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作品の性質上、地震災害の描写などが存在します。

苦手な方は、ご注意ください!

作中で発生する地震災害、場所、物語は全てフィクションデス!


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「ーー東部地方にある図書館の館長さんと中継が繋がっていますー」


ニュース番組が、

蒼月市東部の図書館の館長との中継を繋ぐー。


「ーーえぇ、とてもじゃありませんが、再開はいつになるか、

 目途が立っていない状況ですー」


図書館の館長が、リポーターからの問いかけに

困り果てた様子で頷くー。



”蒼月市東部の図書館”は、

避難所になどなっていないー。


彩香と俊樹は、そうとも知らずー

今ークラスメイトの美穂から”避難所”として

伝えられたその場所ー、

図書館にちょうど、到着していたー。


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主な登場人物


月森 彩香(つきもり あやか)

高校3年生。修学旅行中に地震に巻き込まれる。俊樹と入れ替わっている。


日向 俊樹(ひゅうが としき) 

彩香を助けた男。彩香と入れ替わっている。とある会社に勤務していた。


的場 聡(まとば さとし) 

高校3年生。彩香の彼氏。彩香たちと再会を果たす。しかし…?


相馬 晴美(そうま はるみ)

高校3年生。生徒会長。誰にでも優しい。彩香の説得で立ち直る。


木下 響子(きのした きょうこ)

高校3年生。彩香の親友。地震発生後は消息不明。


早乙女 美穂(さおとめ みほ)

高校3年生。大人しいタイプの子。赤岩に身体を狙われている。


赤岩 紀夫(あかいわ のりお)

俊樹を追うサングラスにスキンヘッドの危険な風貌の男。


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★あらすじ


彩香と俊樹は、不穏な行動を繰り返す彩香の彼氏・聡と遭遇するも、

聡の真意を知ることもできないまま、再び聡は姿を消してしまう。


そんな中、ようやく美穂に言われた

”蒼月市東部の避難所”にたどり着いた彩香と俊樹の二人ー。


ここに、震災発生当初から行方不明になっていた彩香の親友・響子が

いるのだというー。


怪我をしているという響子の元に案内してもらう二人ー。

しかしー…?


★前回はこちら↓★

<入れ替わり>崩壊都市⑯~不穏な空気~

作品の性質上、地震災害の描写などが存在します。 苦手な方は、ご注意ください! 作中で発生する地震災害、場所、物語は全てフィクションデス! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「現地からのインタビューです」 リポーターが、現地を訪れていた青年に何やら インタビューをしているー 「あ、いえ、自分はさっき、...

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「この部屋に、木下さんがー」

ツインテールの少女・美穂がそう呟くー。


美穂が指を指した先は、図書館内の資料室ー。

そこに、彩香の親友・響子が休んでいるのだと言うー。


彩香(俊樹)は部屋の扉を開くー。


だがー

部屋の中には、人の気配はないー。

資料室にも、たくさんの資料が散乱しているー。


「ーーーー響ーー」

俊樹(彩香)が、”響子!”と叫びながら部屋の中に入ろうとしたが、

彩香(俊樹)が、そんな俊樹(彩香)を手で制したー。


「ーーーねぇ、早乙女さんー」

彩香(俊樹)が、彩香のフリをしながら、横に立っている美穂に

話しかけるー。


「ーーーそういえばさっき、早乙女さんの”お兄ちゃん”がー、

 蒼月第3小学校の避難所にやってきて、早乙女さんのこと、

 探してたよ」

彩香(俊樹)が言うと、

俊樹(彩香)が「えー…?早乙女さんのお兄さんなんて見てないけど?」

と、小声で呟くー。


彩香(俊樹)は「しっ」と、こっそり合図を送ると、

俊樹(彩香)は困惑しながら、口を閉ざすー。


「ーーーえっ!”お兄ちゃん”が!ホントにー!?」

美穂が嬉しそうに笑みを浮かべるー。


「ーーーーーー”お兄ちゃん”?」

彩香(俊樹)が鋭い目つきで、美穂のほうを見つめるー。


「ーーー!」

俊樹(彩香)も表情を歪めるー


美穂はいつも、大好きな兄のことを”お兄”と呼ぶー。


俊樹を兄貴と呼ぶ危険人物・赤岩が、

美穂の身体を狙っているかもしれないー、と

聞かされていた俊樹(彩香)は、美穂のほうを見つめるー


彩香(俊樹)は、美穂の様子を”探る”ために、

あえて”早乙女さんのお兄ちゃんと会った”と、そう言ったのだー。


「ーーーど、どうしたの?二人ともー?

 ほら、木下さん、部屋の奥で待ってるからー」

美穂が引きつった笑みを浮かべながら言うー


「ーーー」

彩香(俊樹)は、資料室のほうを見つめながら

「ーこの部屋に、わたしたちが入ったらー、

 早乙女さんは、何をするつもりなの?」と、

彩香のフリをして言うー。


「ーーえ??え???

 なんのことー???

 わけわかんないんだけどー」

美穂が露骨にイライラした様子を見せながら

目を逸らすー。


「ーーー本当に、資料室の中に、木下さんがいるのー?」

彩香(俊樹)は、なおも美穂を問い詰めるー。


俊樹(彩香)は心配そうに背後から、

彩香(俊樹)と美穂の会話を見つめるー


「ーーいるって言ってんだろ!!!!!」

美穂が鬼のような形相で叫んだー


「ーーーみ、美穂ー…?」

思わず俊樹(彩香)が、俊樹のフリをするのを忘れて

素で叫んでしまうー。


美穂は、そんな俊樹(彩香)の反応を見て、

「ーーーあ…ごめんね…こんな状況だから、わたしも

 ピリピリしてるのー。

 変な疑いを掛けられてー…

 いい気分するわけないでしょ?」

と、美穂はイライラを隠し切れない状況で言うー。


彩香(俊樹)は、そんな美穂のほうを見つめながら、

さらに呟くー。


「ーーー早乙女さん、いつもお兄ちゃんのこと、

 ”お兄”って言ってるよねー?」

彩香(俊樹)は、単刀直入に”疑問”を投げかけたー。


美穂の中身が、本当に美穂なのかー。

それとも、既に彩香と俊樹のようにー

”入れ替わって”いるのかー。


「ーーーーそれが?」

美穂は不愉快そうに、彩香(俊樹)を睨みつけてくるー。


彩香になった俊樹は、普段の美穂のことをそれほどよく知らないが、

初日に避難所を訪れた際に、”彩香のフリ”をして美穂と会話をしているー。


その時とは、まるで雰囲気が違うー。


俊樹の考えすぎなら、いいー。

被災地での過酷な環境下で、疲れてピリピリしているだけなら、いいー。


けどー…

もしもー…


「ーーーその人がいるからー

 人前ではお兄ちゃんの方がいいかなって、思っただけー」

美穂はそう言うと、「ーほら、木下さんが待ってるよ!」と、

苛立った様子で、資料室のほうを指差すー。


先ほどから、”どうしても”

彩香と俊樹を”先に”資料室に入れたくて仕方がないー、という

様子を見せる美穂ー。


「ーーうんー…わかったー。ごめんね」

彩香(俊樹)は、なおも彩香のフリをしながら微笑むと、

「ーあ、早乙女さんー…良かったら先に早乙女さんが

 資料室の中に入ってくれるー?」と、

美穂に先に資料室に入るように促すー。


「ーーなんで?」

美穂がイライラした様子で呟くー。


「ーー…ほら、わたしたち、今ここに来たばっかりだしー

 早乙女さんに案内してもらえれば、心強いなって」

彩香(俊樹)が言うと、美穂は「ーーーーー」と、表情を歪めるー。


「ー別に、資料室、そんな広くないからー…

 ほら、あの壁の向こうにー」

美穂の言葉に、彩香(俊樹)はため息をついてからー

「ーー先に、行ってー」と、

俊樹(彩香)の方を見つめながら言うー。


”美穂”は、本当に”美穂”なのかー。

資料室に彩香と俊樹が二人同時に入った途端、

外から扉を閉めて閉じ込めたりー、

何か罠が仕掛けられていたりー…

そんなことも、あるかもしれないー


「ーーーーーーー」

美穂は、ソワソワした様子で、苛立ちを再び露わにするとー


「ーーあ~~~~~~~~~~~~~」

と、言いながら、ツインテールの髪をいじり始めたー。


「ーーー…早乙女さんー?」

彩香(俊樹)の感じていた”嫌な予感”が最高潮に達しながら、

美穂のほうを見つめるー


そしてー

不安そうに俊樹(彩香)のほうを見つめたー。


ここに来るまでの間ー、俊樹(彩香)は必死に

平常心を保とうとー”努力”していたー。


入れ替わって数日間、共に過ごした彩香(俊樹)には分かるー。


”これまでの数日”と、俊樹になった彩香の様子は

明らかに違ったー。


”何”が違うのかー、と言われれば、

ハッキリと言葉にはできないー。


だがー、

”彩香が、親友の響子が心配で心配で仕方がなくて、

 その響子の居場所がようやく分かって、

 今にもその子に飛びつきたくなるほどにー、

 希望と焦り、色々な感情を抱いているー”

そんな、状態であることは、彩香(俊樹)には分かっていたー。


そんな、彼女の希望を打ち砕いてしまったらー、

地震に巻き込まれて、見ず知らずの人間と入れ替わってー

それでも必死に、前向きに頑張ってきた彼女の心をー

”折って”しまうかもしれないー。


どんなに気丈に振る舞っていてもー

彼女はー

月森 彩香は女子高生なのだからー。


いやー…高校生かどうかなんて関係ないー。


こんな大きな災害に直面して、その上、他人と入れ替わってー

何日も親友と連絡がつかない状態が続いてー


誰だって、怖いし、辛いしー、苦しいに決まっているー


彩香(俊樹)は、そんな風に思いながら、

美穂のほうを見つめたー。


”赤岩が既にこの子と入れ替わっているー”

そんなことが、あってはならないー。


お願いだからー

ただ、この子が、ピリピリしているだけであってほしいー、とー。


「ーーーーバレちまったかぁ…

 なかなかいい女子高生の演技が出来てたと、思うんだけど…なぁ?」

美穂が、突然口調を変えて、笑みを浮かべたー


「ーー!!!」

彩香(俊樹)が、表情を歪めるー。


その口調はー

既に、俊樹と同じ宮尾製薬に所属していた

スキンヘッドにサングラスの危険な男・赤岩紀夫と入れ替わっていることをー

示していたー。


「ーーお…お前……ま…まさかー…?」

彩香(俊樹)が震えながら言うと、

美穂は狂ったように笑い始めたー


「ははは…はははははははははははは!

 兄貴ィ!これで今日から俺も女子高生だ!」


美穂(赤岩)が、不気味な笑みを浮かべながら叫ぶー

ツインテールを揺らしながら、

美穂とは思えないような、危険なオーラを出しながら、

彩香(俊樹)と俊樹(彩香)を見つめるー


「ーーまさか、本当~に…、こんな風に女子高生になれちまうなんてなー…

 へへへへー…

 この身体なら、色仕掛けに美人局に、男を堕とすことだってー

 なんだって、やり放題だー…

 これまで以上に、色々と捗るぜー…

 な、兄貴ー」


美穂(赤岩)の言葉に、彩香(俊樹)は唖然としながらー

「ーー…お…お前と入れ替わったー…その子はどうしたー?」と、

震えながら聞くー。


まさかー

こいつー…

”入れ替わったあとに、この子を殺したんじゃー?”


そんな風に、彩香(俊樹)は思ったのだー。


「ーーーークククー殺してないさー。

 だって、”元・自分の身体”を殺しちまったら

 女子高生になった俺も、どうなるか分かんねぇもんな?」


美穂(赤岩)が言うー。


確かにー、

そこまでは分からないー。

入れ替わった状態で”元々の自分の身体”に何かあった場合ー…

美穂の身体の中にいる赤岩が、”そのまま”美穂の中にいれるとは

限らないー。


何が起こるのか、分からないのだー。


「ーだ・か・らー」

美穂(赤岩)が手を叩きながら笑うー。


「ーお前らをおびき寄せてー

 兄貴ー…お前をその部屋に放り込んでー、

 催涙ガスをぶち込んで眠らせたあとにー

 どっちか一人をぶち殺して、”試そう”と思ったのによー」


美穂の声で、恐ろしい言葉を吐き続ける美穂(赤岩)ー


「ーーー…貴様ー」

彩香(俊樹)が、美穂(赤岩)を睨むー。


美穂と入れ替わった赤岩が、彩香と俊樹をおびき寄せたのはー、

二人を閉じ込めて眠らせた上で片方を殺害し、

”もう片方”がどうなるのかを確認するためだったー。


俊樹(彩香)を始末してもー

彩香(俊樹)が”そのまま”なのであれば、

美穂と入れ替わった赤岩が、元自分の身体ー…

赤岩(美穂)を殺しても”自分はこのまま女子高生として”

生きていくことができるー、と、いうことになるー


逆に、俊樹(彩香)を始末した際にー

彩香(俊樹)の身体も死んでしまったり、

俊樹が消えてしまったり、片方が死んだ瞬間に

入れ替わりが元に戻ってしまったりしたらー、

美穂(赤岩)が、女子高生の身体でずっといるためにはー、

赤岩になった美穂をどこかに幽閉しておく必要があるー


それを、試そうとしたのだー。


「ーーーねぇ…待ってー」

呆然としていた俊樹(彩香)が口を挟んだー


彩香(俊樹)は「彩香ー」と、不安そうに言葉を口にしながら

俊樹(彩香)のほうを見るー


俊樹(彩香)は震えながら

「ねぇ…響子はー?」と、美穂(赤岩)に向かって言い放つー。


彩香と俊樹は、

美穂から”彩香の親友・響子がここに一緒に避難しているー”と、

言われたから、ここに来たのだー。


やっと響子に会えるー

そんな希望を抱いていた俊樹(彩香)にとっては

絶望以外の何物でもなかったー。


「ーー響子ー?

 ククー

 お前が探してるって言ってたから、

 お前たちをおびき寄せるために、その名前を

 出しただけだー」


美穂(赤岩)が笑みを浮かべながら俊樹(彩香)の

ほうを見つめるー


「響子は…どこ…?」

俊樹(彩香)が目から涙をこぼしながら呟くー。


その瞳には、絶望のあまり、暗い影が浮かんでいるー。


「ーークククククー

 そんな奴、ここにはいねぇよ。

 まだ見つかってないってことはー

 そいつ、もう死んでるんじゃねぇのか?」


笑う美穂(赤岩)ー


だがー

次の瞬間ー


「ーー!?」

美穂(赤岩)の制服をガッと、掴んだ俊樹(彩香)が叫ぶー


「響子はどこ!?いるんでしょ!?ねぇ!教えてよ!」

俊樹(彩香)はそう叫ぶと、そのまま勢いよく

美穂(赤岩)を床に叩きつけて、自分もその上から覆いかぶさるようにして、

美穂(赤岩)の胸倉を掴んで何度も何度も揺さぶるー


「響子はどこ!?ねぇってば!!」

俊樹(彩香)が泣き叫ぶようにして美穂(赤岩)を揺さぶるー


「ーーーいねぇんだよ ここにはー」


その言葉に、俊樹(彩香)が、悲鳴に似た叫び声を上げながら

美穂(赤岩)を殴りつけたー


「ー響子がいるって言うから来たのにー

 いるって言うから、ここに来たのにー!!!」


俊樹(彩香)が我を失って美穂(赤岩)を殴りつけようとするのを見て、

彩香(俊樹)は「やめるんだ!」と、その腕を掴んだー


「ーー離して!」

怒りと悲しみに我を失った俊樹(彩香)に向かって、

彩香(俊樹)は「ダメだ!」と叫ぶー。


「ー今、そいつを殴っても、傷つくのは君の友達だ!

 落ち着くんだ!」


彩香(俊樹)が必死に俊樹(彩香)を押さえながら言うと、

俊樹(彩香)は、彩香(俊樹)を泣きながら振り払って、

そのまま図書館の外に走り出してしまうー


「ーおい!彩香!」

彩香の名前を叫んだ彩香(俊樹)ーー


そのまますぐに図書館の外に追いかけていこうとするー。


倒れたままの美穂(赤岩)が、彩香(俊樹)を呼び止めるー


「ーーへへへ…情けねぇなぁ…兄貴ー…

 あんな、乙女みたいに泣く兄貴の姿ー

 見ていて不愉快で仕方がねぇー」


美穂(赤岩)の言葉に、

彩香(俊樹)は、振り返って美穂(赤岩)の胸倉を掴むと、

「ーー人の身体を、お前の欲望のために奪うなんてー…」と、

彩香(俊樹)が、美穂(赤岩)を睨みつけるー


壁際に押し付けられて、彩香(俊樹)に睨みつけられた

美穂(彩香)は笑みを浮かべるー


「ーーふふっ…女の子同士がにらみ合ってるってー…

 ゾクゾクしちゃうね♪」


美穂(赤岩)のふざけた口調に、

彩香(俊樹)は怒りの形相で、睨みつけるとー

「ーーー必ず、その子も、彩香もー

 元の身体に戻して見せるからなー」と、

怒りを込めて言い放ったー。


そしてー

今は、彩香を追わなくてはー、と、

彩香(俊樹)は図書館の外に向かって走り出すー。


図書館内から、美穂(赤岩)が呟くー。


「ーーーー…兄貴だってー、

 女子高生の身体を使っておきながらー…

 自分だけいい人面するんじゃねぇよー」


美穂(赤岩)の言葉に、

彩香(俊樹)は立ち止まると、

振り返って言い放ったー


「ーお前みたいなゲス野郎と一緒にするなー

 俺は、必ずあの子に、この身体を返すー」


その言葉を、鼻で笑った美穂(赤岩)をひとまず放置して、

彩香(俊樹)は、俊樹(彩香)の後を追って

図書館から飛び出したー。


”赤岩が中身の美穂”を放置しておきたくはなかったがー

今、この瞬間、”両方”をこなすことはできないー


彩香(俊樹)は、ショックで図書館から飛び出した

俊樹(彩香)を追い、外を走るのだったー


⑱へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


崩壊都市の第17話でした!

今日もお読み下さり、ありがとうございました!

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