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とあるホテルの一室ー。


「娘の行方は、掴めたかー?」

険しい表情を浮かべた男が、たった今、部屋に入ってきたばかりの男に

そう声を掛けると、「残念ながらー」と

側近の男は首を振ったー。


「くそっ…」

ホテルに潜伏していた警察庁長官・西園寺 零は、

その瞳を震わせたー。


モルティングたちによる”天誅”が始まったー。

警察内部の闇に携わっている人間たちが、次々と殺害されているー。


西園寺警察庁長官は、身の危険を感じ、このホテルに潜伏ー

限られた人間のみとやり取りしながら、

モルティングのー、

そして、モルティングの一人・ジェームズ結城に”皮”にされて

乗っ取られてしまった最愛の娘・梓の行方を捜しているー。


「ーーーここで終わるわけにはいかないー。」

西園寺警察庁長官は歯ぎしりをしながら、小声で呟くー。


西園寺 零は、”権力”を手にするためなら、手段を択ばない男だったー。

あらゆる手段を使い、”警察庁長官”という権力を手に入れたー。


”力”を手に入れることに溺れた彼はー

徹底的に、自分の手を汚したー。


気づいたときにはー

いつしか彼はー

”警察組織の闇”そのものとなっていたー。


警察に巣くう”闇”ー

いつの間にか、自分がその”闇の中心部”の存在になっていたのだー。


・・・・・・・・・・・・・


登場人物


長瀬 治夫(ながせ はるお)

若き警察官。”皮”にまつわる事件に巻き込まれていく


松永 亜香里(まつなが あかり)

治夫の彼女。現在同居中。


目黒 圭吾(めぐろ けいご)

警視正。計算高い性格の持ち主で、出世欲も強い。


堂林 幸成 / 三枝 真綾

目黒警視正率いる「モルティング対策班」のメンバー。


黒崎 陣矢(くろさき じんや)

指名手配中の凶悪犯罪者。”モルティング”のひとり。


中曽根 佳純/ジェームズ・結城

”人を皮にする凶悪犯”通称・モルティングたち。


泉谷 聖一(いずみや せいいち)

治夫の中学時代の恩師。モルティングたちに”皮にする力”を与えた黒幕。


西園寺 零(さいおんじ れい)

警察庁長官。警察の”暗部”を司る人物。


・・・・・・・・・・・・・・


★あらすじ★


モルティング対策班の仲間の一人・三枝真綾は

警察内部の闇を司る西園寺警察庁長官の送り込んだ潜入捜査官だったと

知りながら、治夫は、モルティングに捕われた三枝真綾救出のため、

廃病院へと乗り込むー。


そこで、人を皮にする凶悪犯=モルティングの

中曽根佳純、春山正義の二人と対峙、

激闘の末に、春山正義を射殺し、真綾を救出することに成功するー。


対策班の仲間、堂林幸成も合流し、

治夫は、救出した真綾から、話を聞き出そうとする…。


★前回はこちら↓★

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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


廃病院ー


人を皮にする凶悪犯・春山正義の遺体と、

正義に皮にされていたOLの”皮”が横たわるその部屋でー、

治夫に救出された三枝真綾は表情を歪めていたー。


ギャル風の風貌の真綾ー。

しかし、真綾はいつものような”ギャル”な振る舞いではなくー

落ち着いた口調で口を開いたー。


「ーーどうして…わたしを助けたの?

 わたしの正体に、もう気づいているんでしょ?」


真綾のその言葉に、治夫は穏やかな表情で答えたー。


「ー人を助けるのが、警察官の仕事ですからー」

治夫の答えは、とてもシンプルだったー。


「ーー三枝さんが、何か悪いことをしているなら、

 それは、”そのあと”調べればよいことですからー」


治夫の言葉に、真綾は少しだけ息を吐くとー


「ーー……初めて会った時より…

 だいぶ、成長したみたいねー」

と、穏やかな笑みを浮かべたー。


「ーー…ちょっと待ってくれ!どういうことだ?

 俺にも説明してくれ…!」

黙って話を聞いていた対策班メンバーの一人で、

好青年風の堂林幸成がそう言うと、

治夫が、少しだけ迷ってから「実はー…」と、

”モルティング”と”警察組織の闇”について、説明するー


そして、真綾が自らの口で、幸成に自分の正体を語ったー。


自分は、警察内部の闇を司る

西園寺警察庁長官が送り込んだ潜入捜査官であり、

目黒警視正や、対策班の行動を見張りながら、

モルティングの情報収集を行っていた人間であるとー。


「ーーユッキー…いいえ、堂林さん…

 騙していて、ごめんなさいー」

真綾が頭を下げると、幸成は

「ー急に、色々な情報が入ってきて、頭が追い付かないなー」

と、苦笑いしたー。


治夫も真綾も、少しだけ微笑むとー

治夫は真剣な表情に戻ってから、真綾の方を見つめたー。


真綾は、治夫が何を言いたいのか理解し、頷くと、静かに答えたー。


「ーー西園寺警察庁長官の潜伏場所、教えてあげるー」


真綾はそれだけ言うと

「ただ、この場所はー、奴らが盗聴してる可能性もあるからー」と、

対策本部に移動してから話すことを約束したー。


「この子も、本部に運ばないとな」

幸成は、ストーカー男の春山正義に”皮”にされてしまい、

脱ぎ捨てられた状態のままのOLを指さすと、

治夫も「そうですねー」と頷いたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


治夫の彼女、亜香里が、治夫と同居しているアパートの一室に

帰宅したのを確認した女は笑みを浮かべたー。


その女ー

理沙は、”人を皮にする凶悪犯”

黒崎陣矢の手によって皮にされて、乗っ取られているー


理沙の意志とは関係なくー

理沙は今、亜香里がいる部屋を見つめているー。


「ーークククー」

不気味な笑みを浮かべる理沙ー。


治夫にとって、初めて遭遇した”人を皮にする凶悪犯”が

この黒崎陣矢だったー。


治夫が勤務していた交番の先輩刑事ー、

塚田総司と宮辺奈々子の命を奪ったのも、この男ー


治夫を慕っていた女子高生・由愛を皮にしたのもこの男ー


治夫にとっては因縁の相手であり、

最も憎むべき相手でもあったー。


部屋の明かりがついたことを確認して、理沙は

不気味な笑みを浮かべるー。


「ークククー

 お前はもうすぐ”黒崎 亜香里”という名の芸術品になるんだぜー」


ペロリと唇を舐める理沙ー。

長瀬治夫の彼女である松永亜香里を”皮”にして支配するー。


その時ー

長瀬治夫がどのような顔をするか、楽しみだー。


既に死亡した仲間の臼井隼人も

長瀬治夫の妹・聡美を皮にして支配したと聞いているがー

”あいつのやり方”では、長瀬治夫のようなタイプのやつには通用しないー


現に、臼井隼人は射殺され、長瀬治夫の妹・長瀬聡美も

無事に救出されているー。


若き警察官を”絶望”に追いやるのは、

臼井隼人のような”計算された謀略”ではないー。


若さと勢いは時に”計算外”の行動を起こすー


黒崎陣矢は、理沙の姿のまま、凶悪犯罪者としての笑みを浮かべるー。


長瀬治夫のような若き警察官を

”絶望”に追いやるのはー

”狂気”ー


そうー

黒崎陣矢が持つようなー

”圧倒的な狂気”なのだー。


「ーーーー」

理沙は黒崎陣矢の意のままに動き、

治夫の彼女・亜香里の部屋の方に向かうー。


「松永亜香里ー」

表札を見て笑みを浮かべるー。


「ー今日からお前はー

 黒崎亜香里だー」


悪魔のような、笑みー。


しかしー


「ーーー!!!」

人の気配を感じて振り返ると、理沙の視線の先には、

目つきの鋭い男が立っていたー。


「ーー”モルティング”だな?」

その言葉に、理沙は、一気に警戒心を強めるー。


そして、スカートの中に隠していたナイフを

問答無用でその男に向かって振ったー。


がー

その男はそれをガードすると、理沙の身体を背負い投げで

投げ飛ばしたー


「ぐはっ!」

理沙が悲鳴を上げながらも、すぐに立ち上がりー

男の方を見つめるー


男は、治夫が目黒警視正に”亜香里の身を守ってほしい”と

相談したことで、

目黒警視正が手配していた”警護などを専門とする捜査官”ー


治夫との”約束”を目黒警視正は守ったのだー。


目黒警視正は、モルティング対策班の他にも

多数の”根”を張り巡らせているー。


「ーーチッ…」

理沙は舌打ちをすると、アパートの手すりから、

スカートと髪をふわっとさせながら、そのままアパートの1階部分に

飛び降りたー


「ーーーー”モルティング”が接触ー

 撃退に成功ー」


警察官が無線でそう連絡すると、

目黒警視正の声が応答したー


”深追いする必要はありませんー

 引き続き、松永亜香里に、不審な人物を近づけないよう、

 お願いしますー”


目黒警視正はそう返事をすると、捜査官との連絡を終えたー。


治夫の彼女である松永亜香里が、モルティングたちに

狙われる可能性は高いー。

治夫に頼まれて、目黒警視正は数名の捜査官を交代交代で

派遣し、”鉄壁の警護”を敷いているー。


「ーーー」

目黒警視正は身を隠している薄暗い部屋で、静かに微笑んだー。


彼の目的はー

”亜香里を守ること”なのかー

”治夫との約束を守ること”なのかー


それともー…


目黒警視正はー

”彼の思い描くゴール”

それだけを、見つめていたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「チッー」

黒崎陣矢に乗っ取られている理沙は、

逃亡しながら笑みを浮かべるー。


「ーー松永亜香里に警護がついていたとはなー

 そう簡単に、”黒崎”亜香里にはできねぇかー」


理沙は立ち止まって、亜香里のアパートの方を見つめると

笑みを浮かべるー


「クククー

 手に入れるのが難しければ難しい”芸術品”ほどー

 ますます手に入れたくなっちまうなぁ…」


理沙はペロリと舌を出しながら、

「ーー必ず、お前を黒崎亜香里にしてやるぜー…ククククク」

と、不気味な笑みを浮かべたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


夜になり、対策本部に戻った

治夫、真綾、幸成の三人ー。


真綾は「西園寺長官は、西地区のホテルに身を隠しているわ」

と、治夫に説明したー。


「ーー…俺が、西園寺長官に会うことはできますか?」

治夫が言うと、真綾は表情を曇らせるー。


治夫は、ただの”若き警察官”に過ぎないー。

西園寺長官からは”認識”すらされていないレベルだろうー。


「ーー会って、どうするの?」

真綾が尋ねるー。


「ーー俺なんかに、どうすることもできないかもしれませんけどー…

 西園寺長官と実際に会って、話がしてみたいんです。


 警察の”闇”は本当に存在するのかー、

 そして、西園寺長官は、今、何を考えているのかー。


 泉谷先生ー…モルティングたちの親玉と、

 目黒警視正ー

 その二人とは話をしましたけど、

 西園寺長官の考えは分からないし、

 泉谷先生と目黒警視正の話が真実とも限りませんー。


 西園寺長官と話をして、本当に警察内部に”闇”があるならー

 その中心人物が西園寺長官なら、俺は長官を許しませんし、

 もし、泉谷先生と目黒警視正の話に”間違った部分”があるなら

 それを知った上で、今後どうするか考えたいんです」


治夫は、真綾の方をまっすぐ見つめて、そう呟いたー。


”モルティング”

”警察内部の闇”

そして、”目黒警視正”


本当の”敵”は誰かー。

事件に関わる3つの思惑ー。

”3つの立場”すべての話を聞かなければいけないー

治夫は、そう考えていたー。


「ーーあなたに、何ができるの?」

真綾が呟くー。


「ーーー」

治夫は表情を曇らせるー


”警察庁長官”

治夫からすれば、雲の上の存在であり、

目黒警視正からしても、雲の上の存在であるほど、

”上”に立つ存在ー。


治夫が西園寺長官と仮に会いー、

西園寺長官の”闇”を直接確かめたとしても、

”ただの若造”に過ぎない治夫に、できることなど何もないー

真綾は、そう言いたいのだー。


「ーーそれでもーー

 俺は、”深淵”に足を踏み入れてしまった当事者としてー

 会わないといけないんですー」


目黒警視正と出会ったときに、治夫は言われたー。


「一度”深淵”に踏み込めば、もう逃れることはできないー。

 その”覚悟”があなたにありますか?」


とー。


まっすぐ真綾の方を見つめて、治夫は”覚悟”を示すー。


「ーー分かったわー…」

真綾はそう呟くと、

「ちょうど明日、西園寺長官と会う予定があるからー…

 あなたも一緒に連れて行ってあげるー」

と、治夫の方を見て呟いたー。


「ーーー…長瀬、気をつけろよー」

話を黙って聞いていた好青年風の幸成が、治夫に対して言うー。


「ーーはい。堂林さんー。ありがとうございます」

治夫が頭を下げると、

幸成は、真綾にホテルの場所を再度確認すると

「何かあった場合はこちらで対応できるようにしておくから、

 すぐに連絡してくれ」と、治夫に言い放つー。


「ー分かりましたー」

治夫が頷くと、幸成も力強く、治夫を見て頷いたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


「ーーごめんな亜香里ー。

 最近は全然ゆっくりできなくて」

治夫が申し訳なさそうにしながら

”せめて”と、家にいる間は積極的に家事をこなしていくー。


「ううん。大丈夫。

 治夫の仕事を理解して、わたしはここにいるんだからー」

亜香里が笑いながら言うと、治夫は「本当にいつもありがとう」と

亜香里に向かって頭を下げるー。


治夫は、”変わったことがないかどうか”

亜香里に確認するー。

亜香里には、目黒警視正が一時的に消息不明になった際に

全て話をしてあるー。


「大丈夫。今のところはいつも通り!」

亜香里がほほ笑むー。


亜香里も不安は感じているし、十分に警戒しているがー

それでも、治夫の前ではそのようなそぶりを見せないようにしていたー。


「ーーー……亜香里ー」

治夫は、少しだけ考えてから、まっすぐと亜香里の方を見つめたー。


「ーこの事件を解決できたらさー

 ーーー」


治夫と亜香里は、まだ”同居”している彼氏と彼女の間柄ー

元々治夫は、”そろそろその先”に進もうとしていたー。


だがー


「ーー今はだめ!」

亜香里が笑いながら治夫の言葉を止めるー。


「ー”この戦いが終わったら結婚するんだー”って、

 どっちかが死んじゃうやつだよ!」

と、冗談を口にしながらー


「ーーえ…あ、た、確かに…」

笑う治夫ー


「ーだからー

 今はまだ、その言葉、言っちゃだめー」

亜香里が唇に手を当てながら「しーっ」と、いうポーズをすると、

治夫は「ーーじゃあ…”終わらせてから”言うよー。必ずー」と

笑みを浮かべたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


治夫は、対策本部に足を運ぶ前に

目黒警視正と連絡を取っていたー。


”西園寺警察庁長官と会うー…

 なるほど…分かりました”


目黒警視正はそう言うと、

”場所はどこですか?”と尋ねてきたー。


「ーーーー…俺が教えれば、あなたは

 西園寺警察庁長官を消そうとするー…

 違いますか?」

治夫が尋ねるー


治夫も、目黒警視正も”警察内部の闇”をどうにかしたいと思う

気持ちは同じー


ただしー


治夫は”悪い部分はしっかりと明るみに出して、罪を受け入れて前に進むべき”

と考えているのに対しー

目黒警視正は”警察内部の闇を、闇に葬り去る”ことを目的としているー


目黒警視正は、警察内部の闇を明るみに出すことなく、

消し去ろうとしているのだー


”まさかー。私がそんなことをするとでも、お思いですか?”


「ーーいえ。」

治夫は首を振るー。


「ーですが、あなたは手を下さなくても、

 モルティングたちが、西園寺長官を狙うように、

 うまく誘導するはずー」


治夫が言うと、目黒警視正は少しだけ笑ったー。


目黒警視正はモルティングの出現をチャンスと捉えー

”警察内部の闇”をモルティングたちが始末するのを待ちー、

その上でモルティングも殲滅しようとしているー。


”漁夫の利”を得ようとしているのだー。


”治夫くんー

 西園寺長官は狡猾な男ですー。

 彼は、警察組織の”深淵”と言ってもいいー”


目黒警視正は話を戻すと、治夫に警告したー。


「はい…気をつけます」

治夫がそう返事をすると、


”深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ”


目黒警視正はそう呟いたー


”哲学者・ニーチェの言葉ですー。

 西園寺長官は深淵ー。

 治夫くんー

 くれぐれも、あなたが深淵に飲み込まれないようー

 注意することです”


目黒警視正の忠告に、治夫は、決意の表情で、答えたー。


「ーーもちろんそのつもりですー。」

とー。


そしてー

治夫は通話を終えると、妹・聡美が入院している病院に

お見舞いに訪れるー。


「ーーお兄ちゃん…!」

聡美が嬉しそうに微笑むー。


兄・治夫のことが大好きな聡美ー


モルティングの臼井隼人に皮にされてしまい、

救出には成功したものの、検査やケガなどから

まだ入院が続いているー。


聡美は相変わらず明るく振る舞っていたものの、

やはり、ふとした拍子におびえるようなそぶりを見せる

場面もありー

”心の傷”は癒えていない様子だったー。


「ーー聡美…また来るからな」

治夫は、聡美との雑談を終えると


”絶対にまた”来るからー、

と、決意を胸に対策本部へと向かったー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーこれから、西園寺長官の元に向かうけど、

 準備はいい?」


ギャル風の風貌はそのままの、真綾の言葉に治夫は頷くー。


「ー俺はここで待機してるから、

 何かあったらすぐに連絡してくれー。

 長官のいるホテルにも、すぐに駆け付けられるように、準備はしておく」


好青年風の堂林幸成の言葉に、

治夫は頷くと、深呼吸をしてから、真綾の方を見つめたー。


「ーー三枝さんー行きましょう」

とー。


真綾は、治夫の方を見て頷くと、

治夫を、”西園寺長官”の潜む”ホテル”へと案内するため、

対策本部の地下に止めてある車へと乗り込み、

その場所へ向かって走り始めたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーそうか。ご苦労ー」

モルティングの親玉であり、治夫の中学時代の恩師でもある

泉谷誠一はそう呟いたー。


背後から、西園寺長官の娘・梓が姿を現すー

穏やかそうな女子大生だが、

今は、モルティングにやとわれた殺し屋・ジェームズ結城に

”着られて”冷徹な殺人マシーンと化しているー。


冷たい目で泉谷を見つめる梓ー。


「ーその”服”の父親の居場所が分かったー」

泉谷がそう呟くと、

梓は無表情のまま「どこだ?」と呟くー。


「ーー場所はー」

泉谷が、”西園寺長官”の潜伏場所を、

ジェームズ結城に着られた梓に伝えると、

梓は冷たい目のまま「承知したー」とだけ呟き、

そのままライフルを手に、静かに闇の中へと消えたー。


「ーーーー”天誅”はまもなく完結するー」

泉谷は一人、笑みを浮かべるー。


”警察内部の闇”に対する復讐ー。

それが、まもなく完結するー。


「ーーーーー」

目的の達成が近いことを実感しながらー

泉谷は、西園寺長官の息子に殺された教え子のことを

思い浮かべー


「ーもうすぐ、お前の仇を、取れるからな」

と、寂しそうに呟いたー。



㉖へ続く


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コメント


今月最初の長編でした!


完結に向けて、物語も大きく動く場面が増えてくるので、

ぜひお楽しみくださいネ~!


今日もお読みくださりありがとうございました~!

(Fanbox)


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