＜MC＞歪められた絆㉖～黒幕～ (Pixiv Fanbox)

彼女の愛梨沙が、黒幕を突き止めようと、

悠馬に提案した作戦は失敗に終わったー。

そんな中、黒幕はついに”エンディング”と称した恐ろしい計画を

実行に移そうとしていたー。

それはー

洗脳した雫と愛梨沙を使い、

”妹と彼女が殺し合う現場”を悠馬に見せつけー、

雫の命を”愛梨沙”に奪わせるというものー。

最後には、種明かしをした上で、愛梨沙に自殺を命じー

悠馬の全てを奪い去るー

歪んだ黒幕の悪意が迫る中ー、

悠馬たちはー…？

★前回はこちら↓★

＜MC＞歪められた絆㉕～作戦～

不穏な動きを続ける村瀬教授を尾行した 悠馬と亮介ー。 二人は、尾行した先で裏社会の便利屋・玉城東吾と接触した 村瀬教授を確保することに成功するも、 村瀬が玉城東吾と接触していたのは”別件”で、 雫の洗脳の件とは無関係だったー。 そんな中、再び洗脳された愛梨沙に襲撃される二人ー。 そして、”黒幕”は、 いよい...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

★主な登場人物★

・神里　悠馬（かみさと　ゆうま）

大学生。妹の雫が豹変したことに困惑する。

・神里　雫（かみさと　しずく）

高校生。兄の悠馬のことが大好き。少しイタズラっ子な一面も。

・森永　愛梨沙（もりなが　ありさ）

大学生。悠馬の彼女。成績優秀な優等生。コスプレ趣味がある。

・藤嶋　亮介（ふじしま　りょうすけ）　

大学生。高校時代からの親友。困った時には頼りになる存在。

・西園寺　美桜（さいおんじ　みお）

高校生。妹・雫の親友。表裏が非常に激しい。

・九条　輝樹（くじょう　てるき）

高校生。妹・雫の幼馴染で悠馬とも小さいころから面識がある。

・玉城　東吾（たまき　とうご）

裏社会の便利屋。ヘルメットの人物と共に雫を洗脳した。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー九条くんー…

　大事な話って、何ー？」

雫の親友でクラスメイトの

西園寺美桜が、雫の彼氏・輝樹に呼び出されて

少し不機嫌そうにやって来るー。

放課後ー

突然、洗脳された雫の手によって停学中になっている輝樹から

”雫のことで大事な話があるんだー”と、LINEで呼び出されて、

その指定された場所に美桜はやってきていたー。

LINEを知っているのは単純に

”親友の彼氏”である輝樹と、雫を通じて何となく交換しただけで

普段、メッセージのやり取りをしあっているわけではないー。

「ーーー…全部話すー…

　だからー…力を貸してほしいー」

輝樹がそう口を開くと、美桜は「どういうこと？」と首を傾げるー

雫の親友・西園寺　美桜は”裏表の激しい”子で

同時に嫉妬深さもある厄介なタイプの子だー。

これまでー

輝樹は美桜に、雫の”洗脳”の件は具体的に話していないー。

美桜を巻き込む可能性もあったし、

美桜の性格上、雫が余計に傷つく可能性もあったからだー。

しかしー…

輝樹は思うー。

洗脳された雫の態度に口では不満を露わにしながらもー、美桜は、

”ものすごく心配そうな目”で、毎日雫のほうを見つめているー。

教室で、さりげなく雫のほうを見て、

とても悲しそうにしているー

誰と喋っている最中でもないのにー

あんな”顔”をする必要はないー

表裏の激しい美桜でも、あれは本心だと、輝樹は確信を持って

美桜に助けを求めることを決意していたー。

「ーーー学校で、雫に”ブレーキ”を掛けてあげられる人が必要なんだー」

輝樹はそう呟くー。

自分が”退学”になってしまった今ー

”高校”内には、雫の洗脳の件を知る人間はいないー。

大学では、兄の悠馬や、彼女の愛梨沙、その親友何名かが

事情を知っているが、

高校の方で雫の洗脳について知るのは、輝樹だけ。

その輝樹が、洗脳された雫の罠で”停学”になってしまった今ー

高校で洗脳された雫を抑える人間が、いないー。

そのことに輝樹は強い危機感を覚えていたー。

輝樹にも確かに友人はいるー。

だが、”輝樹”と”雫”

両方とそれなりの繋がりがある人間は少なくー、

お願いできるとすればー

西園寺　美桜ぐらいしか思い当たらなかったー。

「ーーーーー信じられないと思うけどー…

　全部、本当の話なんだー」

輝樹が今までのことをできる限り詳しく話し終えると、

美桜は鼻で輝樹の話を笑ったー。

「洗脳？バッカみたいー」

ーと。

輝樹は”やっぱり、こんな話、現実離れしすぎていてー

信じてもらえないかー”と、心の中で舌打ちをするー。

だがー

美桜の口から続いた言葉は、輝樹の予想とは少し異なっていたー

「ーーー洗脳なんかされちゃってー…ホント、馬鹿みたいー」

美桜の目には、涙が浮かんでいたー。

「ーーー西園寺さんー？」

輝樹が少し驚いた表情で美桜のほうを見るとー

「そうだよねー…うんー…そうー…そうなんだねー」

と、自分にも言い聞かせるようにそう呟くー。

「ー雫がーわたしに勝ったくせに、生徒会副会長の仕事サボったりー

　わたしを階段から突き落としたりするわけないもんねー」

美桜はそこまで言うと、すぐに涙ぐんだ目を拭いてー

「ーーーーバカ！って言ってやらなくちゃー」

と、美桜は輝樹のほうを見つめるー。

輝樹が「信じてくれるのかー？」と、意外そうにー

けれども、安堵したような表情で言うとー

「ーー九条くんー…そんなおかしな作り話するようなキャラ

　じゃないでしょ？」

と、美桜は言葉を口にしてからー

「ー嘘みたいな話だけどー…信じるー。

　そうじゃないと雫、あんな風にならないもんねー」

と、言葉を付け加えてー、

夕日のほうを見つめたー。

「ー雫に”バカ”って言ってー、”ごめん”って謝らなくちゃー」

”わたしにとってー雫はいつも眩しかったー

　面倒臭い性格で、裏表があるわたしなんかと違ってー

　いつも、いつも素の自分でーキラキラしてたー”

「ーーーーーーー雫ー。

　あんたは、輝いてないとダメでしょ…？」

美桜は寂しそうに夕日のほうを見つめながらそう呟いたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー。

悠馬はいつものように大学に向かうー。

”村瀬教授”は黒幕ではなかったー。

だが、今も黒幕は、”この大学”に潜んでいるのだろうかー。

もっともー…

玉城東吾が嘘をついている可能性もあるー。

そうなればー”黒幕”は、この大学には居ないかもしれないー。

「ーーあ、先輩ー！」

後輩の田内純恋に声を掛けられて、悠馬が振り返るー。

「ーあ、田内さんーおはようー」

悠馬がそう返事をしながら、純恋のサークル関係の相談に乗るー。

「ー最近顔出せなくてごめんなー

　え～っと、それはー…」

悠馬が、いつも通り何気ない会話を続けているとー

スマホが鳴ったー。

「ーあ、ちょっとごめんー」

悠馬は純恋にそう断りを入れて、少し離れた場所でスマホを確認するとー

そこには”雫”と表示されていたー。

妹の雫からの電話ー。

「ーーー雫ー！？」

雫は未だに洗脳されたままだー

その雫からの電話となると、

”嫌な予感”しかしないー。

「ーーーもしもし…？」

雫からの電話に出るとー

雫の声が電話の向こうから聞こえて来たー

”ーーーククククー

　お兄ちゃんー

　わたしを助けようと必死こいてー

　ホント、笑っちゃうよねー”

雫の声ー

けれども、その発言は本来の雫からは

ほど遠いー。

「ーー雫ー…いやー…」

悠馬がそう答えると、振り返って待たせてしまっている純恋のほうを見て

”ごめん”とジェスチャーすると、

純恋も、それを理解したのは、首を横に振って”気にしないでください”と

返しー、そのまま頭を下げてから立ち去っていくー。

”ーーククー　

　お兄ちゃんが必死こいて探してる”黒幕”さんに

　わたし、ラジコンみたいに操られちゃってるの　ふふっ”

雫のそんな言葉にー

悠馬は、雫が再び”黒幕”に、遠隔操作されていることを理解し、

表情を歪めるー。

”指定した通りに性格を歪める”洗脳状態と、

ラジコンのように、完全に意のままに操る”遠隔操作”ー

ダークアプリ・Mにはその2つの操り方があるー。

今の雫は、遠隔操作の方で黒幕に直接操られているー

高校の空き教室でー

足を組みながら歪んだ笑みで兄への電話を続ける雫ー

「ーお兄ちゃんー…

　今日で”最後”にしてあげるー」

雫がクスッと笑いながらそう呟くー。

”なんだって？”

悠馬から、困惑の声が返ってくるー。

「ーー今まで十分楽しませてもらったからー

　最後にー…”エンディング”を見せてあげるー」

雫はニヤァ…と笑みを浮かべるー。

”黒幕”の計画通り進めば、

雫は、今夜ー自分と同じように洗脳された愛梨沙と

”殺し合い”をさせられた挙句ー

命を落とすー。

兄・悠馬の目の前でー。

そんな、恐ろしい出来事がこれから

雫を待ち受けているというのに、

遠隔操作されている雫は

とても嬉しそうに、歪んだ笑みを浮かべながら

兄の悠馬に対して言い放つー

「ーお兄ちゃんが、ど～んな顔するかー

　本当に楽しみーーー

　ゾクゾクしちゃう♡」

興奮した様子で雫はそう言うとー

「ーーー場所を指定するからー”必ず”一人で来てねー。」

と、雫は笑みを浮かべるー。

”まぁーーー…”

雫を遠隔操作している”黒幕”は、心の中でそう呟くとー、

”誰かを誘っても、無駄だがなー”

と、心の中で呟くー

雫が、黒幕の代わりに邪悪な笑みを浮かべながらー

悠馬に場所を指定するー。

”時間はー…？”

悠馬の確認の言葉に、雫が答えるとー

「来てくれなかったらーわたし、寂しくて自殺しちゃうかもね？

　あははははははははっ♡」

と、雫の口調を模した喋り方で悠馬を挑発したー

”くそっー…！

　雫を弄びやがってー…！

　”エンディング”ってのが何なのか知らないけどー…

　必ずお前にとっての”ゲームオーバー”にしてやるから

　覚悟しておけ！”

悠馬の怒りが、電話越しでも伝わってくるー。

雫はニヤッと笑うとー

「やってみろよー」

と、低い声で呟いたー。

そして、スマホの通話を終了させると、

雫の”遠隔操作”は解除されて、

洗脳された状態の雫に戻るー

”新たな命令”が送られてきて、雫はそれを受け取るとー

「ーー今日がーー…エンディングー」と、

邪悪な笑みを浮かべながら、

半分、虚ろな目で空き教室の外へと向かったー

「ーーーーーー」

その様子を”盗み聞き”していた美桜は、

すぐにスマホを手に、輝樹にメッセージを送るー

”雫が、雫のお兄ちゃんを放課後に呼び出してるー

　場所はーー”

聞き取れた限りの場所と時間を送ると、

美桜はそのままスマホを閉じるー。

「ーーー雫ー…」

心配そうに、雫の後ろ姿を見つめる美桜ー。

”ーー俺の代わりにー

　洗脳されてる雫の動向を見張っててほしいー

　学校でもしも、何か問題を起こしそうになったらー…

　西園寺さんが危険を感じない範囲でいいー

　雫を止めてほしいー”

昨日ー輝樹にそうお願いされた美桜は、

今日1日、雫のことをずっと探っていたのだー。

”ーーー悠馬さんとーそんな物騒な場所でー…”

輝樹からそんな返事が返って来たのを確認すると、

美桜は”行くならー…気をつけなさいよ”と、輝樹に返事を送ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーー」

悠馬はスマホを握りしめるー。

”エンディング”とは何を意味するのかー。

いやーこれまでの”黒幕”の行動から、想像はつくー

”ロクでもないこと”だとー。

昼休みー

悠馬は、親友の亮介と、亮介の親友・我妻達也、そして彼女の愛梨沙にも、

隠さず、洗脳された雫から”エンディング”と称して、

今日の夜に今は使われていない工場地帯に来るように言われたことを告げたー。

「ーーー…エンディングー……」

愛梨沙は表情を歪めるー。

「ーーで…どうするんだよ？」

亮介が困惑した表情を浮かべるー

「ーーー行かない選択肢はないー

　行かなければ、きっと、雫はー」

悠馬が悔しそうに呟くー

「ーでも…罠かもしれないよー…？」

愛梨沙が心底心配そうにそう呟くー。

「ーーーー分かってるー」

悠馬は頷くー

「でも、行かなきゃ雫は100％殺されるー

　俺が行けばー……

　その確率を少しでも下げることができるー。

　1％でも可能性があるならー

　俺は行くよー」

悠馬がそう言うと、

愛梨沙は心配そうに「悠馬ー…」と、俯くー。

”エンディングー”

最悪の場合、黒幕は雫を殺すつもりかもしれないー。

だがー

そんなことはさせないー

絶対にー。

それにーーー

悠馬は思うー

ここまでの黒幕の行動はー

まるで悠馬を痛めつけて、喜んでいるような行動だー

そんな黒幕が”エンディング”と称する

今日の夜ー。

恐らくーーーー

”ーーーお前も見に来るんだろー？”

悠馬は、表情を詳しくしながら心の中でそう呟くー。

そう、”黒幕”はー

必ず”エンディング”を生で見に来るはずー。

”洗脳した雫”や”愛梨沙”を通じて見るのではなくー

生でー。

その黒幕を捕まえればー

雫を救い出すチャンスはあると思うー。

「ーーー俺たちは…行かない方がいいんだよな…？」

亮介が困惑しながら言うー。

「一人で来いって言われたしー…

　行くのは一人で行こうと思うー」

悠馬がそれだけ言うとー

「でもー」と言葉を口にするー。

「ー誰にも言うなとは言われてないからさー…

　だから、こうしてみんなにも伝えておこうと思ってー」

悠馬は少しだけ笑うとー

「ーーなんか、遠回しに助けてほしい、みたいな言い方で

　情けないけどー

　でも…雫が助かる可能性が、解放される可能性が

　1％でも高まるならー」

と、”巻き込んで、本当にごめん”と、頭を下げたー

「でも、それでも雫をー」

悠馬はそこまで言うと今も”洗脳のON、OFF"を繰り返されて

弄ばれている彼女・愛梨沙のほうを見つめるー

「愛梨沙を助けたいんだー」

悠馬が言うと、愛梨沙は「悠馬ー…」と、悲しそうに悠馬のほうを見つめるー

「ーわかったー…

　俺も、何かできないか考えてみるー

　現場はどこだー？」

亮介が、指定された現場や時間を再確認すると、

亮介の友人・我妻は「お、俺はー…何もできないと思うケドー」と、

いつものように逃げ腰で呟いたー

「ーー我妻もー…巻き込んでごめんなー」

悠馬が”こんな変な話にー”と、謝ると、「いや別にー…いいんだけどさ」と、

我妻は首を横に振るー。

「ーーーーー悠馬ー…絶対に無事に帰って来てねー

　雫ちゃんと一緒にー」

愛梨沙がそう呟くと、悠馬は頷くー

「ーもちろんー

　愛梨沙のコスプレもまた見たいしー」

コスプレの趣味の愛梨沙に、そんな冗談を口にすると、

愛梨沙は少しだけ笑いながらー

「ーーちゃんと帰って来てよねー」と言葉を口にしー

そしてーー

「”わたしも戦うからー”」と、

鞄の中に持っている”あるもの”のことを思い出しながら

言葉を呟いたー

悠馬は仲間たちと共に大学の出口に向かって歩くー

「ーあー倫子ちゃんからー…悪い」

亮介が別の大学に通う彼女・倫子からの電話が来ていることを

確認すると、悠馬に「死ぬなよ！」と叫んで

そのまま少し離れた場所に向かうー

悠馬が「ー全部終わったらー、お礼に色々奢るよー！」と、

亮介に言い放つと、亮介は手を上げて、悠馬に返事をしたー

「ーーーーーー」

亮介の友人・我妻達也が少し目を細めながら

亮介のほうを見つめて、言葉を呟くー

「ーーーー”倫子ちゃんーーーーー”」

とー。

だがー

それに気づかなかった悠馬と愛梨沙は、

我妻とも別れてー

そのまま大学の正門に向かって歩き出すー。

「ーーエンディングをー

　やつにとっての”バッドエンディング”にしてくるよー」

悠馬がそんな冗談を口にすると

愛梨沙のほうを見て優しく微笑むー

”愛梨沙がいつ洗脳されるか分からないー”

そんな状況ー

だが、悠馬は愛梨沙と、できる限りいつも通り接することを

心に決めていたー

「ーーーじゃあー行ってくるー」

悠馬は”指定された場所”に向かうー。

黒幕の言う”エンディング”の地にー

そこで、愛梨沙は敵として立ちはだかるかもしれないー

洗脳されてー、悠馬を憎む敵としてー

けれどー

必ず黒幕を炙り出し、雫と愛梨沙を助け出すー

悠馬は輝樹にもそのことを伝えると、

輝樹は”俺も、聞いてますー”と、返事を返してきたー。

”ーーー…行くかどうかは言えませんー

　黒幕の目もありますからー

　でも、俺は俺で動きますー

　悠馬さんの邪魔はしませんー

　健闘を祈りますー”

輝樹からの返事はいつも通り、不愛想な感じだったー。

だが、悠馬は

”九条くんはきっと最良の選択をするー

　俺は俺でー、全力を尽くそう”

と、指定された廃工場に向かって歩き出したー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”妹”と”彼女”の殺し合いー

そんな、地獄ーーー

それが、まもなく始まるー。

黒幕は邪悪な笑みを浮かべながら

”愛梨沙”の洗脳を再びONにしようと、ダークアプリ・Mを

起動したー

㉗へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

黒幕の言う”エンディング”の舞台へ…★

次回は色々なことが動くかもしれませんネ～！

今日もありがとうございました～！