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「ーーーーえっ…」

男は、困惑の声を上げたー。


トラックの運転手として働く彼ー

熊沢 美智雄(くまざわ みちお)は、呆然とした表情で

トラックから降りて、周囲を見渡すー。


「ーーーここは…どこだ?」

戸惑った様子で一面に広がる木々を見つめる美智雄ー。


おかしいー

そう思いながら背後を見つめるが、

今まで走っていたはずのトンネルはなく、

自分が今まで運転していたトラックが

そこには佇んでいるだけだったー。


背後も、木々の生い茂る道ー。


とてもではないが、”このトラックはどこを走ってきたんだ?”と

首をかしげてしまう、そんな状況だったー。


「ーー…何が起きてるんだー」

短気な美智雄はイライラした様子でそう呟くと、

車の運転席まで戻り、助手席の部分に置いてあった

自分のスマホを手にしたー


だが、全く電波が通っておらず

電話もメールもLINEもできなければ、

ネットも繋がらないー。


そんな、最悪の状況だったー


”おかしいー…ここはどこだ?”

美智雄は面倒臭そうに舌打ちをしながら、

トラックの鍵を閉めて、

周囲を確認しようと歩き出すー。


周囲は一面の森ー。

虫の声や、鳥の声ー、

獣のような声まで聞こえるー。


まるで、ジャングルとでも表現した方が良さそうな、

そんな場所に美智雄はいたー。


しかし、美智雄はここを目指していたわけではないー。

彼は、ついさっきまで”高速道路”を走っていたのだー


いつものように、荷物を運ぶため、夜間に高速道路を走行し、

いつものようにトンネルに入り、

そして、ウトウトしながらトンネルから出たー


そのはずだったー。


がー…

トンネルから出た直後ー

目の前に突然木々が現れて

慌てて急ブレーキを踏んだらこのザマだー。


まるで、トンネルが異世界に繋がっていたかのような、

そんな感覚ー。


「くそっ…面倒くせぇな…

 この先のサービスエリアで少し寝ようと思ってたのに」

一人、悪態をつきながら美智雄は、道に迷わないように、

慎重に自分の歩く道に目印をつけながら、

木々の中を進んでいくー。


「ーーーーー…」

だが、辺り一面、どこまで進んでも、

木・木・木ー

とても、高速道路と繋がっている空間とは思えないー


「おいおい…マジでここどこだー?」

若い頃は、荒れた生活を送っていたこともある美智雄は、

ちょっとやそっとのことではビビったりはしないー。


しかしー

流石に今の状況に焦りを感じ始めるー。


「ーーーくそっ…いったん引き返すかー」

美智雄は、一旦トラックを停めた場所まで引き返し、

トラックの中でスマホを手に、連絡を取ろうとしながら

状況を整理するー。


だがー

一向にスマホは繋がらず、美智雄はその日、

トラックの中で眠ることになってしまったー。



翌日もー

その翌日も、周囲の捜索を続けるもー

”ここがどこなのか”すらわからないー。


そして、

この場所にたどり着いてから4日が経過したその日ー、

美智雄は”絶望”したー。


引き返せるように、と、毎日少しずつジャングルのような場所の

探索を続けていた美智雄。

そして、4日目にしてようやく、木々を抜けることのできる場所を

発見し、そこに飛び出したもののー…

木々を抜けた先に広がっていた光景はー


高速道路でも、遠くに見える街でもー

見慣れた景色でもなかったー


一面に広がる大自然ー。

遠くには、”この世のものとは思えない大樹”が

そびえ立っているー。


それを見て、美智雄はすぐに確信したー


”ここは、俺がいた世界じゃない”とー。


それほどまでに、遠くに見える”巨大な大樹”は、

美智雄が元々いた世界では”ありえないほど”の

巨大な大樹だったのだー。


「ーーー……」

美智雄は、その景色に圧倒されると同時に、

自分が、自分の知らない世界に迷い込んでしまった、という

現実をイヤでも受け入れざるを得なかったー


「ーーー……………」

何秒ー、何分、いや、何時間ー

そこにいただろうか。

美智雄はようやく、呆然とした様子で振り返ると、

来た道を引き返し始めたー。


木々の生い茂る道ー。

ここは、いったいどこなのかー。


トラックに積んでいた食料と水分を分けて、

これまで耐えて来たが、食料の方が先に尽きてしまい、

今日はまだ、何も食べていなかったー


「ここは…どこなんだ」

美智雄はそう呟きながらその場に座り込んで、木に寄りかかるー。


どうすれば良いのかもわからずー

悪態をつく余裕もなくなってしまった美智雄ー。


そんな時だったー。


自分の寄りかかった木とは反対側の木に、

虹色に輝く見たこともないような”キノコ”が

生えているのを見つけたのはー。


「ーーーー」

美智雄は、すぐに目を背けるー。


明らかに毒キノコにしか見えない。

食べることのできるキノコではないだろうー。


毒キノコほど、明るい色をしているものは多い、とも聞いた気がするし、

確かに、昔、学校の図書室で見たキノコの本に載っていた

ベニテングタケという名前の毒キノコは

妙に明るい色をしていたのを覚えているー。


「ーーーーーー」

目を閉じる美智雄ー。


だがー

美智雄は空腹には勝てなかったー。


「ーーー」

そのキノコの元に近付くと、

”最悪の場合でも、死にはしないだろ…!”という

適当な考えで、そのキノコを口にしてしまったー。


自暴自棄になっていたのかもしれないー。


そしてー

すぐにその判断は”間違っていた”ことを美智雄は自覚するー。


急に身体に違和感が生じて、

”今までに感じたことのない”内側から何かが

崩壊していくようなー

いや、まるで”内側から何かを混ぜられているような”

そんな、言葉には言い表せぬ恐ろしい感触を覚えたー。


すぐに立っていられなくなり、耳のあたりに

強い違和感を感じるー


耳の違和感が消えたと思ったら、今度は胸部のあたりー。


「ーーぐ…ぅ…うぁああああっ…!」

美智雄は、何が何だか分からず、そう叫びー

なんとか立ち上がろうとするも、立ち上がることができないまま、

視界がぼやけてー


やがて、その場に倒れ込んだー。


・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーう…」


美智雄が、目を覚ますー。


「ーーーーー」

見知らぬ、天井ー。


だが、家ではないー。

まるで、木の中に作られたかのような不思議な場所でー

美智雄は目を覚ましたー


”ーーー俺は、死んだのかー?”

すぐに、虹色の不気味なキノコを食べてすぐに

倒れたことを思い出し、美智雄はため息をつくー。


「ーーどうなったんだー…?」

自分はまだ生きているのか。

それとも、死んでいるのかー。


仮に、死んでいるのだとすればー

こうしてまだ自分に意識があるのは不思議だー。


美智雄は、人間死んだらそれまでと思っていたもののー

実は、そうではなかったのかもしれないー。


「ーってー…なんか、声が変だぞー…?」

低い感じだが、妙に響き渡る声ー。


”毒キノコ食ったからか?”などと思いながら

何度か咳をしてから、もう一度声を発してみるー


「あ… あ… あー…」


だがー

その声は、どう考えても美智雄自身の声ではなく、

いや、そもそも男の声ですらなく、

低めながらも美しい、女の声だったー。


「ーど…どういーー…」

そこまで呟き、美智雄はさらに自分の異変に気付くー。

肌の色が、どう考えてもおかしいー。

全体的に暗い感じになっていて、明らかに普通ではない色ー。

しかも、髪がいつの間にか伸びてー


「ーーーー!」


そんな風に思っていると、美智雄が寝ていた場所に、

誰かが入ってきたー


小さな、少女ー。

だが、その耳は人間とは違い、尖ったような形になっているー


「ーーーだ…誰だー?」

美智雄がそう言うと、少女は嬉しそうに

背後を振り返り、外に出ていくと

「ねぇ!お姉ちゃんが目を覚ましたよー!」と、叫ぶー


「ーーお…お姉ちゃんー…?」

美智雄が困惑しながら、自分の身体を見つめると、

肌は暗い色に染まり、

あるはずのない胸の膨らみが、そこには見えたー


「ーーお目覚めですか?」


困惑していると、家らしき場所の中に

穏やかそうな感じの男が姿を現したー。


「ーーーこ、ここはー…?」

美智雄が困惑しながら尋ねるー


相手は、人間のような姿だが、

人間とは、少し違うー。


「ここは、我々エルフの里ですー。」

男は、そう呟くと、

「あなたが倒れているのを、私の娘、エイラが

 見つけて、我々があなたをここまで運ばせていただきましたー」

と、丁寧に状況を説明したー


「ーーエ…エルフー…?」

美智雄は驚いた様子でそう呟きながら、

すぐに「いや、待ってくれー」と、自分の状況を素直に説明しようとしたー


美智雄は、エルフなどではないし、人間だー。

しかもー、恐らくこの世界は、美智雄がいた世界とは

異なる世界だー。

さっき、あの異様なサイズの大樹を遠目で見た時に確信したー。


エルフを名乗るこの者たちは親切そうだし、

ひとまずー


「ー俺は、人間ー」


そう言いかけたその時だったー


「えぇ。人間に襲われたのでしょうー

 あの者たちは、我々エルフをまるで所要物かのように扱い、

 平気でその命を奪っていくー」


好青年風のエルフの表情が険しくなるー


「ー我々は、人間を許さないー。」


その言葉には、強い憎しみが込められていたー。

美智雄は、困惑するー


「ーねぇねぇ、お姉ちゃん!里を案内するよ!」

男の娘・エイラが言うー。


「こらこら、彼女はまだ目を覚ましたばかりだー

 しばらくは安静にー」


男のその言葉に、美智雄は「いえ、大丈夫ですー」と言うと、

起き上がって、娘のエイラに里を案内してほしいとお願いするー


”ーーーーー”

起き上がって、改めて自分が

”エルフの女”になっていることを確信する美智雄ー


”いったい、どうなってるー”


エイラが嬉しそうに里を案内するー。


まるで、小説やゲームの中に出てきそうな里ー。

そうーRPGのゲームにでもありそうな場所に困惑する美智雄ー。


「ーーーー!」


里を移動する最中ー

美智雄はあるものを見つけたー


それはー

里の端の方で、棒のようなものに人間が吊るされてー

”炎で焼かれているー”姿だったー。


「ーーあれは、捕らえた人間たちですー。

 見せしめに処刑しました」


先程の男が、背後から姿を現して呟くー。


「ーーーみ、見せしめー…?」

美智雄が少し震えながら呟くと、

「えぇ。人間は我らの敵。絶対に許すことはできません」と

青年が強い口調で呟いたー。


「ーあ、お姉ちゃん~!次はこっち!」

エルフの少女・エイラが笑いながら手を振るー


美智雄は青年に頭を下げながら

エイラの方についていきながら考えるー


”このエルフたちは、人間に強い敵意を抱いているー”


美智雄は、それを感じ取ったー。


と、いうことはこの世界にも人間がいる、ということなのだろう。

だとすれば、美智雄が状況を説明するのは楽になるー


しかし、このエルフたちの”人間に対する強い敵意”を知った美智雄は

自分が人間で、この世界に何らかの理由で迷い込み、

しかも、エルフの女になってしまったーなんて言うことは

できなくなってしまったー。


自分が元・人間だなどと言い出せば、

何をされるか分からないー。


エイラと共に色々な場所を見て回るー。

なるほど、穏やかな生活が出来そうな里だ、と、

美智雄は心の中で思うー。


だが、里の中で出会ったエルフたちは、みんな、

人間に対する強い恨みの言葉を口にしていたー。


「ー人間は、我々を”ダークエルフ”と呼び、弾圧していますー。

 我らは、人間を決して許さないー」


青年がそう言うと、

美智雄は、落ち着かない様子で自分の身体を見つめながら

ソワソワした様子を見せるー。


”ダークエルフ”

人間に敵意を持つエルフーだったか…

美智雄はあまりそういうところに詳しくなかったが、

響きから、良くない感じであることはなんとなく理解したー。


「ー人間はみ~んな悪いやつらだからやっつけないと!

 お姉ちゃんを怪我させた人間もちゃんとやっつけるからね!」


エイラが無邪気な笑顔で言うー。


「あーー…あ…う、うんーあ、ありがとうー」

ガクガク震えながら美智雄が困惑していると、

里に他のエルフが慌てた様子でやってきたー


「ー里長!見たこともない機械が、森の中にー!」

そう叫ぶエルフー。


「ー何だって?」

里長ー…美智雄と話していた青年風のエルフがそう言うと、

報告に耳を傾け始めるー


そして、里長が険しい表情で呟くー


「人間の、新兵器かー」

とー。


「ーーーーーー!!!」


美智雄には分かったー


たった今、エルフが見つけた”謎の機械”とやらがー

美智雄が乗ってきたトラックのことであるとー


「ー今すぐ破壊に向かいましょう」

里長がそう呟くと、里のエルフたちは

殺気だった様子で、「人間の好きにはさせない!」と叫んでいるー


「ーーすみません。人間たちの新兵器が見つかったようですー。

 申し訳ありませんが、お話はまたあとでー」


里長はそれだけ言うと、他のエルフたちと共に、美智雄の

トラックのある方角に向かっていくー。


「ーーーー……」

美智雄は、そんな様子を見ながら、

恐怖に震えたー


異世界に迷い込みー

何故か、ダークエルフの女になってしまいー、

人間たちを憎むエルフたちの里に保護されたー


”俺は…どうすればいいー?”


美智雄の苦難は、まだ始まったばかりだったー。



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


後から考えると、

題名にする部分を間違えたような気もしますが、

(もうあまりキノコは食べません笑)

告知したタイトルのまま連載開始しました~☆!


どのようになっていくのかは、今後のお楽しみデス~!

今日もお読み下さりありがとうございました!

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