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「まさかー、”女”だったとはなー」


サングラスを掛けた男が笑みを浮かべると、

反対側に足を組みながら座っていた髪の長い女が

笑みを浮かべるー


「ー”女”じゃいけませんか?」

とー。

冷たい視線を向けながらー。


そんな女を見て、相手の男がゾクッとすると、

「いいやー、むしろ新鮮だよー

 ”ナイトメア”の異名を持つ売人ー…

 てっきり男だと思ってたからなー」

と、サングラスの男は笑いながら答えたー。


「ーーーふふー そうですかー。」


そう呟くと、女は黒いタイツに包まれた足を組み直しながらー

「早速ー始めましょうかー 取引をー」

と、笑みを浮かべたー


・・・・・・・・・・・・・・


取引を終えた女が倉庫の外に出てくるとー

サングラスを掛けて静かに歩き出すー。


自分のバッグを手にー

その中から取り出した”学生証”を見つめる女ー


「わたしはー狭霧 亜香音(さぎり あかね)ー」

その女ー、亜香音はそう言うと

自分の学生証を見つめながらー


「”身体”は、ねー」

とー、不気味な笑みを浮かべて再び歩き出しー、

夜の闇へと消えたー。


Nightmare desire episode.1-


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


主な登場人物


森本 龍平(もりもと りゅうへい)

大学生。彼女の亜香音と楽しい学生生活を送っていた。


狭霧 亜香音(さぎり あかね)

大学生。龍平の彼女。ある日を境に不穏な行動が目立つように。


小野寺 瑠香(おのでら るか)

大学生。龍平の幼馴染。小悪魔的な性格の持ち主。


根岸 和夫(ねぎし かずお)

大学生。瑠香の彼氏。ひたすら瑠香に振り回されている。


”ナイトメア”

裏社会で暗躍する謎の人物。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


1か月前ー。


「え~?ホントに~?」

亜香音が笑いながら、隣を歩いている男子大学生と

楽しそうに話をしているー。


亜香音の隣を歩いているのは、

同じ大学に通う亜香音の彼氏ー

森本 龍平(もりもと りゅうへい)ー。


困っている人を見ると放っておけないタイプの男子でー、

亜香音との出会いも、そんな性格がきっかけだったー。


「ーーホントホントー、根岸(ねぎし)、また

 小野寺(おのでら)さんにデートすっぽかされたってー」


龍平と亜香音が話をしているのはー

同じ大学に通う別の生徒の話題ー。

大学生らしい雑談を交わしながらー

昼食を食べるために、大学内の食堂へと向かうー。


今日もー、

”いつものような時間”が流れているー


特に大きな悩みもなくー

穏やかな、大学生活ー。


昼食を食べながら、亜香音が

”この前実家に帰った時の話”やー、

”来月の学園祭の話”など、色々な話題を口にするー。

龍平は楽しそうに話を聞きながらー、

自分も色々な話題を口にしてー

二人の話は尽きないー。


亜香音は、真面目で気配りのできるタイプの女子大生ー。

ただー、性格は明るく、勉強一筋のような子ではなく、

友達も多いタイプの子だー

誰に対しても表裏のない性格であることから、

周囲からの信頼も厚いー。


「ーーーーー」

ようやく、食事を終えて、少し時間が余ったため

スマホを確認する龍平ー。


”また一段と可愛くなったわたし!”

そんな文章と共に、

ウインクしながらピースしている女子の自撮り写真が

送られてきているー


「ーーーは…ははは」

呆れ顔で苦笑いする龍平ー。


写真を送ってきたのはー

幼馴染の小野寺 瑠香(おのでら るか)ー。

さっき、亜香音との会話の中にも出ていた”小野寺さん”のことだー。


別に浮気をしているわけではないー。

小悪魔的な性格のー…どこか空気が読めない感じの瑠香が、

龍平に彼女が出来たあとでも、平気でこういう自撮りを

送ってきたりするのだー。


がー、元々、亜香音と付き合う・付き合わない以前から

自撮りを送って来ることは多々あり、

別に亜香音と付き合い始めたからそういうことをし始めたわけではなく、

瑠香に悪気はないためー

龍平も彼女の亜香音も苦笑いしながら、いつも黙認している状態ー。


「ーーーどうしたの?」

スマホを見ながら苦笑いしている龍平を見て、亜香音が首を傾げると

龍平は「いやー、また小野寺さんからー」と、隠す気もなく、

スマホの画面を亜香音に見せつけたー。


「あ~~~!瑠香ちゃん!瑠香ちゃんってホント可愛いよね~」

亜香音は瑠香の写真を見ながら笑うー。


龍平のことを信頼しているしー、

龍平と瑠香に恋愛感情がないことは理解しているためー、

嫉妬深い性格でもない亜香音は全く気にする様子もなく

瑠香の写真を見つめるー。


「ーーははははー

 でも、何で俺にいつも写真送って来るんだろうな~?」


龍平が少し恥ずかしそうに言うと、

亜香音は「瑠香ちゃん、わたしにもよく送ってくるし~」と笑うー。


「えぇっ!?亜香音にも?」


「ーそうそうー。結構色々相談されたりするしー」

亜香音は笑いながらそんな言葉を口にするー


瑠香は、ある意味天才だー。

誰にでも平気でガンガン積極的に近づいていくしー

周囲をガンガン平気で振り回すー


彼氏の根岸 和夫(ねぎし かずお)も

いつも本当に苦労していて、

最近では白髪も増えているように見えるー。


「ーーーん?」

そんな笑い話をしている最中にー、

ふと、スマホに偶然表示されたニュースを見つめるー。


”武器商人の女を逮捕”

そんな見出しだー。


「武器商人なんているんだなー」

龍平が思わずそう呟くと、亜香音は「え?」と、

首を傾げるー。


龍平が”この近所”で逮捕された武器商人の女のニュースを見せると、

亜香音は「ーわ…なんか、物騒だね…」と、

困惑の表情を浮かべたー。


しかもー

”容疑者”は、”美人”と呼ぶにふさわしい綺麗な人でー

とても、犯罪に手を染めるような人には見えなかったー。


”中野 友麻(なかの ゆま)”容疑者ー。


「ーーー……女の武器商人かー」

龍平は、そう呟くと、ニュースが表示された画面を

スクロールして、そのままニュースを閉じたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


大学での1日が終わるー。


「ーーあ、なんか、邪魔しちゃってごめんなさいー」


眼鏡をかけた大人しそうな女子大生ー

冬月 琴美(ふゆづき ことみ)が、申し訳なさそうにそう呟くー。


「ーーえ、いやいやー

 本当に気にしなくていいってー!

 俺の方こそ、いつも気遣わせちゃってごめんなー」


龍平が慌てた様子でそう言い放つー。


琴美の横にいた亜香音が「そうそうー、龍平、本当に気にしてないから、

琴美も気にしないで!」と、少し困ったような笑みを浮かべるー


琴美は、亜香音の親友ー。

龍平と付き合い始める前から亜香音ととても仲が良くー、

大学内でもトップクラスの成績を誇る優等生だー。

おまけに、容姿にも恵まれていてー

何度も、男子が”可愛い”と言っているのを聞いたことがあるー


がーーー

琴美は”超”がつくほどネガティブな性格でー、

全く自分に自信がないー。


龍平と亜香音が付き合い始めたあとは、

何かと”二人の邪魔をしちゃってごめん”ばかりを

繰り返しているほどだー。


「ーーう、うんーありがとう…」

琴美がなおも申し訳なさそうにそんな言葉を口にすると、

龍平は「じゃ、今日はバイトだったっけ?」と、

亜香音に確認するー


「うんー」

亜香音が頷くー。


お互い、バイトや予定がない日は二人で一緒に帰ることも多いのだが、

今日は亜香音の方にバイトがあるためー

一緒に帰ることはできず、ここでお別れだー。


「ーー分かったー。じゃあ、また明日ー

 バイト、頑張って」


龍平が笑いながらそう言うと、亜香音は「ありがと!」と、

嬉しそうに笑いながら、同じ方角の琴美と一緒に

大学の門を出て立ち去って行ったー


「ーーーふぅ…さて、俺は帰ったら何をしようかなー」

龍平はそんなことを呟くとー

ゆっくりと自宅に向かって歩き出したー


ーーー龍平は、まだ知らないー。

いいや、亜香音自身もー。


これからーーーーー

”亜香音が憑依されて”犯罪に加担することになるー


と、いうことはー。


そしてー、

それを境に、日常がガラリと変わってしまうことをー、

龍平も、亜香音もー

周囲にいる人々も、まだ、知らなかったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


その日の夜ー。


ファミレスでのバイトを終えた亜香音は、

スマホで時間を確認すると、

そのまま自宅に向かって歩き出したー。


「ーーーー……?」


だがーーー

少し歩いたところで、亜香音は”気配”を感じたー


少しだけ視線をずらしてー

”背後”を確認するー。


「ーーー(気のせいかなー)」

亜香音はそんな風に思いながら、再び夜道を歩きだすー。


”女の子の夜道の一人歩きは危ない”

そんなことは、亜香音も重々承知しているー。


そう言った経験はないもののー

”必要以上に暗い道などを通らない”ようにしたり、

自分なりにできる対策はしているー。


とは言えーー…

”家に帰るため”には、多少人通りの少ない道を

いくつか通る必要もあるー。


冬の冷たい風邪が吹き付ける中ー

”寒い~…”と、心の中で呟きつつ、

家に向かって歩き続けるー


「ーーーーー?」

再び気配を感じて、振り返る亜香音ー。


だんだんと気味の悪さを感じて、

亜香音が少し早足で歩き始めるとー


その直後ーーーー


ぶつっ、と意識が途切れてー


「ーー!?!?!?!?」

気付いた時にはー

自分の部屋にいたーーー


「ーーえ…!?」

亜香音は困惑するー。


亜香音からすればー

”早足で歩き始めた瞬間、一瞬、意識が飛んだような気がして

 部屋の中にワープしたような”

そんな、感覚だー。


「ーーーおはよう」


ー!?


その言葉に、亜香音はびくっとして振り返ったー


すると、背後に

一見すると気さくそうにも見えるー

けれども、鋭い目つきの”イケメンのおじさま”という感じの

男が腕組みをして立っていたー。


「ーー急に驚かせて申し訳ないー」

男はそう言うと、亜香音は「えっ…?えっ…?」と、

困惑の表情を浮かべるー。


確かに今ー、

帰り道を歩いていたはずー

それが一瞬にして、自分の部屋にいてー

しかも、知らない男の人がいるー


「あ、あなたは…誰ですか!?」

亜香音がビクッとしながら

「ーな…何でわたしの家にいるんですかー?」と、

言葉を続けるー。


「ーーははっ、そりゃそうだー。ごもっともな疑問だなー」

悠斗はそう笑うと、煙草に火をつけながら、

突然、持っていたスマホを、亜香音の方に見せつけたー。


それを見た亜香音は、表情を歪めるー。


亜香音が”歩きながら自撮りをしている”映像ー。


”ーこれからわたしは、色々な犯罪に手を染めちゃうの”

映像の中の亜香音が、悪女のような笑みを浮かべながら

そう呟くー


”ククククククククー”

自分でも、見たことのないような恐ろしい笑い方をする亜香音ー


「こ、これはー…?」

”身に覚えのない自分”が映し出された動画を見て

亜香音が混乱するー。


そしてー

動画の亜香音は、亜香音の家までやってくると、

そのまま家の中に入りー

鏡の前に立ったー


”ーわたしは狭霧 亜香音ー

 これから、たくさんの犯罪に手を染めるわる~い女…

 ふふっ…♡”


完全に悪女ー…

そんな表情を浮かべながらー

動画の中の亜香音は笑ったー


さらにー

信じられないことに、亜香音は自分の胸を両手で揉みながらー

”ーー次の”身体”もいい身体だぜー”と、

邪悪な笑みを浮かべたー


”ーふふふ 驚いたでしょ?”

映像の中の亜香音が、まるでー

亜香音本人に語り掛けるかのようにそう呟くとー、

”わたし、”憑依”されて身も心も乗っ取られちゃってるの!

 すごいでしょ?”

と、笑ったー。


信じられない、という表情でその映像を見つめる亜香音ー。


映像の中の亜香音は椅子に座って

普段絶対に吸わない煙草を吸い始めるとー

足を組みながら笑ったー


”お前の身体はー俺のものだー”

とー。


そこで、映像が終わるー


「ー!?」

亜香音は恐怖に震えたー


帰宅中に突然、意識が飛んで部屋にいたのはーーー…


「ーそう怖がるなよー。

 別に俺は、君を傷つけようとしているわけじゃないー。


 ただー

 ”ちょっと”俺に身体を貸してほしいだけなんだー」


芝居めいた口調で笑みを浮かべる男ー。


「ーーか…か…身体…を?」

亜香音からしてみれば意味が分からないー

目に涙を浮かべながらそう聞き返すとー


「そうー。中野って女が逮捕されたニュース、知ってるか?」

男は半笑いでそう言うと、

亜香音は表情を歪めたー


「武器商人なんているんだなー」


「ーわ…なんか、物騒だね…」


「ーーー……女の武器商人かー」


大学で、彼氏の龍平と会話した内容を思い出すー


「ーーーククー 

 あれはー”俺”なんだよー

 俺が身体を乗っ取って、犯罪に利用していたんだー」


男はニヤニヤしながらそう言うとー


「ー俺は、この世の全てが欲しいー

 人生は、短いからなー

 やりてぇことを全てやるには法律なんざ守ってられねぇ」


と、言葉を続けたー。


握りこぶしを作りながら、突然、机に置いてあったナイフを

壁に投げつけると、

口笛を吹きながら

「ーーでも、法律を破れば人は”逮捕”されるー

 裁かれるー

 当たり前のことだ」

と、急に冷静な口調で呟き始めるー。


「ーーー……わ…わたしに…何をするつもりですかー…!?」

泣きながらそう叫ぶ亜香音ー

何かされているのか、身体が思う様に動かず、

逃げることもできないー


「ーーー前の俺の”入れ物”さー、

 ついに逮捕されちまったからー

 ”新しい身体”をレンタルしようと思ってな」


男の言葉に、亜香音は、この男が自分に何をしようとしているかを

完全に理解するー


「ーなぁに、心配するなー

 借りたものはちゃんと返すー


 ま、何日後ー何週間後ー何か月後ー

 いいや、何年後かは分からないしー

 返す時、どうなってるかは、わからないけど、なー」


男はニヤニヤしながら、そう言うと、亜香音のほうをじっと見つめたー


「ーー綺麗な顔だよなー

 綺麗なものを”闇に染める”のってーーー

 ホント、興奮するぜー」


男はそう言うと、

「さァ、身体をよこしな!」と、笑みを浮かべながら叫んだー


「ーーひっ…やめて…!

 やめてください!

 お願いします!やめて!」


亜香音が泣きながら助けを求めるー


「ーー”いいね”ー」

男はペロリと唇を舐めながらー

血走った目で狂気の笑みを浮かべたー


この男は”狂って”いるー。


そう思うと同時に、男が急に煙のようになってー

亜香音の方に向かってきたー


「ーーーや…やめて!!やめーーー ひぃっ!?」

身体をビクッと震わせた亜香音はーー

涙を流しながら不気味な笑みを浮かべて、

ペロリと唇を舐めたー


やがてー

ゆっくり立ち上がると、

壁に投げつけたナイフを抜いてからー

それを亜香音の舌で舐めーーー


自分の綺麗な指にーーー

そのナイフで傷をつけたーーー


ペロッー


亜香音の指から出た血を舐めるーーー


「ーーーうめぇー」

亜香音は狂った笑みを浮かべながらー

「ー今日から、わたしは”ナイトメア”ー」

と、静かに囁いたー



”憑依されてしまった彼女”ーー


”悪夢”のような日々が今ー、

始まろうとしていたー…



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


長編第7弾「ナイトメア・デザイア」がいよいよ連載開始デス~!

(長編は毎回独立したお話なので、今までの長編を知らなくても

 全く問題なく楽しめます~!☆)


今回はゾクゾク要素多めのお話になる予定なので、

ぜひゾクゾクしながら楽しんでくださいネ~!


ちなみに、長編は毎週金曜日ですが

今週だけ年末が絡んでくるので、火曜日になりました!

(※毎年年末に書くお話があるので、それに合わせてずらした感じデス!)


次回以降はまた金曜日に戻るので、

よろしくお願いします~!☆


今日もありがとうございました~!

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