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「ーーーはぁ~~~~」

帰宅した社会人1年目の塚本 正司(つかもと しょうじ)は、

思わず大きくため息をついたー。


「ーどうしたの?そんなに大きなため息をついてー」

苦笑いするのは同居中の彼女、北原 麻由里(きたはら まゆりー)。


二人は元々幼馴染同士で、小さい頃からずっと仲が良くー、

社会人になってからは同居生活を始めているー。


本人たちからしてみれば、恋愛関係ー…というよりかは、

兄と妹ー、あるいは姉と弟みたいな関係だー。


「ーーーいやぁ……仕事が思ったよりキツくてさー」

正司がため息をつきながら呟くー。


正司が就職した会社は、

IT系のベンチャー企業で、最近急速に業績を伸ばしている会社だー。


元々、IT関連に興味があり、

小さい頃から自分でホームページを作ったり、

ちょっとしたSNSのようなものを学生時代に作ったりと、

色々なことをしてきたー。


そんな特技を生かせると思って選んだ会社がー

株式会社ローズ・テクノロジーだったー。


「ーーー確かに毎日帰りも遅いよねー」

麻由里が心配そうにそう呟くと、

正司は「ーーそうそう…マジでブラック企業だよアレー」と、

困惑しながら呟いたー


”ブラック企業”という噂も0ではなかったー。


しかし、どんな企業でもある程度そういう噂は立つものだし、

100パーセント真っ白な企業を探そうとすれば、

企業名の一覧が真っ白になるぐらい、

世の中には”完全なホワイト企業はない”ことも、理解はしているー。


法律的には良くても、パワハラ上司が一人でもいれば、

その企業は完全なホワイト企業とは言えないー。


しかしー。

正司が就職した会社”ローズ・テクノロジー”は

想像以上のブラック企業だったー


「ーーでも、他に似たような会社で

 もっと待遇の良さそうなところもあったよね?

 どうしてローズ・テクノロジーを選んだの?」


不思議そうに呟く麻由里ー。


「ーーーあ~…まぁ…色々と総合的に判断してー」

正司は苦笑いしながら誤魔化したー。


確かに、IT系の企業で似たような事業内容の会社は

他にもたくさんあったー。

その中でも、ローズ・テクノロジーより待遇が良さそうで、

ブラック企業という噂もなく、規模も大きく、会社までの距離も近いー


そんな、会社もあるにはあったのだー。


しかし、それでも正司は

ローズ・テクノロジーを選んだー


がー、その理由は絶対に誰にも言えないー。

特に同居している彼女の麻由里には、死んでも言うつもりはないー。


何故ならー


”ブラックかもしれないって噂があったのに

 ローズテクノロジーを選んだ理由がー

 社長だなんて絶対に言えないっー!!!”


正司は心の中でそう叫び、麻由里から目を逸らしたー。


社長の

小野坂 梨沙(おのさか りさ)ー


20代の若き女社長で、

とても美人の社長だー。


20代にして、IT系の企業を立ち上げて社長をやっているだけあって

頭の回転も速く、まさに”才女”と言える彼女ー。


そんなー

小野坂社長についていきたいー、と、そう思って

正司はローズ・テクノロジーへの入社を決めたのだー。


ーーなんて…

そんな理由を、彼女の麻由里に言えるわけがないー。

変な誤解をされてしまうー。


別に、小野坂社長に恋愛感情を抱いているわけでもないし、

そういう関係になりたいわけでもないー。


だが、どうせ社会人になるのであれば

”この人についていきたい”と思えるような人のところで

働きたいー。


そう、思ったのだー。


だから、ローズテクノロジーを選んだー。


まさかー

ここまでのブラック企業だとは夢にも思っていなかったけれどー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


ローズ・テクノロジーのオフィスに出社した正司ー。

ベンチャー系企業だけあって、そんなに規模は大きくないし、

社長の梨沙とも直接同じ場所にいるようなー

そんな小さな規模の会社だー。


「ーおはようございます」

正司が挨拶をすると、

今日も穏やかな笑みを浮かべながら、小野坂社長は

「あら、おはようー」と、優しく挨拶を返してきたー。


「ーーーー」

頭を下げて、自分の机に向かう正司ー。


しかしー


「ねぇ、塚本くん」

小野坂社長が、座席から立ち上がると、

正司のデスクまで近寄ってきたー。


スーツの上からでも分かるスタイルの良さー。


「ーーー今日、残業お願いできる?」

小野坂社長が、そう呟くー。


「ーーー…え、えっとー」

正司は困惑しながら、一瞬目を逸らしたー。


昨日も、一昨日も残業をしているー。

正直、今日はもう帰りたいし、

流石に今日は残業を頼まれることはないだろう、と思って

会社にやってきていたため、

朝一番で残業をお願いされるなど、予想外すぎて、

”今日は勘弁してくださいー”と、思わず叫びたくなってしまったー。


「ーーーー塚本くん!お願い!」

甘えるような声を出してくる小野坂社長ー。


これだけなら”かわいい”し、良いのかもしれないー


だが、正司は知っているー。


小野坂社長の”美貌”はー、”薔薇のようなもの”であるとー。


この会社ー

ローズ・テクノロジーの”ブラック”な部分の大部分は、

この小野坂社長だー。


「ーーーわ、分かりましたー」


小野坂社長に残業をお願いされた場合の

社員の選択肢は、3つある。


”はい”と、”イエス”と、”サー”の3つだー。


これ以外に、選択肢はないー。


残業を断るようなことがあれば、

小野坂社長は”豹変”するー。


だからみんな、”断る”という選択肢はないのだー。


「ーーーーねぇ、無能ー」

小野坂社長が自分のデスクに呟くと、そう呟くー。


「ーーーー」

黙って事務作業を続ける社員たちー。


小野坂社長の言う”無能”が、

自分のことではないと願いながら、

正司も含めて、黙々と仕事をこなすー。


「ーおい、シカトかよ」

小野坂社長の表情から笑顔が消えるー


その場にいる社員たちは、全員が怯え始めるー。


小野坂社長はー

”見た目”と”中身”のギャップが激しすぎるー。


穏やかそうで、優しそうで、可愛らしい雰囲気なのにー

その性格は、真っ黒ー。


「ーーーーお前だよ!おい!来いよ」

小野坂社長が、一人の女子社員のほうを睨みながらそう呟くー


”優しそうな声”で発せられる”暴言”ー

その、あまりにも強すぎるギャップが

より、恐怖を増幅させるー。


「ーーは…はい…も、申し訳ありませんー」

”無能”と言われた女性社員・澪(みお)が、震えながら

小野坂社長の前に行くと、

「お前、昨日取引先に送った例の書類、間違ってる部分があって

 向こうから指摘されたんだけど、どう責任取るんだよ?」

と、小野坂社長が容赦ない言葉を浴びせるー。


”可愛らしい声”なのに、”低く”、”恐ろしい”声ー

この、あり得ないほどの違和感とギャップは、

実際に経験しないと、なかなか理解できない恐怖だー。


正司はゴクリと唾を飲み込みながら

”なるべく気にしないように”しつつ、仕事を続けるー。


正司はまだ新入社員と呼べる立場だが、

”仕事ぶり”には小野坂社長も一目置いておいて、

他の社員に比べて怒られることは少ないー。


だがー

こうして”他の社員が怒られている場面”はよく見かけるし、

正司自体も、小野坂社長の”性質”を知らない最初の頃は

よくキレられていたー。


「ーわたしに恥をかかせやがって!

 どう責任取るんだよコラァ!!!」


机をバン!と叩きながら、まるで不良の男かのような

乱暴な口調で叫ぶ小野坂社長ー


「ひっ…す、すみませんー…」

目に涙を浮かべながらそう呟く澪ー。

入社3年目のようだが、小野坂社長からは

よく怒られているー。


「まぁいいやー。

 恥をかかせた分、ちゃんと身体で払ってもらうからな」


小野坂社長はそう言うと、

澪の腕を引っ張って、そのまま奥の社長室に澪を突き飛ばしたー


「ーーみんなは、いつも通り仕事しててね♡」

急に、甘い声に戻った小野坂社長が、笑いながら

オフィスにいる社員たちにそう言うと、

そのまま社長室の扉を閉めたー。


「ーーーーー…」

朝から生きた心地がしない正司ー。


「ーー…澪ちゃんも、社長の目の敵にされて災難だなー」

入社4年目で、正司の指導役でもある、片倉 雅夫(かたくら まさお)が

戸惑いながら呟くー。


入社4年目ー…

と言っても、そもそもまだローズ・テクノロジー自体が

最近できた会社であり、雅夫は”この会社が出来た当時からの社員”だー。


聞けば、小野坂社長の大学時代の同級生なのだとかー


「ーー社長も、大学の時までは、あんなじゃなかったんだけどな」

雅夫が苦笑いしながら言うと、

正司は困惑した様子で、心配そうに社長室のほうを見つめたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーふふふふふふふ…♡ くくくくくく♡」

社長室では、嫌らしい笑みを浮かべながら

小野坂社長が、連れ込んだ澪の胸を触っていたー


「ーう…や、やめてくださいー」

震える澪ー。


「ー抵抗すんなよ 無能」

小野坂社長が冷たい声で、澪を睨みつけるー


「ミスしたお仕置きなんだからよぉ~!!!あ~~~?」

小野坂社長はそう言うと、澪の胸を乱暴に揉みながら、

乱暴な口調で叫ぶー。


散々、やりたい放題される澪ー


やがて、泣きじゃくっている澪を見つめながら、

「誰かに言ったら、どうなるか分かってるよな?

 会社を辞めたらどうなるか分かってるよな?」と、

クスクス笑いながら呟くー。


小野坂社長は”社員を決して逃がさない”ー


会社を辞めた社員の身の周りには

”不幸”が連続して起きるー。


ある者は、彼女が突然自殺しー

ある者は、両親が消息を絶ち、

ある者は、友人が凶悪犯罪を起こした。


当然、ローズテクノロジーを退社した人間の身の回りに

そんなことが立て続けに起きれば

ローズテクノロジーを疑う人間もいるー。


しかしー

何の証拠もない上に”退社した人間の友人が凶悪犯罪を起こす”

なんてことをローズ・テクノロジーが引き起こすことは

常識的に考えれば困難に近いし、

退社した社員の彼女が自殺した件に関しても、

彼女が自ら動画で遺言を残しており、

それを無理やりローズテクノロジーがやらせることは困難に近いー。


”わたしの会社を辞めれば、呪われる”

小野坂社長はそんな風に言っていたこともありー

社員たちは”身の周りの人間を傷つけたくない”という想いから

辞めることもできずにいたー。


またー

”告発しようとした人間”にも同じことが起きておりー、

ローズ・テクノロジーに一度入社すれば

”小野坂社長から逃げられない”

そんな、状況に陥ってしまうー


「ーーへへへへへ そろそろ戻っていいぞ」

澪でやりたい放題をした小野坂社長は満足そうに笑いながら

澪を社長室から追い出すー。


「クククー」

社長室の扉の鍵を閉めた小野坂社長が、笑みを浮かべるとー


次の瞬間ー

小野坂社長の頭がぱっくりと真っ二つに割れてー

そのまま、社長は床に崩れ落ちたー。


中から出て来たのはー

細い目つきのやせ細った男ー


「ククククククー

 可愛い女子大生の身体を奪って企業してー

 美人女社長になった俺に、怖いものはねぇー」


小野坂社長の”中”から出て来た男は笑みを浮かべるー。



ローズ・テクノロジーの社長・小野坂梨沙は、

大学に在籍中に”自分の会社が倒産して絶望していた男”に

皮にされて乗っ取られてしまっていたー


男はー

若い女社長が経営する会社に、取引先の取引を奪われた挙句に

自分の会社が倒産したー。


絶望の日々を送る中、

”人を皮にして乗っ取る方法”にたどり着いた彼はー、

美人の身体を奪い、その身体で、起業するー…という

悪魔のような計画を思いついてしまったー


本来の小野坂梨沙は優しい性格でー、

そもそも起業するつもりなんて全くなかったし、

本人はそんなこと、夢にも思っていなかったー。


ローズ・テクノロジーの社長

小野坂 梨沙は、小野坂 梨沙であって、小野坂 梨沙ではないー。


身体は小野坂 梨沙ー

しかし、中身はー、歪んだ感情を持つ男ー。


「ーーーへへへへ」

再び梨沙の皮を完全に身に着けると、

小野坂社長は笑みを浮かべながら立ち上がったー。


薔薇の中には棘があるー。


だがー

ローズ・テクノロジーを支配する小野坂社長の中には、

”棘”どころではない”狂気”が潜んでいたー。


そしてー

そのことに、社員たちは、誰一人として

気付いていなかったー…。


②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


新連載の皮モノデス~!


悪魔のブラック企業に入社してしまった彼の運命は…?


続きはまた次回のお楽しみデス~!

お読み下さりありがとうございました~!

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