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「や…やめてー…!」


夜の街ー。


人通りの少ない道を、一人の女性が逃げ惑っていたー


背後から彼女を追うのはー

不審者ーーー…ではなくー


”悪の怪人”だったー。


人間離れしたその姿を見れば、

彼女に限らず、誰だって逃げ出すだろうー。


「ーーククク…三大幹部の一人であるこの俺、マルム様から

 逃げられるとでも思ったかー」


”三大幹部”の一人を名乗る怪人・マルムー。

その容姿は醜悪で、強そうに見えるが、知性は感じられないー。


「ーーーひっ……や、やめてー」

ついに路地裏に追い詰められてしまった

女子大生が、怯えた表情でその怪人のほうを見つめると、

怪人は静かに呟いたー。


「ー安心しろー。

 貴様を殺すつもりはないー。


 ただーーー」


そう呟くと幹部・マルムは女子大生と自分を順番に

指差してから、静かに言葉を続けたー。


「ーー俺と、貴様の身体を”交換”したいー」


そう呟くと、赤い触手のようなものがマルムの身体から

飛び出しー、その女子大生とー

さらには、”自分自身”を拘束したー


「ぐへへへへへ……この絞めつけー…

 何度味わってもたまんねぇぜー」

自分の触手に絞めつけられて

苦悶の表情を浮かべながら笑うマルムー


一方の女子大生は悲鳴を上げようとするもー

触手で口も塞がれるー


「ーーー我ら”ルーメン”のためにー

 その身体、利用させてもらおうー」


マルムはそう呟くとー

「我らルーメンに伝わる奥義ー

 ”クロスチェンジ・ボディ”ー」

と、技の名前らしきものを高らかに宣言しーーー

不気味な笑みを浮かべたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


数日前ー…。


「ーーく…くそっ…貴様は一体ー…!?」


夜の高架下ー。

一人の青年と”異形の怪物”が、対峙していたー。


異形の怪物の方は”怪人”と表現するにふさわしい容姿だー。


怪人”シャドーキノコ”は、目の前にいるごく普通の青年に

追い詰められていたー。


「ーー俺?」


”貴様は一体?”と問われた青年ー

岩城 大輔(いわき だいすけ)が、お湯を入れたカップ麺を

手にしながらそう呟くー。


「ー俺はーーそうだなー」

時計をチラチラ見ながら大輔が

怪人・シャドーキノコのほうを見つめると、

少しだけ笑みを浮かべながら答えたー


「ーただの、男子大学生さー」


そう呟くと、「お…おのれえええええ!」と言いながら

突進してきた怪人・シャドーキノコに強烈な蹴りと食らわせて、

シャドーキノコの身体を高架下の壁に叩きつけたー。


「ぐわああああああ!」

砕け散り、粒子のようになって消滅する怪人ー。


「ーーーーったく 時と場所を選べよなー」

コンビニでカップ麺を買い、お湯を入れて出て来たところを

怪人に絡まれた大輔は不機嫌そうにそう呟いたー。


「ーーーー5分ー。少し麺が伸びたぞ」

不満そうに呟く大輔ー。

熱湯3分のカップ麺にお湯を入れてから5分ー。


シャドーキノコのせいで、少し伸びた麺を口にしながらも、

大輔は高架下に寄りかかりながらスマホを確認したー。


”大輔!さっきはありがと~!”


そんなメッセージを確認する大輔ー。

大輔は穏やかな表情を浮かべながら

”どうってことないよー。力になれてよかったー”と

返信を送るー。


メッセージのやり取りをしている相手はー

大輔の彼女、

冬川 聡美(ふゆかわ さとみ)ー。


同じ大学に通う女子大生だー。


今、送られてきたメッセージは今日の昼間、

大学で困っていた聡美を助けた際のお礼のメッセージだったー。


しばらくメッセージのやり取りをしつつー

カップ麺を食べ終えた大輔は、ゴミをまとめて静かに

家に向かって歩き出すー。


「ーーーーー」

普段、大学では穏やかな性格で、ちょっと天然なところもある大輔ー。

友達にも、彼女の聡美にも優しい性格で、

男女問わず、よく頼りにされているもののー

”お前、騙されやすそうだよな…”などと、親友には心配されることもある

”お人好し”な性格だったー。


しかし、そんな大輔には”裏の顔”があったー


大輔の”裏の顔”

それはー


”悪の組織”と戦う正義の味方ー…


いやー…

世界征服を目論む悪の組織”ルーメン”と、

唯一”まともに立ち向かうことができる”人物ー。


数十年前、異次元から出現し、

地球の各所で暗躍を続けている”ルーメン”ー。


ルーメンの目的は

”人類の衰退と滅亡”ー。


その目的のために、

数多くの工作を仕掛けー、

事件を誘発させたり、人々の対立を煽ったりー、時には自ら手を下したりー、

ジワジワを追い詰める形で、着々と人類を”絶滅”へと追い詰めているー。


計画達成までの目標年数は”500年”ー

”ルーメン”を構成する種族は平均寿命が非常に長い故に、

長い年月をかけた作戦を遂行することができるー。


”直接”実力行使をすることもできるがー、

歴史上、それをした”悪の組織”は、悉く壊滅してきたー。


”正義は必ず勝つ”などという言葉があるようにー

人類を”実力行使”で短期的に支配しようとした悪の組織は

全て、壊滅しているのだー。


だが、”ルーメン”は違うー。


決して急がずー

焦らずー、

”人間”という種族を少しずつ滅びへと向かわせているー


各所で、人間に扮した怪人たちが

対立を煽ったり、偽情報を流し、人々に疑心暗鬼の心を植え付けー

”緩やかに”崩壊へと導いているー。


がーーー

”ルーメン”にとって誤算が起きたー。


それが、大輔だー。


大輔はーー

”ルーメン”の怪人たちの擬態能力をなぜか見破ることが出来てしまうー。


通常、地球上で行動しているルーメンの怪人たちは

普通の人間には”人間の姿”に見えるのだが、

大輔には”本当の姿”ーつまり、怪人本体の姿に見えてしまうのだー。


先程倒したシャドーキノコもそう。

普通の人間にはサラリーマン風のおじさんに見えていたのだが、

大輔には”本来の姿”ー、キノコと黒い霧のようなものが融合した

不気味な怪人の姿に見えていたー。


しかも、別に変身するわけでも、特別格闘技を習っているわけでも、

喧嘩が強いわけでも何でもない大輔の攻撃がー

ルーメンには”大きなダメージ”与えるー。


シャドーキノコがたった一発のキックで砕け散ったのも

そのためー。


”人間への擬態”を見破り

”ルーメンの怪人に対して異常な力を発揮する”ー


それ故に、ルーメンは計画の障壁となる大輔を

”組織にとっての危険人物”として生きたまま捕獲しようと目論んでいたー。


「ーーーはぁ~あ……にしても、何で俺だけ

 ルーメンのやつらがちゃんと見えて、

 ルーメンのやつらにダメージを与えられるんだろうなー?」


初めてルーメンの怪人に遭遇した際に言われた言葉を

今でも忘れられないー


”お前ー…俺の本当の姿が、見えるのかー?”


あの時から、ルーメンと大輔の戦いは始まったー。


最初は、自分の身を守るためー。

そして、今は自分の身を守りつつ、

ルーメンによる”人類の緩やかな滅亡”を阻止するためー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーおやおやー

 シャドーキノコがやられたようだねー

 口ほどにもないー」


巨大な水晶玉のようなものに映し出された映像で、

”シャドーキノコ”が敗北したのを見た

三大幹部の一人・ロサは、笑みを浮かべながらそう呟いたー


巫女服のような服を着た妖艶な女幹部ー。

その姿は、シャドーキノコとは異なり、人間の姿に近いものの、

植物と一体化したような異様な部分も見え隠れしていて、

”人間ではない”ことは明らかに分かるー。


「ーーチッーー。この儂、直属の部下をこうもあっさりとー」

雷神のような姿をした三大幹部の一人・トニトルスが不満そうに呟くー。


「ーー大将軍ー

 やはり奴は生死を問わず処分するべきだー」

トニトルスが奥の玉座のように座っている、

まるで”天使の騎士”のような風貌の大将軍ソルに対してそう叫ぶー。


だがー


「ならぬー。あの者は必ず生け捕りにするのだー」


悪の組織”ルーメン”がその気になればいくら大輔が

ルーメンの怪人に対して超常的な力を発揮しても、

殺害すること自体はたやすいー。


しかし、大将軍ソルが”生け捕り”にすることを命じているために

なかなか、作戦が上手く行っていないのは事実だったー。


「ーーー奴の”力”ー

 どうして奴が我々の擬態を見破ることができるのかー

 どうして奴が我々に対してあのような力を発揮するのかー

 生け捕りにして、それを確かめねばなるまいー。


 あの者を捨て置いて、あの者と同じような人間が万が一増えれば、

 我らの500年をかけた地球制服の計画が崩れかねんー」


その言葉に、

三大幹部のトニトルスとロサの二人が、それぞれ反応を示すー。


「ーークククーならば俺の出番だなー」

奥から醜悪な容姿の怪人が姿を現すー。


容姿とは裏腹にー、

彼も三大幹部の一人ー。


「ーーマルムかー」

大将軍ソルがそう答えると、マルムは笑みを浮かべたー。


「奴には”カノジョ”っていう大事な女がいるらしいー

 そいつを使い、奴を絶望に叩き落としー、

 ここに連れ込むー」


マルムのそんな言葉に、大将軍ソルは

「できるのか?」と、マルムのほうを鋭い目つきで見つめるー。


「あぁー。

 俺の奥義ー”クロスチェンジ・ボディ”を使いー、

 その女と俺の身体を入れ替えれば、なー」


マルムのその言葉に、大将軍ソルは少しだけ笑うと

「面白いー。人間の女の身体を使い、

 あの者を破滅に追い込んで見せよー」

と、マルムに対して言い放ったー。


「ーはっ」

マルムは邪悪な笑みを浮かべー、

そのまま”ルーメン”のアジトから外に向かって歩き出した


そしてー

翌日の夜ー…


「ーーー我ら”ルーメン”のためにー

 その身体、利用させてもらおうー」


大輔の彼女、聡美はマルムに襲撃されー

その身体を入れ替えられてしまったのだー。



「ーーーククククー貧弱な身体だぜ」

聡美(マルム)がニヤニヤしながら手を開いたり、閉じたりを

繰り返して、その動きを確認しているー。


マルムが人間界で活動する際のアジトにしている

廃墟地帯で、聡美(マルム)が、偉そうに壁に寄りかかって

”拘束した自分の身体”を見つめるー。


ルーメンのメンバーは、人間界では人間に擬態して行動するが、

”あえて”それを解除した状態で入れ替わったー


今の聡美はー

醜悪な怪人・マルムの姿になってしまっているー。


「ーーーマ…マルム様ー」

配下の怪人、ドールモスキートが聡美の姿をしたマルムに

戸惑いながら声を掛けるー。


「ーーーん?ー」

腕組みをしながら振り返った聡美(マルム)は

「ーなんだ?いつも通りで良いー。」と、

聡美の姿になったマルムに戸惑った様子を見せる、

ドールモスキートに対してそう言い放つー


「い、いやーしかしー

 へへ…そ、そんな可愛い姿でーー

 えへへへへ…」


下心丸出しのドールモスキートに対して

「死にたいのか?」と、聡美の声で冷たく言い放ち、

睨みつけると

ドールモスキートは何故か「あ、ありがとうございますー!」と、

叫びながら、聡美(マルム)のほうを見つめたー。


「ーーバカがー。

 まぁいいー。

 俺の身体になったこの女はここに拘束しておくー


 お前はこの女を見張っていろー」


聡美(マルム)がそう言うと、

「ーへへへ…このまま意識を取り戻さないじゃないっすか?」と

ドールモスキートが笑いながら言うー。


「ーいや、それはあるまいー。

 俺の能力は入れ替えるだけで、別に殺す能力じゃねぇ」


聡美(マルム)はそれだけ言うと、

ドールモスキートが「可愛い声で、その喋り方!たまんねぇっすぅ!!!」と

嬉しそうにもじもじさせるー


「ーーーお前、人間どもで言う”変態”だなー」

聡美(マルム)は鼻で笑いながらそう呟くと、

「俺はこれから、この女として、例の正義の味方に接触するー

 やつを、時間を掛けて骨抜きにして破滅に追い込みー

 そしてー、我々のアジトに連れ去るー。

 この女の立場と身体を利用すればーたやすいことだー」

と、ドールモスキートにこれからの動きを説明し、

そのまま廃墟地帯の外に向かって歩き出したー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


「ーーーククククー」

鏡を見つめながら不気味に微笑む聡美(マルム)ー


「ーーこの女の手でー

 お前を破滅に追い込んでやるぜー」


力ずくで、大輔を捕まえようとしても

ルーメンに対して異様な力を発揮する大輔を捕らえるのは難しいー


だったら”彼女”の立場を利用し、

大輔の日常生活を壊していき、絶望のどん底に突き落とした大輔を

”聡美”として声を掛けて巧みに誘導しー、

そして、ルーメンのアジトに連れ去るのだー。


「ーーーふふふふ…わたしが、あなたを破滅させてあげるー

 ーーーなんてな」


聡美(マルム)はそう囁くと、

そのまま大学に向かって歩き出したー



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


今月最初のお話は入れ替わりモノデス~!


一風変わった悪の組織の怪人との入れ替わり…!

ゾクゾク要素も色々盛り込むので、

ぜひ楽しんでくださいネ~!


ちなみに、敵組織”ルーメン”と、

幹部クラスの名前は、ラテン語になっています~☆!


…下っ端の怪人は、適当デス…笑


お読み下さりありがとうございました~!

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