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きっかけは、何だったのだろうー。

娘が、自殺未遂を引き起こしたー。


その一方を妻から聞いて、会社を早退し

急いで病院に駆け付けた父・陸夫(りくお)は、表情を歪めるー。


「ーーー仁美(ひとみ)はー?」

病院に駆け付けた陸夫が、緊急搬送された娘と共に先に

病院にやってきていた妻・和奈(かずな)の姿を見つけて、

声をかけるー。


「ーー今…手術中だってー…」

泣きながら言う妻・和奈ー。


「ーーー仁美ー…どうしてー」

父・陸夫は手術中のオペ室を見つめながら、

そう呟くことしかできなかったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


数日後ー


仁美は、無事に意識を取り戻し、

しばらくの間、病院に入院することになったー。


昔は、明るかったのにー

中学に入ったころからだろうかー。

仁美はどんどん暗くなっていき、高校に入ったころからは

やがて、不登校になりー、

家族とも口を利かなくなったー。


ほとんど外出することもなく、家で引きこもり状態ー。


そしてー

ついに、先日の”自殺未遂”を仁美は引き起こしたのだったー。


幸いー、

命に別状はなく、後遺症も残らない、との医師の言葉だったが、

両親が喜ぶ中ー、

仁美本人は、全く喜ぶ様子を見せなかったー


「ーわたしなんて、そのまま死ねばよかったのに」

仁美はそれだけ呟くと、不機嫌そうに、窓の外を見つめるー。


お見舞いに来る両親とも、口を全く聞こうとしないー。


「ーー仁美…何か、悩みがあるなら、言ってくれー」

父・陸夫のそんな言葉にも、全く無反応の仁美ー。


もう、3年以上になるだろうかー。

仁美とまともにコミュニケーションを取れなくなったのはー。


小さいころの、明るく、可愛らしい笑顔はもう、そこにはなくー

生気のない目に、ボサボサの髪ー、何もかも”無気力”な、

仁美の姿が、そこにはあったー。


「ーーーーーーーーー…」

両親共に、困惑するー。


「ーーもう、自殺なんてしないでくれー」

父・陸夫がそう呟くー。


「ーーーわたしたち、本当に心配してるんだから…」

母・和奈も泣きながらそう呟くとー


仁美はようやく「ーわかった」と、だけ答えたー。


”娘が何を考えているのか、まるで分からないー”

両親は、すっかり病んでしまった娘に、困惑することしか

できなかったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーはぁ~~~~~」

病院の自動販売機の前でため息をつく男ー。


則本 達平(のりもと たっぺい)ー。

40代の独身男で、

アパート暮らしのフリーターだ。


先週ー。

背後からバイクに追突されてしまい、

骨折と、腰をやられてしまったためにー

現在、入院中だったー。


「ーーはぁ~~~~」

”ついてねぇな”などと思いながら、

ため息を何度も何度もつきながら、

自販機のコーナーにやってきた、可愛らしい少女を見つめるー。


「ーーーー」

高校生ぐらいだろうか。

そういえばー、先日、自殺未遂の女子高生が運ばれてきた光景を

目撃しているー。


この子が、どうかもしれないー。


「ーーケッ…俺が女子高生だったら絶対自殺なんかしねぇのに…」

ボソッと呟く達平ー。


「ーーーーーー」

するとー

その声が聞こえてしまったのか、自動販売機のコーナーで

りんごジュースを購入していた少女と目が合ってしまったー


「ーーーー…あ、いやー」

達平は慌てて目を逸らすー。


だがー…

先日、自殺未遂で病院に運ばれてきた仁美は、

そんな達平のほうをじっと見つめたー。


「ーーーー……な、なんだよ」

達平が言うと、仁美は、静かに呟いたー。


「あの………」

とー。


達平が困惑しながら仁美のほうを見つめているとー

仁美は、静かに口を開いたー


「ーーーーーえ」

仁美からの思わぬ提案に、達平は、唖然として、

持っていた缶コーヒーを思わずズボンの上に落としてしまったー


まるでおねしょしているような状態になってしまった達平は

そんなことも忘れて、仁美にもう一度聞き返したー


「ーー今、なんてー?」

達平の言葉に、仁美は静かに”もう一度”同じ言葉を繰り返したー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


退院の日を迎える仁美ー。


「ーーー仁美ーー」

父・陸夫が、不安そうな表情で迎えに来るとー

仁美は服を着替え終えていてー

陸夫のほうを見て振り返ったー


「ーーお父さん、心配かけてごめんね」

仁美が微笑むー


「ーーえ…あ、あぁ」

陸夫は、”久しぶりに見たような気がする”

仁美の笑顔に一瞬戸惑いながらも

「…ーー思ったより、元気そうで、安心したよ」

と、言葉を口にするー。


「ーーうん!今まで心配かけてごめん!

 わたしね、入院してる間、ずっと考えたんだけど、

 やっぱりお父さんとかお母さんに迷惑かけちゃいけないなぁ~って」


仁美が言うと、

陸夫は「だ、大丈夫かー?」と、戸惑いの表情を浮かべるー


「ー大丈夫ってなにが?」

仁美が言うと、

陸夫は「ーー…い、、いや…ほら…なんていうかー

無理して元気に振る舞ってるんじゃー…?」と、言葉を口にするー


「ーーそんなことないよ~!お父さんとお母さんが

 わたしのこと心配してるのを見て、”これ以上心配かけちゃいけないな”

 って思っただけ!」


仁美が、そう言いながら父・陸夫の肩を何度か優しく叩くー


「そ、、そっかー」


”娘”が元気になったー。

父としては、当然嬉しいことではあるー。


だがー

”急”すぎるー。

つい、5日前、お見舞いに来た時には

”いつも通り”だったのにー


”病んでいたはずの娘が、いきなり元気になったー”


仁美を車に乗せて帰宅する父・陸夫ー

時々、バックミラーで後部座席に乗っている仁美の姿を

心配そうに確認するー。


だが、仁美は自分の手を見つめたり、

髪を見つめたりしてー

とてもご機嫌そうだったー


”娘が元気そうで安心するー”

と、同時にー

”あまりに急に娘が元気になった”ことに

少し不安を感じながらもー、

仁美を乗せた車は、自宅へと到着したー


家で待っていた母・和奈が「仁美!」と、

涙目で出迎えるー。


「ーーお母さん!」

仁美は笑顔で、母・和奈に抱きしめられると、

顔を赤らめながら

「ーわたし…もう、自殺なんてしないから、安心してー」

と、ハッキリと、そう言葉を口にしたー


「仁美ー」

泣きながら和奈が仁美のほうを見つめるー


仁美は、ここ数年、両親の前で絶対に見せなかったような

明るい表情で、和奈に向かって

「ー今まで迷惑かけて、ごめんね」と言い放ったー。


「ーーーーあれ…姉さん…」

家の中にいた仁美の弟・健吾(けんご)が顔を見せるー


「あ、健吾!」

仁美が嬉しそうに微笑むと、健吾は、戸惑ったような顔をして、

「ぶ、無事でよかったよー」とだけ呟くと、

そのまま自分の部屋の方に向かって行ってしまったー。


昔はー

姉・仁美と弟・健吾は仲良しだったのだがー

仁美がふさぎ込むようになってから、

健吾にも冷たくあたるようになり、健吾は今やすっかり

姉・仁美のことが苦手になってしまっていたー。


「ーーーーーふふ」

そんな健吾の後ろ姿を見つめながら、仁美は少しだけ笑うと、

「ーーえ~っと…」と、少し考えるような仕草をしてから、

そのまま自分の部屋へと向かったー。


「ーーー何か…あれだなー」

自分の部屋に向かう仁美の後ろ姿を見て、父・陸夫が呟くー。


急に明るくなった仁美ー。

自殺未遂から退院したとしても、

”また”引きこもり生活に戻るのだろう、と思っていた

父・陸夫や、母・和奈からすれば、

こんな風に、仁美が明るくなることは、予想外の展開だったー。


「ーー急に…どうしたんだろうな…?」

陸夫が言うと、妻の和奈は呟くー


「ーー今回の件で…きっと、仁美も分かってくれたのよー…」

とー。


両親が心配していることや、

自殺未遂を引き起こすという重大さ、

それを入院生活の中で知ることができたんじゃないかしら?、と、

和奈は微笑みながら、そう言葉を口にしたー。


頷く陸夫ー。


だがーーー

”真相”は全くの的外れだー。


「ーーーーーふふふふふ…マジかよー」

仁美は、自分の部屋に入ると同時に、突然、まるで男のような

足取りで歩き出しー、

部屋の中にあった姿見を見つめたー


「ーーマジで…マジでJKになってるじゃん…俺…うへへへへ♡」

ニヤニヤしながら仁美は、自分の頬を触ったり、

うっとりした表情で指を見つめたりー

足を見つめて「ふぉぉぉぉおぉ…♡」と、感動したような声を上げるー。


「ーーーーー」

ゴクリ、と唾を飲みこんで、胸を見つめる仁美ー。


流石に、胸を揉む、という行為は躊躇したのだろうかー。


だが、少しするとすぐに

「ーー俺が、俺のを触るのは、自由だもんな…」と、ニヤニヤしながら

仁美は胸を揉み始めたー。


「ーーへ…へへへへへ…」

髪がボサボサな自分の姿を鏡で見つめながらー

「ーこの娘を、俺好みに改造してやるぜ…♡」

と、はぁはぁ言いながら、仁美は静かに呟いたー。


自殺未遂を引き起こした娘が急に元気になったー。


その、”真相”はーーー

”そもそも、中身が違う”のだー。


今の仁美の身体の中にはー

仁美が入院していた病院と同じ病院に入院していた

40代独身の男ー、達平がいるーーー


仁美と達平はー

病院で”入れ替わった”のだー。


「ーーーへへへへへ…あぁぁぁ…やりてぇことだらけだー。

 これから、忙しくなるぞー

 覚悟しておけよー

 俺の新しいボディ…♡」

仁美(達平)はニヤニヤしながらそう呟くと、

そのまま、自分の頬を何度かつんつんとつついて、笑みを浮かべたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・


娘の仁美が退院してから1週間ー

父・陸夫の頭の中には”困惑”の二文字しかなかったー


退院した仁美は、まるで”別人”のようだー。


髪を明るい色に染めて、

メイクをするようになり、

服装もおしゃれになったー。


性格も嘘のように明るくなり、

不登校の状況が続いていた学校に登校し始めるー。


「ーーーなぁ…仁美、どうしちゃったんだろうな…」

不安を隠すことができない陸夫は、事あるごとに

そんな不安を口にしていたー。


しかしー

母である和奈は”あんなことがあったしー、

仁美も自分なりに色々考えたのよ”と、嬉しそうに笑うー


「ーちゃんと、女の子らしくなってくれたのは

 良かったけどさー」

陸夫は、戸惑いながらそう呟くー。


仁美(達平)は、今日も学校に登校しているー。


学校でもーー

仁美(達平)は、友達をあっという間に作り、

男子からも人気者になっていたー


”クククーホント、この女の言う通りだったぜー”

仁美(達平)は笑うー。


声をかけるだけで、男子が顔を赤らめたりするのも面白いー。


”あなたがどんな風に振る舞っても、

 誰も、気づきもしませんし、

 あなたの好きなようにできると思いますー”


 どうせー…誰もわたしのことなんか、見てないからー…”


入れ替わる直前、仁美はそう言っていたー


”不登校だったから、クラスメイトたちは

 ほとんどわたしのことを知らない”、ともー。


その通りで、

仁美になった達平が明るく振る舞っても

”別人みたいじゃ~ん!”みたいなことは言われたが、

クラスメイト達は特にそれ以上疑問に思っている様子もなく、

”まるで初対面”のように接することができたー


それにー

”可愛いってやっぱ、正義なんだなー”


仁美(達平)は、自分の髪触りながら微笑むー。


”キモイー”

”何ニヤニヤしてんだよ”

”無理すんなよ!ってか話しかけてくんな”

”明るいキモオタとか、一番迷惑だよな”


散々な人生ー。


達平は歯ぎしりをしながらー

”クラスからも”疎外され続けてきたー


”容姿に恵まれない男”

達平は、そんなハードモードな人生を生きてきた、と

自分では考えているー


達平は、明るい性格で、コミュニケーション能力もあったー


だが、

容姿だけで、達平は”キモイ”と拒まれてー、

孤立していたのだー。


それがーー

今は、違うー。


不登校をやめて、数日で、クラスのアイドルのような

扱いを受けているー


「ーーたまんねぇぜー」

女子トイレで、仁美とは思えないような笑みを浮かべた

仁美(達平)は静かに廊下を歩き始めたー


病んでいた少女の、突然の豹変ー


そしてーー

男と入れ替わった少女の”闇”ー


その行き着く先に待ち受けるものを、二人はまだ知らないー…



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


病んだ少女との入れ替わり、第1話でした~!☆

急に明るくなったら、びっくりしちゃいますネ~!


達平になった仁美は、あえて第1話では出てきていませんが、

このあとちゃんと出てきます~☆

仁美になった達平は、さらに豹変…☆


続きはまた次回のお楽しみデス~!

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