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感情表現が苦手な彼女・美冬を前に

”本当に、美冬は自分のことが好きなのだろうか”と

日に日に不安を強めていった晋也ー。


そんな不安から、晋也は”惚虫”と呼ばれる寄生虫を

美冬に寄生させてしまうー。


最初はー”理想通り”になったと思ったー。


けれど、美冬の行動は次第にエスカレートしていき、

ついに晋也は、美冬の暴走を止めようと、美冬に

”惚虫”のことを打ち明ける。


しかしーー


★前回はこちら★↓

<寄生>狂乱彼女②~膨張する愛~

男子大学生の晋也は、大学でも美人と評判の彼女・美冬との 関係に不安を持っていたー ”本当は、美冬は俺のことなんて好きじゃないんじゃないか” そんな、不安だー。 感情表現が苦手な美冬と、 恋愛経験がなかったため、どうしても疑心暗鬼になってしまう晋也ー。 やがて、晋也の不安はさらに膨れ上がっていき、 ついには...

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嬉しそうに顔を赤らめながら晋也に迫って来る美冬ー。


美冬の目はとても正気には思えないー。

美冬が、こんなことをする子ではないことは、晋也もよく知っているー


「ーねぇ…精子ちょうだい…♡」

狂気的な笑みを浮かべながら、美冬が言うー。


「ー晋也の子供、産みたいな♡」


完全に、”惚虫”に支配されているー。


晋也は、慌てて「ストップ!ストップ!」と叫ぶと、

美冬のほうを見つめながら

”惚虫”のことをもう一度早口で説明するー


「だ、だから、今の美冬は、その寄生虫に影響を受けててー

 し、正気じゃないんだー…

 も、元に戻ったら何度でも謝るし、

 俺のことどう思ってもらってもいいからー

 と、とにかく今はー」


「ー好き」

美冬が、晋也の言葉を遮って、そう叫ぶー。


「ーー好き…!大好き… 大好き…!大好き!愛してる!」

美冬が感情的になって叫ぶー。


「ーみ…美冬…だ、だからそれは惚虫の影響でー」

晋也は困惑の表情を浮かべるー。


それでもなお、美冬は続けるー


「ーそんなの関係ないよ!だって今のわたしはー

 晋也のこと、こんなに愛してるんだもん!大好きなんだもん!」


何のためらいもなく、感情的にそう叫ぶと、

「晋也は何も心配しなくていいし、謝らなくていいのー…

 大好きな晋也になら、何をされたって構わないのー」

と、晋也に抱き着いてくるー。


晋也はドキッとしながらも、

同時に”強い恐怖”を感じたー。


このまま、美冬の行動がエスカレートしたらー

最終的にはどうなってしまうのだろうかー。


”歯止めの利かない”美冬の暴走に、晋也は

底知れない恐怖を感じているー。


「ーーみ…美冬!頼むから!頼むから聞いてくれ!」

晋也は、美冬を何とか説得しようと、必死に叫んだー


「ー自分でも、少し前の自分と、今の自分が違うってことー…

 分かるだろ?

 ちゃんと、覚えてるだろー?

 美冬にだって、ご両親がいるんだし、友達もいるんだし、

 こんなんじゃダメだってことぐらい、分かってくれるよなー?


 俺がー…俺のせいで、こんなになってるのは

 本当にごめんって思うけどー、まず…まずは美冬を元に戻さないと

 俺もちゃんと美冬に謝れないしー…


 だから美冬ー…頼むから落ち着いてくれ!」


晋也は、頼み込むようにしてそう叫ぶー。


美冬は少しだけ微笑むと、

「ーー分かってるよー…わたし…自分が変だってことぐらいー」

と、呟くー


”寄生”されてしまった美冬にも、

ちゃんと”今までの記憶”はあるー。

ここ最近、晋也への好きが突然溢れて、自分で自分を

抑えきれない状況になっていることも、

もちろん理解しているー。


けどー

それでもー

人間の脳は、複雑なように見えて、単純だったー。


”惚虫”に寄生された美冬は、

自分で自分を抑えきれずー

晋也への”好き”を溢れさせていたー


”分かっているけど、抗えないー”


いやー


”分かっているけど、今の状態にこの上ない幸せ”を感じているー


惚虫が、人間の脳を支配しー

思考を操っているー。


他の寄生虫に寄生された昆虫かのように、

今の美冬は、美冬であって、美冬ではないー

そんな、歪な存在と成り果てていたー。


「でもねー…それでもわたし、幸せなの!

 晋也に抱かれたいの!

 晋也のことが好きで好きで好きで好きで好きで好きでたまらないの!」


美冬はそう叫びながら、晋也に襲い掛かってくるー。


無理矢理にでも、晋也とエッチなことしようと、

美冬は、はぁはぁ言いながら、晋也の服を脱がせようとするー。


歪んだ笑みを浮かべながら、荒い息をしている美冬は、

もはや”理性を失った獣”のようにしか見えないー。


「美冬!!!美冬!!!!ダメだ…このままじゃダメだ!

 頼むから、落ち着いてくれ!」


「ーいやよ!もうわたし、我慢できないー!

 晋也の全てがほしいの!

 わたしの全てを晋也にささげたいの!」


美冬はー

完全に理性を失っていたー。

晋也への”愛”しか、残っていないー

そんな様子だったー


”こ…こんなはずじゃ、なかったのにー”

晋也は、自分の愚かさを呪ったー


”惚虫”を寄生させれば、

美冬と”絵に描いたような幸せなカップル”になれると思っていたー。


でも、現実は違ったー。

美冬の”好き”の感情は異様なまでに膨れ上がり、

既に狂気を感じさせるレベルに到達しているー。


このままじゃ、美冬自身の人生も壊れてしまうし、

今の美冬は、恐らく周囲の友達や家族ー

自分の生活が壊れようとも、晋也のことしか考えないだろうー。


「ーーー晋也ぁ♡ 晋也♡ えへっえへへへへへっ」


美冬の狂った笑い声が響くー


それにー

晋也はー

晋也は、”こんな美冬”が好きだったんじゃないー。


今になって、初めて気づいたー。

物静かで、クールで、自分のことを本当に好きなのかも

分からないぐらいだったけれどー

そんな、そんな美冬のことが大好きだったのだとー。


今の美冬はー

美冬じゃないー

こんな美冬、見たくなかったー。


自分で惚虫を寄生させておいて、

今度は”こんなの美冬じゃない”と思っているー


”自分勝手すぎる”と、

自分自身でも思いながらも、それでも晋也は

”話を聞いてくれないならー”と、美冬の肩を掴んで、

美冬のほうをまっすぐ見つめたー


今の美冬は”晋也のことが好きで好きでたまらない”状況だー。


だったらーーー

だったらー”こう言えば”落ち着いてくれるかもしれないー


「美冬っ!」

晋也は、声を張り上げてそう叫んだー


美冬が微笑みながら晋也のほうを見つめるー。


そんな美冬に対して、

晋也は、こう言葉を口にしたー。


「ーー美冬…ごめんー…

 今の美冬は、俺、嫌いだー」


晋也はそう言い放つー


「俺は、寄生虫なんかに寄生された美冬じゃなくて

 ”普段の美冬”が好きなんだー。

 だから、今のままだと俺ーもう、美冬とは付き合えないー」


晋也は”あえて”そう言い放ったー。

もちろん、美冬が正気に戻れば、美冬は晋也に

”寄生虫を寄生させられた”という事実に悲しみ、

当然、怒るだろうー。

別れることになるとは思うー。


だがー

晋也は今、”あえて”自ら別れを切り出したー。


こうすることで、”晋也のことが好きでたまらない美冬”が

言うことを聞いてくれると思ったからだー


「ーなんでー…なんで、そんなこと、言うのー?」

美冬が目に涙を浮かべながら晋也のほうを見つめるー


「ーーーだからー…美冬…

 一緒に”惚虫”を取り除く方法を考えようー

 このままじゃ、美冬もダメになっちゃうし、

 俺も、美冬のことが嫌いになっちゃうからー」


晋也は、美冬の反応から、

すかさずそう言葉を口にしたー


これで”うんー”、美冬が応じてくれれば

惚虫を取り除く方向で、二人で行動していくことができるー


惚虫を取り除いた後の美冬に、何を言われるかは

分からないけれど、

まず、この状況をなんとかしなければー


「ーーーー…わかった」

美冬は、そう呟くと、口をきゅっと結んだまま、

立ち上がったー


「ーーよかったー…じゃあ、一緒にー」


晋也がそう言いかけると、美冬は

「ー迷惑かけて、ごめんね」とだけ呟いて

立ち去ろうとするー


「ーえ…い、いや、そうじゃなくて、美冬!

 一緒に、惚虫をどうにかする方法をー!」


咄嗟に晋也は叫ぶー


てっきり、”一緒に惚虫をどうにかしよう”という

方向に美冬が反応してくれると思っていたのだがー

美冬は、晋也の思うような反応をせず、

酷く落ち込んだ様子で、そのまま家から帰る支度を始めたのだー。


その手つきは、とても乱暴で、

”明らかに怒っている”様子だったー。


「ー愛してるのに!愛してるのに!」

美冬はそう言いながら、焦る晋也を無視して、

そのまま家から飛び出してしまったー


「あ、美冬!」

呆然とする晋也ー


”うん、一緒に惚虫をわたしの中から追い出そう!”


なんてーーー

答えが美冬から帰ってくるわけがないー。


美冬に寄生している惚虫には、当然

”生存本能”があるー。

自らの影響下にある美冬が

”惚虫を取り除こうか!”なんて反応をすることは、

惚虫が美冬に寄生している限り”ありえない”のだー。


”く…くそっ…!どうすればいいんだー”

焦りの表情を浮かべながら、晋也はただ、戸惑うことしかできなかったー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


晋也は”早く何とかしないと”と、思いながら

美冬のことばかり考えていたー。


こんなことになってしまうなんて、夢にも思わなかったー。


惚虫が、美冬をあんなに変えてしまうなんてー。


”軽い気持ち”だったー。

寄生された美冬は、普段よりちょっとだけ積極的になって、

普段よりちょっとだけ、”好き”を表現してくれるー


そんな風にしか、考えてなかったー


「ーーー昨日は、迷惑かけてごめん」

晋也は、大学内で美冬の親友・麻紀の姿を見かけると、

深々と頭を下げたー


「あ、土橋くんー…ううん…大丈夫」

麻紀は、少し怪我をした部分を抑えながら、晋也のほうを見つめるー。


「ーー美冬…どうしちゃったんだろうー」

麻紀が悲しそうに呟くー。


晋也は”寄生虫”のことを口にしようかどうか考えたものの、

”今はまだ”、麻紀にはそのことは伝えなかったー


今、美冬の親友の麻紀にそのことを言えば

麻紀は当然怒るだろうー


最悪の場合”美冬を救うための行動”の妨害になってしまう

可能性もあるー


麻紀に寄生虫のことを打ち明けて、死ぬほど恨まれるのは

”美冬を救ったあと”でも遅くはないと思うー。


「ーーー美冬ーあんな風に怒ってるの見たことなかったし、

 急に、怒りだしちゃってー」


麻紀がそこまで言うと、

向かい合って話していた晋也の背後のほうを見て、

何かを気にする素振りを見せたー


「ーーん?」

晋也も背後を振り返るとー

そこには美冬の姿があったー


美冬とは、昨日、美冬が晋也の家を飛び出して以降、

連絡は取れていなかったー

美冬の家に電話しても、スマホに連絡しても

返事は一切なかったー


「ー美冬ー」

晋也は、昨日の美冬の様子を思い出しながら、

横に立っている麻紀のほうを横目で確認するー


ここで美冬と昨日の話の続きをすれば、

麻紀にも”惚虫”のことを知られてしまうー

今は、まだー

麻紀に知られるわけにはー


「ーーー!?」

そんなことを考えていると、

晋也は身体に衝撃を感じたー。


驚いて目を見開くと、

横に立っていた麻紀が悲鳴を上げたー


続けて、少し離れた場所にいた大学生たちも、

悲鳴を上げるー。


「ーーーえ…」

晋也は驚きながら、自分の腹部を見つめるとー

そこには、ナイフが突き刺さっていて、

血が流れだしていたー


「ーーーえ…?」

晋也は訳が分からず、美冬のほうを見つめると、

美冬がもう1本、ナイフを手に、

満面の笑みで呟いたー


「ーーわたしのこと嫌いになっちゃうなんて…嫌だもん…!

 そんなの嫌…!

 晋也は、わたしのものだもん!

 大好き!大好き!大好き!

 殺したいぐらい大好き!!大好き!愛してる!」


美冬は狂ったように笑いながら、

多くの大学生が見ている状況でー

晋也を押し倒し、晋也に何度も何度もナイフを突き立てたー


うめき声をあげながら、仰向けに倒れた晋也は、

自分の身体から噴き出す赤い液体を見つめるー


「ーーーはは… ははははは…」

晋也は、これが現実なのかどうかも分からなくなって、

思わず笑いだしてしまったー


晋也の上に乗った美冬が、手を真っ赤に染めながら

「愛してるよ♡ 晋也♡」と笑うー。


「ーーーー…ぅ………ぁ」

晋也は、その言葉に答えることもできずー

身体から力が抜けていくのを感じながらー


只々ー

後悔したー


”俺のせいでーーー…美冬がこんなーーーー”


晋也が、最後に思ったことは、

ただ一つのことだったー。


”ごめん”ーーーー


惚虫なんかー


寄生

させるんじゃ


なかったー。



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


狂乱彼女の最終回でした~!

書いていて恐怖を感じるバッドエンドに…!


そういえば、私の寄生モノは

ふと思い返すと、

バッドエンドが多いような気がしますネ~!


寄生でハッピー…も、そのうち挑戦してみたいところデス!

(と、言いつつ次回の寄生のバッドエンドかもしれませんケド…!)


お読み下さりありがとうございました~!

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