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誕生日プレゼントに”くまのぬいぐるみ”を渡してから

娘・真鈴の様子が豹変したー


両親に反抗的な態度を取る真鈴ー。

真鈴と対峙した父は、真鈴がくまのぬいぐるみの

前の持ち主であった少年”高坂 陽斗”の怨念に支配されていることを知るー。


娘・真鈴を救い出すために、父が取る行動はー?

そして、真鈴の運命は…?


★前回はこちら★↓

<憑依>娘の様子がおかしいんだ②~怨霊~

”娘の様子がおかしいー” そう気づいたのは、誕生日の翌日だったー。 それまでは、平和な日常を謳歌していた藤本家ー。 しかし、娘の真鈴の誕生日に、父親である義和が プレゼントした”くまのぬいぐるみ”には、 悪霊が潜んでいたー。 悪霊に支配されー豹変していく娘。 平和だった藤本家の状況は、たった数日で一変してし...

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真鈴を静かに抱きしめた父・義和ー。


真鈴からそっと離れて、

義和は真鈴のほうをじっと見つめるー。


真鈴は目を時々赤く光らせながら

「な…なんの…つもりだ…」と呟くー。


「ーーー高坂 陽斗くん…

 君に何があったか、聞いたよー。

 ご両親に暴力を振るわれたり、色々、大変だったんだなー」


義和が言うと、

真鈴は、義和のほうを睨みつけながら、

「う…うるさい」と、叫ぶー。


真鈴と、くまのぬいぐるみから聞こえる陽斗の声ー。

その二つが同時に聞こえるー


真鈴が叫ぶー。


「お前に、僕の苦しみが分かるかー?

 お前に、僕の何が分かるー!


 幸せそうな顔しやがって…!!

 僕は…僕は…そういうのが、大っ嫌いなんだー!」


真鈴が大声で叫びー、

再び目を真っ赤に光らせて、髪を逆立たせるー。


「ーーー俺には分かる!!!!!!」

義和は大声で叫んだー。


「ーーー!?」

真鈴が唖然とした表情を浮かべるー


「ーー俺も、君と同じなんだー」

義和が悲しそうな表情で、

いつもの優しい笑顔とは全く別の表情を浮かべている

真鈴のほうを見つめるー


今の真鈴は、見た目は真鈴でも、真鈴じゃないー。


それをイヤというほど痛感しながらー

それでも、真鈴を助けるためにー

豹変した真鈴のほうをじっと見つめるー。


”操られている娘”を見るなんて、気分の良いものではないー

けれどー

それでも、逃げるわけにはいかないからー。


「--同じ?」

真鈴が不愉快そうに呟くー


くまのぬいぐるみを手にしたままー。


「ーーーそう…俺も君と同じなんだー。」

そう言うと、義和は自分の服の腕をまくって見せたー。


そこにはー

痛々しい傷跡が残されていたー


「ーーー…!」

真鈴が表情を歪めるー。

娘の真鈴には見せないようにしていたこの傷跡ー。


痛々しい傷跡を見せながら、義和は呟くー。


「ーーー…俺も小さいころ、君と同じようにー

 両親から、暴力を振るわれたり、色々辛い思いをしたよ」


義和が言うと、真鈴の逆立っていた髪が少しだけ

いつもの真鈴のような状態に戻っていくー。


「ーーーだから、君の苦しみは、よく分かるんだー

 俺も、君も、同じ思いをしたんだからー」


義和が言うと、真鈴は、くまのぬいぐるみをぎゅっと

抱きしめるとー


「ーーくっ…た、たとえそうだとしても、

 お前は今、とっても幸せそうじゃないか!!

 お前は今、すっごく幸せそうじゃないか!!!」


真鈴が声を張り上げて叫ぶー。


くまのぬいぐるみを抱えたままの真鈴は、

くまのぬいぐるみと同じセリフを叫ばされているー。


「ーーーあぁ、そうだ。今、俺は幸せだー。」

義和がそう言うと、

真鈴は、怒り狂った叫び声をあげるー。

近所にも響いてしまいそうな大声ー


髪を今まで以上に逆立たせてー

目を真っ赤に染めながら歯ぎしりをする真鈴ー


それでも、義和は臆することなく、

真鈴の方に向かって、1歩、また1歩と歩みを進めるー。


「ーーずるい…!ずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるい!」

怒り狂った真鈴が何度も何度も叫ぶー


普段、穏やかな真鈴がこんな振る舞いをすることは絶対にないー

真鈴とは思えないような声・形相で、叫び続ける真鈴ー


くまのぬいぐるみの目が何度も何度も赤く光りー

真鈴が「うあああああああああああああっ!」と怒り狂った形相で、

義和を見つめたー


虐待を受けてー

両親からの愛を受けずにこの世から去ることになった憎しみをー

真鈴の身体を使って、陽斗は義和にぶつけようとしたー。


だがーーー


「ーー今からでもーーー」

義和は、真鈴の目の前にやってくると、真鈴の頭を撫でたー。


「ーー今からでも、遅くはないんじゃないかー?」

とー。


「ーーーえ…」

鬼のような形相を浮かべていた真鈴が、少しだけ穏やかな

表情を取り戻して、義和のほうを見つめるー。


「ーーー君だって、今、ここに存在してるー。

 だから、まだ遅くなんてないはずだー。

 今からでも、君は幸せになれるはずだー!」


義和が言うと、

真鈴は「僕なんかが幸せになれるわけがない!」と

泣きながら叫ぶー


「ーーなれるーーー

 君はー君は、何もしなくたって、友達がいるじゃないかー」


義和が言うー。


「ー君が真鈴に、自分の一部を憑依させて操ったりー

 そうやって、真鈴を支配したりしなくてもー

 真鈴は君がこの家にやってきて、本当に喜んでた!

 君は、真鈴と友達になれてたはずなんだ」


義和の言葉に、真鈴は表情を歪めるー。


くまのぬいぐるみの中にいる陽斗の魂は、

真鈴が”自分”を受け取った時のことを思い出すー。


真鈴は、無邪気に、本当に嬉しそうに

”くまさん”と言っていたー。


「ーーーー…でも……でも、僕はーー」

真鈴の目から赤い光が消えてー、

くまのぬいぐるみを持つ手が震えるー。


「ーーー……君が辛い思いをしてきたのは分かったー。

 だからーー

 妻にもちゃんと説明するー。


 お願いだー。

 真鈴を返してくれー。」


義和が必死に説得を続けるー。


「ーーーー君が寂しいのなら、

 俺や三美子や、真鈴が、君の家族になってやるー。


 本当につらかったよな。

 でも、もうこれ以上ー、誰かを傷付けることはしないでくれー」


義和が真鈴を再び抱きしめるー。


「ー傷つけられる痛みを一番知ってるはずの君がー

 傷付ける側になっちゃいけないー」


義和が優しく、”父”として諭すようにして言うとー

真鈴は目から涙をこぼしながら「ーーーごめんなさい…」と、

静かにそう呟いたー。


「ーーーーはは…えらいぞ。

 真鈴を、元に戻してくれるか?」


義和はそう言うと、

真鈴は静かに頷いたー。


そしてー

くまのぬいぐるみの目が赤く光るー。


真鈴がビクンビクンと震え始めて、

しばらくその動作を繰り返すー。


「うっ…あ、、、あっ…」

ピクピク震えながら、時折苦しそうに無表情でうめく

真鈴を見て、義和は心配そうに

自分の拳を握りしめたものの、

くまのぬいぐるみの声で、

”大丈夫…僕は約束を守るからー”

と、そう、聞こえてきたー


義和は不安を押し殺して頷くと、

そのまま真鈴の様子を見つめるー


やがて、真鈴の表情から険しい表情が消えてー

真鈴はその場に倒れ込んだー


くまのぬいぐるみが、真鈴の手から離れるー。


「ーーーー…真鈴」

義和が倒れた真鈴を呼び掛ける。


それと同時に、くまのぬいぐるみをまた手にしてしまわないように、

真鈴の側から離すと、

「真鈴!真鈴!」と、義和は何度も何度も

真鈴の名前を呼びかけたー


「ーーーう…」

真鈴が目を覚ますー。


そしてー

義和のほうを見つめるー


「パパ…」

真鈴が弱弱しく、そう呟いたー


真鈴の中に植え付けられていた

陽斗の怨念の一部ー

それも失われたのだろうかー


真鈴は「パパ…ごめんなさい…」と

目に涙を浮かべながら呟いたー


自分が、くまのぬいぐるみに支配されていた時の

ことを覚えているのだろうかー


「大丈夫ー。大丈夫、もう、大丈夫だからな」

安心させようと、真鈴に対して義和は

何度も何度も、そう言葉を口にしたー


「ーー三美子!」

義和は妻の三美子を呼ぶと、

三美子も目に涙を浮かべながらやってきて、

目を覚ました真鈴を優しく抱きしめたー


・・・・・・・・・・・・・・・・


10分ちょっとが経過して

ようやく落ち着いてきた三人は

ため息をつくー。


義和は起きた出来事を全て妻の三美子に

改めて説明したー。


原因はくまのぬいぐるみであったことー

くまのぬいぐるみに潜んでいた、陽斗という、

死んだ少年の怨念が宿っていたことー

その陽斗の怨念が、真鈴に自分の怨念の半分を憑依させた結果、

真鈴が両親を憎み、豹変したことー

その陽斗を説得して、陽斗はくまのぬいぐるみの中に戻ったことー


「ーーでも、よく説得なんて…」

三美子が言うと、

「ーーーこれがあったおかげだよ」と、

腕の傷を見せたー


「ーーーくまのぬいぐるみにいた怨霊はー

 虐待されて死んだ子の怨霊だったー。


 ”僕の何がわかる!”って言われたからー

 ハッと思いついてさー」


義和は安心した様子で言うー。


「ー”前にバイクで急に飛び出してきた猫を避けた時に

 転倒したときの傷”よね?」


三美子の言葉に、義和は「あぁ。あの時は驚いたよ」と笑うー。


”俺も過去に虐待を受けていた”

という義和の言葉は嘘だったー

陽斗を説得するため、咄嗟に思いついたのだー。


義和は虐待を受けたことはないし、

両親との仲も良いー。


けれどー

あの少年の怨念から、真鈴を救うためには、

必要な嘘だったー。


「さてー」

義和は、立ち上がると、くまのぬいぐるみのほうを見つめたー


「パパ?」

真鈴が不安そうに呟くー。


「ーーまた新しいくまさんを買ってあげるから、ごめんな」

義和はそう言って真鈴の頭を撫でると、

真鈴は不安そうに「くまさん、どうするの?」と呟くー


義和は少しだけ気まずそうに、

「真鈴を守るためだから、な?」と優しく微笑むと、

真鈴に自分の部屋に戻っているように告げてー

真鈴がいなくなったのを確認してからー

くまのぬいぐるみにハサミを突き立てたー


妻の三美子が少しだけ驚くー


「ーーまた、あんなことがあると大変だからー。

 責任をもって処分しなくちゃいけないー」


「ーーーー君が寂しいのなら、

 俺や三美子や、真鈴が、君の家族になってやるー。


 本当につらかったよな。

 でも、もうこれ以上ー、誰かを傷付けることはしないでくれー」


くまのぬいぐるみに宿る陽斗に言った言葉を思い出しながら、

義和は「ごめんな」と、静かに呟くー


「家族を守るためなんだーわかってくれ」

そう呟くと、くまのぬいぐるみを、姿形が分からなくなるまで

切り刻んでー

その日のうちに、義和は庭でくまのぬいぐるみを燃やして

処分したー。


”ずっと、真鈴がくまのぬいぐるみを肌身離さず持っていた”


それはー

”持ってないと”相手を操ることができないことを意味するー


「ーーーーー」

義和は、燃え尽きる炎を見つめながら

”安らかに眠ってくれー”と、

心の中で陽斗に祈りをささげたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーふ~~~~ん…」

真鈴は一人、自分の部屋に座ったまま、

そう呟いたー


「ーーそうやって、”嘘”つくんだー」

真鈴が静かに呟くー

冷たい口調でー。


「ふ~~~~~~~~~~ん…」

何度も、何度も窓のカーテンの隙間から

燃え尽きたくまのぬいぐるみの残骸を

見つめる真鈴ー


「ーー大人って、やっぱずるいやー」

真鈴はそう呟くと、目を赤く光らせたー


今度は信じたのにー

家族になってくれるって言ったのにー


「ーー僕を…僕を騙したな」

真鈴が何度も何度も舌打ちをするー。


目が真っ赤に光りー

髪が逆立ち始めるー


ギリギリと歯ぎしりをしながら、真鈴は

何度も何度も呟くー


「許さない…許さない…許さない…許さない…許さない…

 全部、、全部全部全部…お前らの幸せを壊しつくしてやるー」


くまのぬいぐるみに宿っていた陽斗の怨霊はー

”くまのぬいぐるみ”が燃やされたことによりー

ぬいぐるみから解き放たれてしまったー。


自由に移動できるようになりー

真鈴に再び憑依し、真鈴の身体を完全に支配したー


”や、、、やめて…パパとママに…何も…何もしないで…

 お願い…お願いだから”


正気に戻っている真鈴本人の意識が

真鈴を再び乗っ取った陽斗に必死に呼びかけるー


”お願いーーおねがーー


「ーーうるさい!!!」

真鈴が大声で叫びー机を叩いたー


「ーお前なんか、消えちゃえー」

真鈴はそう呟くとー

”真鈴の意識”を強い怨念で抑え込んで、消してしまうー


「ーーパパ…ママ…

 よくも僕を騙してくれたなー…」


真鈴はそう呟くと、

目を真っ赤に光らせて、不気味な笑みを浮かべたー



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


娘の様子が…もっとおかしくなってしまいそうな最終回でした~!


ちなみに入れ替わりモノの「葉っぱのわたし」は忘れているわけでは

ないので、安心してくださいネ~!

(昨日が入れ替わりだったので、

 なるべくジャンルを重複させないように順番を調整しています~!☆)


お読みくださりありがとうございました~!

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