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モルティング対策班本部ー。


その場所には既に、捜査官たちの姿はないー。


「ーーーーー」

目黒警視正は、薄暗い部屋で、テレビをつけると笑みを浮かべたー。


矢神明信もー

三枝真綾もー

堂林幸成もー

もう、いないー。


モルティングもー

警察組織の闇もー

そしてーー

”事情を知る人間も”全てー

闇に葬り去るー


目黒警視正は、西園寺ら警察組織の闇を浄化しー

”この事件”に関わる人間全てを抹殺しようとしていたー


全てはー

警察組織の安定のためー

そして、世の中の”秩序”を守るためー


そのために、自分に近い考えを持つ

前警察庁長官である大瀬良と接触しー、

大瀬良長官の後ろ盾を得た上で、計画を実行に移したー


治夫にも、西園寺の”前”の警察庁長官・大瀬良が

自分の後ろにいることは、伝えているー。


「ーーーー」

目黒警視正がテレビを見つめながら笑みを浮かべるー


”先ほど、前警察庁長官、大瀬良 総一郎さんの自宅から出火ー、

 現在、消防隊が駆け付けて、懸命の消火活動を行っていますが、

 火の勢いは増すばかりですー”


女性アナウンサーが”大瀬良長官”自宅の火災の様子を伝えているー


「ーー皆さんーーー」

目黒警視正は、誰もいない対策本部で立ち上がると、

その場で深々とお辞儀をしたー


”皆さんー、お疲れ様でしたー”


とー。


・・・・・・・・・・・・・


登場人物


長瀬 治夫(ながせ はるお)

若き警察官。”皮”にまつわる事件に巻き込まれていく


松永 亜香里(まつなが あかり)

治夫の彼女。現在同居中。


長瀬 聡美(ながせ さとみ)

治夫の妹。かつて臼井隼人に皮にされた件で、現在入院中。


目黒 圭吾(めぐろ けいご)

警視正。計算高い性格の持ち主で、出世欲も強い。


黒崎 陣矢(くろさき じんや)

指名手配中の凶悪犯罪者。”モルティング”のひとり。


泉谷 聖一(いずみや せいいち)

治夫の中学時代の恩師。モルティングたちに”皮にする力”を与えた黒幕。


大門 久志(だいもん ひさし)

目黒警視正が亜香里を警護するため派遣した捜査官。


・・・・・・・・・・・・・・


★あらすじ★


モルティングの親玉・泉谷聖一と対峙した長瀬治夫ー。

中学時代の恩師でもあった泉谷から、行動の目的を

改めて聞かされた治夫ー。


全てを語った泉谷は、もう何も思い起こすことはないー、と

言わんばかりに治夫の目の前で自ら命を絶ったー。


そんな中ー

目黒警視正の命で、治夫の彼女・松永亜香里の警護に

ついていた捜査官らは撤退したー。

不可解な撤退命令に困惑する捜査官の大門ー。


大門は”せめて”と、亜香里の様子を確認、そして

亜香里に注意を促そうと一旦引き返すも、

亜香里は既に、人を皮にする凶悪犯”黒崎 陣矢”に乗っ取られて、

悪女になり果てていたー…


★前回はこちら↓★

<皮>モルティング~人を着る凶悪犯~㉝”芸術”

”「ーーこんばんは お届けモノですー」” 女性の配達員がそう呟くー 顔はよく見えなかったが、若そうな女性で 口調から、優しそうなイメージを受けたー 「あ、は~い!お待ちください~!」 治夫の帰りを待つ彼女・松永亜香里は、 そう返事をすると、荷物を受け取るために、 疑いも抱かずに玄関の方に向かうー。 ”人を皮...

・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーー先生ーーーー」


埠頭ー

治夫は、泉谷聖一が落下した場所を見つめながらー

そう呟くー


「ーー俺は、俺の信じた道を進んだー

 そして、ここが俺の終点だー。

 お前の信じる道は、まだ先へとつながっているー

 進め長瀬ー

 お前が信じた未来をー」


泉谷の最後の言葉を思い出すー。


”モルティング”たちのしたことは決して許されないー。

それを率いていた泉谷もそうだー。


だがー

泉谷が治夫にとって恩師であったのも事実ー


治夫は静かに呟き、立ち上がるー。


「ーーー進みますー。

 俺は、俺の信じた道をー」


そう呟いて、目黒警視正に連絡を入れるー。


だが、目黒警視正からの応答はないー。


「ーーー?」

治夫は少しだけ不安そうな表情を浮かべるー。


泉谷の言葉を思い出すー。


「ーー目黒警視正が”もしも”まだ生きていたならー

 お前は、死ぬところだったー」


「ーーーやつは、”全て”を闇に葬り去ろうとしていたー

 その意味が、わかるか?」


「ーーー全てが終われば、必ずやつは、

 お前も、お前の周囲の人間も、消すーーー

 ”すべてを闇に葬る”ためにー」


泉谷らモルティングは、目黒警視正が”死を偽装”したことにより

まだ生きていることを知らなかったー。


その言葉に不安を覚える治夫ー。


既に、警察組織の闇を司る西園寺長官は死んだー。

そして、今、モルティングの親玉であった泉谷も死んだー。

残るは、黒崎 陣矢とジェームズ・結城の二人ー。


ジェームズ結城が既に別の場所で殺害されたことを知らない治夫は

そう考えながら歩き出すー。


その時だったー


♪~~~


「ーーー聡美?」

スマホの表示を確認して、治夫は妹の聡美からの電話に出るー。

聡美は現在、以前、臼井隼人に皮にされたことにより、入院中だー。


”あ、お兄ちゃんー

 今、大丈夫?”


聡美の声ー


「ん?あぁ、大丈夫だけど…どうした?」

治夫が言うと、聡美は不安そうに呟くー。


”お兄ちゃん、今、家?

 亜香里さんと一緒?”


その言葉に、治夫の不安が急速に膨らんでいくー


「ーーい、いや、今は仕事でー家にはいない」

治夫がそう返事をすると、聡美は続けたー


”ーーーさっきね…亜香里さんから電話があったんだけどー 

 出ようとしたら切れちゃって

 何回かけなおしても、亜香里さん、電話に出ないのー。”


その言葉に、治夫は表情を歪めるー


”ーーー全てが終われば、必ずやつは、

 お前も、お前の周囲の人間も、消すーーー

 ”すべてを闇に葬る”ためにー”


泉谷の言葉が浮かぶー

目黒警視正の顔が浮かぶー


そしてーーー

凶悪犯・黒崎陣矢の顔が浮かぶー


”お兄ちゃん…亜香里さん、大丈夫だよね?”

聡美の言葉に、治夫は少し戸惑ってから返事をしたー


「ーーーあぁ…大丈夫…大丈夫だよ。

 今すぐ、帰るからー。

 聡美は、心配しなくて大丈夫だからー。」


治夫は安心させるためにそう言うと、

電話を終えて、すぐに駆け出したー


”亜香里の待つ家”を目指してー


「ーー必ず、帰ってきてねー」

今朝の明かりの笑顔が思い出されるー。


亜香里ー

無事でいてくれー。

車を走らせながら、亜香里の無事をただひらすら祈る治夫ー。


亜香里の家の周りには、目黒警視正が派遣した

捜査官たちが警護についていたはずー。


黒崎陣矢が仮に亜香里を狙ったとしても、

捜査官の大門をはじめとする”監視の目”から逃れることは

難しいだろうし、力で大門らを排除しようとしても、

黒崎陣矢一人では、そこまではできないはずだー。


これまでも、治夫は何度か黒崎陣矢と直接対決しているー。

確かにそれなりに強いし、危険な人物ではあるが、

治夫も黒崎陣矢と互角に渡り合えてはいたし、

治夫よりも経験豊富で年上であろう大門ら捜査官を

突破することは、黒崎陣矢一人では不可能なはずなのだー。


「帰りが何時でも、治夫の好きなカレーライス、

 用意して待ってるからね!」


玄関先での亜香里との会話を思い出すー。


”待っててくれるよなー…亜香里ー”

治夫は祈り続けるー。

亜香里の無事をー。


黒崎陣矢に対する守りは完璧のはずだー。

仮に仲間がいても、大門らはそう簡単に突破されないはずー。


だがー

泉谷の言葉が引っ掛かるー


「ーーー全てが終われば、必ずやつは、

 お前も、お前の周囲の人間も、消すーーー

 ”すべてを闇に葬る”ためにー」


その”全て”に亜香里も含まれているとすればー?


「ーーー」

信号待ちに入り、脇においたスマホの画面を

確認する治夫ー


やはり、亜香里からの返事はないー。

亜香里は今日は外出の予定はないはずだー。


何故、電話に出てくれないのかー

何故、何も返事をしてくれないのかー。


黒崎陣矢かー

目黒警視正かー。


亜香里の身に何かが起きているという不安が拭えないー


「くそっ!」

治夫は、目黒警視正とも連絡がつかないことに不安を覚えながら、

ようやく、アパートの目の前に到着したー。


「ーーー」

アパートの治夫たちが住む部屋の明かりはついているー。


「ーーー亜香里…」

部屋の目の前までやってきた治夫は、

念のため、持っている銃を確認するー。


この扉の向こうに待つのはー

地獄かー

それとも、光かー。


「ーーーーー」

交番勤務だったとは言え、治夫はこれまでに

それなりの現場に遭遇したこともあるし、

モルティングたちとの戦いでも、

臼井隼人や中曽根佳純、数多くの危険人物たちを

相手にしてきたー。


しかし、今ー、

今までのどんな経験よりもー

治夫は”緊張”していたー。


もしも、扉の向こうに亜香里が倒れていたらー?

もしも、扉の向こうに”乗っ取られた亜香里”がいたらー?

部屋の中に、黒崎陣矢やジェームズ結城が潜んでいたらー?


「ーーーー」

治夫は深呼吸すると、部屋の扉を開いたー


「ーーー!」

治夫が目を見開くー


「ーーあ、治夫!おかえり~!」

そこにはー、

亜香里の姿があったのだー


倒れてもいないしー

何かあった様子も、ないー


「ーーー…はぁ…はぁ…はぁ」

治夫が息を切らしながら亜香里のほうを見つめるー。


「ーーどうしたの?そんなに荒い息をして?」

亜香里が首をかしげるー。


黒いタイツを気にするかのように、少しだけ

履いている赤いスカートを触る仕草を見せる亜香里に対して

治夫は「ーーーで、電話通じなかったから、ついー」と、

少しだけ安心したような笑みを浮かべたー。


「ーーー電話…」

亜香里はそう言うと、スマホのほうを見て、

「あ、ごめんごめん!色々やってたから、連絡確認できてなかった~!」と、

微笑みながら答えたー。


”よかったー”

治夫は、心から安堵したー。


あとは、目黒警視正と連絡がつかないことだけは気になるが、

ひとまず、亜香里は無事だったー。


部屋は荒れていないし、

服装や見た目も変わったところはないー。


「ーーあ、じゃあ、治夫のだ~いすきなカレー、準備するね」

亜香里は微笑みながら、カレーの準備を始めるー。


治夫は、ホッ、としながら

目黒警視正からの応答がないかどうかを確認したがー

目黒警視正からは、特に何も応答がなかったー。


”単に連絡がつかないだけならいいがー”


「ーーーーペロリー」

カレーのほうを向きながら、亜香里は自分の指に

カレーをつけて、凶悪な笑みを浮かべるー。


だが、治夫はそれには気づかないー。


「は~い!お待たせ~!」

亜香里がカレーの用意を終えて、机にそれを置くー。


少し、亜香里の手つきが乱暴な気がして、一瞬不安になっていたもののー

”考えすぎかー”と、治夫は、思いながら

「いただきます」と、カレーを食べ始めるー。


カレーは正真正銘、亜香里がいつも作るカレーの味ー。


「ーーどう?おいしい?」

亜香里が言うー。


「ーーいつも本当にありがとうー」

治夫はそう言いながら、

「あ、そういえば、聡美からさっき電話があってー

 亜香里から電話があった、って言われたんだけどー」

と、亜香里に確認するー


聡美の話が正しければ、

亜香里は聡美に電話をかけて、

聡美が電話に出た時には、何もしゃべらなかった、というのだー。


「ーーえ~~~?」

亜香里はスマホのほうを見つめると、

「あ、ほんとだ~~!」と、発信履歴を見ながら声を口にしたー。


「ウトウトしてた時に間違えて電話しちゃったみたい!

 聡美ちゃんにごめんって言っておいて!」


と、笑いながら呟いたー。


「ーーーそっか。わかったー」

治夫は笑いながら、カレーを口に運ぶー。


「ーーーーー!」

ふと、治夫は、押し入れの扉が少しだけ開いていることに気づくー。


そしてー

その隙間にーー

”人の足”のように見えるものが見えたーー


気がしたのだー


「ーーーーー」

亜香里も、その治夫の反応に気づくー。


”そろそろ、遊びは終わりだー”

亜香里はそう思いながら、治夫のほうを見つめたー。


「ーーあ、そうそう、ねぇ、治夫ー。

 今日、面白い映画録画しておいたから、一緒に見ようよ!」


亜香里の言葉に、治夫は「映画?いいけど、珍しいな~」と笑うー。


その笑顔には、どことなく”不安”の色が見えるー。


確かに、亜香里と共に映画を見ることはあるー。

だが、こんな風に誘われるのは、珍しかったー


「ーー治夫、き~っと、喜んでくれると思うよー」

亜香里はそう言うと、ブルーレイディスクを入れてー

それを再生し始めたー。


亜香里が席に戻ってくると同時に

映像の再生が始まるー


亜香里がニヤァ…と、笑みを浮かべたのを、治夫は見逃さなかったー


いつも、亜香里が絶対に浮かべない笑みー


「あーーー、、亜香里…本当に、何も、なかったんだよな…?」

治夫が不安になって、カレーを食べる手を止めるー。


亜香里は突然、黒いタイツに包まれた足を組むと、

「ーーいいから、見てなよ 治夫ー」

と、低い声で呟いたー。


「ーーーー」

治夫は、その映像を見て唖然としたー


泣き叫びながら逃げる亜香里の映像ー


これはー

映画なんかじゃないー


「ーーあ、、亜香里…こ、、この映像はー」

治夫は、”信じられない”という表情で亜香里を見つめるー


「ーーいいから、黙ってみてろよー」

亜香里が呟くー


亜香里じゃないーー


治夫は「お前!!!黒崎陣矢!!!!!」と、大声で叫びー

机を叩くー


「ーー黒崎陣矢~~~~~?????」

亜香里はバカにしたような口調で言うと、治夫のほうを見て、

笑みを浮かべたー


「ーわたしは、”黒崎 亜香里”よー クククククー」

とー。


「ーーふざけるな!」

治夫が叫ぶー。

彼女の名前は”松永 亜香里”だー。

亜香里を乗っ取った黒崎陣矢が、おふざけで自分の名前と

混ぜているのだー。


「ーー治夫~?カレーを食べている最中に行儀わるくな~い?」

亜香里がクスクスと笑うー。


そんな横で、映像はさらに続くー


黒崎陣矢の声ー

悲鳴を上げる亜香里ー。


黒崎は、亜香里を襲撃した際に、小型のカメラで

その映像を撮影していたのだー。


抵抗むなしく皮にされていく亜香里ー。

それを着る黒崎陣矢ー


亜香里を乗っ取った黒崎陣矢は、

亜香里の身体で、中指を突き立てるとー、

亜香里の胸を揉み始めたー


治夫はその映像を見ながら拳を震わせるー。


映像の中でー

乗っ取られる直前に亜香里が流した涙はそのままー

泣きながら笑っている亜香里を見て、治夫は発狂しそうになったー。


さらに映像は続きー

亜香里は服を脱いで、一人、エッチなことをし始めたー


亜香里の喘ぐ声が映像から響き渡るー


「ーどう?わたしのAVー。ゾクゾクしちゃうでしょ?」

腕を組みながら笑う亜香里ー


治夫は「貴様ァ!」と、亜香里の胸倉を掴んだー。


映像の再生が終わるー。


「ーークククー。殴りたいなら、殴れよー。

 自分の彼女を、殴れるなら、な」


亜香里が挑発的に目を見開いて笑うー。


「ーーーくっ…」

治夫が拳を震わせるー。


「ほらァ…どうした?殴れよー。

 可愛い可愛い彼女に暴力を振るう彼氏ー

 なかなか、バイオレンスな芸術じゃねぇかー」


亜香里の声で、乱暴な言葉が吐き捨てられるー。


「ーーーく、、、…く…」

治夫は、亜香里の表情を見ながら、悔し涙を

流しそうになってしまうー。


亜香里の胸倉を掴んだもののー

何もできずに拳を震わせるだけの治夫ー。


そんな治夫を見て、亜香里は笑うー。


「ーー汚い手で触らないで。キモイんだけど!」

亜香里っぽい口調で、そう言い放つと、

治夫のことを思いっきりビンタする亜香里ー


治夫は思わずあとずさり、亜香里のほうを見つめるー。


「ーー今日からわたしは”黒崎 亜香里”

 こ~んな、綺麗な手でさ~」


亜香里が自分の手をうっとりとした表情で見つめながら笑うー。


「ーーー人を殺しちゃうとか、ゾックゾクするよなぁ!!

 あはっ!あはははははははははァ♡」


亜香里とは思えないような狂った笑い声ー。


「ーーー彼氏のために、愛情込めてカレーを作るとかさぁ…

 笑わせんなよ!」

亜香里はそう叫ぶと、カレーの容器を乱暴に掴んで、

床に投げ飛ばすー。

床に零れ落ちるカレー。


「愛情なんか、踏みにじってやるぜ!」

亜香里はそう叫びながら横たわった容器を蹴り飛ばすー。


「ーーーく、、く、、黒崎陣矢!」

治夫が、乗っ取られた亜香里に銃を向けるー。


”黒崎陣矢は、子供の頃に妹を目の前で殺されてー

 その時から狂気に走ったー”


という話を、治夫は黒崎の仲間であった

中曽根佳純から聞かされているー。


「ーー大切な人を失う苦しみ…お前だって知ってるはずだ!」

治夫が言うー。


だがー

亜香里は、耳をほじりながら、笑みを浮かべたー


「ーーー銃を向けたって、撃てねぇだろ?」

亜香里はそう言うと、押し入れを乱暴に開くー


「じゃ~~~ん!」

亜香里が笑うー。


「ーーこの女の身体でイッたあとに、

 一人バカな捜査官が戻ってきたからー

 こいつも、皮にしちゃいました~~!!


 あは、あはははははははァ!!!」


押し入れから見えていた足のようなモノは、

”皮にされた捜査官の大門”だったー。


亜香里が注射器を手に、笑みを浮かべるー。


「ーーこの注射器は俺にとって最高の宝物だぜー。

 こうして、俺の芸術を体現できるー


 こんな美人を凶悪犯にできちまうなんてー

 ーーまさに最高だぜ!」


亜香里はそれだけ言うと、押し入れから

もう一つ、何かを取り出したー。


「ーーさァ、今から最高のショーを始めるぞー

 長瀬治夫ー。

 お前は散々、俺のことを邪魔してくれたからな… 

 たっぷりいたぶってぶち殺してやるぜー」


亜香里が笑みを浮かべながら言うー。


亜香里の声で、そう言われるだけでー

治夫の心はひどく揺さぶられるー。


「ーー亜香里…やめろ…目を覚ましてくれー」

治夫が嘆願するように言うー。


「ーー目を覚ますぅ~~~~???

 わたし、自分の意思で治夫をぶっ殺したいの!

 うふふふふふふふふ♡」


亜香里はそう言うと、押し入れから取り出した

鞭を手に、笑みを浮かべたー


「ーー大好きな彼女に殺される彼氏ー

 大好きな彼氏を笑いながら殺す彼女ー


 くくくくっ…ははははははははははっ!」


亜香里は、狂ったように笑いながら、

治夫を鞭で叩き始めるー。


黒崎陣矢が用意した鞭が、治夫を襲うー

激しい痛みに吹き飛ばされる治夫ー


それでも容赦なく、亜香里は治夫を攻撃するー


「ーーくくくく…

 助かりたかったらー

 亜香里女王様に命乞いして御覧なさいー」


亜香里が倒れた治夫を見下しながら言うー。


治夫は亜香里のほうを見つめながらー

「やめろ……!」と、必死に叫ぶー


「ーークククー

 無駄だって言ってんだろ!」


亜香里が治夫に鞭を振るうー


治夫は、それを受け止めるとー

亜香里に銃を向けたー。


「ーー”決断するべき時は、迷うなー”」


 「決断するべき時に、決断できなければー

 ”破滅”を招くことになるー」


恩師・泉谷の最後の言葉を思い出すー。


けれどー


「ーー撃てないーー」

治夫は悔しそうに目から涙をこぼすー。


「ーー治夫に~わたしは撃てないよ!はははっ!」

亜香里が鞭を振るうー。


撃てばー

黒崎陣矢を倒せるー

だが、それは亜香里の死を意味するー


倒れた治夫を見つめながら

亜香里はペロリと指を舐めると


「ーーほぅら、もっと必死にわたしに呼びかけてーー

 俺をゾクゾクさせてくれよー


 長瀬 治夫ーー」


と、狂気の声で囁いたー



㉟へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


長編皮モノ「モルティング」もいよいよ今月で完結予定デス!

無事に物語の結末まで描き切れるように

頑張ります~!


最後までぜひお楽しみくださいネ~!


今日もありがとうございました!

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