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「ーーー大好き…! 大好き…♡」

大学内で、カップルが自販機の前のベンチに座り、

キスをしているー


彼氏のほうは少し戸惑い気味だが、

彼女のほうは、周囲の視線などお構いなしで

彼氏に抱き着き、何度もキスをしたり、

彼氏の手を掴んで自分の胸を触らせたりして、

嬉しそうに顔を赤らめているー


「ーーー愛してるって言って♡」

周囲の視線もお構いなしで言う彼女ー。


彼氏は、そんな彼女を見て「す、少し落ち着いてー!」と、呟くー


だが、彼女は「愛してるって言ってくれなくちゃいや!」と、

不満そうに声を上げるー


「ーーーーーーーー」

彼氏は、そんな彼女を見て”恐怖”すら感じ始めていたー。


”寄生虫”ー

とある事情で、つい彼女に寄生させてしまった寄生虫

”惚虫”の効果が、想像以上に強く出すぎていることにー

彼氏は戸惑いの表情を浮かべることしかできなかったー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


時を少し遡りー

まだ、”彼”が彼女に惚虫を寄生させる前のことー。


土橋 晋也(つちはし しんや)には、同じ大学に通う彼女がいたー。


晋也にとっては、”人生で初めての彼女”である、

中森 美冬(なかもり みふゆ)ー。


彼女は、大学内でも”美人”と評判の

女子大生で、今まで全くモテなかった晋也は、

付き合い始めて数か月が経過した今でも

何故、自分のような人間が美冬と付き合うことが

できているのかー…

と、いうことすら理解できていないような状態だったー。


告白は、美冬の方からされたー。


確かに、学園祭の時に一緒に作業するようなことが

多かったし、共通の趣味を持っていて、

それで話が弾んだこともあるー。


だが、別に自分はイケメンでもなければ、

金持ちでもないー。

どこにでもいそうな男子大学生だー


それに、今まで全くモテるようなこともなかったー


それなのにいきなり、美冬のような子から告白されてー…

今でも、現実としての実感が沸かないしー、


「ーーーー(俺って遊ばれてるのかなぁ…)」

とー、

晋也は、そんな不安を毎日のように感じているー。


デートしたりすることもあるのだが、

美冬は、”元々あまり感情を表に出さないタイプ”なので、

正直、晋也と一緒にいて、本当に楽しいと思ってくれているのかも

分からないー。


美冬は、優しいー。

だから、憐みのような感情で、

”デートにも付き合ってくれているだけ”なのではないかー、と。


そんな不安を感じながら過ごしていたある日ー

美冬と一緒に大学から歩いていた晋也は、

ふと言葉を口にしたー


「ーーーあ…あのさー…美冬ー」


女子を”下の名前”で呼ぶのは今でも慣れないー。

でも、こうして好きな子を下の名前で呼べるのは

嬉しいし、慣れないけれど”嫌”ではなかったー。


告白してきたのは美冬のほうだし、

美冬に対して不安を感じてはいるものの、

晋也は、美冬のことが本当に好きだったし、

これからも大切にしていきたいと思っていたー


だがー

だからこそ

”美冬は本当は、俺の彼女でいることが苦痛なんじゃないかー”

と、思って、不安を感じてしまうー。


「ーー俺と一緒にいて、楽しいー?」

晋也が言うと、美冬は表情を歪めるー。


返事はないー。

晋也はそのまま話を続けるー


”俺なんかがさー、美冬の彼氏でいいのかなって思ってー”

”美冬、優しいから本当は我慢してるんだよな、きっと”

”俺のこと、嫌になったら素直に言ってくれていいからー”


そんな、ネガティブな言葉を続けて口にしてしまう晋也ー。


すると、美冬は「はぁ」と、深くため息をついて、

晋也のほうを見たー。


「そういうこと、言わないでー」

美冬の少しきつめの口調に、晋也は「ご、ごめんー」と

慌てて謝るー。


怒鳴り声を上げたり、露骨に態度に出したりしているわけではないが、

珍しく”美冬が怒っている”と、いうのが晋也にも

伝わってきたー。


「ーーーーー……」

気まずい雰囲気になって、晋也は沈黙してしまうー。


美冬は、そんな晋也に気を使ったのか

雑談を振ってくれはしたもの、

晋也は、心ここにあらず、という感じで、

ついにそのまま、いつも美冬と別れる場所まで

やってきてしまったー


「ーーーー…じゃあ…また明日ー」

美冬がそう呟くー。


晋也は「あ、あぁ…また明日ー」と、すぐに返事をするも、

美冬は、いつもよりもそっけない様子でそのまま

立ち去ってしまうー。


「ーーやっぱ…俺…ダメだなー」

すっかり自信を喪失してしまった晋也は

そんな風に呟くー。


美冬のことが好きで好きでたまらないのにー

どうしても、”こんなに可愛い子が自分のことを好きに

なってくれるはずがない”と、ネガティブな感情が

それを邪魔して、空回りしてしまうー。


元々美冬が、あまり感情を表に出さないタイプなことは

分かっているー。

でもーー…それでも、どうしても不安になってしまうー


「ーーー…はぁ~~…このままじゃ、

 振られるのも時間の問題だろ…」


晋也はそんな風に呟きながら、一人寂しく、

自分の家へと向かって歩き出したー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーー」

帰宅した美冬は、深くため息をついたー。


「ーーあ~~~もう…バカバカバカバカバカ!」

美冬は自分の頭をぽかぽかと何度も叩くと

「ーわたしってば、何であんな愛想のない態度しちゃうの…」と、

不満そうに呟くー


「あんなんじゃ、晋也が不安になっちゃうのも当たり前だし…

 あ~もう…!わたしってば、バカ!」と、

鏡に映る自分に向かって頬を膨らませるー。


美冬はーー

恥ずかしがり屋で、奥手で、人見知りでーー…

とにかく、小さいころから”人付き合い”が苦手だったー。


それが原因で小学生時代や中学生時代にはいじめられたこともあるー。


だが、成長するにつれて”偶然”、”美人”と呼ばれるような女性に

成長した美冬はー

いつしか”周囲が勝手に”クールなイメージを抱き、

”人見知り”ではなく、”クールな大人の女性”と勘違いされるようになったー


「別にわたし、クールでもなんでもないのにー

 ただの、人見知りなのにー」


美冬は、いじいじと指を動かすと、何度もため息をついて、

「わたし!晋也の前でちゃんと笑うの!練習!」と、鏡の前で

一人、スマイルを作る練習を繰り返すー


「スマイルー スマイルー スマイルー」


美冬はそう呟きながらも、

どうしても不自然な笑顔になってしまう自分を見て

「あ~ダメ…気持ち悪いよこれじゃあー」と、戸惑うー。


人見知りかつ、クールな美人と勘違いされる自分の顔と容姿ー、

そして、文章も下手ー…という最悪の組み合わせに、

美冬は自分でもため息をつくー。


”せっかく人生最大の緊張をなんとか抑え込んで告白したのにー

 これじゃ、振られちゃうよー”


美冬はそんな風に思いながら、夜まで一人、

スマイルの練習や、甘える練習を続けたー


けれどー

大学生になるまでずっと”そう”だった性格が

そう簡単に直るはずもなかったー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


”ー彼女ともっと仲良くなりたいー”


そんな方法を、ネットで調べていた晋也ー。


「美冬を、何とか喜ばせたいなー」

晋也は、美冬が本当に晋也が大好きで、いつも楽しくデートしているとは

夢にも思わずに、夜中まで必死にそんな方法を

調べていたー


そしてー

見つけてしまったー


”惚虫”、と呼ばれる”寄生虫”をー。


”これを大好きなあの子に寄生させれば、きっと思いは伝わるー”


そんな風に書かれていたー


「ーーなんだこれ…?」

晋也は、疑問に思いながらも内容に目を通すー。


するとそこにはー

”惚虫を寄生させると、相手はあなたのことが好きで好きでたまらなくなる”

と、書かれていたー。


「ーーそんなわけあるかよー」

晋也はそう思いながらも、どうしても”ソレ”が気になってしまうー。


そして、

ついつい利用者の体験談として公開されている記事や、

詳しい説明を読んでしまいー

挙句の果てには”メール”で、惚虫を販売する人物に、その内容を

確認してしまったー


”寄生虫を好きな子に寄生させる”

もちろん、抵抗はあったー。


だが、販売業者とのやり取りの中で

”寄生虫とは言っても、微生物レベルの小さな生物であること”や、

”人間の中には、元々人間に寄生して共生している細胞”が存在することなど、

色々な話を聞かされているうちにー

ついに、”惚虫”を購入してしまったー。


もちろん、”怪しい”ことは分かっているー

もちろん、”彼女に寄生虫を寄生させるなんておかしい”ことは分かっているー


けれどー

”振られてしまうかもしれない”という焦りやー、

今日、美冬を怒らせてしまったことへの焦りがー、

晋也を突き動かしてしまったー。



後日ー

”惚虫”は、本当に届いたー。


肉眼で確認することも、やっとできるかできないかぐらいの

”アメーバ”のような生物で、

それを”液体”に入れることで、液体に溶け込み、

”寄生させたい相手に”飲ませることで、その相手は、

”最初に会話した相手”のことを好きで好きでたまらなくなるのだと言うー。


つまりはー

美冬のジュースにでも混ぜて、それを飲ませー

そのあと晋也がすぐに美冬に話しかければ

美冬は、晋也のことが好きで好きでたまらなくなるのだー。


晋也は、届いた惚虫が入った小さな容器を手に、

大学に向かうとー

昼休みに、美冬と一緒に食堂で食事を食べているタイミングでー

”どさくさに紛れて”美冬のジュースに”惚虫”を入れてしまったー


すぐにジュースに溶け込む”惚虫”ー。

人間の体内に入ると、再び”寄生虫”としての姿を取り戻し、

その人間に寄生、

人間の感情を司る部分を刺激し、”恋愛のお手伝い”をするのだと言うー。


「ーーーーおいしい」

美冬はそんなことも知らずにジュースを飲むと、

少しだけ微笑むー


”わたしってば…ほら、もっと楽しそうにしないと!”

美冬は心の中でそう思いつつも、

”いつものように”愛想のない表情になってしまうー


「ー美冬、あ、あのさー!」

”惚虫入り”のジュースを美冬が飲み終えたことを

確認すると、すかさず美冬に声を掛ける晋也ー。


「ーーーーーなに?」

美冬がいつものように”愛想なく”そう返事をするー


晋也は、そんな美冬を見て

”やっぱ、何も効果ないんだよな…”と、

心の中で思うー


きっと、金だけ無駄に取られるんだー。

俺はバカだー

とー。


結局ー

その日も大学が終わるまで美冬に変化はなく、

そのまま晋也は帰宅してため息をついたー。


だがー

”異変”は起きたー


夜になると、美冬からLINEのメッセージが

頻繁に届くようになり、

晋也は嬉しそうに美冬に返信を送るー


今までは、”返事をしても数時間、あるいは翌日まで反応がない”ことが

多かった美冬だがー

今日はすぐに返事が来るー。


しかも、いつも以上に文章に”喜び”の感情が

込められているー


「ーーう…嘘だろー…?

 ま、まさか、これ…本当に”惚虫”のー?」


晋也はそう思いながらも、美冬すぐに返事を返してくれることを喜び、

晋也まで、美冬とのメッセージのやり取りを続けたー。


やがて、夜中の1時を過ぎたことに気付くと

”明日も大学だから、そろそろ寝よう”と、メッセージを送る晋也ー


するとー

美冬から、突然電話が掛かってきたー。


”晋也ー……”

美冬のこれまで聞いたことのないような声に、

晋也は戸惑いながらも「ど…どうしたの?」と聞き返すー。


”ううんー…寝る前に、どうしても声が聞きたくなっちゃってー”


そんな、嘆願するような声にドキッとした晋也は

ドキドキしながらも、美冬と会話を続けていくー。


結局、30分近く通話をしたあと、

ようやく寝ることになりー、晋也が電話を切ろうとすると

美冬は”大好きー”と、言ってきたー


ドキッ!とする晋也ー。

感情表現が苦手な美冬からは、そんなこと、一度も言われたことがないー。


”すごい…やっぱり惚虫…本当に効果があるんだー”


「ーーお、お、お…俺も…大好きだよー」

晋也がそう返事をすると、美冬は”うれしいー”と、心底嬉しそうな声で

言うと、ようやくお互いに”おやすみ”の言葉を交わして、

長い長い彼女との時間は終わりを迎えたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


「ー晋也♡!おはよ~!」

美冬が、晋也の家の前までやってきたー。


晋也は驚いて「み、美冬!?」と言いながら

まだ大学に行く準備も出来ていない状態で顔を出すと、

美冬は強引に家に入ってきて、

「どうしても会いたくなって…来ちゃった♡」と、

嬉しそうに微笑んだー。


驚く晋也ー。

美冬を家に上げるのは、まだこれが初めてだー。

家の前まで来たことはあるが、

こんな形で家の中にー


美冬は、そんな晋也の部屋を興味深そうに見渡しながら

「素敵~~~」と、手を合わせて微笑んでいるー。


急に明るくなった美冬に強い違和感を感じながらも、

これが”惚虫”の効果なのだと、晋也は改めて実感するー


「ーーーねぇ…大学行く前に、キスしよ?」

美冬がそんなことを急に口にしたー


「き、、き、き、キスー?!」

付き合ってはいるものの、まだそんなことはしたことがないー


美冬は奥手だし、

晋也は自分に自信がないから、自分からそんなことを

言い出すタイプではないー。


「ーーねぇ…早く…」

そんな美冬の強引さに負けて

”初めてのキス”をする晋也ー


”惚虫の影響”は想像以上ー


いやー

”度を越している”ー


そのことをイヤというほど実感することになるのは、

まだ少し先の話だったー



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


久しぶりの”寄生”のお話ですネ~!

彼女に寄生させてしまった”惚虫”によって

次第に変わっていく日常…!


その恐怖をぜひ見届けて下さいネ~!

今日もありがとうございました~!

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