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女子高生・麻優美の身体になってしまった暗殺者の男は、

明るいうちは女子高生、夜には、これまで通り暗殺者として

麻優美の身体を使って生活を続けていたー。


高校では、麻優美を慕う後輩の美彩という少女から

突然告白されて、女子同士で付き合うことにー。

”不思議な後輩だな”と思いながらも

何だかんだで”女子高生”と”暗殺者”としての

二重生活を麻優美(暗殺者)は楽しんでいたー


一方、病院では

入れ替わった原因の「落雷」事故以降、

昏睡状態が続いていた

”暗殺者の身体になった麻優美”が、目を覚ましていたー。


☆前回はこちら★↓

fanbox post: creator/29593080/post/2707024

・・・・・・・・・・・・・・・・・・


麻優美(暗殺者)は、近づいてきた試験勉強を終わらせると

「ふんー」と呟いたー。


暗殺者の男は、元々学力もそこそこ高く、

今更勉強をする必要はないのだが、予習も兼ねて勉強していたー。


ジャージ姿のまま、髪を邪魔そうに払いのけると、

麻優美(暗殺者)は、すぐに部屋の中に隠していた

”専用のスマホ”を手にしたー。


彼が暗殺業に使っているスマホだー。


鋭い目つきで”依頼のチェックリスト”を見つめる麻優美(暗殺者)ー


現在受けている依頼や、

ターゲットの行動や、始末する予定の時間、

報酬の支払い状況など、あらゆることが記されているー。


「ーーーー俺だ」

そのスマホを使い、依頼人の一人に連絡を入れるー。


「ーーあぁ…あぁ、、それで間違いないんだろうな?」

確かに、麻優美の声ー。

だが、その声は低く、迫力に満ちていたー。


「ーーわかった。明後日までにターゲットは始末するー」

確認の電話を終えると、麻優美(暗殺者)は、

「ーー次はこいつを殺るか」と、無表情のまま呟くー。


♪~~


机の上に置いてある麻優美の可愛らしいスマホが鳴るー。


麻優美(暗殺者)は、自分のスマホを置くと、

麻優美のスマホを手に「あ、美彩~?どうしたの~?」と

”女子高生”として振る舞うー。


さっきまでの冷たい表情と口調が、

まるで別人のように、明るく、女子高生らしい口調になっているー


「うん、うん、えっ?ほんとに~?よかったじゃん!」

他愛のない雑談をする麻優美(暗殺者)は、笑顔だったー。


麻優美としての記憶や、

麻優美としての思考がすべて流れ込んでいるからこそ、できる芸当ー。


自分が麻優美として行動することも、もはや朝飯前なのだー。


後輩・美彩との会話を終えて、スマホを置くと、

「ーーーークク…」と、笑いながら、髪をしばらくの間かきむしるような

仕草をしてー、鏡のほうを見つめたー。


「ーそれにしても、”俺”と”わたし”

 両方の生活をしているとー

 頭がおかしくなりそうだぜー」


麻優美(暗殺者)はそう呟きながらも、不気味な笑みを浮かべたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌週ー。


試験は終わり、文化祭が近づいていることもあり、

生徒会の話し合いが、遅くまで行われたー。


あたりが暗くなってきて、ようやく話し合いが終わると、

麻優美(暗殺者)は、後輩の美彩と一緒に

下校を始めたー。


「ーー可愛くてかっこいいとか、先輩ってホントに

 最強ですよね~」

後輩の美彩が笑いながら言うー。


「ーー何よそれ~」

麻優美(暗殺者)は苦笑いしながらも、

”彼女”となった後輩の美彩と一緒にいるのは

心から楽しく思えたー。


自分は、試験勉強をしたり、

こんな小娘と一緒にいて”楽しい”と感じるような

人間だっただろうかー。


麻優美(暗殺者)は、美彩と雑談しながら考えるー。


これもー

”麻優美の記憶と思考”が、自分の中に流れ込んできたからこそ、

感じる感情なのかもしれないー。


麻優美の記憶や思考が流れ込んだときー、

一瞬、自分を見失いそうになったぐらいだー。


今でも”俺は俺だ”という自我は確かにあるし

”わたしは麻優美”ではなく、

”麻優美という女子高生の記憶と思考を読み取っただけ”なのも

しっかりと自覚しているー。


だが、それでも、”俺”としての思考があると同時に

自分の中には”わたし”としての思考もあるー。

だからー


「ーーー先輩!聞いてますか~?」

美彩が不満そうに頬を膨らませながら言うー。


「ー落雷に打たれて、退院してからの先輩って

 なんだか、ちょっと変わった気がしてー

 最初は戸惑いましたケド、やっぱり先輩は先輩ですし、

 ホントに、先輩と出会えてよかったですー」


屈託のない笑みを浮かべる美彩ー


その言葉に、穏やかな笑みを浮かべる麻優美(暗殺者)ー


だがー

その時、麻優美(暗殺者)は突然表情を曇らせたー。


「ーー危ない!」

麻優美(暗殺者)がとっさに美彩を突き飛ばし、

自分は、スカートをふわりとさせながらバク転をして、

”何か”を回避したー。


路地の近くの建物の壁には”ナイフ”が刺さっているー。


「ーーえ…」

驚く美彩ー。


麻優美(暗殺者)は、鋭い目つきで、

”ナイフを投げてきた人物”のほうを見つめたー


その人物はー

黒い覆面をかぶったー

”自分自身”ー


入れ替わった相手ー

暗殺者になった麻優美だったー。


「ーーどういうつもり?」

麻優美(暗殺者)は、美彩が見ていることもあってか

”麻優美”として、元自分に言い放つー。


暗殺者の身体の中身は、当然、麻優美のはずだー。

落雷のあとは、ずっと昏睡状態だったはずだがー、

目を覚まし、無事に退院したのだろうー。


「ーー言ったはずだー」

暗殺者(麻優美)が言うー。


「恨みはないが、これが俺の仕事だー」

とー。


「ーーー!?」

麻優美(暗殺者)は表情を歪めたー。


入れ替わる前に、

暗殺者の男が、麻優美に言ったセリフだー。


「ーーー…美彩」

麻優美(暗殺者)は叫ぶー


「こいつの狙いはわたしー。

 美彩は先に逃げて」

麻優美(暗殺者)は、狼狽える美彩にそう言い放ったー


「せ、先輩…え?いったい…なに…?」

怯える美彩に対して、

麻優美(暗殺者)は

「いいから早く逃げろ!」と叫んだー。


美彩は驚いた様子で、そのまま走り去っていくー。


美彩の姿が見えなくなったことを確認すると、

麻優美(暗殺者)は呟いたー。


「ーーーで?どうして”元自分の身体”を殺そうとする?」

麻優美(暗殺者)が言うー。


暗殺者の身体の中身は麻優美だー。

その暗殺者(麻優美)が、麻優美(暗殺者)にナイフを

投げてきた、ということは、

暗殺者になった麻優美が”元自分の身体”を殺そうとしていることになるー。


「ーー悪いな…俺は”暗殺”で生きてるんでな…

 目撃者は消しておくに限るー」

暗殺者(麻優美)はそう言うと、麻優美(暗殺者)を蹴り飛ばしたー。


「ーー…まさかお前ー」

麻優美(暗殺者)は表情を歪めるー。


暗殺者の身体になった麻優美の言動は

完璧に”俺”で、あるとー

そして、この身体ー、

暗殺者になった麻優美にとって、”元・自分の身体”であるはずの

この身体を、容赦なく暗殺者(麻優美)は殺そうとしているー。


「ーーー消えてもらうぞ!」

暗殺者(麻優美)が叫ぶー。


「ーお前!自分のこと、覚えてないのか!」

麻優美(暗殺者)が叫ぶー。


暗殺者(麻優美)は「何を言っている?」と首をかしげるー。


麻優美になった暗殺者は、”自分のこと”を思い出すー。

麻優美の身体になって、しばらくしてー

”麻優美の記憶と思考”が流れ込んできたー


その時の不気味な感触は今でも忘れないー

”他人のすべて”が一気に自分の中に流れ込んできたあの感触ー


”少し油断をすれば”

自分が自分であることも忘れてしまいー

身も心も麻優美になってしまうような、そんな感触だったー。


暗殺者の男は、強い自我で自分自身を保ち、

今では麻優美の身体と記憶、思考を持った状態で、

”俺は俺である”と認識できているー


しかし、入れ替わったあとから昏睡状態が続いて暗殺者(麻優美)はーー

暗殺者の記憶と思考が流れ込む時点でー

麻優美の自我は完全に飲み込まれてー

中身は麻優美でありながら、暗殺者の記憶と思考に完全に

飲み込まれてしまっているーー


麻優美(暗殺者)はそう考えたー。


「ーチッ」

麻優美(暗殺者)は、女子高生とは思えない身のこなしで

暗殺者(麻優美)の攻撃を回避するとー

暗殺者(麻優美)が驚いた表情を浮かべるー


「ーお前…何者だ?

 普通の女子高生の動きではないな…?」

暗殺者(麻優美)の言葉に、麻優美(暗殺者)は、

「俺が、その身体の持ち主だー。

 この前、落雷を受けた時に入れ替わっただろ?」と呟くー


暗殺者(麻優美)はきょとんとした表情を浮かべたあとに、

笑いだすー


「ーーははははははは!助かりたい一心で、

 ”入れ替わり”なんて妄想を口にするとはー

 やはり、所詮は小娘ー」


冷たい目で暗殺者(麻優美)は、

”元自分の身体”を自分だと認識できないままー

自分の身体を”小娘”呼わばりするー


「ー悪いな。もう時間がないー死んでもらおう」

暗殺者(麻優美)は、ナイフを手に、麻優美(暗殺者)を見つめるー


麻優美(暗殺者)は、少しだけ複雑そうに呟くー


「ーお前は、寺坂麻優美だぞ?

 この身体は、お前の元々お前のものだぞ?」

麻優美の声で、麻優美(暗殺者)はそう呟くー


雨が降ってきたー

あの時と、同じようにー


暗殺者(麻優美)が、容赦なくー

麻優美(暗殺者)を殺しにかかるー。


「ーーーーー」

麻優美(暗殺者)は、髪を揺らしながらー

それを回避するとー


”たとえ、俺の記憶と思考を持っていてもー

 ”感覚”ー

 実際の経験年数が、違いすぎるー”


麻優美(暗殺者)は、スカートと髪をふわりと揺らしながら

超人的な反応で、空中を舞うとー

いつの間にか暗殺者(麻優美)の手から盗み出したナイフでー

暗殺者(麻優美)の首筋を切り裂いたー


「ーーーーがっ… 貴様… 何者…?」

もうー

自分が麻優美だと認識できていない暗殺者(麻優美)が呟くー


”普通の女子高生に、暗殺者の俺が返り討ちにー?”

信じられない、と目を震わせながら、

その場に倒れ込む暗殺者(麻優美)ー


「ーーーーー……」

”わたしは、わたしを殺したー”

俺は俺だー

でもー麻優美の記憶と思考をすべて受け継いでいる以上ー

まるで、”自分”を殺したような気がしてー

そして、何より、”元・自分の身体”を殺したことで、

麻優美(暗殺者)は、返り血を浴びた顔にー

涙を輝かせたー


「ーーーせ…先輩…」

麻優美(暗殺者)が心配で戻ってきていた美彩は、

ちょうど、”先輩が人を殺す”瞬間を見て、震えていたー


麻優美(暗殺者)は”美彩に見られた”ということを察して、

手に持っていたナイフを握りしめるー。


けれどー

麻優美(暗殺者)は少しだけ笑ってー

そのまま、姿を消したー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


1週間後ー


「ーーーー」

生徒会の話し合いをしながら、美彩は寂しそうに微笑むー。


もうすぐ文化祭ー

生徒会の話し合いの場に、

憧れであり、彼女でもあった、”先輩”の姿はないー


あの日以降、

麻優美は、姿を消したー。

自宅にも帰っておらず、両親は心配して、

捜索願を出しているー。


だがー

それでも麻優美(暗殺者)が見つかることはなかったー


あの晩ー

”先輩”が殺した男は、数々の”殺し”に関わっていた男で

あることが、警察の調べで判明していてー

”犯人”は世間的には不明ということになっているー

”裏社会の抗争”であると警察は判断しているのだー。


でもー

”先輩はきっと、悪い人たちと、戦ってるんですね…”

美彩は、そんな風に思いながら

”いつかまたー

 いつかまた、先輩に会える日がきっと来るからー”と、

悲しそうに、”先輩”のいない机を、静かに見つめたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーー」

血のついたナイフを手に、ラバースーツ姿の麻優美(暗殺者)は

手を洗い、そのまま夜の街を歩き始めたー


”自分”は変わったー。

これまではどんな依頼でも受けていたがー

今はー

”悪さをしている奴がターゲットの場合”のみ

依頼を受けるようにしているー


何故だろうかー

ターゲットが誰であろうと、自分には関係ないはずなのにー


「ーーー」

麻優美(暗殺者)はそんな風に思いながら、

”死んでしまった本物の麻優美”のことを考えると、

いつも胸が苦しくなることに、不思議な感情を抱くー。


”この女の記憶と思考を引き継いでいるからー…か”


麻優美(暗殺者)は、そのまま夜の闇へと姿を消していくー。



その後の麻優美の行方を知る人間は、少ないー


けれどー

麻優美の両親の元には

定期的に差出人不明のお金が、届きー

何かトラブルが起きるたびに、”何者かの力によってそれが解決されている”

という不思議な現象が、起きていたー。


「ーーきっと、麻優美が守ってくれているのかなー」

麻優美の母親は”行方不明になってしまった娘”のことを

思いながらー

静かにそう呟いたー



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


アサシン☆JKの最終回でした~!

「誰視点」で考えるかによって、

結末の見え方も変わってくる結末デス~!

(麻優美本人からしたら、災難以外の何物でもないですネ…)


お読みくださりありがとうございました!!

(Fanbox)


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