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映画館で映画を見終えた大学生カップルは、

映画の感想を話しながら、”このあと、何か食べようか?”

などと、会話を交わしながら街を歩いていたー。


彼氏の藤重 忠司(ふじしげ ただし)はー

周囲に気を遣うタイプの男子大学生で、気配りができるタイプ。

小心者の一面もあるけれど、人を思いやる気持ちは強く、

彼女のこともとても大切にしているー。


彼女の坂森 絵梨(さかもり えり)は、

穏やかで心優しい性格の持ち主で、

大学のとある行事の活動中に、忠司と一緒に行動することが多くなり、

次第に惹かれていったー。


そんな二人は今日、

休日を利用して、デートを楽しんでいたのだったー


「ーーーう~ん…何がいいかなぁ~」

このあと、何を食べようか、という話題で迷う二人ー


絵梨は楽しそうに街の風景を見つめているー。


「ーー絵梨が食べたいものなら、何でもいいよー」

笑いながら言う忠司ー。


忠司は、幸せだったー。

こんな風に自分にも彼女ができるなんて、大学に入るまではー

いや、大学に入ったあとも、夢にも思わなかったー。


決してクラスの中心人物ー、というタイプでもないし、

肉食系でもなく、どちらかと言うと、控えめなタイプの自分には、

今まで、まったく恋愛に縁がなかったー。


人生とは、分からないものだー。


そんな風に思いながら忠司は、絵梨と一緒に街を歩くー。


「ーーでも、絵梨とこんな風に一緒に過ごせるなんて、

 付き合う前は夢にも思わなかったなぁ~」

忠司が街を歩きながら言うと、

絵梨は「わたしも!」と笑うー。


「ー忠司と付き合う前は、彼氏いたことなかったしー…

 正直、今でも夢みたいだけどー…

 もし夢なら、いつまでも覚めないでほしいな~…って

 思っちゃうぐらい」


にっこりとほほ笑む絵梨ー


「ーそ、そんなに…?て、、てれるなぁ」

照れくさそうにする忠司ー。


「ーーでも、大丈夫ー?

 わたし、こういう経験全然ないからー

 ちゃんと、彼女として振る舞えてるかな~って、

 時々心配になるんだけど…」


不安そうな絵梨ー。


そんな絵梨に対して、忠司は

「ーーそんなこと言ったら、俺も全然そういう経験ないからー

 彼氏として振る舞えてるかなぁ、って心配になるよー。」

と、笑うー


「ーお互い、初心者同士ってことだね!」

絵梨が、嬉しそうに笑うと、

忠司も、嬉しそうに絵梨のほうを見つめながら笑ったー。


その時だったー


「ーーーへへへ…何イチャイチャしてるんだよ」

ガラの悪そうな三人組が忠司と絵梨の方に近付いてくるー。


忠司は「行こう」と絵梨に呟くと、

絵梨の手を引いて、相手にせずに立ち去ろうとするー。


しかしー


「お~っと、どこ行くんだよ?」

髑髏のペンダントをつけた、明らかに嫌な雰囲気の男が笑うー


耳には牙のような形のピアスをぶら下げているー。


他の二人の男も、ニヤニヤしながら忠司に近付くー。


「ーーな、、な、、何か…用ですか?」

忠司は不安そうに呟くー


「ーーた、、忠司…」

絵梨は、さらに不安そうに忠司の背後に隠れるー


「へへへ…いいねぇ、いいねぇ…!」

髑髏のペンダントの男が笑うー。


「ーーってか、その彼女、可愛くね?

 お前みたいな貧弱そうなやつに釣り合わねぇんじゃね?」


金髪の男が笑うー。


「ーーお、、俺たちに何の用なんですか?」

忠司は足を震わせながら言うー。


「ーーーうるせぇな」

目つきの悪い男が忠司の胸倉を掴むー。


「ひっ!?」

怯えた声を出す忠司ー。


「ーーはははははっ!あんなだせぇヤツ、放っておいて

 俺たちと遊ぼうぜ!」

金髪の男が、絵梨の手を掴むー


「や、、やめて!離して!」

絵梨が悲鳴を上げるー


「え…絵梨!」

忠司が叫ぶー


しかしー

忠司は、髑髏ペンダントの男に殴られて、

その場に倒れ込んでしまうー。


「ーーおい…死にてぇのか?」

髑髏ペンダントの男が、忠司を睨むー。


「ーー可愛い女は、俺たちのモノなんだよ。

 な?分かったらとっとと帰りやがれ」


髑髏ペンダントの男は、そう言うと、忠司を睨みながら

ナイフを取り出してペロリと舐めたー


「ひっ…」

情けないことにー

忠司は、あまりの恐怖にその場でチビってしまったー。


「ははははっ!なんだこいつ!だっせ~~!」

金髪男が笑うー。


「ーーーひ、、、ひ…」

忠司は、情けなさとー

あまりの恐怖にーーー


「たすけて!!やめて!!たすけて!!」

悲鳴を上げる絵梨の声も耳に入らずー


気づいたときには、絵梨を見捨てて猛ダッシュで逃げ出していたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーはぁっ…はぁっ…はぁっ…」

忠司は、アパートの自分の部屋に戻り、一人、震えていたー


昔からー

自分は、小心者だったー。

チキンだったー。


”人に気配りできて、優しい”

昔から、よく周囲にそんなことを言われるー。


でも、それはー

本当に”優しい”のだろうかー。


本当は、”自分が傷つきたくなくてー”

周囲から嫌われてしまうのが怖くてー

そうしているだけなのではないだろうかー。


「ーーくそっ…くそっ…俺はー」

昔からそうだったー。

忠司は、困難に直面したりー

危機に直面したりするとー

”逃げて”いたー。


小さいとき、一緒に遊んでくれた祖母が

目の前で倒れた時もそうだったー。


まだ、死とか、そういうことがあまりよく分からない中でもー

目の前で倒れた”おばあちゃん”が、

大変なことになっているー

と、いうことは、直感として理解できたー。


もしもー

もしもその時、何かすることができればー

”おばあちゃん”はもう少しだけ長生きできたのかもしれないー


けれどー

パニックになった忠司は、逃げてしまったー


”僕、悪くないもん!”

”僕、何もしてないもん!”


親に言ったのは、そんな言葉ばかりー


「ーーくそっ…俺はーー俺はーーー」

壁に拳を叩きつけながら、忠司は

彼女の絵梨を見捨ててきてしまったことをー

只々、悔しそうに嘆くことしかできなかったー。


・・・・・・・・・・・・・・・


♪~~~

♪~~~~~

♪~~~~~~


夜になってー

心配になり、絵梨に何度も電話を掛ける忠司ー


しかしー

絵梨に電話が通じることはなかったー。


”今度こそ、守ろうって決めたのにー”

”絵梨のことを絶対に守るって決めたのにー”


メールやLINEを送りー

絵梨のツイッターも確認したが、

いずれも反応がないー。


居ても立ってもいられず、

アパートから飛び出す忠司ー。


けれどー。

絵梨は見つからなかったー


”まさか、殺されたりしてないよなー…”


流石に、そこまではされないとは思うー。

でも、絵梨が深い傷を負うことは間違いないー。


「ごめん…絵梨…」

「ごめんー」

何度も何度も自宅で呟く忠司ー。


自分のような弱い人間が、あの三人組を撃退できたー…

なんてことは思わない。

でもー

それでも、

あの場に残っていれば、何かが変わったのではないだろうかー。


そんな風に思わずにはいられなかったー。



そしてー

翌日ー


大学にも、絵梨の姿はなかったー。


絵梨を見ていないか友人たちに確認する忠司ー。

しかし、絵梨は、大学には来ていなかったー。


相変わらず、連絡もつかないー。

忠司は、震えながらーー


こう思ったー


”俺は悪くないー”

”俺は悪くないー”


ガクガクと震える忠司ー。


絵梨を助けたいという気持ちは当然あるー。


しかしー

本質的に臆病な忠司は、

”自分の保身”の方が大事になってしまっていたー。


頭の中で、何度も何度も

”俺は、何もしてないー”と、呟くー。


忠司はー

小さいころから、何一つ、変わらないままだったー


”僕はわるくないもん!”と叫んだ

あの時からー。



「ーーーーーー」

帰宅した忠司は、表情を曇らせるー


「ーー俺に、最初から彼女なんていなかったんだー」


仮に、絵梨が無事だったとしても、

絵梨を見捨てて一人逃走した、こんな情けない自分のことを

絵梨が今までと変わらずに好きでいてくれるとは思えないー。


「そうだ…俺なんかに、彼女なんて、できるはずなかったんだー」

すっかりネガティブになってしまった忠司は

”最初から彼女なんていなかったんだ”と、自分の心を

必死に守ろうとしたー



”そういう能力”には長けていたのかー

忠司は、絵梨が襲われてから3日後ー

すっかり落ち着きを取り戻していたー。


”彼女なんて、最初からいなかったんだー”


そう、思い込むことで、自分を保とうとしたー。


そんな日が続いてー

あれから、5日が経過したー。


帰宅した忠司は、何食わぬ顔で荷物を整理して、

いつものように、スマホをいじったり、のんびりしたりしていたー


♪~~~


「ーーー」

忠司は”何かネットで買ったけな…?”などと思いながら

「はいー」と返事をしたー。


するとー

訪問してきたのは、予想もしない相手だったー。


”忠司…、わたし…”

訪問してきたのは、絵梨だったのだー


「ーー絵梨!無事だったのか、よかった!」

忠司はここ数日、絵梨のことを忘れようとしていたことなど

一気に忘れて、慌てて玄関の扉を開けるー。


しかしー

玄関の扉を開けた忠司は、少しだけ驚いたー


絵梨が、髑髏のペンダントをぶら下げて、

牙のような形のピアスを身に着けていたからだー。


絵梨に絡んだあの三人組の一人と、同じようなものをー

その身につけていたのだー。


短いスカートに黒タイツー

胸元を強調するような服装で、

腕を組みながら入ってきた絵梨ー。


派手なアクセサリーを身に着けながら、

それをジャラジャラさせながら部屋に入ってきた絵梨は、

椅子に座ると、そのまま足を組んで、忠司のほうを見つめたー。


「ーどう?彼女を見捨てた気分は?」

絵梨が笑うー


「ーーご…ご、、ごめん…」

忠司はそれしか言えなくなってしまったー。

絵梨を見捨てたことは、事実なのだからー。


「ーーごめん?

 それだけ?」

絵梨はあざ笑うようにして呟くー。


「ーーーほ、ホントに悪いと思ってる!

 し、心配だってしたんだ!

 連絡も入れたし、LINEも入れたしー

 それからー」


忠司が必死に言うと、絵梨は立ち上がって

忠司に近付いてきたー


忠司をじーっと見つめると、絵梨は、鼻で忠司を笑ったー


「あなたは、負け犬ー」

とー。


「ーーわたしを見捨てて、無様に逃げた負け犬ー。

 ふふっ…笑っちゃうんだけど」


絵梨がバカにするような笑みを浮かべて、

もう一度椅子に座って足を組むー。


「ーーご…ごめん…… 本当に、ごめん…」

忠司はそこまで言うと、

絵梨のほうを見たー


「そ、、それより…絵梨…

 も、、もう大丈夫なのか…?あいつらはー?」

忠司は不安そうに聞くー。


絵梨が、まるであの男たちのような雰囲気になっていることに

とても強い不安を感じたのだー


「ーーふふ…わたし、忠司に見捨てられて、すっごく傷ついたんだよ?

 でもね、あの男の人たちは、そんなわたしを慰めてくれたのー


 だからーわたし、竜也(りゅうや)と付き合うことにしたのー。

 ふふ…今のわたしは竜也の女ーー」


絵梨はそう言うと、髑髏のペンダントを手に取りながら微笑むー


「どう?似合うでしょ?竜也とのお揃いー」

微笑む絵梨ー


「ーーま、、ま、、待ってくれ!

 む、、無理やり付き合わされているのか…?」

忠司は戸惑いながら絵梨のほうを見つめるー


「お、、俺なんかが振られちゃうのは

 仕方ないと思うー


 で、、でも、、絵梨が、あんな男たちとー」


忠司が言うー。


絵梨と、あの三人組が釣り合うようには見えないー

住む世界が違いすぎるー。

そもそも、どんな理由であれ、絵梨があのような男たちと

付き合いなんて、あり得ないー。


「あんな男たちー?」

絵梨が舌打ちして忠司を睨みつけるー。


「ーーーえっ!?」

忠司がビクッとすると、絵梨は忠司に近付いてきて、

忠司の胸倉を掴んだー


「ーーあんな男たちって、何よー?

 わたしを見捨てて逃げ出したチキン野郎のあんたより、

 何百倍も男らしいじゃないー。


 あんたみたいな、チキン男、こっちから願い下げよ!」


絵梨はそう言うと、忠司を突き飛ばしてー

忠司を冷たい目で見下したー


「ーわたしがこんな風になったのはー

 全部、あんたのせいよー」


「ーーご…ごめん…ごめんってば…」

忠司は泣きそうになりながら

まるで別人のようになってしまった絵梨を見つめるー。


「ーーーーー」

冷たい目で忠司を見下す絵梨ー


そんな絵梨の”中”で、

三人組の一人、髑髏のペンダントを身に着けていた男・竜也は

笑みを浮かべたー


”クククククー

 お前の彼女は、俺に身も心も乗っ取られてるんだぜー?

 もっともっと”この女の身体”でお前をいたぶってやるぜー”


絵梨はー

忠司が逃げ出したあと、憑依されてしまっていたー


身も心も完全に乗っ取られた絵梨はー

忠司を見下しながら呟くー


「ーーーあんたみたいなゴミ見てると、虫唾が走るんだけどー」

そう呟く絵梨に対して、

忠司は震えることしかできなかったー



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


今月最初のお話でした~!

ダークな雰囲気が漂っていますネ~!☆


彼女が憑依されていることに気づけるのかどうか…、

続きはまた次回のお楽しみデス~!

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