね みちお)と、その妻・清美(きよみ)ー 二人は、美智雄の父から継いだそのお店を経営しながらー ”あること”を楽しんでいたー。 それは、”1年ごとにお互いの身体を入れ替えて”生活することー。 代々伝わる秘蔵のお酒”皇漢”をあるとき、二人は 間違えて飲んでし...


<入れ替わり>大晦日の交換2021②~未来~(完)

毎年の年越しのタイミングで身体を交換している 仲良し夫婦ー。 2021年から2022年になり、 美智雄と清美は、再び、身体を入れ替えたー。 2022年の今年は、 美智雄は美智雄の身体で、清美は清美の身体で過ごす年ー。 そんな、二人の2022年の元旦は…。 ☆前回はこちら↓☆ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2022...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


2022年大晦日ー


美智雄と清美が経営する居酒屋は、

今年も常連客で賑わっていたー。


昨年ー

2021年から2022年に切り替わるタイミングで、

二人は”元の身体”へと戻りー、

今年ー…2022年は”自分の身体”で過ごしたー。


次の1年ー

2023年は”いつも通り”ならー

今度はお互いに相手の身体で過ごすー

そんな年になる。


しかし、今年はいつものように

飲むと入れ替わるお酒”皇漢”を飲むーーーー


…と、いうわけにも行かない事情があったー。


それがー…


「それにしても、二人は今年はどうするんだい?」

常連客の男が、大晦日のひと時を店内で過ごしながら笑うー。


この常連客にも”酒”のことは言っていないがー

入れ替わるかどうかは”自分たちで決めることができる”と、だけは

伝えてあるー。

そのため、”今年はどうするのか”聞かれているのだー。


「ーーーはははー…

 そうですねぇ~…」


美智雄が困惑した様子で笑いながら、

横に立っている妻の清美のほうを見つめるー。


妻の清美はー

去年までとは違い、お腹が膨らんでいたー


そうー

清美は2022年の間に”妊娠”して、

美智雄・清美の夫婦にとっては初めてとなる

”子供”を授かっていたのだー


昨年のちょうど今頃もー

”子供が出来たらー?”なんてことを話していたがー

ついに、それが現実となったのだー


「ーー実は、まだ二人で迷ってますー」

清美が少し戸惑った様子で微笑むとー

「はははーまぁ、そりゃそうだなー…」と、

常連客の男が頷くー。


「ーー…入れ替わったら美智雄が、わたしの身体で出産することに

 なると思いますしー、

 ーーもちろん、美智雄になら、わたしの身体も、

 お腹の中の赤ちゃんのことも安心して任せられはするんですけどー…


 それで、本当にいいのかなってー

 ちょっと、悩んでますー」


清美が、迷っている理由を細かく説明したー。


美智雄といつものように入れ替わること自体は別にイヤではないー。

美智雄のことはこれまでも、そしてこれからも信頼しているー。

仮にいつも通り入れ替わってもー

美智雄は、清美の身体で、しっかり出産してくれるという

絶対の信頼があるし、そこに不安はないー。


けれどー


「ーー俺のことなら、気にしなくていいよー

 俺は清美の考えに従うからー」

美智雄が優しく笑いながら言うー。


「ーいつも通り入れ替わりをするなら、

 清美の身体で、俺たちの子供をしっかり産むしー、

 清美が”今年はやめておく”って言うならー

 俺は全力で清美をサポートするって約束するー」


美智雄がそう言うと、

常連客は揶揄うようにして

「あんたら、本当にいい夫婦だよなー」と、口を挟んだー。


「ーーーうん。ありがとうー」

清美は嬉しそうに微笑むー。


”美智雄に出産を押し付けるような形になってしまうこと”

”出産を経験せずに母親になっても良いものかどうか”という迷いー

色々な思いが、清美の中を駆け巡るー。


「ーー答えは、焦って出さなくてもいいよー。

 年明けの瞬間に入れ替わるって言うのも

 ほら、俺たちで勝手に決めたわけだしー」


美智雄がそう言いながら、

他のお客さんから注文された料理の準備を終えると

「お待たせしました~」と、それを運んでいくー


清美が妊娠してからは、極力、清美の負担が

少なくなるように、美智雄は配慮して動いているー。


「ーーでもまぁ、俺はイケメンな美智雄くんと、

 可愛い清美ちゃんも見たいケドなぁ~」


常連客の一人が笑うー。


この常連客によれば、

美智雄が美智雄である時よりも、

美智雄の中身が清美の時の方が

”美智雄がイケメン”に見えて、

清美が清美である時よりも、

清美の中身が美智雄の時の方が

より女の子らしくー、可愛く見えるのだと言うー。


「ーーーはははー…まぁ、それは

 新年最初の営業が始まった後のお楽しみということで」

美智雄がそう言うと、

常連客は「どういう判断をしても、俺は二人を応援してるからな」

と、笑いながら答えたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


2022年最後の営業が終わるー。


常連客たちを見送り、

店の入り口の片づけをして、店内に戻って来た美智雄ー


「今年もお疲れ様」

と、清美が微笑むー。


美智雄は「清美も。お疲れ様」と優しく言葉を返すと

毎年見ているテレビをつけて、

そのまま”2022年の残りの時間”を過ごし始めるー。


「ーーーーー今年はちょうど、俺が当番で良かったよー」

年越しそばの準備を始める美智雄ー


二人は毎年”交互”に、年越しそば作りを担当しているー


去年は美智雄(清美)が担当だったー。

そのため、今年は偶然、美智雄の番だー。


「まぁ、去年も言ったけど、毎年”俺の身体”が当番だよなぁ」

苦笑いする美智雄ー。


「ーーふふ、美智雄の身体に感謝!」

清美が笑いながらそう言い放つー。


「ー体調は、問題ないか?」

美智雄がそう言うと、清美は「うん。まだ全然ー」と、微笑むー。


「ーーーーー入れ替わりー…

 俺に負担をかけちゃうとか、そういう風に思ってるなら

 別に気にしなくていいからなー?」


美智雄がそばの準備をしながらそう言うと、

清美は「ふふー…美智雄は何でもお見通しだね」と、笑うー。


「ーははは…

 これだけずっと一緒にいれば、な~」


もうすぐ30代に突入するー

そんな二人ー。


”年数”では、年上の夫婦には敵わないかもしれないー


だが、”仕事”をしている時も一緒で、

お互いの身体も共有しているー


そんな二人は

”100歳の夫婦”よりもお互いのことをよく理解しているー…

とも言えた。


「ーーーもちろん、清美が自分で産みたいって言うなら

 さっきも言ったけど、全力でサポートするしー


 入れ替わりは強制じゃないから、

 気軽に考えよう。」


美智雄はそれだけ言うと、そば作りに集中し始めるー。


”入れ替わり”自体は、清美も楽しみにしているー

1年に1回”身体”が変わるのは、色々な意味で刺激になるし、

結婚後も変わらず大好きな美智雄と

”お互いの身体を共有している”という事実は

何よりもうれしいー


けれどー…。


清美は色々なことを考えるー

そしてー”決断”したー。


こうして、実際に妊娠するまではー

”子供ができたあとはどうするのかな~?”とか、

漠然とした話しかしてこなかったー。


しかし、実際にこうして、妊娠した今、

”真剣に”考えるべき時がついにやってきたのだー。


美智雄が年越しそばの準備を終えて、

「今年もあと少しだなー」と笑うー。


「いただきますー」

いつものように、二人で年越しそばを食べー

のんびりしながら、年越しの瞬間を待つー。


ひとまず、水を飲みながらー

”皇漢”も、倉庫から大きめの瓶に移して、

テーブルに上に置いてあるー


これを飲むか、飲まないかはー、

全ては清美の意思に委ねているー


「ーー美智雄ーわたし、決めたー」

清美がそばを少し食べ終えると、箸を一旦おいて、決意の表情で

美智雄を見つめたー。


美智雄はしっかりと頷くと、清美の”答え”を聞き始めたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーー」

美智雄と清美が経営する居酒屋の前にー

髭を生やした目の細い中年の男がふらりと現れたー


「皇漢ーーーー」

”入れ替わり”の力を持つお酒の名前をボソッと呟くー。


「ーーーー」

このお店を経営する夫婦が

”入れ替わっている”

そんな噂を男は聞いたー


そしてー

昨年ー

男はこのお店にやって来たー。


だがー

電車の遅延により、このお店にたどり着いた時には

既に”年明け”したあとであったため、

男は、2022年の元旦ー、このお店の前にやってきただけで、

何もせずに立ち去っていたー。


その反省を生かしてー

今年は、”早めに”来たー。


普段ー

普通の営業日にこの男はこのお店に”下見”しにきたことがあるがー、

”皇漢”がどこにあるのかは分からなかったー


恐らく倉庫や、家の奥などに置いているのだろうー。


だが、男は2年以上かけて情報を収集しー、

”年越しのタイミング付近でー、ここの夫婦は皇漢を閉店後の

 店の中で飲んでいる”ことを突き止めたー


「ーーーーーー”欲しい”」

男は不気味な笑みを浮かべるとー

店の入り口の前に立ちー、

静かに歩き出したー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーー今回は、入れ替わりをやめておこうと思うー」

清美が、真っすぐと美智雄を見つめながら言うー


美智雄は清美の決断を聞いて、静かに頷くと

”わかった”と、優しく微笑みながら頷いたー。


「ー美智雄に苦しい思いをさせたくないっていうのも

 もちろんあるけどー…

 入れ替わりで身体に何か影響があったらいけないし、

 やっぱり、わたし、自分で産みたいと思ってー」


清美がそこまで言うと、

美智雄のほうを見ながら

「ーなんか、ワガママでごめんね」と、微笑むー。


「いやいや、そんなことないさー。

 入れ替わりは”強制”じゃないんだし、

 ーーそれに、偉いと思うよー。


 俺だったら、出産怖い!ってなって、

 普通に入れ替わりお願いしちゃうかもだし」


美智雄がそんなことを言いながら笑うと、

「ー子供が生まれるまでも、生まれてからも

 俺は全力で清美を支えるって約束するー」と、

力強く頷いたー


「ありがとうー」

清美は、嬉しそうに笑うと、

「ーあ、来年以降はまたどうするか考えようねー」

と、美智雄のほうを見つめながら呟くー


「あぁ。まずは、子供のこと、だなー」

美智雄は清美のお腹のほうを見つめながら頷くー。


そうこうしているうちにー

”年越し”まで残りあとわずかー。


年越しそばの残りを食べながら

”新年”が訪れるのを待つふたりー。


「あ、じゃあ、これはあとで倉庫の方に戻してくるよ」

瓶に入れて、一応用意していた”皇漢”を片付けようとする美智雄ー


その時だったー


店の扉をノックする音が聞こえたー


”すみません!店内に忘れ物をしちゃってー”


そんな言葉に、美智雄は「あ、はいー」と、

立ち上がるー。


”それほど珍しいことではない”ために、

無警戒ーと、言うわけではなかったが

そんなに警戒せずに扉の鍵をあけた美智雄ー


だがーーーー

入って来た髭を生やした目の細い中年の男は、

美智雄を押しのけると、一直線に

”皇漢”が入った瓶のほうを目指して歩き出したー


そこには、清美も座っているー

一瞬、美智雄は”清美”に男が向かっているように感じてー

「ーーちょっと!何ですか一体!?」と、叫んだー


それでも止まらない男ー


「清美!」

美智雄は清美の危険を感じて叫んだー


だが、間に合いそうにないー。

美智雄が咄嗟に走り出すー。


店内は別に広くないー

入口付近で押しのけられた美智雄が、

清美と共に年越しそばを食べていた店内奥のテーブルに

たどり着くまではー、数秒しかかからないー。


「ーー!?」

美智雄は表情を歪めるー


”男の目当ては清美”だと思っていたがー

そうではないことを悟るー


男は、清美ではなくー

皇漢が入った瓶を手にしたのだー。


「ーへへへへ…ようやく、手に入れたー」

男が笑うー。


「ーおい待て!何してるんだ!」

美智雄が、「人の店のもので勝手に何をしてる!」と続けて叫ぶー。


「ーーへへへへーーー

 ”入れ替わり”ー」

男が笑うー。


”酒で入れ替わってる”とは誰にも言っていないー

なぜ、この男がそれを知っているのかー


「ーずっと、ずっと、探してたー」

男はそう呟くと、勝手にそれを持ち去ろうとし始めるー


”他人と入れ替われるお酒”

それを持ち去られれば”悪事”に利用されたり、

大変なことになるかもしれないー


「清美は奥へ!」

美智雄がそう叫びながら、男から皇漢の入った容器を取り戻そうとするー


必死に抵抗する美智雄ー


男は、予想外の猛抵抗に表情を歪めるー。


苛立ちを露わにする男ー


そしてーーー

男は邪悪な笑みを浮かべたー


「あんま、邪魔すんなよーー?」


そう言い放つと、

男は美智雄を突き飛ばしー、突然”皇漢”を飲んだーーー


「ーー!?」

店舗と自宅を隔てる階段付近で心配そうに美智雄を見つめながら

スマホで警察を呼ぼうとしていた清美が表情を歪めるー。


皇漢を飲んだ男がー

清美の方に突然走って来てーーー

清美に”皇漢”の入った瓶を無理やり押し付けたー


口をめがけてー


「おい!!!!!!!!!!」

叫ぶ美智雄ー


倒れ込む男と清美ーーー


”2023年ーーー!

 あけましておめでとうございます~~!”


テレビからそんな声が響き渡るー


”幸せ”は”永遠”ではないー

永遠に続くかのように思える幸せはー

いつ、どこで姿を変えるか分からないーーー


「ーーーククー」

倒れ込んでいた清美が起き上がるー


邪悪な笑みを浮かべてー


呆然とする美智雄ー。


”2023年”ーーー

この夫婦にとって、それは大きな”試練”とも言える

1年になるのだったー



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


毎年年末恒例の”大晦日の交換”デス~!

今年は3年目ですネ~!


前の2年は”入れ替わり”を一巡させるまで

幸せな日常を描いていましたが、

3年目の今年は”そのまま”だとまた同じ繰り返しになるので、

”変化”の物語になりました~!★


2021のラストにも出てきていた謎の男によって

身体を奪われてしまった妻…!

明日の続きもぜひ楽しみにしていてくださいネ~!


今日もありがとうございました~!

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