Home Artists Posts Import Register

Content

作品の性質上、地震災害の描写などが存在します。

苦手な方は、ご注意ください!

作中で発生する地震災害、場所、物語は全てフィクションデス!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ついさっきまで、こんなことになるなんて、夢にも思ってなかったー。


「ーー走りにくいな…この身体ー!」


「ーーそ、そんなこと言われても!」


男女が、崩れた裏路地を必死に走っているー。


「ーーくそっ!髪が…邪魔だな…!どうにかならないのかこれ!?」


「ーー今、結ぶわけにもいかないからどうにもならないよ!」


男女が、必死に何か会話をしているー。


「ーというか、なんでこう、、スカートってこんなふわふわしてるんだよ!?」

男の手を引っ張りながら走る女子高生が乱暴な口調で叫ぶー


「スカートはスカートなんだから、仕方ないでしょ!」

女子高生に手を引っ張られている男が叫ぶー


まるでー

”中身”が逆転しているかのようにー

険しい表情の女子高生と、目に涙を浮かべた男が走っているー


「ーー小娘がー。

 いったい、何のつもりだァ…?」


瓦礫が積まれている裏路地で、

二人を追いかけていた粗暴な雰囲気の男が呟くー。

スキンヘッドにサングラス、という明らかに危険な風貌に、

目つきは鋭いー


「ーーね、、ねぇ、何なの!?あのヤバそうなやつー!」

男が叫ぶー。

完全に、女子っぽい口調でー。


「ーお、俺に聞くなよ!」

可愛らしい女子高生が鋭い目つきで、不釣り合いな雰囲気を見せるー。

一人称も”俺”でー、

見た目は完全に女子なのに、中身は完全に男ー。

そんな感じの少女だー。


その時だったー。

大地が音を立てて揺れ始めるー。


女子高生が「危ない!」と叫びながら、慌てて

男の手を引っ張るー。


近くの電柱が倒れて、火花を散らしー、

危険そうな男の目の前に倒れるー


「ーーーっ…オラァァァアアアア…!

 逃げられると思うんじゃねぇぞ!

 小娘がァァアあぁああア!!!」


怒り狂う男の声を他所にー

まるで男のような言葉遣いの女子高生とー

まるで少女のように目を潤ませている30代ぐらいの顔の整った男がー

その場から離れていくー。


二人はーーーー

”入れ替わって”いたー。


少女の中に、男がー

男の中に、少女がいたー。


周囲の街は、”崩壊”しているー。

何かが、あったかのようにー。


数時間前までー

こんなことになるなんて、夢にも思っていなかったー。


蒼月(そうげつ)市を襲った地震災害ー。

彼女と、彼の運命はー

それをきっかけに大きく変わったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


主な登場人物


月森 彩香(つきもり あやか)

高校3年生。修学旅行中に地震に巻き込まれる。


日向 俊樹(ひゅうが としき) 

彩香を助けた謎の男。


的場 聡(まとば さとし) 

高校3年生。彩香の彼氏。


相馬 晴美(そうま はるみ)

高校3年生。生徒会長。誰にでも優しい。


木下 響子(きのした きょうこ)

高校3年生。彩香の親友。


早乙女 美穂(さおとめ みほ)

高校3年生。大人しいタイプの子。


黒井 健太郎(くろい けんたろう) 

高校教師。影で女子を盗撮しているという噂も。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


数時間前ー。


観光地としても有名な、蒼月市に向かう観光バスー

その車内では、修学旅行を迎えた高校生たちが

賑わっていたー


「ーーねぇねぇ、彩香(あやか)ー」

ニヤニヤしながら笑うボブカットの可愛らしい少女、

木下 響子(きのした きょうこ)が、呟くー


「ーーせっかくの旅行なんだし、彼氏と、ほら、

 アレしちゃいなよー」

笑いながら言う響子の言葉に、

ペットボトルのジュースを飲んでいた女子高生・

月森 彩香(つきもり あやか)は、思わず

ジュースを吹き出しそうになったー


「ちょ!?ちょっと!?いきなり何を言いだすのー?」

彩香の言葉に、

「ーーウチにはお見通しやで?

 まだシテないんでしょ~?的場(まとば)くんと!」

と、彩香の親友・響子が笑ったー


”的場 聡(まとば さとし)ー”

彩香の彼氏で、クラスでトップクラスの成績を持つ優しい男子生徒だー。


「ーーも~!響子ってば、頭の中、エッチなことでいっぱいなんじゃないの?」

彩香が苦笑いしながら言うー。


響子は「ごめんごめん~!冗談に決まってるやんか~」と、

言いながら微笑むー。


彩香と響子は、小さいころからの幼馴染で、

今でも大の仲良しだー。

修学旅行の行動班が、彩香と一緒になったときも

”彩香と一緒の班で本当によかった”などと、とても嬉しそうにしていたー。


もちろん、彩香も気持ちは同じー。


「ーーー」

C組の担任の黒井先生が、「ほら~!少し静かにしろ~!ほどほどにな~!」と

言いながら、女子のほうをチラッ、ちらっと見ているー


黒井先生は、とてもフレンドリーな先生なのだが、

”先生になったのは、合法的に女子高生を見られるから”だと語っていたという

”都市伝説”が存在するー。


ネタでクラスのお調子者女子・長瀬 裕梨(ながせ ゆうり)が、

黒井先生に聞いたところ「そんなわけあるか!」と、笑い話になったがー

実際、どうなのかは分からないー。


雑談をしながら、バスがようやく目的地ー

蒼月市に到着したー。


「ーーわ~!すごい」

響子が楽しそうに笑うー。


後から下りて来た生徒たちも、観光地・蒼月市の華々しい

雰囲気に、圧倒されたようだったー


”和”と”大自然”と”近未来”の融合ー

そんな感じの、古風を感じさせながらも未来を感じさせるー

そんな、独特な発展を遂げたこの場所は、

修学旅行としても人気のスポットだったー


「ーあ、見て見て!山の上に蒼月城が見える!」

指を指す響子ー。


「ほんとだ!」

彩香が笑いながら、響子と雑談しているー。


修学旅行1日目ー。

まずは、蒼月市での自由行動が行われるー


彩香の班は、

生徒会長の相馬 晴美(そうま はるみ)ー

大人しい性格の早乙女 美穂(さおとめ みほ)ー

そして、彩香と親友の響子の4人ー


「ーー今日は、よろしくね」

晴美が微笑むー。


晴美は誰にでも優しい”お姉さんタイプ”の頼れる女子高生で、

とても頭が良く、運動も気配りもできる”優等生”だー。

今日も可愛らしい眼鏡がよく似合っているー。


「ーーーー早乙女さん、大丈夫?」

彩香が、大人しい性格のツインテールが良く似合う女子・美穂に

声を掛けると、

美穂は「乗り物酔いで…」と、申し訳なさそうに呟いたー


「乗り物酔い~?じゃあ少し休んでからにする~?」

響子が、班行動の開始を遅らせる提案をすると、

「ううん…だいじょうぶ」と、美穂は少し無理をした

様子で立ち上がったー。



「ーー彩香!また後でな!」

別の班の彼氏・聡が彩香に手を振るー。


「ーうん!」

彩香も笑いながら手を振り返すー。


楽しい修学旅行になるはずだったー。


けれどー

まさかーー

こんなことが起きるなんてー。



1日目 12:30-


「ーー知る人ぞ知る名店!って感じ!」

響子が、班行動中に見つけた定食屋で、オムライスを口にしながら言うー。


「-あ、すみません~!今度はチャーハンもお願いします~!」

響子の言葉に、彩香は「え!?食べすぎじゃない?太るよ響子!」と

ツッコミを入れるー。


「-ウチの胃袋はブラックホールだから、太らないし!

 彩香は心配性すぎやって」


笑いながら言う響子ー。


「--そんなわけないでしょ!最近響子、少しお肉ついてるよ!」

彩香の言葉に、響子は「えっ!?ウソ!?」と叫ぶー。


「--ふふふ」

そんな二人を見つめながら、生徒会長の晴美が笑うー。


「ー月森さんと、木下さんみてると

 何だか本当にお笑いのコンビみたい」

晴美の言葉に、響子は「それええな」と、笑いながら

彩香のほうを見て、「彩香がツッコミで、ウチがボケな」と笑うー


「嫌だよ~!絶対売れないし!」

彩香のそんな言葉に、響子は「意外と売れるかもしれないやろ~?」と

彩香さえOKを出せば本気でお笑いコンビを結成できそうな

勢いで話を進めているー。


ふと、大人しい性格の美穂が、ご飯を少しだけ

口に運びながら涙ぐんでいるのに響子が気づくー


「あ、ごめんー、ウチらちょっと、うるさすぎやな」

響子が苦笑いしながら彩香に対して言うー。


「ーーうるさいのは、響子でしょ!」

小声でそう言うと、美穂はすぐに、

「あ、ごめん…そういうことじゃなくてー」と呟くー。


修学旅行の昼食中に急に涙ぐんだ美穂を見て、

響子も彩香も自分たちがうるさすぎるからだと、一瞬

勘違いをしたが、そういうことではなかったー


「ど、どうしたの…?どこか具合でも悪いの?」

生徒会長の晴美が心配そうに聞くと、美穂は

首を横に振ってから、少しだけ恥ずかしそうに呟いた。


「ーーーそ、その…お兄と今日から3日間会えないと

 思うと、寂しくてー」

美穂の言葉に、顔を合わせる彩香・響子・晴美ー。


そういえばー

美穂は大の”お兄ちゃん好き”で、

いつもツインテールにしているのも

”お兄が喜んでくれるから”と前に言っていた気がするー。


「ーーあ、、え、、えっと、、ご、ごめん…

 その…気にしないでー」

美穂が急に恥ずかしそうにそう呟いて俯くー


「なんや~お兄ちゃんと会えないのが寂しいんか~?

 じゃあ、今日から3日間はウチがお兄ちゃんに

 なってあげる!」


響子の言葉に、彩香は「響子は男じゃないでしょ!」と突っ込むー。


美穂は、照れくさそうに「あ、ありがとうー」と、呟くー。


そんな、穏やかな昼食の時間が終わると、

彩香たちは食堂から外に出て、

食堂がある路地の先にある比較的小規模な

交差点のところまでやってきたー


「あーーーっ!」

彩香が急に声を上げるー。


「どうしたん?」

響子が言うと、彩香は「財布!財布お店に置いてきちゃった!」と叫ぶー


「ドジやなぁ」

笑う響子ー


「ー響子ほどじゃないし!」

彩香がそう叫ぶと、生徒会長の晴美は

「じゃあ、ここで待ってるからー」と微笑むー。


「ーうん!すぐ戻ってくるから…!ごめんね!」

彩香はそう言いながら路地の方に引き返していくー。


彩香が先ほどの定食屋に財布を取りに戻っている間に

自動販売機でコーラを購入した響子は「あ!そうや!」と

笑みを浮かべるー


イタズラ好きの響子の笑みー。


響子は「戻ってくる彩香をちょっと驚かしちゃお」と、

まるで子供のように笑いながら、彩香の向かった路地の方に

向かっていくー。


定食屋で財布を回収して戻ってくるであろう彩香を、

路地の途中で待ち伏せして「わっ!!」と、驚かせようと

しているのだー。


”あ、あかんー。コーラの缶持ったまま走ると、

 開けた時、大変なことになりそうやわー…

 ウチも、彩香と同じで、ドジやなー”


そんなことを思いながら、響子は路地の方に入りー

彩香の向かった方に向かうー。


「ーふふ…本当に仲良しー」

生徒会長の晴美は、彩香のあとを追って路地に入った響子を見て

微笑むー。


だがー

その笑顔はー

間もなく、消えることになるー


「ーーー兄貴…どこへ向かうんです?」

スキンヘッドにサングラスの怪しげな男が、路地で

整った顔立ちの20代後半~30代ぐらいの男に声をかけているー


「ーー悪いが、答えられないー」

男はそう言うと、スキンヘッドの男から逃げ出そうとするー。


「ー兄貴!」

スキンヘッドの男が後を追い始めるー



「ーーありがとうございました~!」

一方、彩香は定食屋で財布を回収すると、

そのままお店の外に出たー。


狭い路地を歩き出す彩香ー


その時だったー


「ーーーー!」

彩香のスマホが”音”を鳴らし始めたー


「ーーーこの音ー!」

彩香が、”スマホから鳴っている音”が

いつもと違う音であることに気付きー


それが、地震を知らせる音であることを思い出す前にーー

”それ”はやってきたー。


町全体が”ピシっ”と音を立ててー


「え!?」

と、思った直後、彩香の立っていた地面が

激しく揺れ始めたのだー。


「ーーきゃっ!?」

彩香がバランスを崩すー


”じ、地震ー!?”

彩香がそう思っているとー

すぐに、その揺れは”今までに経験したことのない”強さへt

変わっていくー


「ーーーひっ…」

彩香はその場から動くこともできずー

周囲から聞こえる轟音と、激しい揺れに

恐怖を覚えるー


「ーーーー地震ー…!?」

ちょうどそこに、スキンヘッドの男から逃げていた男が

やってくるー。


男も当然、地震に気づいているー。


そしてー


「ーーーー!」

ちょうど、脇道から彩香のいる通りに出てきた際に

地震に遭遇した男はー

彩香の頭上の電柱がグラグラと揺れてー

今にも彩香の方に倒れてきそうなことに気づくー


「おい!君!」

男が叫ぶー。


しかし、彩香は悲鳴を上げているからかー

それとも地震の轟音のせいか、男の言葉に気づかないー


「君!!!」

もう一度叫んだ男ー。


しかしー

そうこうしているうちに、彩香に向かって電柱が倒れてきたー


「ーーきゃああああああっ!」

悲鳴を上げる彩香ー


男はとっさにーー

動いたー。


揺れに耐えながら、気づいたときには

彩香の方に飛びつきー

彩香を突き飛ばして、彩香と共に路上に倒れ込んでいたー


揺れは続くー

恐ろしい音が周囲から何度も何度も響き渡りー


そしてようやくーーー

揺れは止まったーーー



”緊急報道ですー。

先ほど12時54分頃、

蒼月市北部を震源とする地震が発生しましたー


地震の規模を示すマグニチュードは7.8と推定されー

蒼月市北部・南部で最大震度7を記録していますー


各地の震源の情報とーーー”


テレビほ報道が一斉に、蒼月市を震源とする

地震の報道に切り替わるー。



この日ー

12時54分ー

楽しかったはずの修学旅行は”おわり”を告げたー


蒼月市北部を震源とするマグニチュード7.8の

巨大地震が発生し、蒼月市を中心とする周辺地域は

一瞬にしてー”崩壊”したー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーーっっ…」

彩香を咄嗟に倒れてきた電柱から庇うため、

飛びついて、彩香を突き飛ばした男はー

苦しそうに身体を起こしたー。


「ーーーーいてててて…大丈ーーーー…あ?」

”大丈夫か?”と、言おうとして男は表情を歪めたー。


自分の口から、自分の声が出なかったのだー。


”喉をやられたのか?”

そう思いながらー


「あ、、、あ~~~あ~~~」と

声を出してみるー。


だがー


「ーーな、なんだ!?」

自分の口から出てくるのが、自分の声ではなくー

”女の声”であることに気付いた男は、戸惑いの表情を浮かべるー


そう思いながら、男が下に視線を落とすとー

そこには、あるはずのない胸の膨らみが見えたー


「ーー!?!?!?!?!?」

男はとっさに、バッと身体を動かすー。


助けた女子高生に抱き着いた状態に

なってしまっている、と、そう思ったのだー


しかしー

自分と共に、眼下の胸も移動してくるー


「ーー!?!?!?!?…!?!??!?!?」

男は混乱するー。


「お、おい、、も、もう大丈夫だから、俺から離れろー」


そう言ってから、男は”何かがおかしい”と思うー。


自分の声が女みたいな声になっていてー

制服を着た女子高生の胸が、視線のすぐ下にー


「ーーお、、、おぉぉ…???」

男は、ようやく、視線を下に向けると、胸が見えるのはー

助けた女子高生を抱きかかえている状態になっているからー…ではなく、

自分自身に胸があってーー

女子高生の服を着ていることに気付いたー


「ーーちょ!?おい!?なんだこれ!?」

叫ぶ男ー

いやー

自分自身が、女子高生になっているー?


男がーー

近くのガラス片に反射する自分の姿を見つめるとー

そこにはーーー

助けたはずの女子高生の姿が映っていたー


「ーーーー…」

男は、困惑するー。


だがー

鏡に反射している女子高生が自分とは限らないー。


そう思いながらー

おもむろに胸を触ってみるー。


反射している女子高生も胸を触るー。


胸を真顔で揉み続ける少女になった男ー。


「ーーーーマ…マジかー」

男はーー

彩香の身体になってしまっていたー。


「ーーーちょっと!!!何触ってるの!?」

背後からー

”自分の声”が聞こえて振り返るー。


「ーーーーあ、、いや、これは、ちがっ!」

彩香になった男は、顔を真っ赤にして叫ぶー。


別に胸を触ったのは下心からじゃなくてー

ガラス片に反射した少女が、自分かどうか確かめるためー


「ーーーこ、これは、違うんだーそのー」

彩香(男)はそう呟くと、

突然、男になった彩香が

「きゃああああああああああ!」と悲鳴を上げたー


「ーー!?!?!?!?」

彩香(男)が驚くー。


「ーーーわ、わ、わたしが目の前に、もう一人ー…」

男(彩香)が乙女のように震えながら、彩香(男)を指さすー。


「ーーな、、ふ、普通反応、逆じゃね?」

彩香(男)が戸惑いながら呟くー


今まで入れ替わったことに気付いてなかったのかー?


そう思いながらー

「ーーお、落ち着いて聞いてくれー。君と、俺ー

 身体が入れ替わっちゃったみたいだー」

と、彩香(男)は、男(彩香)の手を優しく掴んで呟くー。


「ーい、入れ替わり…わ、わたしと…?」

男(彩香)は戸惑いの表情を浮かべるー。


その時だったー。


再び、周囲がギシギシと音を立て始めるー。


「ーーーっ…」

彩香(男)が、咄嗟に男(彩香)を守ろうと抱き寄せるー。


「ひゃっ!?」

男(彩香)が変な声を出すー。


今度の揺れは、すぐに収まりー

男(彩香)が、顔を上げるー


「ーーじ、、地震…」

男(彩香)が不安そうに呟くと、

彩香(男)はスマホを手に、

「蒼月市震源の地震があったみたいだー…かなりでかいな」と、呟くー


「ーーこれだけの規模だと、余震が続くかもしれないー」

彩香(男)が言うと、

「ーーって!ナチュラルにわたしのスマホ使わないでよ!」と、

男(彩香)が叫ぶー


親友の響子との日常会話で培ったツッコミは、

非常事態においても、健在だったー。


「ーーき、君こそ、ナチュラルに俺の身体で女の子口調はやめてくれよ!」

彩香(男)の言葉に、

「ーじ、じゃあ、わ、わたしの身体で男言葉もやめてよ!」と

男(彩香)が反論するー


しばらく、謎の口論が続きー


「ーー…つ、、ツッコミとツッコミじゃーー終わりがない…」

と、男(彩香)は呟くー。


そしてー

再び、軽い揺れが襲うー。


その揺れが落ち着くと、男(彩香)は

「み、みんなは…大丈夫かなー」と、路地の入口のほうを見つめるー。


だが、建物が崩れたことにより、路地に入ってきた道を

引き返すことは難しそうだったー。


「ーーー大きい余震が来るかもしれないー

 身体のことはひとまずあとにして、まずはこの路地から出ようー」

彩香(男)の言葉に男(彩香)が頷いたその時だったー


「ーーー兄貴ぃ、どこに行くつもりですかい?」

路地の脇道から、スキンヘッドにサングラスのヤバそうな男が現れるー


「ーーひっ!?」

男(彩香)が怯えた表情を見せるー

彩香(男)は「ーーーーー」と、男になった彩香のほうを

何度か確認するとーーー


「ーーあ、、あの、わ、わたしたち、先を急いでるんで!」と、

彩香のフリをして、言葉を発しー、

そのまま男(彩香)の手を引っ張り、路地の別の方向に走り始めたー


走り始めた直後ーーー

コーラの缶が転がってくるー


「ーーわわっ!?」

男(彩香)は、路地に転がっていたコーラの缶に躓きそうになりながらも、

なんとかそれを避けるー。


「あ、あのコーラ開いてないじゃん!勿体ないー」

男(彩香)はそう呟くと、彩香の身体になった男のほうを見て叫ぶー。

「っていうか、あ、あの人誰!?知り合い!?」

その言葉にー

彩香(男)は「ーーー知らない!」と、叫ぶー。


どう考えても、スキンヘッドの男と知り合いっぽかったけどー、と

思いながらひとまず、逃亡を続けるー。


スキンヘッドの男は「兄貴!その小娘はいったい誰なんだ!?」などと、

一人、背後で怒鳴り声をあげているー。


「あの人、”兄貴”って言ってるけどー?」

男(彩香)が言うー。


だが、彩香(男)は、走りながら話を逸らしたー。


「ーー走りにくいな…この身体ー!」


「ーーそ、そんなこと言われても!」


崩壊した裏路地を必死に走る二人ー。

”自分に手を引っ張られて走っているー”

そんな不思議な状況に、

男の身体になった彩香は、少し戸惑いながらー

”なんか…いつものわたしと違ってかっこいいわたしに見えるー…”

などと、心の中で呟くー。


そんな風に思っていると、走りながら

髪が視界を邪魔する状況に、彩香(男)が鬱陶しそうに髪を払いのけるー


「ーーくそっ!髪が…邪魔だな…!どうにかならないのかこれ!?」


「ーー今、結ぶわけにもいかないからどうにもならないよ!」


走りながら会話する二人ー

スキンヘッドの男は、乱暴な口調で相変わらず何かを叫んでいるー。


「ーというか、なんでこう、、スカートってこんなふわふわしてるんだよ!?」


「スカートはスカートなんだから、仕方ないでしょ!」


二人は、入れ替わっているー。

そのことを知らないスキンヘッドの男は、

”兄貴”を連れ去る謎の女子高生にー、苛立っていた。


「ーー小娘がー。

 いったい、何のつもりだァ…?」


「ーーね、、ねぇ、何なの!?あのヤバそうなやつー!」

男の身体で、彩香は再び問うー。


「ーお、俺に聞くなよ!」

しかしー、彩香(男)は答えないー。


その時だったー。

大地が音を立てて揺れ始めるー。


「危ない!」と叫びながら、慌てて男(彩香)の手を引っ張る

彩香(男)ー


二人は脇道の方に入りー

近くの電柱が倒れて、火花を散らしー、

危険そうな男の目の前に倒れるー


「ーーーっ…オラァァァアアアア…!

 逃げられると思うんじゃねぇぞ!

 小娘がァァアあぁああア!!!」


彩香と男が逃げ込んだ脇道が、倒れた電柱によって塞がれるー。


スキンヘッドの男は、大声で怒鳴り声を上げると、

一人その場で怒りの形相を浮かべたー


「ーーはぁ、はぁ…なんとか、、逃げ切れたなー」

彩香(男)が、髪を乱した状態で呟くー


男(彩香)も、荒い息をしているとー

「ーーっていうか、君の身体ー…体力なさすぎだろ…

 はぁ、、はぁ…こんな、、ちょっと走っただけで、

 息が上がるなんて…

 はぁ…はぁ…」

と、彩香(男)は呟くー。


「ーーそ、そ、そんなことないし!

 女子と男の人の身体は違うの!」

男(彩香)が言うと、

彩香(男)は「それもそうかー…」と呟きながら、

ため息をつくー。


そしてー


「俺は日向 俊樹(ひゅうが としき)ー

 君はー?」


と、笑みを浮かべながら自己紹介をするー


「わ、、わたしはー…

 月森 彩香ー…

 し、修学旅行中だったのー」


俊樹の身体になった彩香が言うと、

彩香(俊樹)は「修学旅行ー?そっか…災難だったな」と呟くー。


修学旅行ということは、普段はこの蒼月市にはいない、

ということを意味するー。


「ーーほ、他のみんなを早く探さないとー」

俊樹(彩香)は不安そうに路地から飛び出そうとするー


「ーーー待て!入れ替わった状態のままでー

 君一人で行動するのは色々危険だー。


 それに俺も…し、正直…

 この身体でどうしていいか分からないー」


彩香(俊樹)はそう言いながら、

胸を触るー


「ー何でそのタイミングで胸を触るの!?」

俊樹(彩香)がツッコミを入れると、

彩香(俊樹)は、「あ、いやーなんとなくー」と、苦笑いするー。


そしてー

ふと、あることに気付き、彩香(俊樹)は、

俊樹(彩香)の身体の異変を指摘したー


「ーー君…勃ってるぞー」

とー。


「ーーえぇっ!?」

俊樹(彩香)は、驚いてズボンを見つめるー


すると、ズボンがパンパンに膨らんでいたー。


「ーーえっ!?ちょ!?何これ!?どういう原理!?」

俊樹(彩香)が狼狽えているー。


その時ー

再び、軽い揺れ…”余震”が二人を襲うー。


「ーーーまたいつ大きな余震が来るか分からないー

 まず、この路地から出ようー」


彩香(俊樹)の提案に、俊樹(彩香)は頷くー。


そしてー

路地から出たふたりはーーー


唖然としたーー


サイレンや悲鳴が聞こえる街ー

煙が複数個所から立ち上る街ー。


”先ほど発生した蒼月市の地震ですがー

 間もなく、気象庁の会見が行われる模様ですー


 公島(きみしま)総理大臣は先ほど、

 対策本部を設置しー”


ラジオの音が、異常事態を告げているー。


「ーーーー嘘……」

俊樹(彩香)は、街のあまりの光景に唖然とするー。


彩香(俊樹)も、言葉を失いー

その場に立ち尽くしていたー


二人のー

過酷な戦いはー

蒼月市に居合わせた人々の”生きるため”の戦いは、

今、始まったばかりだったー


②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


長編第5弾がスタートしました!☆

今回の長編は「入れ替わり」デス!


入れ替わりは長編第2弾の時にも書きましたが

(幻想の日常、という作品ですネ~!)

その作品が、私の中では少し心残りのある作品だったので、

今回は再び入れ替わりにチャレンジデス!


前回の反省も生かしつつ、

今回は入れ替わった二人の接点を増やす方向で考えてます~!☆

(前回は別行動シーンが多くて、入れ替わりの魅力が半減してた感じも…)


災害という難しいテーマも扱いつつ、

しっかりとした世界観・物語を描けていければと思います☆


第1話ということで、今回は”初回拡大スペシャル”でした笑

次回以降もぜひ楽しんでくださいネ~!


また、防災意識の見直しの機会にもちょうどいい機会かもしれません!

備えは大事ですからネ~!


お読みくださりありがとうございました!



(メイキング・崩壊都市)


・バスのシーンで登場した長瀬 裕梨ちゃんは、

 前回の長編(モルティング)の登場人物の血縁者だったりします~☆

(前回の長編を読んでないと分からない!的な内容は入れないので

 安心して下さい~☆ちょっとしたファンサービスデス)


・スキンヘッドの男は、私の中でCV若本さん的なイメージで

 書いています~笑


・不定期かもですが、「メイキング・崩壊都市」コーナーも

 やっていきたいと思います~!

Files

Comments

No comments found for this post.