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竜太の彼女・綾香には、重大な秘密があるー。


それは、”綾香には、竜太の親友・恵一が憑依している”ということー。


元々、綾香と竜太はほとんど接点がなく、

”恵一が憑依したこと”が、付き合い始めたきっかけだったー。


恵一は、”綾香”の身体を手に入れてー、

竜太は”綾香”を彼女にすることができるー。


お互いに利害の一致から、数か月間ー、

彼氏・彼女の関係を保ってきたー。


しかしー、妹の由紀奈に”憑依”について話している会話を

聞かれてしまったことでー、

その”関係”は崩壊しようとしていたー…


★前回はこちら↓★

<憑依>お兄ちゃんの彼女は何かがおかしい②~疑念~

大学生の竜太が付き合っている彼女・綾香は 竜太の親友・恵一が”憑依”している状態だったー。 そもそも綾香は、元々竜太とほとんど接点がなく、 竜太と綾香が付き合い始めた頃にはー ”綾香は竜太の親友に憑依されている”状態だったのだー そんな秘密を知ってしまった妹の由紀奈ー。 綾香は、”秘密を知られたなら、お前が...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


”由紀奈ちゃんにやっぱ昨日の話聞かれてたみたい!

 もう後戻りはできないね…

 地図を送ったから今すぐ、書いてある場所に来て!


 由紀奈ちゃんを、”どうにか”しなくっちゃ!”


親友・恵一が憑依している彼女・綾香からの

連絡を思い出しながら、

竜太は必死に指定された場所に向かって走っていたー。


竜太にとって、綾香は”大事な彼女”であることには変わりはないー。

中身は親友、身体は好きな子ー…なんて最高の組み合わせだー。


もちろん、罪悪感はあるー。

親友が、”本当に憑依する”などとは夢にも思わなかったのだー


最初に”彩香に憑依する”と、恵一が言い出した時、

竜太は冗談だと思ったぐらいだー。


しかし、実際に”憧れの子”だった綾香が、親友である恵一に

憑依された状態で目の前に姿を現したことでー

恵一の言葉は”嘘ではなく、本気だった”ことを悟ったー。


しかもーー

綾香の身体に憑依した恵一は、もう自分の身体に戻ることは

できないと聞いた時ー、竜太は強い衝撃を受けるとともにー

もうー”起きてしまった現実を受け入れるしかない”と、

開き直ることしかできなかったー。


”本気で一方通行の憑依”をするつもりだと、先に知っていれば

恐らく竜太は止めたー。


”恵一が綾香に憑依していなければ”今も彼女なしだろうし、

恵一が綾香に憑依したおかげで、中身は男…親友とは言え、

身体は正真正銘の女の綾香ー…彼女が出来たわけだし、

色々とイイ思いもしてきたー。


しかしー、それでも”事前”に知っていれば竜太は止めたと思うー。


綾香本人のことを考えると、今でも申し訳ない気持ちになるし、

自分自身にも強い罪悪感を時折感じるしー、

親友の”恵一”が死んだと思って涙を流した大学の同級生も知っているー。


そんなことになるぐらいならー

”先に知っていれば”竜太はー止めたと思うー。


「ーお前は俺が憑依したこの女を彼女にしてるんだー。

 もう、お前はー”共犯”だー。

 お前だけが退き返そうだなんて、そうはいかないー

 それに、万が一、問題になっても

 お前には自分の身体があるけど、俺にはない。」


そんな、綾香の言葉を思い出すー


「ー分かってるよー…そんなことー」

竜太は”恵一が綾香に憑依する”と言いだした時、

冗談だと思ってー止めなかったー

いやー…半分ー心のどこかで期待してたのかもしれないー。


そしてー、憧れの存在だった綾香が憑依されたと知ってー

内心は、喜んだー。

それもまた事実だー。

こうして、綾香と付き合うことが出来てー、

”彼女のいる日々”を堪能したのも事実だー


「ー今更…無関係でいられるなんて思ってないー

 でもー」


竜太にとっては妹の由紀奈も可愛い存在で、

守りたい存在だー。


「ーーーーー綾香!」

色々な考えを巡らせながら綾香に指定された場所に

たどり着いた竜太が声を上げると、

そこには廃墟地帯の寝台のような場所に、

由紀奈が寝かされていたー


「ーー遅かったよ~! も~♡」

綾香はそんな口調で呟くとー

「竜太ー分かってるよな?」と、笑顔を突然消して、

低い声で呟いたー。


「ーーー…ゆ、由紀奈に何をしたー?」

眠らされている由紀奈のほうを見て、

「ー安心しろってー、殺したりはしてねぇよー

 ”綾香”が殺人犯になっちゃ困るだろー?」

と、綾香が笑いながら言うー。


「ー自分の身体を失った俺にとっちゃー

 この身体がもう、”自分の身体”なんだからさー」


綾香はそう言うと、

廃墟地帯の一室にあるボロボロのテーブルの上に

乗せられているジュースのペットボトルを指さしたー


「ーあれにちょっと薬を混ぜて、眠って貰ってるー」


そう、呟きながらー。


そしてー

綾香は容赦なく、テーブルの側の台に置かれている

容器を指さしたー。


その容器は”憑依薬”の入った小瓶だー。


綾香は、この前言っていたことと同じことを繰り返すー。


「ー”憑依”のことを聞かれちまったなら仕方ねぇー。

 お前が、由紀奈ちゃんに憑依するしかないー」


綾香の言葉に、竜太は「ちょ、ちょっと待ってくれよ!」と叫ぶー


「お、俺が、俺が由紀奈に憑依したらー

 ゆ、由紀奈はどうなる!?」


竜太の言葉に、綾香は「分かるだろー?」と、

自分の身体を触りながら言うー。


「”わたし”と同じように本人の意識は永遠に封じ込められて

 身体を完全に支配されちゃうのー♡」


と、綾香の口調で真似て笑うー。


「ーそ、そしたらー由紀奈はー」

竜太が困惑の表情を浮かべるー。


「ーーー仕方ねぇだろ?お前は俺を見捨てるのかー?」

綾香が低い声で、竜太を睨みながら、壁に手を付けるー。


「ー俺にはもう戻る身体がないんだー…

 俺は必死なんだよー!わかるだろ?」


綾香は感情的になってそう言うと、

何度か咳き込んだ後に、

「ほら!ほら!可愛い彼女を助けてよ!」と、

再び綾香っぽい口調に戻って言い放ったー


眠らされている由紀奈のほうを見つめる竜太ー


「ーー…ゆ、由紀奈は俺が説得するからー

 ち、ちゃんと話せば分かって貰えるからー」


竜太にとって”由紀奈に憑依する”という選択肢はなかったー。


綾香に憑依した恵一のことも大事だー。

しかし、由紀奈のことも大事だー。


自分が妹の由紀奈に憑依すれば

”由紀奈の身体”は生きていても、心は死んでいるー

そんな状態になってしまうー


それでは”自分が由紀奈を殺した”のと同じだー。

由紀奈には幸せになってほしいし、

これからも由紀奈の人生を応援したいー。


「ー急に警察に駆け込むかもしれないー」

綾香が不機嫌そうに腕組みしながら言うー。


「ーそ、それはー…だ、大丈夫だってー!

 ”人を皮にした”なんてこと、警察に言ったって信じないしーー」


竜太がそう言うと、

綾香は「もし、信じられたらー?」と、不機嫌そうに呟くー


「そ、そ、それはー…

 で、でも大丈夫だよー

 由紀奈は絶対に警察に言ったりしないしー」


竜太がそこまで言うと

「ー本当に断言できるのか?100パーセントなのか?

 俺にはもうこの身体しかないんだぞ!?」

と、綾香が焦ったような表情を浮かべながら言うー。


「ー気づかれたらはいそうですかじゃ済まねぇ!

 最悪の場合、俺はこの身体から追い出されて

 消されてしまうかもしれないんだぞー!


 俺にはー

 俺には命がかかってんだよ!」


綾香が目に涙を浮かべながら言うー


「あ…綾香ー」

中身は親友でも、身体は綾香ー


”目の前で女の子が泣いている”ように錯覚してしまい、

頭がバグりそうになるー


「ーで、でもーだからってー

 ゆ、由紀奈は無関係なんだよー…!

  

 俺が、俺がよく聞かせておくからー頼むよー…!」


竜太が泣きそうになりながら言うー。


しかしー、綾香は首を横に振ったー


「ーーー竜太はわたしにずっと

 ”いつチクられるか分からない”状態で

 ビクビクしながら生きろって言ってるんだねー」


そう呟く綾香の目は、輝きを失っているようにも見えたー。


竜太の対応に”絶望”している様子だー。


「ーだったらー…ーーーーー…この身体を捨ててー

 わたしが、由紀奈ちゃんになるー」


綾香はそう言うと、廃墟地帯の一室のテーブルにおいた

”憑依薬入りの容器”を手にしたー


「ーーー!?!?」

竜太が表情を歪めるー


「ーこの身体、好きだったのになぁー…

 竜太にとっても”彼女”がいなくなっちゃうしー

 こういうこと、したくなかったんだけどなぁー」


綾香は悔しそうにそう言うと、

「これからは、竜太の妹になるのかぁ」と、言葉を付け加えたー


「ーお、お前まさか由紀奈に憑依をー!?」

竜太が必死に叫ぶと、綾香は「あぁ、そうだよー。」と、頷くー


「ーだって仕方ねぇだろー

 俺は憑依がバレたら終わりなんだー

 だったらー……だったらこうするしかねぇよー


 たぶん、俺の時と同じように、憑依薬を使ったら

 ”綾香”の身体も霊体になって消えちゃうと思うけどよー


 お前が由紀奈ちゃんの口封じを手伝わないってなら仕方ねぇ」


綾香は憑依薬の容器を手にしたまま笑うー。


「ーーま、待てってー!落ち着けー

 やめろ…!由紀奈に憑依なんて考えないでくれー!

 恵一!頼むから、やめてくれ!」


悲痛な叫びをあげる竜太ー。


「ーー無理だよーーー

 由紀奈ちゃんに”憑依”のこと聞かれちまった以上ー

 俺かお前のどっちかが由紀奈ちゃんになるしかないー」


綾香はそう言うと、憑依薬が入った容器に手を掛けたー。


「ーーーや…やめろおおおおおお!」

咄嗟に竜太が綾香にタックルをするー


吹き飛ばされた綾香ー

だが、その手には憑依薬を握りしめているー


唇から少し血を流しながら綾香は

「ーそんなことをしても無駄だー

 憑依薬を飲めばー俺はいつでもどこからでも

 由紀奈ちゃんに憑依できるー」と、笑うー


「ー知ってるか竜太ー、

 女の身体に憑依するとさぁ…

 だんだん、”心”も女になっていくんだよー


 もちろん、俺が俺だったことは忘れないし、

 俺は俺であることには変わらないー


 でもー、女の身体を使ってるかー

 あるいはその脳を使ってるからかなー


 最初はちょっとしたお遊びのつもりだったけどー

 本当にこの身体ー

 お前のこと、好きになってたんだよー


 ずっとずっとー、恋人同士でやっていければ良かったのになー」


綾香のそんな言葉と同時に、

綾香は憑依薬を口にしようとするー。


だがー…


「ー待ってくれー!」

竜太は、綾香の前に土下座したー


「ーー……俺が……俺が、やるー」

泣きながらそう呟く竜太ー


綾香は少し驚きながらも

「ーーーへぇ…分かってくれたか竜太ー」と、頷くー。


「ーーー……憑依に気付かれた以上ー

 こうするしかないんだよ……


 もしも、憑依のことで、由紀奈ちゃんが騒ぎ出したらー 

 俺は”地獄”を見ることになっちまうー


 分かってくれー…

 な?」


綾香はそう言うと、憑依薬を竜太の方に手渡そうとするー。


だがー

”渡す直前”

綾香は一つだけ忠告したー


「ーーー言っとくけど、それを捨てたり、

 持ち逃げしてもダメだからな?


 俺はもう1本、憑依薬を持ってるから、

 お前が逃げたらすぐにそれを使って、

 由紀奈ちゃんに憑依するー」


綾香のその言葉に、

竜太は「そんなことしないよ」と、悲しそうに呟くー


そして、チラッと由紀奈のほうを見つめると、

憑依薬の容器を開封したー。


「ーーー由紀奈ちゃんの身体になってもー

 わたしたち、恋人同士で続けようね?」


綾香がクスッと笑うー。


竜太は、意を決したような表情を浮かべると、

憑依薬を飲み干しー

竜太の身体が、溶けるようにしてその場に崩れ落ちー、

やがて、霊体となったー。


「ーーこれからはー

 女同士で仲良くしーーーーーー」


綾香はそこまで言葉を呟いた直後ー

突然ビクッと震えてー

その表情から、笑顔を消したー。


「ーー……ま……まさ…かーーー

 お前……!」


綾香が突然、鬼のような形相になるー。


”ーーーすまない恵一…。

 俺にはーー俺にはどうしてもー

 由紀奈の人生を奪うことはできないー”


竜太の声がするー


瞳を震わせる綾香ー


「ーーお前………う、裏切るのかー…!

 わたしをーーー…俺ごと乗っ取る気かー!」


綾香が震えながら叫ぶー。


”ーーーお前の言う通りー

 俺も共犯だー…


 お前のことを、あの時止めるべきだったー

 こんな風に、ずっと、綾香と付き合っているべきじゃなかったー


 だからーーーー

 俺はこの先、永遠に苦しみながら生きるー


 でもーー

 由紀奈は、由紀奈は関係ないんだー…!


 由紀奈を守るためにはーー

 こうするしか、こうするしかないんだー”


悲しそうに竜太の意識がそう叫ぶとー

綾香は表情を悪魔のように歪めながら


「ーーり、竜太あああああああああああああああああァ!!!!」

と、叫びー

その直後「ぅ…」と、身体を激しく痙攣させながら、

その場に倒れ込んだー


「ーーーーーー」

しばらくして目を覚ます綾香ー。


「ーーーー…」

綾香の手が”自由”に動くー

自分の意思通り動くー


「ーーーー…俺が…綾香にー」

綾香の口で、そう呟くー。


だが、女の身体になってドキドキするよりも先にー


もう、”自分は、由紀奈の兄でいることはできない”という

事実に、一人涙を流したー


そしてー

まだ意識を失ったままの由紀奈に近付くとー

「ー巻き込みそうになって、ごめんなー…

 でもーー……由紀奈を守れてよかったー」と

綾香の口で優しく呟いてー

静かにその頭を撫でたー。


”ごめんなー…恵一…”

親友の恵一に対しては、当然罪悪感もあるー。


こうして、綾香ごと恵一を乗っ取ってしまった以上ー、

竜太は恵一を殺したも同然ー。

もちろん、恵一に憑依され、さらにその上から憑依された綾香もそうだー


”俺は、二人の人間の人生を奪ったんだー”


その罪にー

永遠に苦しみながら、生きていくー。


それが、竜太の選んだ道ー


けれどー

妹の由紀奈を守るには、これしかなかったー。


恵一を止めるには、これしかなかったー


「ーー俺はー、竜太は、今日、死んだんだー」


これからは”綾香”として、

誰とも結ばれることなく、一人生きていくことを決意しー、

由紀奈が目を覚ます前に、綾香はその場から立ち去って行ったのだったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


”竜太”は失踪したー。

綾香に憑依した竜太の身体は消えー、

竜太は”行方不明”となったー。


当然、由紀奈も、両親も悲しんだだろうー。


けれどーーー


「ーーーー……よかったー」

綾香は少し離れた場所から、

今日も妹の由紀奈が元気に学校に向かう姿を見て

寂しそうに、けれども嬉しそうに微笑んだー


「ーーーー元気で頑張れよー」

綾香はそう呟くとー、

”綾香”と”恵一”の命を奪ってしまったー…

直接的にではなくても、間接的にそうしてしまった

罪の意識を背負いながら、綾香に憑依した竜太は、

そのまま姿を消したー。


綾香の身体でー

竜太が今、どこで何をしているのかー


それはー

誰にも分からないー。



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


最終回でした~!☆

妹を守るために、このような決断を下したお兄ちゃん…。


皆様がもし竜太くんの立場だったら

どんな決断をしたでしょうか~?

(普通に由紀奈の身体を乗っ取って、綾香(親友)と

 百合百合タイムな人もたくさんいそうですネ~笑)


お読み下さりありがとうございました~!

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