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人を花に例えー

それを闇に染めていくことに芸術を見出す危険人物・ガーデナー。


彼に皮にされて、逆らえないまま

”言いなり”にさせられる日々を送った美咲は、

何もかもを失ってしまうー。

兄との絆も、友情も、恋人もー…


そんな、”闇に染まりきった”美咲を見て

ガーデナーは”そろそろ終わりだ”と、心の中で呟くー


闇に染まりきった花に興味はないー

闇に染める過程こそ、美しいー


”狂気の美学”ー

その先に行き着く、結末はー…?


☆前回はこちら↓☆

<皮>闇に染まる花④~闇の底~

美咲は、闇に堕ちていくー。 皮にされて、自我も身体の主導権も残されたまま ”内側”から残酷な命令を続ける謎の男・”ガーデナー”。 その命令に背くことができないまま、 美咲は、次々と悪事に身を染めていくー。 全部、大切な人たちを守るためー。 けれどー… ☆前回はこちら↓☆ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


”ーーー佐久間 美咲

 闇に染まった自分の姿は、どうだー?”


鏡の前に立たされる美咲ー。


美咲の表情からは、明るさも、輝きも失われていたー

目は映ろになりー、

顔立ちは同じなのに、違って見えるー。


”発しているオーラが違う”と、でも言えば良いのだろうかー。


「ーーふふ…うふふふふふふ…」

美咲は、そんな”闇に堕ちた自分”の姿を見て

思わず笑ってしまうー


”将来への希望に満ちていた佐久間 美咲”はー


”自らの手”でー

闇に染まってしまったー


いやー、

”身体の主導権”をガーデナーに与えられているだけで、

それは、自分の意思ではなかったー。


けれどー

”乗っ取られてさせられた”のと、

”命令されて、最終的には自分の意思でさせられた”のでは、

結果は同じであっても、美咲本人の気持ちは全く違うー。


もちろん、どっちも辛く、嫌なことではあるけれどー、

美咲の心には”わたしが自分で、酷いことをたくさんしちゃった”という

罪の意識が、破裂しそうなほど膨張していて、

胸が張り裂けそうな、そんな思いでいっぱいだったー


「ーーーわたし… ふふ… ふふふ…あはははははー」

泣きながら笑いー、その場に座り込む美咲ー。


ここ数日はもう、ずっとこんな調子だー。


最近はーー

完全に”壊れてしまった”


”ーー美しいー

 嗚呼、美しいー”


ガーデナーは満足そうに、闇に染まりきってー

”壊れた”美咲を美咲の中から見つめると


”お疲れ様”

と、優しい言葉を口走ったー。


「ーーーえ…」

美咲が座り込んだままそう呟くと、

”お前は闇に染まったー

 俺は花が闇に染まるまでを楽しむ”ガーデナー”ー

 もう、お前に用はないー”と、静かに呟くー。


”ーーククー。安心しろー

 俺は人を殺す趣味はないし、

 闇に染まりきって枯れたは何も用はないー。


 ちゃんと解放してやるー。

 そのあと、お前がどうなっても、俺の知ったことじゃないー。


ガーデナーはそう呟くと、美咲に対して”明日”解放することを

約束したー


「ーーーもう…どうでもいいよー」

美咲は笑いながら、涙を流し、そう呟くー


”ーククククーーー

 そうかそうかー

 まぁ、俺にとっても、もうお前は”どうでもいい”存在だからなー。

 枯れた植物に庭師(ガーデナー)は興味を示さないー”


ガーデナーは美咲の中からそう言い放つと、

虚ろな目のまま一人、クスクスと笑う美咲の姿を内側から見つめて

笑みを浮かべたー。


これまでも、彼はこれを繰り返してきたー

”花のようなー”そんな人生を送る人間に目をつけては、

その人物を皮にし、その皮を着て、内側から支配ー

”あえて”自我と肉体の主導権を元の身体の持ち主に

与えて、内側から脅迫しー

”あくまでも自分自身の意思で、悪事を行わせてー”

闇に、染めていくー


この過程が、ガーデナーにとっては最高の”美の体現”であり、

最高に”美しい”過程だったー。


美咲から抜けたら、また”次”に進むだけー。


また、美咲のような”輝いている子”を見つけて、

その子を皮にしー、

闇に、染めるー。


解放された後、美咲が誰かに”ガーデナー”のことを言っても無駄だー。


”皮にされて内側から支配されていた”なんて言っても、

誰も信じないだろうしー、

ここ最近の美咲の”おかしな行動”で周囲はすっかり美咲に呆れているー。

そんな美咲が”ガーデナーに乗っ取られていて”なんて言っても、

誰も信じやしないー。


仮に信じた人間がいたとしても、

何の証拠もないし、”ガーデナー”という名前だけでは

彼の元にたどり着くことはできないー


”さて…と、今日は卒業式だー”


ガーデナーは美咲の内側からそう呟くと同時にー

美咲の肉体を完全に支配して、笑みを浮かべたー


「ー最後の1日は、身体が疲れ果てるまで、

 楽しませてもらうからなー」

支配された美咲は、ガーデナーの言葉を口にすると

ニヤッと笑みを浮かべたー


その日ー、

美咲は、夜明け直前まで一人で繰り返しエッチなことを楽しみー

身体が疲れ果てて限界を迎えるまで、

何度も何度も絶頂を迎えたー。


部屋も、身体も乱れ切った状態で、ベッドにぐったりと

寝転んだ状態の美咲は

「ー実に美しかったー…すばらしいー」と、

天井を見つめながら、静かにそう呟いたー。



そしてー

太陽は登り、美咲は”ガーデナー”から

最後の命令を受けていたー


”俺の指定する場所まで移動しろー。

 お前を”脱ぐ”には、人目につかない場所でないと

 俺も困るんでなー”


ガーデナーがそれだけ言うと、

美咲は虚ろな目のままふらふらと立ち上がるー。


心配する母親の言葉が聞こえていないかのように無視して、

美咲は”ガーデナー”に指定された、隣町の山に向かうー。


電車で移動する最中に、

ガーデナーが美咲の身体を支配して、何かを呟きだしたー


昔々ー、

花や動物が大好きな、真面目な少年がいましたー


彼はー

動物を愛し、植物を愛しー

自然を愛していましたー


そんな彼には、小さい頃からよく遊ぶ、幼馴染の少女がいましたー。


彼にとって、彼女は”花”のような存在で、

彼も、彼女もお互いにお互いにことを大切に、

そして、信頼していましたー。


そんな彼と、彼女は、

小学校を卒業し、中学校を卒業しー

いつしか、高校生になりましたー。


そしてー

その少年と、その少女は、

お互いに恋愛関係に発展し、付き合い始めましたー。


けれど、幸せは続かなかったー

彼女は文化祭の最中に声を掛けられた別の高校の男に

声を掛けられことをきっかけに、その男と親しくなりー

行動を共にする時間が増えましたー


ですがー

その男は、地元では有名な”ワル”が集う高校の生徒で、

彼女はその男の影響を受けて、

どんどん、”闇”に染まって行きましたー


見た目もー

振る舞いもー

何もかもが、変わりー、

彼女と親しかった男は、そんな彼女の豹変をー

彼女を闇に染まって行くのを、

なんとか止めようとしたのですー。


でも、止められなかったー

彼女がやがて、その男の影響で、

完全に闇に染まりー、

幼い頃から親しかった彼を

裏切り、踏みにじりー、

その不良と浮気をして、身体の関係を持った挙句ー

彼は、捨てられましたー


その時ー

彼は、何を思ったでしょうかー?


”ガーデナー”はそこまで言うと、

美咲の口で、言葉を続けたー


「ーーー彼は、”美しい”と、そう思ったのですー

 闇に染まった幼馴染が、闇に染まりゆく過程はー

 それは、もう、美しかったー」


そこまで言うと、美咲に身体の主導権を返して、

ガーデナーは微笑むー


”こうしてーーー

 ”ガーデナー”を名乗る男は、美学を追求する男へと

 生まれ変わったのでしたー


 めでたし、めでたしー”


昔話を終えると、ガーデナーが目的地についたことを確認し、

電車を降りるように美咲に指示をするー


虚ろな目で、美咲が電車を降りて、指示された山に向かうー。


そしてー

山に入ったところで、

”ガーデナー”は呟いたー


”ここでいいー…

 佐久間 美咲ー

 楽しかったよー

 お前は実に美しかったー”


ガーデナーの言葉に、

美咲は、ただ、笑うだけー。


ガーデナーは

”完全に闇に堕ちたかー”と、笑みを浮かべながらー

そのまま美咲の”皮”を脱ぎ始めたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーー”ガーデナー…”」


兄・真守がそう呟くー


真守は、必死に”美咲の豹変”の理由を

調べる中、

ついには、美咲と同じように豹変した人間の情報や、

ありとあらゆる情報を調べー


”ガーデナー”と呼ばれる謎の男の存在にたどり着いていたー


「ーー母さん!美咲は!?」

帰宅した真守が叫ぶー。


「ーーさぁ…?数時間前に出かけて行ったけどー?」

母親のその言葉に、真守は「ーー美咲!」と呟きながら

スマホで美咲の位置を何とか特定しようとして、

走りだすー。


そしてー

”美咲の居場所”を真守は特定したー。


以前、美咲から

”わたしの身に、何かあったら、お兄ちゃんに助けに来てもらうの!”

などと、イタズラで位置情報のアプリを入れられたことがあったー。


それを、使ったのだー。


「ーー美咲ー…今、行くからなー」


美咲がおかしくなった理由にたどり着いた真守は、

そう呟きながら、必死に美咲の居場所に走ったー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーー美しかったよー

 佐久間 美咲ー」


美咲を”脱いだ”ガーデナーは、笑みを浮かべながら

脱ぎ捨てられた美咲に、注射器のようなものを使うと、

美咲の身体を”人間”の状態に戻したー


「ーー花が闇に染まって行く瞬間は、実に美しいー」


”ガーデナー”は、

かつて幼馴染だった彼女が、”闇に染まって行く様子”を思い出すー。


”綺麗なものがー闇に染まって行く様子はー

 この世の、何よりも美しいー”


人間に戻って、山の中で座り込んで、泣きじゃくったままの美咲ー。


「ーーーー俺はこれからも”美学”を追求し続けるー

 花のようなやつらを、

 闇に染めて、染めて、染めて、染めて、染めて、染めて、

 染めて染めて染めて染めて染めて染めまくるのだー」


ガーデナーが高らかに笑うー。


本当に”闇”に染まってしまっていたのは、

彼自身なのかもしれないー


信じていた幼馴染の彼女が、

闇に染まって行くのを間近で目撃してー

どうすることもできなかったあの時ー、

ガーデナーの…

彼の心は、壊れてしまったのかもしれないー


「ーーーお前は、自由だー。

 俺は、次の”美”を求めて、これで失礼するよー」


ガーデナーは、”闇に染まりきった花”である美咲に

もう用はない、と言わんばかりにそのまま

振り返って立ち去ろうとするー。


美咲は、背後に座り込んで泣きながら笑ったままー


”枯らした花”が、どうなろうと、

ガーデナーの知ったことではないー


「ーー美しきものが散ればー

 また、新しい美を追求するー

 それが庭師(ガーデナー)だー。」


ガーデナーは笑みを浮かべながら、

そのまま山の出口に向かって歩き出したー


ゴッー


「ーー…?」

ガーデナーが、ふと鈍い衝撃を頭に感じて振り返るー。


「ーーーーー…!」

すぐに、ガーデナーはその表情から笑顔を消したー


ガーデナーの背後に、泣きながら笑っている美咲がー

いつの間にか”血のついた岩”を持って立っていたー


激しい頭の痛みが、ガーデナーを襲うー。


ガーデナーは”何をされたか”すぐに理解したー。


美咲が立ち去ろうとしていたガーデナーの頭を

近くに落ちていた岩で、思いきり殴りつけたのだー


「ーーき…貴様…!」

ガーデナーの余裕は一瞬にして消えてー

泣きながら笑っている美咲のほうを睨みつけるー


「ー美しいー…美しいよガーデナーさん!

 あはっ…あははははははっ!あはははははははっ!」


美咲は、狂ったように笑ってー

泣きながらー岩を、もう一度、さらにもう一度、

ガーデナーの頭に思いきり叩きつけたー


その場に倒れ込むガーデナー。


「ーーーがっ……

 き……き…貴様ーーーー…

 ひ、、、人殺しーーー」


ガーデナーは目に涙を浮かべながらそう呟いたー。


先程までの余裕は、全く無くなっていたー


そんなガーデナーに笑いながら近づいてくる美咲ー

その目はもう、完全にイってしまっているー


「ーーだってーーー

 ガーデナーさんーーーー

 人間じゃなくて、モンスターなんでしょ?」


美咲が冷たい口調で、笑いながら言うー


「ーーーーー!!!!!」

ガーデナーが、泣きそうになりながら

美咲を乗っ取っていた時の会話を思い出すー


「ーーあなたは狂ってるー…

 完全にイカれてるー

 あなたはー…それでも、人間なの!?

 あなたに人の心はないの?」


”ーークククー

 俺は”ガーデナー”ー

 人の心なんて、とっくに捨てたー


 俺はー

 ククー

 闇に染まる花々に芸術を見出した

 モンスターだー”


「ーーー闇に染まる花々に芸術を見出した

 モンスターなんでしょ?」


美咲はそう呟くと、うつ伏せに倒れ込んで、

顔を見上げるようにして美咲を見つめている

ガーデナーの顔面に、思いきり岩を叩きつけたー。


動かなくなったガーデナーを前に

泣きながら笑い続ける美咲ー


山の中で、美咲は狂ったように、何分もー

何十分も笑い続けるー



”あははははははーー

 あははははははははははははっ!”


そんな声が聞こえたー


「ーーー美咲!」


真守が駆け付けた時ー

そこにはーーーー


「ーーーーーー!!」

血まみれになって、既に頭部が破壊された状態の

ガーデナーとー、

返り血を浴びて、狂ったように笑い続ける美咲の姿があったー


「ーーー美咲……」

呆然とする真守ー。


「ーーーふふふふ…はははははははは…

 あはははは、あはははははははははっ!」


これまで集めて来た情報からー

倒れている男が”ガーデナー”であり、

美咲の身に何が起きていたのかも理解した真守はー

笑い狂っている美咲に駆け寄ってー


「ーもっと早く気づいてあげられなくてー

 本当にー、本当にごめんなー」

と、目に涙を浮かべながら笑い続ける美咲を

ぎゅっと抱きしめたー。


血塗られた美咲の手は、もう、

かつてのような光を取り戻すことはないー


一度枯れた花は、もう二度と、その花を咲かせることは

ないのだからー



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


闇に染まる花の最終回でした~!


最近の「女海賊とお姫様」や「キノコ」のお話が、

ある程度希望のあるエンドでしたが、

こちらはダークエンドに…!


でも、お兄ちゃんが真相に気付いてくれたことは

絶望の中のわずかな光になるかもしれませんネ…!


ここまでお読み下さり、ありがとうございました~!!


今日も暑いので、皆様も気を付けて下さいネ~!

私もちゃんと水分補給をしながら頑張ります~!

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