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2XXX年ー

とある会社が、”他人に変身する装置”を完成させたー。


だがー”人間”は過ぎたる力を持てば

必ず暴走し始めるー。


すぐに”他人に成りすまして犯罪行為を起こす”人が出てきたり、

好きな子に変身して、欲望の限りを尽くしたりー、

そういった行為に走る人間で溢れてしまったー。


いつしかー

”成りすまし”は、SNSの世界ではなくー

現実世界で行われるようになり始めていたのだー。


しかし、そんな”偽人間問題”は、当然のことながら

すぐに世界で対応が始まりー

法律で”他人への変身”は固く禁じられたー。


もしもそれを破ったものには、かなり厳しい罰が

各国で設定されー、

また、”他人に変身する技術”は禁忌の技術としてー

それを開発したテクノロジー企業も営業停止へと追い込まれたー。


人類はー

自ら開発した技術で、社会を根底から壊してしまう寸前のところまで

行ったもののー”法律”という縛りで、

なんとか最悪の事態を回避したのだったー。


がーーー…

”一度”解き放たれたものは、そう簡単に完全に消えるものではないー。


今でも”変身”の技術は、裏で拡散を続けー、

時折ー”自分の知らないところで、自分の姿・形を利用され”

人生を壊されたり、大きな被害を受けたりする人が

後を絶たないのが現実だったー。


この世界ではー

”偽アカウント”どころかー”偽人間”問題が起きていてー、

身に覚えがないところで、自分の姿を勝手に使われて

ある日突然警察が家にやってきたりー、

身に覚えがないところで、勝手に”浮気のスキャンダル”が

発覚して、芸能界で活動できなくなったりー、

そんな、被害が起きているのだー。


そしてー……

ここにも、一人。

”自分の姿を勝手に使われて”知らないうちに

大変なことになり始めている一人の少女がいたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「おはよ~!昨日のアレ、見た~?」


「ーあ、おはよ~!」


とある高校の教室ー

いつも通りの騒がしい朝を迎えー、

教室のあちらこちらで、生徒たちが先生が来るまでの時間、

雑談をしながら過ごしているー。


友達と、昨日発表された人気アイドルの話題で

盛り上がりながら、

楽しそうに話をしている女子高生・美晴(みはる)も、

教室にいる他の生徒と同じように、

”いつものような朝”を迎えていたー。


美晴は、学校での素行に特に問題はなくー、

”ごく普通の高校生活”を送っている女子高生ー。


家族との関係も良好で、

半年ほど前から、同じクラスの男子生徒・達志(たつし)と

付き合っているなど、

人間関係にも問題はないー。


だがーー

そんな”ごく普通の生活”を送っていた美晴は

知らなかったー


”自分の姿”を知らぬ間に勝手に使われていることをー…


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


夜ー


「ーーまさか、”女”だとはなー」


サングラスを掛けた男が笑いながら言うとー

その反対側から歩いてきた女はー

服装や雰囲気が派手になっているもののー

今日も普通に高校に登校していたはずの

美晴だったー。


「ーーーふんー

 ”この姿”の方が色々と便利だからなー」

美晴が腕組みをしながら言うと、

「ーー裏社会で活躍する”闇の密売人”が

 そんなに美人だなんて、意外だったぜ」と、

”取引相手”のサングラスの男が笑ったー。


「ーーーふん…

 さっさと本題に移ろう」


美晴は、サングラスの男に臆することなく、

そう呟くと、サングラスの男は「へっ」と、

笑いながら、心の中で呟いたー


”欲しいものは相手をぶっ殺してでも手に入れて来た

 この俺様ー、”暴虐のレン”様がー

 ちゃんと取引なんてするわけねぇだろうがー


 このアタッシュケースに入っているのはー

 1枚目だけを1万円札にした札束だー


 テメェをぶっ殺して例のブツだけ貰っていくぜー”


美晴の取引相手ー、

裏社会組織”銀狼”に所属する幹部の男は

”暴虐のレン”と呼ばれ、欲しいものを手に入れるためには

手段を択ばない大悪党だったー。


「ーーーー…」

それを知ってか、知らずか、美晴は

”例のブツ”をレンに見せつけるー。


レンは「確かにー」と、呟くと、

アタッシュケースを開きー

ニヤリと笑みを浮かべたー


隠し持っていた銃を、美晴の方に向けるレンー。


「ー例のブツと、小娘ー!テメェの命、一緒にー!」


だが、そう叫んだときには、

既に目の前にいたはずの美晴の姿が消えていたー


「ー!?」

目を見開く”暴虐のレン”ー


「ーー取引を穢すクズにはー

 死んでもらうー」


その声は、背後から聞こえたー


直後、首筋を何かで切り裂かれたレンは、

うめき声をあげてその場に倒れ込むー


そしてーーー


「ーーー”小娘”だと侮ったかー?」


倒れ込んだレンに近付いてきた美晴はーー

”変身”を解除してー、

冷たい目つきの長身の男ー

”本来の姿”に戻ったー


「ーーー……へ…変身ーーー…」

暴虐のレンは、相手を小娘だと侮ったことを後悔しながら

そのまま息絶えたー


「ーーフンー」


美晴に変身していた男は

そう呟くと、そのまま暴虐のレンが持っていたアタッシュケースの

中身を確認して舌打ちするとー

再び美晴の姿に変身して、夜の闇へと姿を消したー


男はーー

”美晴”とは面識がないしー

美晴本人でもないー


高校の回りで、

”偶然見つけた美晴”の姿を”登録”してー、

その姿に変身ー

美晴本人が知らないところで、

勝手に美晴の姿を利用し、暗躍しているー。


誰でもよかったー。


”相手の油断を誘える可愛らしい女”であればー。


そしてー

”他人の姿で暗躍していればー”

万が一、何かヘマをやらかしたとしてもー…


美晴に変身して暗躍している男は

「クククー本物のこの女は、

 まさか勝手に自分の姿を使われているなんて、

 思っていないだろうなー」

と、静かに呟き、笑みを浮かべたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


それから数日が経過した日曜日のことー。


美晴が自分の部屋で友達とLINEをしていると、

母親が深刻そうな表情をして、部屋に入ってきたー


「ーどうしたの?」

母の困惑したような表情に美晴自身も違和感を感じて、

少し不安そうにそう尋ねるー。


そしてー、そんな母親から帰ってきた言葉は

美晴が想像もしない言葉だったー


「ー美晴ー…警察の人が来てるの」

母親の言葉に、美晴は「え?ど、どういうこと?」と、

思わず聞き返してしまうー。


ここ最近も、美晴は”いつも通り”生活していただけで、

警察に話を聞かれるようなことは何もしていないー


まさに、美晴にとって”寝耳に水”な出来事だったー。


「ーーー…分からないけどー…

 とにかく、美晴に話があるみたいー」


戸惑うばかりの母親を見て、

美晴は「う、うんー分かった。今、行くね」と、

スマホを置いて、そのまま玄関の方に向かうー。


正直、美晴には何も思い当たることはないー。

だからー例えば美晴の通う高校の近くで事件が起きて聞き込みを

しているとか、そんな感じの話だろうと、

軽く考えながら玄関に顔を出したー


「ー秋村 美晴さんー?」

警察官の一人がそう呟くー。


「あ、はいー」

美晴は少し緊張した様子でそう返事をすると、

「この前の木曜日なんだけどーー…夜の時間、何をしてたかな?」と、

もう一人の警察官が、苦笑いのような笑みを浮かべながら

美晴に”確認”したー。


「ーーえ…木曜日の夜…ですか?」

警察官からそんな聞かれ方をすれば、

誰だって”自分が何か疑われている”と不安に思うのは当然の反応だー。


美晴も例外なく、不安そうな表情を浮かべながら

ゴクリと唾を飲み込んでからー

「あ、あの…わたし…何かしましたか?」と、不安そうに呟くー。


「ーいやいや、急にごめんねー

 別に君を疑っているわけじゃないー。

 ただ、これも捜査の一環だからー」

と、最初に言葉を口にした方の30代ぐらいの警察官が

優しい口調で呟いたー


”え…なに?わたし…何を疑われてるのー?”


警察官は”君を疑っているわけじゃない”とは言っているもののー

何も疑われていないのであれば、

このようなこと、聞かれるはずがないのだー


美晴は、木曜日の出来事を思い出しながら

「その日はー…学校を出たあとに、お母さんに頼まれた買い物を

 スーパー…あ、え~っと駅から5分ぐらいの所にある

 スーパーなんですけど、そこで買い物をして、

 家に帰って来てからは、ご飯を食べたり、お風呂に入ったり、

 スマホで動画を見たりー、あとは友達とLINEをしたりー…

 してましたー」

と、素直に自分の出来事を伝えるー。


その言葉に、年配の方の警察官は「ふむ…」と呟きながら

何かをメモしているー


「ーそれを、証明できる人はいるかな?」

30代ぐらいの警官の方がそう言うと、

美晴は「お父さんとお母さんも家にいたのでー親が証明できると

思いますし、スーパーのレシートとか…あとはLINEの記録もー」と、

少し焦りも感じながらそう答えると、

「ーー美晴は確かにその日、夜はずっと家にいましたー」と、

心配そうに背後から様子を伺っていた母親が

助け舟を出してくれたー


「なるほどー分かりましたー」

年配の刑事が手帳に何やらメモを終えると、

そう言葉を口にしてから、

30代ぐらいの刑事の方が「急に訪問して、すみませんでした」と、

そのまま挨拶をして、立ち去っていくー。


「ーーー」

結局ー”何も”されはしなかったものの、

美晴は嫌な感じを覚えながら

二人の警察官の背中を見つめるー


「美晴…何かあったの?」

不安そうな母親ー


そんな母親を見て

自分自身も強い不安を感じながらもー

美晴は「ううん…なにもー…」と、

困惑した表情を浮かべたー


そうー

美晴には”何も”心当たりなどないー。


いつも通り普通に生活しているだけだー

それなのに、どうしてー…?


そう不安を感じることしかできない美晴ー。


”自分の知らない間に”ー

自分の姿が使われているなどとは、

全く知らずにー


・・・・・・・・・・・・


「ーーふふふふふ♡ 萌々(もも)、

 あれがたべた~い!」


夜の繁華街ー。


”美晴”の姿に変身している男は

今日も暗躍していたー


”女”の身体ーー

美晴の姿を利用して、彼にとっての”敵”である

組織の人間を誘惑ー、破滅に追いやろうとしていたー。



「ーーーえ…美晴?」


だがー

そんな姿を、偶然、買い物をしていた美晴の友達が

目撃しー、驚きの表情を浮かべたー。


・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


「ーーーーー…?」

美晴は、クラスメイトたちが美晴のほうを見て

ざわついていることに、少し違和感を感じるー。


いつもなら話しかけて来る友達も、

彼氏の達志も、なぜか今日は話しかけてこないー


「ーーねぇ、達志ー…」

不安になった美晴は、自分から、彼氏である達志の

座席に近付くと、達志に声を掛けたー。


しかし、達志は困惑の表情を浮かべながら

「ー…よくもまぁ、そんな平然としてられるよな」と、

呟くー。


「ーーえ…?」

達志の言葉の意味が全く分からないー。


美晴が達志の言葉にどう返事をしていいか困惑していると

昨日、夜の繁華街で”美晴に変身した男”を目撃した友達が

うんざりした様子で呟いたー


「萌々ちゃんーだったっけ?

 違う名前まで名乗っちゃってー

 昨日のおじさんとは、楽しかった?」


とー。


「ーーえ…?え?な、何のことー…?どういうことー?」

美晴は意味が分からず混乱するー。


昨日の夜、友達が見かけたのは

”美晴であって美晴ではない存在”ー

美晴に変身した、別人だー。


しかしー、

その事情を知らない人間が見れば、

美晴本人にしか見えないー


「ーーわたし、偶然見たのー

 あんたがおじさんと…その…そういうホテルに入っていくところをー」


友達の言葉に、美晴は

「えっ…!?き、昨日はわたし、ずっと家にいたよ?」と、

必死に弁明するー


「ーーそういうのいいから」

友達に冷たい視線を投げかけられてしまう美晴ー。


「ーー悪いけど、しばらくそっとしておいてくれないか?」

彼氏の達志にも距離を取られてしまう美晴ー。


「え…なんでー…なんで…!?」


戸惑うことしかできない美晴ー。


当然ー

この世界では”かつて他人に変身できる装置”が存在し、

大問題になったことはみんな知っているー。

しかし、それは”昔”の話で、

法律でそれが禁じられてからは、少なくとも

一般的に”他人に変身するための技術”は出回っていないー

実際に変身したことのある一般人はいないし、

実際に他人の姿に変身している人間を見たことのある一般人も

基本的にいはいないー。


時折、今でも裏社会を中心に、それが流通しておりー

”他人に変身して問題を起こすー”

”偽人間”問題が起きているものの、

それは全体からすれば”ごくわずか”なことー


偽人間問題も、一般的な出来事ではなく、

自分の身の周りでそんなことが起きるとは、

誰も想像していないー。


それ故にー


「わたしは、そんなことしてないってば!」

美晴が言うと、

友達がうんざりとした様子で、スマホで撮影したという

”美晴”と”おじさん”がホテルに入っていく写真を

見せ付けたー


その姿は、確かに美晴にそっくりだー


「ち、違うよ!これわたしじゃないよ!

 わたしにそっくりなだけ!」


必死に否定する美晴ー。


けれど、周囲からすればそれは”言い訳”にしか聞こえずー

”何もしていない”のに、美晴は

あっという間にクラス内で孤立してしまったー。


自分の知らない場所で、自分の姿をした人間が

勝手に悪さをしているー。


美晴には、どうすることもできず、

ただ、戸惑うことしかできなかったー。



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


身に覚えのない場所で、勝手に自分の姿を使われている…

そんなお話デス~!


急にこんなことになってしまうと困ってしまいますネ~…!


…今日は夕方~夜のはじめ頃に

毎月恒例の”今後執筆予定の新作発表”を行います~★

色々ご用意しているので、気が向いたら

ぜひチェックしてみてください~★!

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