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誠也は狙われていたー

”無期懲役”が確定し、二度と出てくることができないはずの男ー

霧島博己にー。


彼は、逮捕される直前、憑依薬を入手しており、

その力で、自分の身体を抜け出し、次々と他人の身体を乗っ取り、

手段を択ばず、誠也を抹殺しようとしていたー。


自分を、無期懲役に追い込んだ原因である弁護士・誠也の命を狙う博己ー。


”いつ、どこでも、誰にでも憑依できる凶悪犯”から

逃げることはできるのかー。


☆前回はこちら↓☆

<憑依>無期懲役の凶悪犯②~執拗な追跡~

終身刑が確定した凶悪犯・霧島 博己ー。 彼と面会した弁護士の誠也は、その場で 「必ずお前を殺してやるー」と、博己から宣言されてしまうー。 しかし、相手は無期懲役ー。 所詮は、戯言ー。 二度と外に出て来れないであろう霧島博己の言葉など、 誠也は真に受けていなかったし、真剣に考えていなかったー。 だがー、霧...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーはぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」

命からがら、炎上した弁護士事務所から逃げ出した誠也は

荒い息をしながら、外へと飛び出していたー。


”霧島博己は数日前から意識不明の状態ですー

 原因は不明ですが、まるで急に”魂”が抜けたかのように

 意識を失いましてー”


どういうことなんだー?

誠也は表情を歪めるー。


”全く関係のなさそうな人々”が

次々と誠也の命を狙うー。


しかもー…

”命を捨ててまでー”


あの女子高生もそうだし、タクシーの運転手もそうだがー

まるで”自分が死ぬこと”を恐れていないー。


そんな風に見えるー


「ーーーー!」

誠也が振り返ると、突然、ナイフを持ったチャイナドレスの女が

襲い掛かってきたー


「ーーーい、いきなり何をするー!?」

誠也が疲れ果てた表情で叫ぶと、

チャイナドレスの女は笑みを浮かべるー


「ー女暗殺者に狙われるってのもー

 ゾクゾクするだろォ?」

そう言いながら、ナイフを振りかざしてくる女ー。


髪を振り乱しながら

「死ねぇええええええええ!」と叫ぶ女の攻撃を

なんとか避けながら、誠也は叫ぶー


「ーーーどうして俺の命を狙う!?」

とー。


「ーーくっくくくくくく!

 わたしはァ~ただ、お前を殺したいだけなのぉ~♡」

ふざけた口調で叫ぶ女ー。


振り回されるナイフを避けて、

誠也が、女を手で突き飛ばすー。


しかし、女はひるむことなく、笑いながら誠也に襲い掛かってくるー。


「ーーーー」

とは言えー

誠也は思うー。


この女が何者か知らないが、

”普段から身体をよく動かしてー鍛えているような感じではない”ー

体格も華奢だし、何よりも息が上がってきているように思えるー。


「ーー死ねっ!死ねっ!死ねっ!あはっ!あはははははっ!」


まるでー

”ごく普通の女性”が、何かに突き動かされてー

”無理やり”こうさせられているようなー


そんなー


「ーーー霧島博己!」

誠也は、そう叫んだー。


”連続して命を狙われたことー”

”自分に強い恨みを持つ人間”

”霧島博己が数日前から魂が抜けたかのように昏睡状態であること”


そんなことあるはずがないー

そう、思いながらも、誠也は、

”霧島博己が人々に取り憑いているのではないか”と、

そう考えたのだー


「ーーーーーーー」

チャイナドレスの女は、はぁはぁ息をしながら、

「ぴんぽ~~~~~~~~~~ん!!!!」と、

目を見開きながら叫んだー


「ーーよく分かったなァ…そうさ、俺は霧島博己さー」

チャイナドレスの女は両手を広げながら笑みを浮かべるー


「ーこの女も、これまでお前らを襲った奴らもー

 俺が”憑依”して、好き放題操ってるんだー。


 今、お前の目の前にいるチャイナドレス着ちゃって

 ナイフ振り回してる女は、この近くに住む女子大生だー。

 へへー。

 こういう、ごく普通の女だってー、

 お前の命を狙う暗殺者にすることができるー」


女はそう言って笑うと、誠也は「そ…そんな馬鹿なー」と呟くー。


「ーーー」

チャイナドレスの女は、笑みを浮かべながら、

誠也の弁護士事務所の方に向かっていく消防車を見つめるー。


「ーーお前の弁護士事務所に放火したのは、”あの女”だー」


暗くてよく見えなかったが、少し離れた木の側に

木を失ったOL風の女が座ったまま眠っているー。


「ーーー言ったろ?必ずお前を殺すってー」

チャイナドレスの女はペロリと唇を舐めると、

ナイフを手に、再び襲い掛かってきたー。


「ーーーくそっ!そんな…そんな馬鹿な!」

誠也は女の攻撃を避けながら、腕を掴み、ナイフを振り落とすー。


「ーーーチィィィィ」

女が、生足を晒しながら蹴りを繰り出してくるー。


誠也がその足を抑えながら、女を地面に倒すー。

しかし、彼女は正気を取り戻す様子もなく、再び襲い掛かってきてー

誠也と殴る・蹴るの戦いを繰り広げるー。


「ーうらァ!死ねよ!」

女が叫ぶー。


誠也は、「すまん!」と叫びながら、女に反撃するとー、

身体を震わしながら、その場に、チャイナドレスの女子大生は崩れ落ちたー。


”ちぃっー、貧弱な身体だぜー”


倒れ込んだチャイナドレスの女子大生に駆け寄ると、

少し離れた場所で、放火したOLが目を覚ますー。


「ーーくくく…」

OLが不気味な笑みを浮かべるー


誠也はすぐに「霧島博己ー…こんなことしてタダで済むと思うなよー」と

表情を歪めるー。


「ーーー威勢がいいなー…

 でも、無駄だぜー…

 俺には”いくらでも”身体があるんだからよー…へへへへへへへ」

OLは笑いながら呟くー。


「そういやお前ーー

 年下の妻がいるらしいなー…」


その言葉に、誠也は背筋が凍る思いをしながらOLのほうを見つめるー。


「ーーお前の妻に憑依して、お前を殺すってのもーー

 面白そうだー」


OLの言葉が終わる前に、誠也は怒鳴り声をあげていたー。


「貴様ァ!それだけは絶対に許さないぞ!」

とー、大声でー。


「ーーお前が許そうがー

 お前が許さなかろうがー

 俺は誰にだって憑依できるー

 もちろん、お前自身にもなー


 お前に憑依して自殺するのは簡単だー。

 でもなー

 それじゃつまらないー。

 お前をとことん追い詰めてー

 殺してやるぜー」


OLはそこまで言うと、

狂ったように笑いながら、誠也を睨みつけたー。


「ーー”妻とのデスマッチー”

 存分に楽しみなー…

 もしも、正午までに帰って来なかったらー…

 お前の妻はー

 俺に乗っ取られたままー

 ”全裸で外を走り回る”ことになるぜー?クククー」


OLはそれだけ言うと、うめき声をあげてその場に倒れるー


誠也は、すぐに走り出していたー


「一美ー…くそっ!」


こんなことになるなんてー…

そう思いながら、誠也は必死に走ったー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーぁ…」

家事をしていた妻・一美がビクンと震えるー。


そしてー、

ちょうど料理している最中だった一美は、包丁を手に、

「ーちょうどいいもん、持ってんじゃねぇかー」と、

不気味な笑みを浮かべるー。


「ーさて、とー。」

一美に憑依した博己は、”こうすること”を予め計画して

時間指定で送りつけておいたダンボールを見つめるー。


夫である誠也宛ての名前で送りつけておいた荷物ー。

誠也宛てであったためか、一美は受け取ったまま、

そのまま開けていない様子だったー。


ダンボール箱を開ける一美。


そこにはー

”白装束”が入っていたー


「ーークククー

 妻の手でぶっ殺してやるぜー」

完全に支配されてしまった一美は

凶悪な笑みを浮かべながら、夫・誠也の帰りを待つのだったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「一美!!!!!!!!!」

誠也はボロボロになりながらも家に駆けこんだー。


だがー

既に手遅れだったー


妻の一美は、白装束を身に着けて、刃物を手に、

誠也のほうを見つめて笑うー


「ーーねぇ、誠也ー…

 妻のわたしが、楽にしてあげるー」

一美が甘い声を出しながら言うー。


「ーふ…ふざけるな!霧島!今すぐ一美から出ていけ!」

誠也は鬼のような形相で叫ぶー。


けれどー…

そんな話し合いが通じる相手ではないことは、

誠也にも分かっているー


「ーーー」

刃物をペロリと舐めると、一美は

今までに見たことのないような、冷たい表情で、

誠也を見つめたー


「ーーーわたし、あなたを殺したくってゾクゾクしてるのー

 ほら…わたしの身体、興奮して火照ってるー」


一美の言葉に、誠也は「それ以上、一美を汚すな!」と大声で叫ぶー。


どうすればー

どうすれば、この状況を打開できるのだろうかー。


誠也は困惑するー。


一美が笑いながら襲い掛かってくるー。

長い髪と、白装束を振り乱しながら

笑い続ける一美ー


「目を覚ませ!一美!」


「ーはははっ!わたしは正気よ!

 正気で、あなたをぶっ殺したいの!」


笑いながら刃物を振り回す一美。


”一美に命を狙われている”


けれどー


その”一美も人質である状態”ー

仮に誠也が、一美を行動不能にしたところでー、

また別の誰かが憑依されるー。


しかもー

”誰かに助けを求めること”も、難しいー。


”憑依”なんて、誰も信じてくれないだろうしー、

誰にでも憑依できる霧島博己には、いくらでも

”自分が不利な状況になること”を回避する手段があるー。


「く…くそっ!」

誠也がなんとか抵抗を続けながらー

一美を食い止めようとするー


「ーほら!死んでよ!ほら!ほらぁっ♡」

一美が、倒れ込んだ誠也に刃物を振りかざすー


必死に一美の手を抑える誠也ー。


一美は、笑いながら、

狂気じみた表情で、誠也に刃物を突き立てようとしているー。


華奢な手に、限界まで力を込めてー

本気で誠也を殺すつもりだー


「ーー…く…くそっ…」

普段の誠也の力なら、一美の腕の力をなんとか

喰いとめることはできるー。


しかし、度重なる襲撃で、誠也の身体は既に疲れ果てていたー。


次第に、一美に追い詰められていくー。


そして、ついにー…


誠也の腕の力が限界を迎えてー

無防備な状態になってしまうー。


一美はニヤァ、と笑みを浮かべると、

髪を乱しながら、刃物を振り上げてー

「死ねええええええええええええええ!」と叫んだー


誠也は思わず目を閉じたー。


走馬灯ーは、こんな時に見えるのだろうかー。

そんなことを一瞬考えながらー

この”生きている実感”が、あと、何秒ー、

いや、あと1秒もしないうちに消えるのだと、

”死”に対する覚悟を固めたー。


しかしー…

いつまで経っても、誠也の感覚が消えることはなくー、

痛みも、何もー、感じることはなかったー。


目を閉じていた誠也は、少しずつ目を開くー。


”痛みを感じる間もなく、一瞬で死んだのかー?”

そんな風にも思ったー。


だがー

目の前には、握っていた刃物を落とし、

白装束のまま気を失っている妻・一美の姿があったー


「一美…!?一美っ!」

誠也が必死に一美を呼び掛けるとー

やがて、一美は目を覚まして、

訳の分からない状況に、困惑しながら涙を流したー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーーー」

誠也は、”なぜ”自分が助かったのかを、知ったー。


理由は、単純だったー


”霧島博己が死んだ”

それだけだったー。


”憑依薬”を使って、自分の身体を”抜け殻”状態にした時間が長すぎたためー

身体が急激に衰弱し、霧島博己は、死亡したー。

乗っ取った一美の身体で、誠也を殺そうとしたそのタイミングでー

霧島博己の身体が死亡しー、一美に憑依していた霧島博己の霊体は

消滅したのだー。

”肉体が死んだら、消えるー”

霧島博己が使った憑依薬は、そういうものだったのだろうー。


「一美…ごめんな…巻き込んで」

誠也が言うと、病室で一美は「うん…大丈夫」と呟くー。


憑依されていた一美は、意識を取り戻したあと、

精神的なショックも大きかったことからか、しばらく入院することになったー。


誠也は、”自分の振る舞い”を反省していたー。

誠也は”必要以上に強気”な振る舞いを、”裁判で敵対する相手”に

取ることが多く、それ故に、必要以上に恨みを買っていたのかもしれないー。


あくまでも”仕事”としてそうしていたのだが、

結果的に、一美だけではなく。

霧島に憑依された女子高生や、タクシー運転手…色々な人を

巻き込んでしまったー


お見舞いを終えて、病院の外に出た誠也は

深く、ため息をついたー。


「ーーー今回みたいなことが二度と起きないようにー

 俺も、色々考えないとなー」


”仕事”とは言え、必要以上に相手を刺激する行為ー、

今までの自分には、そんな部分もあったかもしれないー。


事件に巻き込まれた”憑依された人々”に心から申し訳ない、と、

心の中で呟くのだったー。



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


犯罪者が”人を乗っ取る”…という点で、

少し前に書いた”俺はここにいる”と同じ感じ(あれは皮モノですケド…)

でしたが、こちらは乗っ取りの使い方が全然違うタイプのお話でした~!


こんな風に命を狙われてしまうと大変ですネ…


お読みくださりありがとうございました~!

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