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立派な髭を蓄えた紳士風の男が、自分の部屋で、優雅に紅茶を

口にしていたー。


そんな優雅な時間を彩る音楽を聴きながらー

音は、部屋の中のクローゼットの扉を開けるー。


するとー

そこには、数々の”服”が、しまわれていたー。


「ーーーー」

紳士風の男は、口元をニヤリと歪めるー


そこにあったのはー

”服”などではなかったー。


そこに、置かれているのはーーー

”人間”ー


”皮”にされた人間だー。


皮にされた人間たちが、

まるで”洋服”扱いされているかのように、

クローゼットに収納されているのだー


「ーー今日は、君にするかー」

そう呟くと、男は静かに笑みを浮かべながらー

”皮”の一つを手に掴み、それを着こむー。


「ーーーー」

綺麗な色白の女性の皮を着て、

その姿になった男は、後頭部のあたりを見つめながら、

流しっぱなしにしていたテレビのほうを見つめたー。


”先日から、行方不明になっている、小沢 美乃梨(おざわ みのり)さん

 の目撃情報は、以前として見つかっておらずー”


ニュースで行方不明と報じられている”自分”を見て、

紳士風の男に着られてしまった美乃梨は、ニヤリと笑みを浮かべたー


「ーーわたしは、ここにいるわー…”洋服”としてー

 ふふふふふふ」


完全に意識を支配されている美乃梨は、静かにそう呟いたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


大学生の澤木 喜多雄(さわき きたお)は、

大学での1日を終えて、

自分の住むアパートの前までやってきていたー。


”何か、面白いことないかなぁ…”

喜多雄はそんなことを思いながら、

自分の住んでいる2階の部屋に向かって、階段を登り始めるー。


友達もそれなりにいて、それなりに楽しい大学生活を送っているー。

アパートでの一人暮らしを始めて1年半ー。

一人暮らしにもすっかり慣れて、バイトのほうも順調だー。


しかしー

その一方で”平凡”な毎日の繰り返しに、

少し退屈さを感じているのも事実だったー。


”彼女でもできたらなぁ”

そんな風に思いながら、アパートの自分の部屋の前に向かって歩くー。


喜多雄は”誰にでも優しい”タイプの男子ー

しかし、それ故に”いい人どまり”になってしまうのも事実で、

大学でも彼女はおらず、男友達たちと一緒に

”彼女なんてできないなぁ~”と笑いながら話す日々を送っていたー。


アパートの自分の部屋の扉の前にやってきた

喜多雄が鍵を開けようとすると、

ちょうど、隣の部屋の扉が開いたー。


「ーーーーあ、澤木さん、お疲れ様です~!

 今、大学帰りですか?」


そこから出てきたのは、喜多雄の隣の部屋に

住む女性・内田 菜穂(うちだ なほ)ー。


とても可愛らしい雰囲気の女性で、

年齢は聞いたことがないものの、同じ大学生か、

あるいは社会人になったばかりかー、

そのぐらいの年齢に見えるー。


「ーーーあ、内田さんー。

 こんばんはー。

 えぇ、ちょうど今、大学から帰ってきたところですー」


愛想の良い笑顔を浮かべながら、喜多雄がそう答えると、

菜穂は「若い子は本当に大変ですよね~」と笑いながら言うー。


「ーーははは、まぁ、それなりに楽しいですけどね」

喜多雄はそう答えながらも、

大学生である喜多雄に対して”若い子は~”と言い放った菜穂に

対して、”意外と年上なのかな…?”と考えながら

菜穂のほうを見つめるー。


どう見ても、そんなに年上には見えないのだが、

”20代に見える40代”とか、そういう人もいるぐらいだし、

もしかしたらこの人もそうなのかもしれない…

と、心の中で考えるー


「どうしたんですか~?そんなに見つめて?」

微笑む菜穂ー。


「あ、いえ、すみません!」

見つめていたことに気づかれてしまった喜多雄は、

顔を赤らめながらそう言うと、菜穂はそのまま

微笑みながら立ち去っていったー。


「ーーーは~~…危なかった~…

 近所の女性にヤバいやつだと思われたら

 大変だからな…」

喜多雄はそう呟くと、自分の部屋に入るー。


「ーでも、ああいう綺麗な人が彼女だったら

 毎日楽しいだろうなぁ…」


まぁ、そんなこと起きるわけないけどー…

と自虐的に笑いながら、ふと考えるー。


「ーそれにしても、俺の隣の部屋に住む人ー、

 いっつも綺麗な人ばかりだよな…」


今、隣の部屋に住んでいる菜穂は、3か月ほど前に

引っ越してきたー。


その前に住んでいた人は、もっと大人の

妖艶な感じの女性で、確か名前は里香(りか)だったー。


その人も入居してだいたい数か月で引っ越してしまったと思うー。


そして、その前は、自分より年下の子だったー。

その子は大学に入学したばかり、と説明していて、

どこの大学に住んでいるかは分からないままだったが、

とても可愛かったー。


最初、喜多雄がこのアパートに入居した際にも、

今、隣に住んでいる菜穂と同じようなぐらいの、

若い女性だったー。


”なんか、妙に頻繁に隣、引っ越すし、みんな女性だけど、

 あれかな?事故物件的な何かなのかな…?”


喜多雄は時々”隣の部屋”を不気味に思うことがあるー。

隣に引っ越してきた隣人は、いつも数か月でいなくなってしまうのも

そうだが、毎回、”綺麗な女性”が住んでいることにも

違和感を感じるー


別にここは女性専用アパートではないし、

2人連続で…とかならわかるのだが、

既に”4人”も、世間的に”美人”だとか”かわいい”だとか、

言われそうな雰囲気の女性が入居しているー。


「ーー実は、生涯独身のまま死んだ男の霊が

 隣の部屋に住んでいて、綺麗な女性を呼び寄せているー…

 とかだったら怖いよな…」


などと、、大学で友人にも話したことがあるー。

その時に喜多雄に話をされた友人は

「あ~!で、心霊的な何かが起こって、怖くて

 数か月で毎回隣人が引っ越してる!ってのはあるかもな!」

などと、冗談にも乗ってきていたがー

最近、”本当にそうなのかもしれない”と、思い始めていたのだー。


♪~~~~


「ーーん?」

喜多雄が一人、隣人についてあれこれ考えていると、

来客を知らせるインターホンが鳴ったー。


「ーーはいーーー ぶっ!」

インターホンを覗いて、喜多雄は表情を歪めたー。


”はいは~い!抜き打ち調査に来たよ~!”


「ーーぶっ…だ、、だから、急に来るなって!」

喜多雄が、イヤそうな顔をしながらそう呟くー。


”ーーど~せまた、不健康な生活送ってるんでしょ~?

 部屋も汚れてそうだし!

 ほら、開けなさい~!”


突然の来客ー。

それは、実家で暮らしている喜多雄の妹だったー。


現在、高校生の妹・萌々美(ももみ)は、

いつも”抜き打ち調査”と称して突然、喜多雄の家にやってくるー


”やべっ”

喜多雄は、たまたま友人から借りていたエッチなゲームを

慌てて隠しー、

昨日食べ終わったままのコンビニ弁当の容器を洗いー、

慌てて流し台をーーー


♪~~~

♪~~

♪ ♪ ♪~~~


「あ~~うるさい!連打すんな!」

喜多雄がインターホンを連打する妹・萌々美に対して叫ぶと、

”何か隠そうとしてるでしょ~?すぐ開けなさ~い!”と、

外から声が聞こえてきたー


「あ~~~もう!分かった!分かったから!」

そう呟きながら、仕方なく玄関の扉を開ける喜多雄ー


「どうせ今回も、赤点だろうけどーーー」

妹の萌々美はそんなことを呟きながら「お邪魔しま~す」と

喜多雄の家の中に入ってくるー


ため息をつきながら喜多雄は萌々美を迎えるー。


だがー


その時ー

隣人である”菜穂”の玄関の扉がほんの少しだけ

開いていることにー

喜多雄も、妹の萌々美も気が付いていなかったー


「ーーーーー」

菜穂が口元から涎を垂らしながら笑うー


「ーー隣の男の、妹ーーー

 いつも可憐だ…」


菜穂はそう呟くと、

「ー私の”コレクション”に加えるとするかー」

と、静かに呟き、玄関の扉を閉めたー


部屋の中に入った菜穂は、自分の後頭部のあたりを触るとー、

自分を”脱ぐ”かのように、ベリッ、っと音を立てながら

頭から、上半身をめくっていくー。


まるで、着ぐるみのよう脱ぎ捨てられた菜穂が床に

崩れ落ちるとー、

中から紳士風の髭を蓄えた男が姿を現したー。


クローゼットの扉を開ける男ー。

そこには、ずらりと”皮にされた女たち”が、

並べられているー


この部屋を借りている名義は”内田 菜穂”だがー、

実際に住んでいるのは”内田 菜穂”を皮にしている

この男だー。


いやー

正式に言えば、その前に住んでいた女も、さらにその前に

住んでいた女も、全員、”この男”だったのだー。


紳士風の男は、”皮にした人間”をコレクションしている

危険人物ー。


普段は、その時の”メインの皮”として行動しー

飽きると、別の皮をメインとして、行動するー。


「ーーこの”洋服”にも少し飽きてきたなー」

”菜穂”の皮に飽きてきた男は、再び”菜穂”として

このアパートから出て、”別の女”として、このアパートに

入居することを決め、不気味な笑みを浮かべたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


数日後ー


妹の萌々美に散々文句を言われてー

”次に来るまでに直しておいてね”と言われた部分を

仕方がなく直していた喜多雄ー。


ゴミ出しのためにアパートの階段を下りて登ると、

隣人の菜穂が部屋から出てきたー。


「ーーあ、澤木さんー」

菜緒が微笑むー


「あ、内田さんーおはようございます」

喜多雄がそう言いながら頭を下げると、

菜穂が妙に荷物を持っていることに気づき、喜多雄は

「旅行ですか?」と呟いたー。


しかし、菜穂は首を振ったー


「いえ、実は今日で、引っ越すんですー」

菜穂の言葉に、喜多雄は「えぇっ!?」と驚いてしまうー。


その反応に菜穂が少しだけ表情を歪めた気がして

喜多雄はすぐに「あ、いえ、あの…俺の隣人、いつもすぐに

引っ越しちゃうので…なんかその、俺が何か迷惑かけちゃってるのかなって」

と、言葉を付け加えたー。


菜穂は笑みを浮かべるー


「ーーそんなことないですよー

 ただ、わたし”飽きっぽい”だけなのでー」


菜穂の言葉に、喜多雄は「飽きっぽいー?」と首をかしげるー。


「はいー。すぐに”次”に変えたくなっちゃうんですー」


「ーへ~…」

喜多雄は、そう返事をしながら、菜穂の言葉を

”同じ場所に住むことに飽きてしまって、引っ越しを繰り返している”

という意味だと解釈したー。


だがー


”ーーすぐに”メインの皮”を変えたくなっちゃうんだよー”

菜穂の中に潜む紳士風の男は、そう呟いたー。


喜多雄はまさか、これまでの4人の女性全員が、

”中身は同じ人物”で、4人とも皮にされて着られていた女性などと

夢にも思っていないー。


「ーそれじゃ、お世話になりましたー」

菜穂は微笑みながら頭を下げると、そのまま立ち去っていくー


喜多雄はそんな菜穂の後ろ姿を見つめながらー

「あ~~あ…やっぱ今回も、恋愛イベントが発生したりすることは

 なかったかぁ…」

と、呟いたー。


「ーー次はどんな人が来るかなぁ…

 今度こそ、おっさんとか引っ越して来そうだな…」


そんな風に思っていた喜多雄ー。


しかしー

その5日後に引っ越してきたのは、

また別の”綺麗な女性”だったー。


「ーーあ、今日から隣の部屋で

 暮らすことになった高野 汐織(たかの しおり)ですー

 よろしくお願いしますー」


穏やかそうな眼鏡をかけた女性ー。

年齢はやっぱり、20代ぐらいに見えるー。


「ーーー」

喜多雄が思わず驚いていると、

汐織は「どうかしましたか?」と、首をかしげるー。


「あーー、、いえ、」

喜多雄は何も言わなかったー


”なんで、隣の部屋に綺麗な女の人ばかり引っ越してくるんだー?”

そんな疑問と不安を抱きながらも、

喜多雄は”まぁ、どうせ、いい関係になることなんてないしー

どうでもいいか”と、苦笑いしながら、自分の部屋で

いつものようにのんびりと過ごし始めたー。



「ーーーーーーーー」

汐織は笑みを浮かべるー。


”ま、隣の学生も引っ越した女と、新しく入居した女が

 同一人物とは思わないだろうなー”


汐織の皮を脱ぎ、紳士風の男が中から出てくるー


5日前までここに住んでいた”菜穂”の皮を、クローゼットに

しまい、”コレクションした皮”を、見つめるー。


メインの皮以外では、アパートの周りをウロつくわけには

いかないから、こうして定期的に”引っ越し”、”入居”を繰り返し、

部屋の名義を変えて、メインの皮を変えているー。


今回は、半月前に皮にした汐織という女をメインに据えたー。


「ーーさて」

紳士風の男は、笑みを浮かべるー


「”次”、あの子が来たら、あの子も私の”コレクション”に加えるかー」


ずらりと並んだ皮を見つめながら、男は満足そうに笑みを浮かべたー。



その、数日後ー


「えーー?来てないけど?」

喜多雄は、実家からの連絡に首を傾げたー


”昨日、喜多雄の家に向かった妹の萌々美が帰ってきてないけど知らないか?”

という、実家からの電話だったー。


「ーーーわかったー。何かわかったら連絡するよ」

喜多雄は、そう言いながらも

”妹の萌々美が消えた”ということに不安を感じていたー


②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


隣人は”人を皮にしてコレクション”している

危険な紳士風の男…。

続きはまた次回デス~!


今日もありがとうございました!!

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