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”ママ”に恋人が出来たー。


だが、息子の翔太は、”ママ”の恋人である栄治のことを

良く思っていなかったー。


まだ翔太は3年生ー。

”ママはお前のものじゃない”と、

翔太からすれば見ず知らずの他人である栄治に、

ひたすら敵意を燃やしていたー。


そんなある日、翔太は”ママに変身する力”を手に入れた。


その力を使って翔太はママである美乃梨に変身し、

美乃梨のフリをして栄治と会い、

栄治とママを別れさせようと画策するー…


★前回はこちら↓★

<他者変身>ママはお前のものじゃない①~さくせん~

「ーーーーーー…」 部屋の扉を少しだけ開いた状態で、 ”ママ”のほうをじっと見つめている少年ー。 彼の名は菊池 翔太(きくち しょうた)ー。 まだ3年生のお母さん大好きな男の子だー。 しかしー… 今の翔太はそんな”大好きなママ”のことを 自分の部屋の扉を少しだけ開いた状態でー 睨みつけていたー。 「ーーはははー...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「あ、美乃梨さんー」


遊園地ー。

”ママ”の恋人である栄治が、やってくると、

美乃梨の姿に変身した翔太は、少し戸惑った様子を

浮かべながら頷いたー


”ママの姿で、この人に嫌われる”ー

それが、翔太の”さくせん”ー。


しかしー、いざ、実際に栄治を前にしてみると

意外にも声が出なくなってしまったのだったー。


「ーお前なんて、嫌いだ!」

「二度とわたしに近寄らないで」

「ー急に嫌いになっちゃった!」


そんなことを母・美乃梨の姿で栄治に言い放つ

”シミュレーション”は、頭の中で何度も何度も繰り返したー…


だがー

”空想”と”現実”は違うー。

事前に頭の中で”こうしよう”と考えていても、

いざ、本番を迎えるとなかなか”想像通り”に出来ないこともあるー。


”ママをこんなやつに取られちゃうなんて嫌だ!”

心の中で翔太はそう叫ぶと、

”わざと嫌われようと”、突然、栄治の肩を、ぺしっ!と叩いたー。


何で急にそんな行動をしてしまったのか、

翔太自身にもイマイチよく分からなかったがー

極度の緊張の中で、やっと実行した行動がそれだったー


「ーえ?」

栄治が戸惑うー。


「ーーう…あ… な、なんか嫌いって思ってー…そのー」


”全然ママのフリを出来ていないー”

そう思いつつも、美乃梨の姿のまま、自信なさげにそう呟く翔太ー


「ーーえ…あ、ぼ、僕ー、何かしたかなー?

 そ、そのーごめんな?」


栄治が申し訳なさそうにそう呟くー。


美乃梨の姿をした翔太はすかさず、

「ーゆ、許さない!ぜ、絶対許さないからー」と、

言葉を発したー。


戸惑いの表情を浮かべる栄治ー。


だが、栄治はそれ以上詮索せず、「とにかく、遊園地に入ろうか」と

言葉を呟いたー


「ーう、う、うん!!!」

何だかんだで遊園地は楽しみな美乃梨の姿をした翔太は

つい子供みたいに返事をしてしまうと、

栄治は「なんだか今日の美乃梨さんー…いつもと違うなぁ」と

笑いながら、”美乃梨”の姿をした翔太の方を見つめたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーーー」


自宅では、母親の美乃梨が、

時計のほうを見つめていたー


”そろそろ晩御飯の支度をしておこうかなー”


今日は仕事は休日ー。

家でいつものように、家事をこなしながら、

晩御飯の支度も考え始めるー。


「ーーー」


そんな美乃梨はー

栄治のことを考えながら

少しだけ、何かを呟いたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーお化け屋敷は無理無理無理無理っ!」

美乃梨の姿をした翔太が必死にそう叫ぶー


「ははは、美乃梨さん、この前ホラー映画で

 喜んでなかったっけ?」


笑う栄治ー


「ぼ、僕は、無理なの!オバケ苦手だから!」

美乃梨の姿をした翔太は”つい”「僕」と言ってしまうと

ハッとした表情を浮かべて、

首を横にぶんぶんと振ってー


「ーお化け屋敷は、お前と同じぐらい、嫌いだっ!」

と、叫んだー。


全然、美乃梨のフリをすることが出来ていないー。

三年生の翔太には、

やはり”他人に変身しても”

そこまでの計算高さはなかったー


頭をボリボリと掻きながら、

「じ、じゃあ…メリーゴーランドなら、いいかな?」と、

メリーゴーランドのほうを指さす栄治ー。


「ーーうん!」

パァっと、子供のように明るくなった美乃梨姿の翔太は

メリーゴーランドに乗ると、

馬の乗り物の上で足をぱたぱたとさせながら、

”本来の目的”も忘れて、嬉しそうにメリーゴーランドを楽しんだー


「ーーははは…まるで子供みたいだなー」

メリーゴーランドを降りた栄治がふと呟くー


「ギクッ!」

美乃梨姿の翔太は大げさにそう声を上げてしまうー。


栄治の視線を感じながらー

”まずいよー、僕、バレちゃったらー…”と、

必死に頭を回転させて、

頬を膨らませながら栄治のほうを振り返ったー


「ーわたし、こどもじゃないもん!

 お前なんて、大っ嫌い!」


”嫌い”を先ほどから連呼されている栄治は

「ーま、まだ怒ってるのかー?」と、戸惑いの表情を浮かべるー


”嫌いに決まってるし!

 僕からママを奪おうとするお前なんて、嫌いだ!

 新しいパパなんて、僕、いらない!!!!”


心の中でそう叫ぶ翔太ー。


「ーーーご、ごめんなー」

栄治はそう言うと、続けて遊園地のアトラクションを指さしたー。


美乃梨の姿に変身している翔太は、

”栄治に嫌われよう”としているもののー、

遊園地でおかしなことをしたりするつもりはなく、

ひたすら”栄治に対してだけ”失礼な行動や嫌われるような行動を繰り返したー


例えばー

遊園地で暴れたりすれば”ママ”がわるものにされちゃうー…

と、翔太も、3年生ながら、ちゃんと理解はしているー。


だからー

”嫌われるため”とは言え、できることには限度もあったー。


「ーーーー……翔太ー」

ママの姿で自分の名前を口にする翔太ー。


違う人の姿で自分の名前を呼ぶー。

なんだか、今までに感じたことのない、

とてつもない違和感を感じたー。


そして、言葉を続けるー。


「ー翔太、”新しいパパ”なんていらないってー」

美乃梨の声で、そう言い放つ翔太ー


栄治は「ははー…そっかー…残念だな」と、

少し寂しそうにそう呟きながらも

「ーまぁ……仕方ないなー」と、自虐的に笑ってからー、

美乃梨の姿をした翔太の手を急に掴んだー


「ーせっかく遊園地に来たんだー。

 ーー今日は、そういう話は忘れて、楽しもう」


栄治に半分強引に腕を引っ張られながら、

次々とアトラクションに乗せられていくー


「嫌い!」

「嫌い!」

「嫌い!」


”嫌い”の意思表示をその間にも何度も何度も繰り返す

美乃梨の姿をした翔太ー。


けれどー、

3年生の翔太にとってはー

遊園地に来た目的がどんな目的であってもー、

誰の姿で遊園地に来ようともー

誰と一緒に遊園地に来ていてもー


”楽しい”のも事実だったー。


コーヒーカップ…、

ゴーカート…、

ボートの乗り物…、

タコの乗り物…、

観覧車ー…


色々な乗り物に乗ったー。


翔太が選んだわけではないが、

栄治は、美乃梨の姿をした翔太を、

次々と、翔太がちょうど乗りたい乗り物に

連れ回したー。


そしてー、太陽が西に傾きー、

休憩スペースのベンチで美乃梨の姿をした翔太が

ため息をついていたー。


”ママの姿で動き回るのーなんか、いつもより疲れるなぁ…

 なんでだろうー…”


身体が違えば、歩幅から何まで色々なことが違うー。

無意識のうちに、いつもより身体に負担を掛けるし、

神経も使うー。

1日中、遊園地で楽しんで、美乃梨の姿をした翔太は

すっかり疲れ果てていたー。


「ーー美乃梨さんも、食べたいだろ?」

栄治がそう言いながら戻ってくると、

美乃梨の姿を翔太が嬉しそうに

「わ~!アイスだ!」と、言うと、

すぐにハッとして、「ぼ、ぼk…わ、わたしー子供じゃないもん!」と、

頬を膨らませてアイスを返そうとするー。


「ー子供じゃなくても、アイス、食べるだろ?」

栄治がそう言うと、ペットボトルの飲み物を口にしながら

もう一度アイスを美乃梨の姿をした翔太に差し出したー。


アイスを食べる美乃梨を微笑ましそうに見つめる栄治ー。


やがてー

美乃梨の姿をした翔太がアイスを食べ終えると、

栄治は呟いたー。


「ー美乃梨さんがー、そんなに僕のこと、嫌いだったとは思わなかったー」

とー。


「ーーーーうん。嫌いだ」

美乃梨の姿をした翔太は、つい素の口調で言ってしまうー。


栄治はそんな言葉を聞くと、少し笑いながらー

「ー今日で、最後にしようか」と、言葉を口にしたー。


「ーーーうんーもう、うちに来ないで」

美乃梨の姿で、翔太がそう言い放つと、栄治は少し表情を暗くしながら

「わかったー。それが君の望みならー」と、頷いたー。


これでー

翔太は目的を達したー。


けれどー、何故だろうー。

何故か、少しだけー、心が痛むような、そんな気がしたー。


「ーー帰り道、送ってくよー。

 一人じゃ、心配だー」


栄治はそれだけ言うと、唇を噛みしめながらも、

美乃梨の姿をした翔太には悟られないようー、

そのまま車へと乗り込んだー。


「ーーーー」

”一人で帰れるよ”と、そう言おうとしたが、

もう日が沈んできているー。

不安だった美乃梨の姿をした翔太は、そのまま栄治の車へと乗り込んだー


「ーーーーーーーーー…」

栄治が、バックミラーで後部座席にいる美乃梨の姿をした翔太を見つめるー



だがーー

車の中で何も起こらず、栄治は美乃梨の姿をした翔太を、

翔太の家の近所の駅まで送り届けると、

「じゃあ、気を付けて帰るんだぞ」と、言葉を口にしたー。


「ーーー…うんー…」

美乃梨の姿をした翔太は、そう言い放つと、

栄治はそのまま車で走り去っていったー


「ーーー…」

”ママ”の姿のまま1日を終えた翔太はー、

人に見られないように隠れてー、例の写真を取り出しー、

”自分の姿”に戻ったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーー美乃梨さんーーー

 ”翔太くん”を今、駅で下ろしましたー。

 じきに帰るはずですー」


栄治が、駅から少し離れた場所に車を止めて、

スマホで、”本物の美乃梨”に電話を掛けていたー。


”そうー…本当に、ごめんねー栄治さん”

美乃梨のそんな言葉に、

栄治は「いえ」と答えるー。


「ーー翔太くんの気持ちを無視して、

 美乃梨さんと付き合い続ければー

 翔太くんをさらに傷つけてしまうし、

 美乃梨さんと翔太くんの絆を壊してしまうかもしれないー。


 ”時間を掛けて翔太くんに認めてもらおう”なんてのはー

 僕のワガママだってことに、気づいたんですー」


栄治はそれだけ言うとー


「実は、僕も父親を小さい頃に亡くしていてー

 翔太くんを見てたら、昔の自分を思い出したんですー


 もしー、僕が小さい頃、母親に”男”が出来たらー

 やっぱり僕も、翔太くんと同じことをしたでしょうー


 だからー…

 美乃梨さんー、あなたとのお付き合いはー」


と、言葉を続けたー。


”うんーわかってるー…

 わたしもーー…翔太にちゃんと、謝らないとねー…


 翔太にとってはたった一人の家族なのにー

 翔太のことより、自分のことを優先しちゃったー”


美乃梨のそんな言葉に、栄治は

「美乃梨さんなら、きっと大丈夫ー

 そして、翔太くんも、強い子だー」と、だけ言うと、

少し寂しそうに唇を噛みしめながらー

「ーー何か困ったことがあった時は力になるよー

 ーーそれじゃーー美乃梨さん、翔太君と一緒に

 お元気でー」

と、別れの言葉を口にすると、

美乃梨の返事を聞いて微笑みー、美乃梨との通話を終了したー。


少しため息をついた栄治はー

「ー翔太君ー…バレバレだったよー」と、苦笑いすると

そのまま車を発進させて、走り去っていったー。



翔太がどうしてそんな力を身に着けたのかは分からないー。


だが、母親の美乃梨はー

”美乃梨に変身している翔太”に気付いていたー。

きっかけは、翔太の部屋から”女の声”がしたことー。


違和感を抱き、注意深く翔太のことを観察していた結果ー、

翔太が美乃梨に変身するのを”見た”のだー。


そして、事前に栄治に相談ー

栄治は遊園地に誘われたことを伝えると、

”遊園地での翔太くんの振る舞い次第では、翔太くんのためにも

 一度、別れようー”と、提案したのだったー。


美乃梨は、翔太のために、とそれを承諾ー。

栄治は”騙されたフリ”をして、翔太に付き合いー、

そして、美乃梨と”お別れ”したのだったー。



「ーただいま~~!」

翔太が帰宅するー。


そんな翔太の姿を見て、美乃梨は翔太をぎゅっと抱きしめると、

「ーママは、ずっと翔太の味方だからねー

 今まで辛い思いをさせてごめんねー」と、

”息子よりも自分の恋”を優先しつつあった自分のことを反省してー、

優しく翔太に言葉を投げかけたー。


「ーーーうんー」

翔太は、そんなママに抱きしめられながら嬉しそうに

そう、返事を口にしたー



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


珍しく(?)ダーク要素のない綺麗なお話でした~!★


変身できる力を持ったままだったり、

翔太くんの将来が少し心配な気もしますケド、

良い子に育つといいですネ~!


お読み下さりありがとうございました~!

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