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「姫様…あと数時間ほどで到着します故、もうしばらくの辛抱ですー」


とある小さな島に存在する国ー。

その王国の女王・マリーに対して、

側近の男・ラウルが心配そうな表情を浮かべながら呟くー


「ーーぅぅぅぅ…もう…ダメ…」

マリーは、今にも吐きそうな表情を浮かべながら、

海のほうを見つめて、ゲホゲホと呟くー。


女王…と言っても、まだマリーは、

住む世界が違っていれば”高校生”ぐらいの年齢ー。

父親である国王が早くに病死したために、若くてして

国を治める女王となり、日々、マリーが小さいころから想像していたような

”優雅な生活”とはまた異なる忙しい日々を送っているー。


「ーーもう次はいきたくない…」

基本的に穏やかで優しい性格のマリー。

しかし、小さいころからマリーの世話役として身近に控えている

ラウルや、一部の側近に対しては、”年相応の少女らしさ”も見せるー。


頬を膨らませながらラウルを見つめるマリー。


「ーー姫様ー。そう仰せられても、

 バルバラ様は、それをお許しになりませんからなー」


側近のラウルが言うー。


マリーは「え~~~…」と、濡れたドレスを触りながら

不貞腐れた表情を浮かべるー。


この世界の”中心地”を支配する”ヴェルラント王国”ー。

バルバラとは、その王国の女王だー。

ヴェルラント王国は、月に1回、

周辺に存在する諸国の王を順番に呼び出し”対談”の場を設けているー。


対談とは名ばかりで、実際には”ヴェルラント王国”が、

周辺諸国を”実質的に支配している”ことを示すための

行事のようなものなのだが、

ヴェルラント王国の力は強大ー。

周辺諸国は、女王バルバラの方針に従っていたー。


今月は、マリーが統治する小さな島国の”順番”で、

マリーがヴェルラント王国から呼び出されて、

はるばる船で海を渡り、先日、女王バルバラとの謁見を

済ませてきたところだったー


バルバラはマリーを妹のように可愛がっていて、

特別、二人の関係は悪くないー。


だがーー

マリーは”船酔い”体質で、今回が3回目となる謁見に不満を

漏らさずにはいられなかったー。


「来月からはまた別の国に順番が回ります故、

 次はまた、寒くなるころですなー」


ラウルの言葉に、マリーは「もー!そういうこと言ってるんじゃなくて!

わたしが船酔いしなくても済むように、バルバラに、わたしじゃなくて

ラウルが行くって言っといて!」と、子供のように叫ぶー。


だが、ラウルは「バルバラ様が納得するはずがないでしょうー」と、

首を横に振ったー。


確かに、マリーにもそれは分かっているー。

しかし、船酔いはしたくないー。


「ーーーはぁ~…」

深々とため息をつくマリー


「ーー姫様!」

背後から、マリーの護衛についている騎士の声が聞こえて、

マリーは途端に「何でしょう?」と、穏やかな口調で

振り返るー


”ラウルや、一部の近しい者だけに見せる年頃の少女のような振る舞い”は、

マリーは他の人間には一切見せないー。


「ーーー分かりました。それでお願いします」

マリーが騎士からの報告に対して、そう答えると、

騎士は頭を下げて立ち去っていくー。


「ーーーはぁ~~~~~…」

騎士が立ち去っていくとすぐに、ため息をついて、

「船酔い無理…ホント無理」と、ラウルに対して

愚痴を呟き始めるー。


ラウルは少しだけ笑いながら、

「ー騎士たちの前にいれば、姫様らしい振る舞いになって、

 酔いも気にならなくなるのではないですかなー?」と、

”マリーの切り替えの早さ”を、少しだけ揶揄うような

言葉を口にしたー。


「も~!みんなの前では必死にそれらしく振る舞ってるだけ」

マリーはそう言うと、海のほうを見つめて目を細めたー。


「ーーーねぇ…ラウルー」

マリーが声のトーンが変わったことにラウルもすぐに気づき、

マリーの見つめている方向を見つめるー。


「ーー”嵐”ですなー」

遠方の雲がどす黒いー。

この先、嵐を越えなければ、王国に帰ることはできないことを

示しているー


「ーーううんー

 そうじゃなくてー」

マリーはそう言うと、遠方に見える”小さな黒い点”を指さしたー。


「ーーー!」

ラウルが表情を歪めるー。


まだ距離はあるがーーー

”巨大な黒い船”が見えたー。


「ーーーあれは…!」

ラウルが表情を歪めるー。


”海原の悪夢”の異名を持つ海賊団”ナイトメア”ー。

その船団がー、マリーたちの乗る船に、近付きつつあったのだー。


「ーまずい!者ども!警戒態勢に入れ!」

ラウルがすぐに叫び、マリーを連れて、船の室内へとマリーを

避難させるー


「だ、大丈夫なのー?」

戸惑うマリーに、ラウルは「問題ございませんー」と、頷くと

「こんな時のために、我々が姫様についているのですから」と、

笑みを浮かべるー。


”ナイトメア”の船が、マリーの乗る王国の船に近付いてくるー。

ちょうど、嵐も重なりー、

マリーが身を隠している船内からでも、激しい争いの音が

聞こえて来たー


「ーーーーーーー…神様ーー…どうかー

 わたしたちをお助け下さいー」

マリーは、隠れながら祈りを捧げるー。


「ーーー!!!!」

マリーが、ふと窓の外を除くとー

漆黒の鎧を身にまとった恐ろしい男の姿が見えたー


雷鳴が轟きー

その男に向かっていった騎士が一瞬にして倒されるー


「ーーひっ…」

マリーは、騎士が無残に吹き飛ばされる姿を見て、

小さく悲鳴を漏らすー。


その直後ー

大嵐に巻き込まれた船がバランスを崩しー

外から”想像以上の嵐だ!”と、女の叫び声が聞こえたー。


誰の叫び声かは、わからないー。


けれどー

その声が、誰の声かを、深く気にする前にー

激しい雨風に、マリーは身体ごと船内で吹き飛ばされてー

そのまま意識を失ったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーー」


「ーーーーおい」


「ーーーおい!おきろ!」


女の声がするー

嵐の船の中で叫んでいた女と、同じ声がー


「ーーーう…」

マリーが目を覚ますと、マリーの周囲には誰もいないー


「ラウル…!

 みんな…!?」


マリーは、暗くなった辺りを見回すー。


聞こえてくるのは、波の音ー。


自分のいる周囲は、砂浜ー


そして、自分の左側には木々の生い茂った場所ー。


どうやらー

ここは”無人島”のようだったー。


「ーーそんな…」

マリーは唖然とするー。

周囲には、誰もいないー。

まさか、ラウルもみんなも、船と一緒にー…?


だがー

ふと、自分の目を覚ました場所には、焚火が炊かれていて、

誰か”人間”がいることをすぐに悟るー。


「ーーラウルー?」

ラウルがいるのかもしれないー。

そう思ったマリーが声を上げるとー

木々が不自然に揺れてー

その中からー

あの、”漆黒の鎧の騎士”が姿を現したー


「ひっ!?!?」

マリーは思わず尻餅をついてしまうー。


「ーーーーー」


この男は、さっき見たー…

船の窓の外に、立っていたあの恐ろしい男ー。

恐らくは、海賊・ナイトメアの首領ー。


「ーーひっ………わ、わたしを殺せばー……

 王国は黙ってませんよー!」


マリーは震えながらそう叫ぶー。


だがー

漆黒の鎧の男は、何の反応も示さず、

マリーに近付いてくると、手に持っていた槍のようなものを

マリーの方に向けたー。


槍をマリーの方に向けて振ってくるー


マリーは悲鳴をあげながら”死”を覚悟したー。

しかしー


槍はマリーを貫かずに、マリーのすぐ横に突き立てられてー

「ーーやっと目が覚めたかー」と、漆黒の鎧の男ー

いやーーー…


「ーーーえ…」

マリーが驚いてその人物のほうを見るとー

鎧を脱いだその人物はー

女だったー。


顔に少し傷があるものの、

マリーから見ても”美人”に見えるー

そんな、女性だったのだー。


「ーーえ……女の人…?」

マリーが言うと、

「ー女が海賊じゃ悪いか?」と、その女は呟いて、

隣に座ったー


「とりあえず、喰えそうなものを取ってきた。食え」

女海賊がそう言うと、マリーは「え……あ、あの…」と、

手渡された木の実を見て、表情を歪めるー


お世辞にも、綺麗な状態ではないー。


そんな様子を察したのか、女海賊は木の実を口にしながら

「なんだ?育ちの良いお姫様はこんなもの食べられないって?」と、

呆れた様子で呟くー


「い…いえ…そういうわけじゃー」

困惑するマリーを見て、ため息をついた女海賊はー

王国の船との戦闘中に、嵐が想像以上に酷くなり、

両方の船は、制御を失ったー。

なんとか、船はバランスを立て直したものの、

女海賊やマリーは、あまりの衝撃に船の外に弾き飛ばされて、

この無人島に流れ着いたのだと言うー。


「ーーー……みんなは無事なのですか…?」

マリーが不安そうに言うと、

女海賊は「分からん。あたしが最後に見たには、

あたしたちの船と、あんたらの船自体はなんとか動いてたー」

と、答えるー


船が無事なら、ラウルや、他の仲間たちが、

探しに来てくれるかもしれないー。

そんな希望を抱くマリー。


「ーーカトリーヌだ。」

女海賊が名前を名乗ると、マリーは

「わ、わたしはマリーです」と、不安そうに呟きながらも、

握手に応じたー。


「ーーー…こんな美人のお姉さんが…海賊の頭だなんて…」

マリーが言うと、カトリーヌは露骨に不満そうな顔をしたー


「ーーあ…ご、ごめんなさいー」

マリーが慌てて謝ると、カトリーヌは

「いや、あんたが悪いんじゃないー。」とだけ呟くと、

「ーあたしは別に女になんて生まれたくなかった」と、呟いて

空を見上げたー


「ー今日はもう遅いー。

 すぐに助けが来るかもわからないし、アンタももう寝な」


カトリーヌはそれだけ言うと、

マリーは不安そうに周囲を見渡してからー

「こ…これを食べてからー」と、ようやく木の実を口にし始めたー


「ーー無理するなよ」

カトリーヌのそんな言葉に、マリーは頷きながらも、

何となくこれを残したら”負けた”気がして、それを全部食べ切ったー


「ーわ、わたしだって、このぐらい食べられますから!」

マリーが言うと、カトリーヌは「ふん」とだけ呟いて

「食べ終わったなら、さっさと寝ろ。こう暗いと、

 島をうろつくこともできないからな」と、付け加えたー。


「ーーーー」

マリーは、不安に思いながらも

”きっと、みんなが助けに来てくれるよねー”

と、そのまま眠りについたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・


・・・・・・・


「ーおきろ!」


「ーーー起きろ!」


翌朝ー


「ーーーー!!!」

マリーが、自分を起こす声に飛び起きるとー

青空が目に入ったー。


一瞬、寝ぼけていたマリーは

「あれ…」と、呟くも、すぐに

昨日、海賊船に襲われた際に、嵐に巻き込まれて

ここに流れ着いたことを思い出したー。


だがー

それと同時に、驚くべき光景が、

自分の目の前に広がっていることに、マリーは気づくー


「ーーえ……わ…わたしが、もう一人ー?」

マリーの目の前に、マリーがいるー。


しかも、そのマリーはマリーの意思とは関係なく動きー

マリーに対して言い放ったー


「ーーー”もう一人”じゃない!

 自分の身体をよく見ろ!」


目の前にいる”もう一人のマリー”が乱暴な口調でそう叫ぶとー

マリーは、自分の身体を見て驚いたー。


「ーーー!?!?!?!?!?!?!?!?

 えっ!?」


顔は見えないがー

下を向くと見えるのはー

”自分の身体”などではなくー

女海賊・カトリーヌのものだったのだー


「ーーえ…こ、これはどういうー…」

よく考えたら”声”も自分の声ではないー。

カトリーヌの声が、自分の口から出ているー。


「ー知るか!あたしに聞くな!

 寝て起きたら、あたしがあんたになってて、

 あんたがあたしになってたんだ!」


マリーになったカトリーヌが叫ぶー。

普段のマリーとは”全く違う雰囲気”を醸し出しながらー


「ーーえっ… えっ… えっ…?

 嘘… わ、わたしがー…海賊に…?」

カトリーヌになったマリーは、自分の手を見つめながら、

”どうしていいか分からない”と、言いたげな様子で

おろおろして見せるー。


「ーーったく、なんだい この動きにくい格好は!」

ドレス姿のマリーの身体に、不満を口にする

マリー(カトリーヌ)ー


「ーっていうかさー。

 なんなのさ、この胸は!」

マリー(カトリーヌ)は、マリーの胸を触りながら

不満そうに呟くー

カトリーヌ自身の胸よりも、大きなマリーの胸は

カトリーヌからすれば”邪魔”でしかなかったー


「ったく、動きにくいったらありゃしないー」


不満を口にするマリー(カトリーヌ)ー。

マリーの”お姫様”な服装にも不満があるようだー。


その横で、狼狽えることしかできない

カトリーヌ(マリー)ー。


そんなカトリーヌ(マリー)の様子を見て

ため息をついたマリー(カトリーヌ)は呟くー。


「ーーと、とにかく、あたしとあんたの身体が

 入れ替わっちまったみたいだからー

 まず、元に戻る方法をー」


だがーー

その時だったー


「ーーお頭~~~~!!!!」


「ーー!」

マリー(カトリーヌ)が表情を歪めるー


島にー

海賊・ナイトメアの船が近づいてくるー


「ーーー…ーーーはぁ」

深々とため息をつくマリー(カトリーヌ)


「ーったく…最悪なタイミングで

 あたしの仲間が迎えに来たよ」

マリー(カトリーヌ)がそう呟くと、

カトリーヌ(マリー)は「え…?」と、不安そうに呟くー。


「ーーーこれはこれはお頭ー

 ご無事で何よりー」

胡散臭そうな髭面の海賊が船から降りて来るとー

カトリーヌ(マリー)の方に向かって、頭を下げたー


「え…わ、わたし…ですか!?」

カトリーヌ(マリー)が驚いて自分を指さすー


「ーー!」

”そ、そっかーわたし…海賊の人の身体になってるからー”

カトリーヌ(マリー)がそう心の中で呟くと、

「ーさぁ、お頭、皆も心配しておりますー

 船にお戻りくださいー」

と、髭面で細身の海賊・ジャンが、丁寧な口調で呟いたー


”ーーえ…えぇぇ…わ、わたしが海賊にーーー!?”

戸惑い、あたふたするカトリーヌ(マリー)


そんな様子を見つめながら、マリーの身体になった

カトリーヌは

”やれやれ…この状況ーどうしたもんかねぇ…”と、

心の中で不安の言葉を口にしたー。



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


ファンタジー世界を舞台とした

姫と女海賊の入れ替わりデス~!

私の作品の中では、珍しい感じの内容だと思います~!☆


いきなり海賊が迎えに来てしまってピンチに…★!

続きはまた次回を楽しみにしていてくださいネ~!

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