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”早く萌々美を見つけないとー”


妹の萌々美が消息を絶ってから、時間ばかりが過ぎていくー。

実家の両親たちも、萌々美を探してくれてはいるものの、

喜多雄も、両親も、萌々美にたどり着くことはできないままだったー。


当たり前だー。


だって、萌々美は”人間コレクター”を自称する

隣人に”皮”にされて”コレクション”されているのだからー。


喜多雄は、”隣人の女性たち”の正体に気付けぬままー

時間ばかりを消費していたー。


★前回はこちら↓★

<皮>人間コレクター③~コレクション~

妹の萌々美が行方不明になってしまったー。 兄の喜多雄は必死に萌々美の行方を捜すも、 発見できないまま、時は流れていくー。 しかしー 喜多雄は気づいていないー。 萌々美の捜索にも力を貸してくれている隣人・汐織の家にー 萌々美は”コレクション”されていることにー いやー 本当の隣人は”汐織”などではなく、 人間を...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


喜多雄は、部屋の中で困惑していたー。


数日前ー。

”空室”だったはずの隣の部屋から

”妹の萌々美”のような声が聞こえてきたー。


しかもー

喘ぐような声だったー。

萌々美が隣の部屋にいるはずなんてないし、

萌々美が、夜中にアパートの空室に忍び込み、

隣人にまで聞こえるような大きさの声で喘ぐなんて、あるはずがないー


”きっと、何かの勘違いだったんだー”


そう思いながら、喜多雄は妹の萌々美の行方を捜し続けるー。


”あとは、警察に任せましょう”

母親との電話で、母親からそう言われて、喜多雄は表情を歪めるー。


「ーーいやいやいや、そういうわけにはいかないだろ!?

 萌々美は今もどこかで助けを求めてるかもしれないんだしー」


しかしー


”これ以上、この件に関わるのは、やめなさいー”

母が呟くー。


「ーど、どういうことだよ…?母さんー

 まさか、萌々美の行方を知ってるのかー?」


喜多雄が言うー。


だが、母はその言葉には答えてくれなかったー。


”それが、あなたのためでもあるのよー”


「ど、どう言う意味だよ!?母さん!」

そう叫ぶと同時に、電話は切れてしまったー。


萌々美が行方不明になってから、

両親とも、都合が合わず、まだ会うことができていないー


やはり、一度、両親と直接会って、今後のことを

話し合う必要がありそうだー。


♪~~~~


「ーーーわたし、今日で引っ越すことになりましたー」


「ーーへ?」


インターホンが鳴らされて、

先日引っ越ししてきたばかりの隣人女性・鈴に

そう言われた喜多雄は、思わず変な声を出したー


前の隣人・汐織もそうだったが、

あまりにも急な引っ越しに、喜多雄は表情を歪めるー。


「あ、、あの、失礼ですがー

 どうしてー?」


喜多雄が言うと、鈴は笑顔で答えたー。


「”次”の入居者が決まりましたのでー」

とー。


「ー”次”ー?」

喜多雄は、困惑するー。


この”鈴”という女性は、先日引っ越してきたばかりだー。

それなのに、

”次の入居者が決まった”とは、どういうことなのかー


「ーーそれでは、わたし、もう行きますのでー」

鈴はそう言うと、頭を下げて立ち去っていくー


「え!?ちょっ!?」

喜多雄は叫ぶー。


何が起きているー?

意味が分からないー。


喜多雄の隣の部屋に住む人間は、

”毎回、若い女性”ばかりで

しかも、”なんとなく雰囲気が似ている女性”が多いー


まるで、”特定の人物の好み”に合わせているかのようにー。


鈴も、汐織も、菜穂も、その前に住んでいた女性もー

”まるで同一人物”のように思えてしまうー。


喜多雄は、しばらく部屋で戸惑っていたもののー

少しすると、静かに立ち上がったー。


「ーー確認してみようー」


妹・萌々美の声が隣人の部屋からした気がすることもありー

喜多雄は、”隣の部屋”に違和感を感じていたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーークククー」

隣人”鈴”が皮を脱ぐー。

いやー、

鈴ではないー。

鈴の中に潜んでいた紳士風の男が、鈴の皮を脱いだのだー


「ーーーこの”集めたものを眺めている瞬間”は、

 何よりも幸せだー」


紳士風の男は、そう呟きながら、

”皮にした人間たち”を満足そうに見つめるー


喜多雄の妹である萌々美ー

歴代の隣人である菜穂や汐織、鈴ー。

他にも、あらゆる人間の”皮”が彼の部屋には

設置されているー。


「ククククククーー」

紳士風の男は、そう呟きながら”コレクションのうちの一つ”を

手にしたー。


人間コレクションはやめられないー。

”色々な人間の立場”を体験することでー

自分が、何十回も、いいや、何百回も人生を楽しんでいるような気持ちになれるー


「ーー君のことは、気に入っていたがー

 そろそろ、終わりだー」


紳士風の男はそう呟くー。


隣人・喜多雄は、

いちいち”女性の皮”を着た紳士風の男に対して、

デレデレするような態度を見せていたしー

揶揄うのはとても面白かったー。


だが、妹・萌々美の件で、彼は執拗に萌々美のことを調べているー。


そろそろ鬱陶しくなってきたー。


それにー


”君の驚くカオが、実に楽しみだよー”


そう呟くと、紳士風の男は、手にした皮を身に着けー

静かに部屋の外へと向かったー


・・・・・・・・・・・・・・・・


「突然すみませんー」

喜多雄が、アパートの隣にある大家さんの家を訪ねるー。


「あら?どうしたの?」

アパートの所有者であるおばさんが出てくるー。


喜多雄は”隣人”のことについて、確認したー。


この前引っ越してきたばかりの鈴がどうして引っ越しをするのかー

”新しい入居者が決まったから出ていく”とはどういうことなのかー。


普通、先に住んでいる人がいれば、入居者を募集するようなことはないはずー。


「ーーーそれは~企業秘密よ」

大家さんは笑いながらそう答えたー。


「ーあ、そうそう、”次の人”は、もう決まってるからー。

 明日入居予定だから、仲良くしてあげてね」


大家のおばさんの言葉に、喜多雄はさらに深く聞こうとしたがー

大家さんが「細かいことは気にしないの」と、

まるで”これ以上聞くな”と言わんばかりの態度だったためにー

それ以上は諦めたー。


「ーどうなってるんだ…いったいー…?

 萌々美は、どこにいるんだー?」


喜多雄は、そんな不安を感じながら、自分の部屋へと戻っていくー


「ーーーーーーーー」

大家のおばさんは、家の中から、カーテンを少しだけ

開けて、喜多雄が立ち去っていくのを見つめるー。


「ーまさか私も”隣人”と同じなんてー

 思わないだろうなー」


大家さんの後頭部がピキッと割れて、

中から紳士風の男が出てくるー。


”気に入った女の皮で入居、飽きたら退去を繰り返す”ことができるのは

紳士風の男が、大家さんを皮にして、”アパートの権利ごと”

乗っ取っているからだー。


「ーーークククー

 明日、君がどんな顔をするのかー

 楽しみだよー」


大家の皮を脱ぎ捨てた紳士風の男は、静かにそう笑みを浮かべたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


「ーーー」

喜多雄が大学から帰宅すると、

隣の部屋の明かりが既についていたー。


”また、新しい人が引っ越してきたのかー”

そんな風に思う喜多雄ー。


そしてー

”どうせ、また、若い女の人なんだろうなー”

と、そんな風に思いながらー

自分の部屋に入ろうとすると、

ちょうどー

隣の部屋の扉が開いたー。


「ーーー!!!!!!!!!」

隣の部屋から出てきた人物を見てー

喜多雄は目を見開いたー。


隣の部屋から出てきたのはー

妹の萌々美だったのだー


「も…萌々美ー…?」

驚く喜多雄ー。


萌々美はにこっと、微笑みながら呟くー。


「今日から、隣に引っ越すことになったーー

 萌々美ちゃんで~す!」

と、馬鹿にした様子でー。


「も、、萌々美!?なんでここに!?

 今までどこに行ってたんだよ!?

 俺も、母さんも、父さんも、心配してたんだぞ!?」


喜多雄がそう叫ぶと、

萌々美は笑いながらー

「わたしはずっと、”お前”の側にいたよー」

と、笑みを浮かべるー。


「お、、お前…!?

 も、萌々美ーいったい…何があったんだー!?」


不安そうに呟く喜多雄ー


萌々美は「クスッ」と笑うと、そのまま部屋の扉を

乱暴に閉めて、部屋の中に入って行ってしまうー。


「おい!!!萌々美ー!」

喜多雄は、慌てて部屋の中へと駆け込むー。


しかしー

そこに、萌々美の姿はなかったー。


「ーーーえ…萌々美!?」

喜多雄がそう叫ぶと、背後から気配がして、

喜多雄は慌てて振り返ったー。


そこにいたのはーー


「う、、う、、内田…さん?」

喜多雄は戸惑うー。


そこにいたのは、”前の隣人”ー

鈴・汐織の前の隣人であった菜穂だったー。


「ーお久しぶりですー」

菜穂がにこっと笑うー。


「ーひ、引っ越した…はずじゃー?」

喜多雄が言うと、菜穂は「ーーそうですねぇ」と、ニヤニヤしながら呟くー。


「ーーわたしは、菜穂でもありー、

 汐織でもありー鈴でもありーーー

 萌々美でもあるー」


菜穂は、そう呟きながら、喜多雄のほうを見て笑うー。


「い…意味が分からないー…

 い、いったいーーどういうー?」


喜多雄がそこまで言うと、菜穂は

「ー君にも見せてあげようー」と、両手を広げながら宣言するー。


「ーーーーーえ…」

喜多雄は、菜穂の雰囲気が、前に”隣人”だったころとは

全然違うことに気付きながらも、菜穂の様子をじっと見つめるー


そしてー

菜穂は、クローゼットの扉をひと思いに開けてみせたー


「ーーーーー!!!」

喜多雄は一瞬”洋服?”と思ったー


けれど、菜穂が開けたクローゼットの中に入っていたのはー

見覚えのある人たちの”皮”になった姿ー


「ーーーよく見てごらんー」

菜穂はそう言うと、”皮”の一つを手にして見せたー。


「ーーー!た、、高野…さん?」

喜多雄は震えるー。


菜穂が見せつけてきたのは、

菜穂のあとに引っ越してきた隣人女性・高野汐織の”皮”だったのだー。


「ーな、なんだ…これ…」

喜多雄が戸惑いながら呟いているとー

「ー私はね、人間を”コレクション”しているんだー」

と、菜穂が笑みを浮かべるー


「人間を…コレクション…?」

喜多雄が戸惑いながら呟くと、菜穂は邪悪な笑みを浮かべるー


「ーーど、どういうこと…なんだ…?

 こ、これはいったいー?」

菜穂が床に放り投げた”汐織の皮”を手にして、

喜多雄は戸惑うー。


「ー他人そっくりの着ぐるみを作っているーーーってことかー?」

喜多雄がそう言うと、菜穂は「ぶ~~~~~~~!」と、

笑いながら叫んだー。


「ーー他人そっくりじゃなくて、”そのもの”なんだけどねぇ」

菜穂が笑いながら言うとー

次の瞬間ー

菜穂の後頭部がぱっくりと割れてー

その中からー、紳士のような外見の男が現れたー


「ひっー!?」

思わず後ずさる喜多雄ー


「ー実在の人間を”皮”にして、コレクションしているんだー

 私はね。」


紳士風の男はそう言うとー


「君とは長い付き合いだがー

 あえて”はじめまして”と言ったほうが、いいのかなー?」

紳士風の男は笑みを浮かべるー


「ま、、まさかー

 内田さんも、高野さんもー他の隣人も、全部ー」


「ーそう。私だ。

 ”メインの皮”に飽きたら、一度引っ越した扱いにして、

 また名義を変えて入居していたにすぎないー」


紳士風の男が、そこまで言うと、

クローゼットのほうを指差したー。


「じっくり見てみたまえー。

 君の望む”答え”がそこにあるー」


紳士風の男の言葉と同時にー

喜多雄は、クローゼットに飛びついたー


”嫌な予感”がするー。


そして、その”予感”は的中してしまっていたー。


「ーーも、、、萌々美…?」

喜多雄が唖然とするー。


クローゼットの中には、行方不明だった萌々美の皮も

放り込まれていたのだー


「ーー君の部屋に向かう途中の妹さんも、

 ”コレクション”に加えさせてもらったよー」


紳士風の男は言うー。


喜多雄は、泣き叫びながら、さらにクローゼットを見つめるとー

そこにはー


「ーーーー!!!!」


”大家さん”や

”喜多雄の両親”の皮もあったー。


ーーーーー!!!!!!!


萌々美が行方不明になって以降ー

両親が、萌々美の捜索にどこか乗り気でなかったりー

喜多雄と直接会おうとしなかったのはー


”両親も皮にされていた”からだったー。


紳士風の男が、萌々美を皮にした直後に、

萌々美の姿で実家に戻り、両親も皮にしたのだー


そしてー

両親の皮を着て、定期的に喜多雄と電話していたー。


「ーーー貴様ぁ!」

喜多雄はそう叫んで振り返ったー


だがー

直後、首筋に痛みを感じたー


「君も、私のコレクションに加えてあげようー」


注射器を手に、それを喜多雄に刺した紳士風の男ー


喜多雄は、自分の身体から力が抜けていくのを感じながらー

そのままその場に崩れ落ちたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーー兄妹の感動の再会だー」


紳士風の男が笑うー。


洗濯物のように”干された”

喜多雄の皮と萌々美の皮を見つめながら

紳士風の男は笑うー


本人たちの意識が残っているのかは、知らないー


だがー


「喜びたまえー

 感動の再会だー」


男はそう呟くと、静かに笑みを浮かべたー



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


「人間コレクター」の最終回でした~!☆

部屋に踏み込む前に気付くことができていれば、

運命も変わっていたのかもしれません…★!


今日もお読みくださりありがとうございました~!

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