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”俺に姫様の代わりなんてできるわけがねぇ!”


とある王国の辺境の村で暮らしていた、ごく普通のおじさんー、ボブ。


だが、王国の姫、第2王女・アイリーンと出会い、

アイリーンが宝箱を開いたことによってボブとアイリーンの

身体が入れ替わってしまったー。


しかも、アイリーンの提案で、

ボブはアイリーンの身体で姫として、

アイリーンはボブの身体で村人として、しばらくの間、

暮らすことになってしまったー。


困惑するボブと、普通の村の暮らしを体験してみたいという

アイリーンの運命は…?


★前回はこちら↓★

<入れ替わり>村人A、お姫様になる①~驚きの提案~

とある王国ー 第2王女のアイリーンは、何でも器用にこなすことができる天才肌の お姫様ー。 その美貌は宝石のように美しく、民衆たちからは ”アイリーン様のお姿を見ることができた者は幸せになれる”などと 言われるほどー。 それでいて、アイリーンは自分の能力や容姿を自慢するようなことも、 気取るようなこともなく...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーみんな~!おじさんが帰って来たよ~!」


ボブになったアイリーンが、村の入口までやってくると

子供たちが、ぞろぞろと集まって来たー


「ーあら…」

ボブ(アイリーン)は、一瞬、自分がボブの身体であることを

忘れかけていて、そんな言葉を口にしてしまうもー

すぐに、”あっ…わたし、今はーー”と、思い出して、

「ーははは…い、今、帰ったぞ~!」と、ボブから聞いた通りの

振る舞いをしながら、子供たちの頭を撫でたー。


しばらくすると、奥から穏やかそうな女性が歩いてくるー


”えーっと…この人が、チェルシーさんでいいのかなー…?”

心の中でそう呟くアイリーン。


ボブには妻がいるー。

穏やかな性格の持ち主であるものの、

とても身体が弱く、よく体調を崩しているため、

どうか、宜しくお願いしますー、と、ボブから言われているー。


「ーーー…チェルシー…さん?」

ボブ(アイリーン)がそう言うと、ボブの妻・チェルシーは「?」と、

不思議そうな顔をしているー


「あっいえっ!いえっ! ちがっ!その、何だかすみません!」

慌ててボブ(アイリーン)が頭を下げるー


”し、しっかりしないとダメ!

 今の私は姫じゃなくて村人なんだからー”


深呼吸を繰り返すボブ(アイリーン)ー

入れ替わった直後、ボブから話を聞いて、

”ボブとして振る舞うこと”にそれなりの自信を持っていたもののー、

実際、やってみるとすぐに素が出てしまって、思いの外、大変だったー


深呼吸を終えると、ようやくボブ(アイリーン)は


「チ、チェルシー、た、ただいまー」

と、ぎこちない様子で言葉を吐き出したー



採取してきたキノコを料理する妻のチェルシー。

他の村人が取って来た山菜なども集まり、

チェルシー以外の女性や、村人たちも料理に加わっているー。


村の中心部に集まり、子供たちは今や今かと料理が出て来るのを

待ち構えているー。


”狩り”で食材を手に入れた日は

こうして”いつもより少し豪華な”食事をみんなで取るのだというー。


”ーーーーーー”

ボブ(アイリーン)は、そんな光景を見つめながら

少し表情を歪めるー。


村人たちはみんなー、やせ細っているー。

体格の良いものもある程度いるし、ボブもがっちりとした体形では

あるもののー、全体的に痩せている人間が多いー


子供も含めてーだ。


それに、ボブの妻・チェルシーもボブから聞いていた通り

体調は良さそうには見えないー


「ー大丈夫でー… …か?」

”大丈夫ですか?”と聞きそうになってしまったところ、

誤魔化すボブ(アイリーン)


チェルシーは「ーーえぇーー」と、頷きながらも

やはり調子が悪そうだー。


「ーせめて、薬さえ手に入ればー

 我々のような辺境の村ではなかなか薬も手に入らないからなー」


村人の一人が言うー。


”ー薬が手に入らないー…?そんなことー…”

ボブ(アイリーン)は心の中で思うー


王国は、確かに平和だー。

だが、王国の中心部から離れれば離れるほど、

この村のように”王国の目”が行きわたっておらずー

人としての最低限の生活すら保障されないような、

そんな生活が続いているのだー


「ーー(それなのにー…ここの村の皆さんはー

 本当にたくましくー…前向きに生きているー)」


貧しい状況でも、”目”は死んでいないー

自分たちの置かれた状況の中で必死に生きているのが

伝わってくるー


「(やっぱり、わたしがー…)」

ボブ(アイリーン)が拳をぎゅっと握りしめると、

村人の一人が、調理したキノコを口にしながら呟いたー


「ー王宮のやつらは、今も贅沢三昧してるんだろうなー。

 俺たちみたいな辺境の村のことなんてお構いなしだー。


 民のことなんてどうでもいいんだろうよ」


そんな言葉に、村長が「これ、やめんか」と、

その村人を諭すー


「ーーご、ごめんなさいー」

ボブ(アイリーン)が思わず謝罪の言葉を口にしてしまうー。


アイリーンは、”辺境の村”が存在することは知っていたー。

だが”ここまで貧しい”とは思ってもみなかったー。


「ーーーどうしてアンタが謝るんだ?

 あんたはよくやってくれてるじゃないかー

 

 この村で、ボブさんに文句のあるやつはいないよ」


先程、王宮への文句を口にした男が言うー。


「ーーあ、… あぁ…でもー

 い、言わせてくれー。ごめんってー」


ボブ(アイリーン)がそう言葉を呟くー。


アイリーンは、心の底から”村の状況”に心を痛めていたー。


やがてー食事が終わり、ボブから聞いていた家に入るー。


妻のチェルシーも、弱弱しく家の中に入ってくると、

ボブ(アイリーン)のほうを見て、ふと呟いたー


「ーーあなたはーー…どちら様ですか?」

とー。


「ーーえっ!?」

ボブ(アイリーン)がビクッとするー


「ーーな、な、なにを言うんだー

 お、俺はボブじゃないか! ははっ!」


ボブ(アイリーン)が必死に誤魔化そうとするも、

チェルシーは悪い顔色のままー、

けれどもハッキリとした口調で、ボブ(アイリーン)のほうを見つめたー


「ー夫と、わたしが何年一緒にいると思ってるんですかー

 見くびらないでくださいー」


身体は弱っていても、心は弱っていないー。

そんなことを思わせる強い目ー


「ーーーー……」

ボブ(アイリーン)は隠し通せないと悟り、

観念した様子で「ーー申し訳ありませんー」と、その場で

深々と頭を下げたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーーーーー」


王宮ー


第1王女のグレースが口をぽかんと開けているー。


第3王女のリリーは、「えっ?えっ?」と、少しあたふたした様子だー。


それも、そのはずー


”やっべぇー…”

アイリーン(ボブ)は困惑していたー


”王宮ならではの豪華な食事ー”


グレース、アイリーン、リリーの三人のディナーの時間ー


だが、ボブには、”王族の食事”のマナーなど全く分からずー

王女にあるまじきワイルドな食べ方を披露してしまっていたー


「ーちょっとー? 下品ですわよ?」

第1王女のグレースが表情を歪めながら言うー。


「え…あ、は、はいーお、お姉さまー そ、そのー」


食べ方が分からないー


”やっぱ、俺に姫様なんて無理だってー”

アイリーン(ボブ)は冷や汗をかきながら心の中でそう叫ぶー。


手でつかむべきではないものを手でつかみー

ドレスを汚しー、

食べ方も、上品とは言えない食べ方だったー。


ボブが特別下品ー、というわけではなく

村での食事は”こう”なのだー


お皿もスプーンも、フォークも満足に用意できない環境ー


だからー

王宮の食事にいきなり適応しろと言われても、無理なのだー。


「ーー汚らわしいーわたしの前でそんな食べ方、見せないでちょうだい!」

グレースがそう叫ぶと、心底イヤそうな顔をして目を逸らすー。


「まあまあお姉ちゃん~」

第3王女のリリーは笑いながら、グレースを落ち着かせようとすると、

アイリーンの方を見て「でも、今日はどうしたの~?お姉ちゃん

最近疲れてる?」と、言葉を口にしたー


「うーー、ううんー今日は食欲がなくってー」

これ以上食べるのは得策ではないと判断したアイリーン(ボブ)は

そのままナイフとフォークを置いて、

「し、失礼しますー」と、逃げるようにしてその部屋から

立ち去ったー



「ーーあぁ…何なんだここはー

 まるで違う世界に迷い込んだかのようだー」


アイリーン(ボブ)はそう呟きながら廊下を歩くー。


しかも、”いかにもお姫様”な感じのドレスー

ボブからすれば歩きにくいことこの上ないー。


「あぁ~~~」

髪も長くて、何かと自分の顔や手に触れて、とにかく気が散るー


「ーーー………ー俺なんかが、こんなところにいていいのかー…?

 姫様の評判を落とすようなことになったらー…まずいぞ?」


部屋に到着したアイリーン(ボブ)はそう呟くー。


”お姫様”の部屋は気品と可愛らしさに溢れていてー、

アイリーン(ボブ)は思わず顔を赤らめて目を逸らすー


いやー…

部屋にいるのに目を逸らしても意味がないー


アイリーン(ボブ)はため息をつくと、

”ーー姫様も…俺の村の生活に今頃困惑してるんだろうなー”

と、心の中で静かに呟いたー。


「ーーーーー…ゴクリ」

ふと、部屋にある豪華な鏡にアイリーン姫の姿が映るー


「ーーなんて綺麗な人なんだー」

そう呟くアイリーン(ボブ)ー


そんな、宝石のようなアイリーン姫の姿を見て、

ボブは今まで感じたことのないような強いドキドキを感じるー


だが、すぐに首を横にぶんぶんと振ると

「な、何を考えてるんだ俺はー…」と、言葉を口にするー。


”姫様の身体で変なことをするなんてー絶対にダメだ!”


自分に言い聞かせるように、心の中でそう叫ぶー。


だがー、一方で

「ちょっとだけならー」という気持ちも芽生えてきてしまうー。


ボブは、別に変態ではないー。

しかし、これほどまでに美しい姫の身体になってしまったらーーー


しかしーー

アイリーン(ボブ)は、妻のチェルシーの顔を思い浮かべて

思いとどまったー


「ーーーーダメだ!ダメだ!何を考えてるんだ俺!しっかりしろ!」

アイリーン(ボブ)は自分の顔をぺしぺしと叩くとー

「って、あぁっ!?姫様を叩いちまったー!」と、

痣になっていないかどうか、慌てて鏡で自分の顔を確認したー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


数日後ー


”アイリーン姫の様子がおかしい”ー

と、いうことは瞬く間に王宮内で噂となったー。


その隙をついて、今日予定されていた、定期的に行われる

”周辺貴族との交流会”に出席する予定だったアイリーン姫から、

その座を奪った第1王女のグレース。


国王のローランドや周辺の家臣が、長女であるグレースの

能力を疑問視し、元々アイリーンに任せていた役割だったがー

グレースが上手く手を回し、グレースがその座を奪ったのだー


”ふふふー

 各地方の貴族の殿方と交流を深める機会ー

 わたしの方が、アイリーンなんかよりも何倍も優れているということを

 見せつけてやりますわ”


そう意気込みー

”貴族交流会”に向かうグレース


そんな中ー

王宮に残されたアイリーン(ボブ)は戸惑っていたー


「まずいぞー…

 どんどん周りから”姫がおかしくなった”と思われてるー」


部屋で頭を抱えるアイリーン(ボブ)ー。


あれから、姫はどうしているのだろうかー。

いや、そもそも自分に姫の代わりなんて務まらないー


自分は、王宮などとは程遠い辺境の村で生きて来たのだー

こんな生活に馴染めるはずもないー


「ーーー…~~~~~~~な、なんかすみませんー」

髪をメイドに整えてもらいー、

着替えもメイドに手伝ってもらいー

顔を真っ赤にしながらそう呟くアイリーン(ボブ)ー


「ーーあ、謝らないで下さいー…!」


”姫”としての身の回りのことができないことからー

メイドの世話になりっぱなしー。


がー、そのことを申し訳なく思い、アイリーン(ボブ)が

ひたすら謝るために、”姫様から謝られた”と、

メイドたちが逆に恐縮してしまう悪循環ー


「俺に出来ることはー

 力仕事と狩りぐらいだからなー…

 こんな城じゃー…役に立たないー」


心の中でそう呟くと、アイリーン(ボブ)はやれやれという様子で

首を振ったー。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


第1王女・グレースはーー

プライドが高いだけで”能力”など、まるでなかったー


貴族交流会ではー、

貴族たちの会話に、ついていくことが出来ずー、

”お手伝い”のメイドがいなければ何もすることが出来ずー

プライドの高いグレースは、最後には貴族とトラブルを起こしー

大恥をかいて、”交流会”から戻って来たー


その後も”表向き体調不良”で、王女としての各種公務から

一時的に降りたアイリーンに代わり、

グレースは”わたしこそが、次期女王にふさわしいですわ!”と

意気込んで”アイリーンの代わり”を務めようとしたー


だがー

全てにおいてグレースは問題を起こし、

アイリーン以下の仕事をしー、

自分の失敗を周囲に押し付けて喚き散らしー


王宮内では”グレース様は無能”などと言い出すものまで出て来たー。


その結果ー


「ーーそのような有様で女王が務まるのか!

 もう良いー…

 わしの死後はー、アイリーンに任せることにするー。


 お前はー

 もう、無理をするなー」


病床に付している父・ローランドから”失望”されてしまった

第1王女のグレースは、怒りの形相で父親の部屋から立ち去るー。


”ありえないーありえないありえないー

 わたしがアイリーンより劣っているー?

 ありえない…ありえないー…ありえないー”


”美人”な顔を、鬼のように歪めながら自室に戻ってくると、

グレースは”悪魔の決断”を下すー。


”わしの死後はー、アイリーンに任せることにするー”


父の、そんな言葉が胸に突き刺さるー。


「ーーねぇ、”彼ら”を呼んでー」

執事に、不気味な笑みを浮かべながらそう呟くグレース。


「ー父上ももうー、お疲れでしょうー」


不満を爆発させたグレースは静かに呟くー。


そして、グレースにとっては”今”がチャンスー。

アイリーンが”体調不良”を理由に自室からあまり出て来なくなりー、

第3王女のリリーはまだ、グレースからすれば”ガキ”に過ぎないー


今ー”父上”が死ねばー


「ーーーこの王国はわたしのものですわー」


悪魔のように微笑むと、第1王女のグレースは

自身が抱える”暗殺部隊”に父であるローランドの”抹殺”を命じたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


「ー大変です!アイリーン様!」

部屋に駆け込んでくる執事ー


「ーーうわっ!?」

寝ていたアイリーン(ボブ)が変な声を上げて起き上がると、

寝ぼけた状態のままー

「い、イノシシか!?」と訳の分からない言葉を叫ぶー。


”村では”イノシシが村にやってくることがたまにあったからだー


「い、いのししー?」

執事が表情を歪めながらも

「お、お父上が!」と、慌てて叫ぶー。



「えっ…!?」

アイリーン(ボブ)は呆然とした表情を浮かべるとー、

すぐにその執事の後を追いー、


”昨晩、急に心臓発作を起こして死んだ”

父・ローランドの遺体の前にたどり着いたー


既に第1王女のグレースと第3王女のリリーが

部屋に到着しているー。


リリーは「お父様…!お父様!」と、ずっと

泣きじゃくっているー。


一方のグレースは、放心状態を装いながらもー

ニヤリと笑みを浮かべたー


”これで、わたしが女王ですわー”

とー。


だがーーーー


「ーーお父様…!お父様ーーー!!!!」

泣きじゃくる第3王女のリリーも、不気味な笑みを浮かべたことに、

グレースも、アイリーン(ボブ)も気づいてはいなかったー


「ーーーーー(おいおいー…ど、どうすりゃいいんだー?)」


入れ替わっている間に、王宮がヤバい状態ー。

しかも、ボブ(アイリーン)と連絡を取る手段もないー。


アイリーン(ボブ)は頭を抱えることしかできなかったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


”流れ星ー”


村で空を見上げながら、ボブ(アイリーン)は

流れ星を確認すると、

”お父様”…と、静かに目を閉じたー。



③へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


姫様ライフに上手く適応できない中、

勝手に王宮内で進む陰謀ー…!


一体どうなってしまうのでしょうか~?


続きはまた次回デス~!


今日もありがとうございました~!

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