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弟・浩平の婚約者である千里と、初めて対面した兄の翔太ー。

千里に対する第1印象は”最高”だったー。


しかしー

その1週間後ー、翔太は偶然

”弟の婚約者・千里”とそっくりな女性とすれ違うー。


しかも、その女性は電話をしながら”婚約者を騙そうとしている”という

趣旨の会話をしていたー。

気になった翔太は”千里によく似たその女性”を尾行した結果ー、

その女性は千里本人であることを確信するー。


そしてー

翔太は目撃してしまうー。


”謎の男と合流した千里の”中”から、知らない男が出て来る場面”をー。


★前回はこちら↓★

<皮>弟の婚約者がヤバいやつ①~正体~

「ーあれ?来るの11時ぐらいだっけ?」 社会人の佐久間 翔太(さくま しょうた)が、 母親に対してそう確認するー。 「ーうん 11時って言ってたよ  あと30分ちょっとで来るんじゃないかな」 母親の啓子(けいこ)の返事を聞くと、 翔太は「やっべ!服装とか整えとかないと!」と、 慌てて自分の部屋に引き返し始める...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーただいまー」

翔太は暗い表情で帰宅するー


「あら、おかえりー」

母の啓子は、そう言いながら翔太のほうを見て、

すぐに翔太の異変に気付いたのか

「何かあったの…?」と、困惑の表情を浮かべるー


「ー……い、いやー…大丈夫だよー」

翔太はそれだけ言うと、自分の部屋に戻っていき、

スーツを脱ぎながら、先ほど見た光景を思い出すー。


「ーー俺の”婚約者”

 完全に騙されちゃって、へへー

 毎日ホント、面白いぜ」


先程の、千里の言葉を思い出すー。


そしてー

”千里の身体を引き裂くかのように出て来た男”の

光景も思い出すー。


「ーーー……そんなこと、あり得ないー」

頭を抱える翔太ー。


”人の中から人が出て来る”なんてありえないー。

あの光景は一体、何を意味していたのだろうかー。


「ーーー……」

翔太は、すぐにスマホを手に

”今日は千里さんと一緒だったのか?”と、

弟の浩平に確認の連絡を入れるー


”いやー、今日は俺も千里も仕事だったからー”

浩平からすぐに返事が来て、

翔太は”そっか”と、だけ返事を送りー、

大きくため息をつくー。


浩平は、千里との結婚を本当に嬉しそうにしているし、

幸せそうだったー


けどー

さっき見かけたあの女が、

弟の婚約者・千里ともしも”同一人物”なのであればー、


翔太は兄として”ヤバい婚約者”との結婚を

阻止しなくてはならないー。


だがー

まだ確証は得られていないし、

弟の翔太に”どう”説明すればいいかー。


「ーーー…まずは、千里さんから話を聞いてみないとなー」


さっき見かけたあの女が

”100パーセント千里本人なのか”と聞かれれば

まだそこまで断言することはできないー。


「ーーー……」

色々考えた末に、翔太は”まだ”両親や弟に相談するのは

時期が早いと考え、まずは千里と接触することにしたー。


仮にー

今日、見かけたあの女が、

弟の婚約者の千里とは無関係の女であれば、

先週、家に挨拶しに来た時の振る舞いからすると、

翔太が多少、何かを聞いたりしても、急に怒ったりする可能性は低いしー、

不愉快な気持ちにさせてしまうかもしれないけれど、

誤解が解けたあとに事情をきちんと説明すれば、

きっと、彼女なら分かってくれると思うー。


そしてー、

もしー…もしも、”さっきの女”が千里本人なのであればー

その場で真意を聞きーーー

”千里が何者なのか”を突き止め、

必要とあらば、弟・浩平との結婚を阻止しなくてはならないー。


「ーーー」

翔太は意を決して、前に教えてもらった

千里の連絡先にメッセージを送ったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーークククー じゃあ俺は帰るぞー」


千里の”皮”を身に着けた男は、笑みを浮かべるー。


「ーーへへへ…それにしても悪趣味だなお前はー

 そうやって”男”を騙して楽しいのか?」


サングラスの男の言葉に、千里の皮を完全に着込んだ男は

笑みを浮かべながら答えるー


「あぁー最高だよー

 結婚と言う幸せを滅茶苦茶に踏みにじる瞬間はーー

 本当に、たまらねぇー」


ニヤッと笑いながら、後頭部のあたりを触りー、

着込んだ”千里”の調節をする男ー。


「ーーーしかし、”そんなモン”よく手に入れたよなー」

サングラスの男がそう言うと、

千里は「ん?これか?」と、針のようなものを手にして笑うー。


「ークククー

 ”人間の中身”をまるで空気のように全て抜いて

 着ぐるみのようにしちまう夢のような針ー…


 この針を手に入れて、俺の人生は変わったよー」


千里はそう言うと、

クスクスと笑いながら、

「知ってるか?人が皮になっていく瞬間ー…

 本当に、空気が抜けてくボールみたいに、ぷしゅ~~って

 音がするんだぜ?」と、笑うー


「今、お前が着ているその女もか?」

サングラスの男が笑いながらそう呟くと、

「あぁ」と、笑みを浮かべながらスマホを操作したー


そしてー

そこには”千里が皮にされた時の映像”が残されていたー


男は”千里を皮にした際”に、スマホでその動画を

撮影していたのだー


”やめて…やめて下さい!”

泣き叫ぶ千里ー


そんな千里を、男は追い詰めていきー

そして、針を千里に突き刺したー


”あ、、、あ…た、たすけぇぇ  e …”


ぷしゅ~~、と空気が抜けるような音がしてー

千里の姿がみるみると”人間”から”着ぐるみ”のような

状態になっていき、その声も無理やりかき消されていくー


「ー残酷で寒気がするぜー」

サングラスの男がそう言うと、

千里はスマホをしまいながら、邪悪な笑みを浮かべたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


数日後ー


翔太は、弟・浩平の婚約者である千里と待ち合わせをし、

近くの喫茶店で千里と合流したー


「急に呼び出して、ごめんね」

翔太が苦笑いしながらそう言うと、

千里は「いえ、全然大丈夫ですー」と礼儀正しく微笑んでから、

イスに着席したー。


「ーあ、好きなもの頼んでいいよー。

 無理を言って呼び出しちゃったし、そのぐらいー」

翔太が言うと、千里は「え?ほんとですか~?ありがとうございます!」と

嬉しそうにしながら、ドリンクや、スイーツを選んで、

そのままメニューを翔太の方に渡したー


「ーそれで、結婚に関するお話ってー…

 どんなご用件でしょうか?」


千里が不安そうに呟くー。


「ーあぁ、いや、結婚に反対するとか、

 そういうことじゃないから、安心してー」

と、翔太が言うと、

「ーー実はさー…」と、少し躊躇ったあとに言葉を続けたー。


「先週の金曜日ー、千里さんによく似た人と偶然すれ違ってさー…

 その人がちょうど電話してて、”婚約者を騙そうとしてる”

 みたいな話をしてたのが聞こえちゃったんだー」


翔太がそう言うと、

千里は「わたしによく似た人が…?」と首を傾げるー。


「ーあぁ。 

 それでー…そのー……

 結構似てたからー…そのー…」


翔太はなかなか”千里を疑っている”とは口にできずに、

少し躊躇っていると、

千里は「それでー…わたしがお兄さんに疑われているってーことですか?」

と、少し表情を曇らせたー


「ーーあ、いやー…その、本当に申し訳ないー

 でも、浩平、昔からお人好しで、何度かそれで

 痛い目に遭ってるから、心配でー。


 ーー……過保護で馬鹿な兄なのは分かってるけどー

 どうしても、心配でー」


翔太がそこまで言うと、千里は

にこっと微笑んでからー

「ー素敵なお兄さんですねー」と笑ったー。


そして、千里は「金曜日の夜は、わたし、家にいたので

お出かけはしてないですよ」と、微笑むー。


「ー仕事が終わってすぐに帰ったので、

 お兄さんが見かけたわたしにそっくりな人はー

 わたしじゃないですね」


とー。


「ーーそ、そっかーよかったー」

翔太はそこまで言うとー、運ばれてきたドリンクを

口にしながらー、

「”夢”見たんだー」と、言葉を口にするー。


「ーえ?」

千里も、運ばれてきたドリンクを飲みながら

翔太のほうを見つめるー


ひとまずー

千里から”わたしじゃないです”という言葉が聞けて良かったー


けどー

それだけで信じ込むほど、翔太も愚かではないー。

千里をここに呼び出したのには、それなりの”確信”があるからだー


100パーセントと断言はできないー

だが、8割ーいや、9割ー

あれは確かに、今目の前にいる”千里の声”だったー。


やっぱりあれはー


「ーー夢、ですか?」

千里の言葉に翔太は頷くとー、

「ー千里さんそっくりな人とすれ違った日の夜だったかなー

 ”千里さん”の中から男が出て来る夢を見ちゃってー」と、

そう呟いたー


そう言いながらー

千里の表情や反応に変化がないかどうかを、

翔太はさりげなくー、けれども注意深く観察するー。


「ーあははは…すごい夢ですね、それー」

千里は動揺する様子もなく、そう笑い飛ばすと

「いただきます」と礼儀正しく挨拶をしてから

たった今、到着したスイーツを口に運び始めたー。


「ーーーーー」

翔太はー、別に千里を追い詰めたいわけではないー。

千里には”シロ”であって欲しかったー


先週、見かけたあの女は

千里と似ているだけで、千里とは別人であって欲しかったー。


”女の中から男が出て来る”

あり得ない光景ー。

あんな”リアル”な変装なんてありえないー。

何か、何か翔太の知らない恐ろしいことが起きているー

そんな気がしたー


でもー

あれが千里でなければ、翔太には”関係のないこと”であるのは確かだ。


翔太は警察官でも正義の味方でも何でもないー

守るべきは、自分と、自分の周囲の人々であり、

それ以上のことはできないし、するつもりもないー。


どんなに綺麗事を述べても、人間には限界というものがある。


だから、翔太はあれが千里でなかったのだとしたら

あの日見た光景は忘れるつもりでいるー。


もちろん、事件を目撃したのなら警察に通報するまではするー。


だが、あの日見た光景は

”人殺し”でも”窃盗”でも何でもなくー

”人の中から人が出て来た”というあまりにも理解不能な光景ー


通報したところで、何にもならないだろうし、

翔太が頭のおかしなやつだと思われるのがオチだー。


「ーー他に、何か聞きたいことはありますか?」

千里が笑顔で微笑むー。


嫌味っぽい言い方ではなく、純粋に気遣ってくれている言い方だったー。


今日の千里も、この前、初めて対面した際の千里と

何も変わらず、気配りのできるしっかりとした女性ー、

という印象だー。


先週金曜日の夜に見た”あの派手な女”とは

似ても似つかないー


”顔”と”声”以外はー


「ーー…これからはーその…家族になるわけですしー

 聞きたいことは何でも聞けるぐらいの方がいいと思いますしー」


千里はそんな風に呟くと、優しく微笑むー。


「ーははー、ありがとうー」

翔太はそんな風に言いながらー

スマホを見つめたー


実はーーー

”写真”があるー


あの日、気づかれないように

”サングラスの男”と”千里によく似た女”が

一緒にいた写真を何枚か撮影しているー


しかも、そのうちの1枚は”千里に似た女”が

脱がれている瞬間、つまりー

”中から男”が出てきている瞬間の写真だー


さらには、サングラスの男とキスしている写真もあるー。


それ以上は危険だと思い、そのまま翔太は

立ち去ったものの

”決定的な証拠”を持っているのだー


翔太は、千里の反応から、

その写真を見せることにしたー


「ーーー実はー」

翔太が、”千里らしき女”が脱がれている決定的瞬間の写真を

スマホに表示して、それを見せ付けたー


千里が驚いた表情でその写真を見ているー。


もちろんー

”人の中から人が出てきている”瞬間の写真など見れば

誰でも驚くだろうー。


だから、千里の反応におかしな部分はないー


「ーーーーこれはーーーー……」

千里がそう呟きながら、スマホの写真を見つめているー。


「ーーーーごめんーー…

 さっき、夢って言ったけどー

 実は、現実で見たんだー」


そしてー


”正直、他人の空似だと思ってるしー、

 何かの見間違いだと思ってるけど、

 千里さんがさっき、”家族になる”って言ってくれたからー

 俺も、隠さず、ちゃんと聞こうと思ってー…


 これー、千里さんじゃ、ないよね?”


と、そう聞こうとしたー。


だがー、

それよりも前に、千里が笑い出したー


「ーーあはっ…あはははははははは」

面白そうに笑う千里ー


「ーーーち、千里さんー?」

翔太の中の不安が急速に膨れ上がるー


確かに、実家に来た時も、千里はよく笑っていたー


だがー

”こんな笑い方”ではなかったー。


「ーーーー何だよー全部見てやがったのかよー」

千里が突然豹変して、低い声でそう呟いたー


「ーチッー…なら最初からそう言えよ」

千里はそう言うと、店員を呼んで

「ーラーメンとビール、ありますか?」と笑顔で注文を終えるとー、

食べかけのスイーツを机の脇にどけて微笑むー。


まるでー

”可愛い婚約者”を演じる必要がなくなったと言わんばかりにー。


「ーーーで、”俺”に何が言いたいんだ?」

千里は微笑みながら、

今までとはまるで別人のような口調で、翔太に対して

そう言い放ったー。


翔太は、本性を現した千里を前に、

何も言うことが出来ずー

ただただ、呆然とすることしかできなかったー。



③へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


本性を現した婚約者…!

果たしてどうなってしまうのでしょうか~?


今日もありがとうございました~!☆


今月の中旬ぐらいまでに、またいつも通り

”今後執筆予定の作品”を新規発表するので、

そちらも楽しみにしていてくださいネ~!

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