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夏ー。

今日は夏祭りが行われる日ー


同じ高校に通う、

石山 啓太(いしやま けいた)と、

朝倉 麻奈美(あさくら まなみ)の二人は、

緊張した様子で、お祭り会場に向かっていたー。


啓太にとっても、麻奈美にとっても、

お互い、初めての恋人で、付き合い始めてからも、

どこか恥ずかしそうにしているような、奥手なカップルだー


今日は、初めてのお祭りデートでもあり、

二人ともドキドキしているのか、口数が減っていたー。


「ーーあ、、あの…朝倉さん…大丈夫?

 なんか調子悪そうだけど…」

啓太が心配そうに言うと、

麻奈美は「あ、うん…大丈夫」と、

恥ずかしそうに答えたー。


「ーーお祭りとか苦手だったら、ごめんね」

啓太の言葉に、

麻奈美は顔を赤らめながら

「そ、そうじゃなくて…その…」と、

啓太の方を見ずに答えるー。


「ーーわ、、わたし…彼氏とか初めてだし…

 その…こういうお祭りのデートとかも…

 初めてだから……


 緊張…しちゃって」


と、最後の方は小さい声になりながら呟いたー。


”か、、か、、可愛すぎる…”

と、思いながらも、啓太自身も奥手な性格で

ある故に、恥ずかしそうにしながら

「そ、そ、そ、そ、そっか…ぼ、僕も…」と、

やっとの思いで返事をしたー。


「ーーあ、……ちょっと、トイレ!」

啓太は、緊張から、いったん深呼吸をしようと、麻奈美の前から

離れて、トイレの方に向かったー。


そんなーー

お祭りで、デートを楽しもうとしている

もう一組のカップルがいたー。

啓太や麻奈美と同じ高校に通う別の男女、

佐々木 哲哉(ささき てつや)と、

神原 紗有里(かんばら さゆり)の二人ー。


こちらの二人は、啓太や麻奈美とは”正反対”な

タイプで、二人とも恋愛慣れしている積極的なタイプー。


ただ、二人とも浮気とかをするようなタイプではなく、

相手のことを思いやる気持ちを持っていることには

変わりない。


「ーー~~!待ち合わせ時間に遅れそうなんて、

 わたしってば、バカ!」

慌てた様子の紗有里ー。


紗有里は、哲哉との待ち合わせ場所に遅刻しそうになっていたー。

おしゃれで積極的なタイプの紗有里は

お出かけ前の下準備に時間をかけすぎてしまい、

遅刻しそうになっていたのだー。


彼氏の哲哉ともども、お互いに積極的な二人は

今日も手をつないだり、キスをしたりー

そんなお祭りデートになるはずだったー


「ーあぁ~せっかくの日なのに、遅刻とか最悪!

 哲哉もがっかりしちゃうだろうし…!」


そんな風に思いながら紗有里が走りにくい格好で

なんとか遅刻しないように、とダッシュしていると、

スマホが鳴ったー


一瞬、スマホの方に気を取られる紗有里ー。


視線をスマホの方に向けたわずか数秒のことだったー。

スマホから視線を外して、前を向いたその時ー


目の前に、クラスメイトの大人しい女子・麻奈美がいたー。


「ーーあっ!」

「ーーーきゃっ!?」


走ってきた紗有里と、衝突してしまう麻奈美ー。


二人して転倒してー

すぐに起き上がった麻奈美は、紗有里に「大丈夫!?」と

手を差し伸べたー。


「ーーえ…あ…うん… …え?」

紗有里が表情をゆがめるー。


”大丈夫?”と手を差し伸べた麻奈美の方も、

同じく表情を歪めていたー。


「え?なんでわたしが?」

「ーーえ…わたしが目の前に…?」

麻奈美と紗有里が同時に同じような言葉を口にするー


「ーーーえ???え???

 ま、、まさか…何これ?

 わ、、わたしと麻奈美ちゃんが、入れ替わっちゃったの!?」


積極的な性格故か、妙に状況を理解するのが早い麻奈美になった紗有里ー。

いつも大人しく、恥ずかしそうにしている麻奈美が、

自分の胸や髪を触りながら

「うわぁ…本当に麻奈美ちゃん!」と、ニヤニヤしながら

叫んでいるー


「ーーえ…嘘…?こんなことって…?」

紗有里になった麻奈美は戸惑いを隠せないー。

いつも”うるさいぐらい”明るい紗有里が、困り果てたような

表情を浮かべているー


それを見た麻奈美になった紗有里は

「すごっ!わたしってそんな顔もできるんだ!?」と

笑いながら紗有里(麻奈美)に近づくー。


「ーー…え……え…」

まだ戸惑った様子の紗有里(麻奈美)ー


「ーーほら、よくあるじゃん!

 ぶつかったら入れ替わっちゃった!ってやつ…

 たぶん、あれだよね!


 もう1回ぶつかればもとに戻れるんじゃないかな?」


麻奈美(紗有里)が、

麻奈美とはいつもと違う声のトーンでしゃべるー


”わたし、そんなしゃべり方もできるんだ…”と

思いながら、紗有里(麻奈美)が麻奈美(紗有里)の方を見つめると、

「遅刻しそうだったから、前方不注意だった…ごめんね…

 早くもう一度ぶつかって、もとにもどろ!」

麻奈美(紗有里)の言葉に、

二人は、さっきと同じように、ぶつかろうと準備をし始めるー。


ぶつかっただけで、元に戻れるのかは分からなかったがー

もう一度、試してみる二人ー。


しかしーー


「あれっ!?戻ってない!?」

麻奈美(紗有里)が慌てるー。


紗有里(麻奈美)は、戸惑った様子で顔を赤らめるー。


その時だったー


「!!」

紗有里(麻奈美)が近くのコンビニから、トイレを終えて

出てくる彼氏・啓太の姿を確認したー。


「あ、、あの…石山くんが…」

紗有里(麻奈美)が言うと、

「あ、麻奈美ちゃんも彼氏とデート中だったの?」

と、麻奈美(紗有里)が笑うー。


麻奈美の普段の笑い方とはまるで違う笑い方で、

”中身が違うだけでこんな風に変わるんだなぁ…”と

紗有里になった麻奈美は思わずにはいられなかったー


「って、どうしよ!?ヤバくない!?

 わたしが麻奈美ちゃんになっちゃってるし!」

麻奈美(紗有里)は、

”どうしよう!どうしよう!”と叫ぶー。


”入れ替わっちゃった”なんて信じてもらえるだろうかー。

いや、なかなか難しいだろうし、混乱するかもしれないー。


半分パニック気味で、どうしようか考える麻奈美(紗有里)はー

とっさに叫んだー


「ま、、麻奈美ちゃん!と、とりあえず、わたしとして

 哲哉のところに行って!

 待ち合わせ場所は、お祭り会場の西側!

 もう、遅刻になっちゃうし!急いで!」


麻奈美(紗有里)の言葉に、

紗有里(麻奈美)は「えっ…えぇっ!?」と叫ぶー。


それはつまり、

麻奈美が、紗有里の身体で、紗有里の彼氏・哲哉と、

紗有里が、麻奈美の身体で、麻奈美の彼氏・啓太と

デートをすることを意味するー


「ほ、ほら、時間がないから!お祭りが終わったら合流して

 元に戻る方法を考えよう!

 ほら、、早く!」


麻奈美(紗有里)の言葉に、

紗有里(麻奈美)は「そ、そんなぁ~…」と言いながら、

勢いに押されてそのまま、哲哉との待ち合わせ場所に向かうー。


「ーーーあ!わ、、わたしの身体で変なこと…しないでね?」

立ち止まって恥ずかしそうにする紗有里(麻奈美)ー


「ーうん!わ、わかってるよ!

 麻奈美ちゃんも、わたしのフリ、よろしくね!」

麻奈美(紗有里)が言うー。


そしてー

紗有里(麻奈美)が困惑しながら立ち去っていくと同時にー

麻奈美の彼氏・啓太が戻ってきたー


「ーー朝倉さん…ごめん、もう大丈夫ー」

啓太が言うと、

「ーーあ、うん!」

と、麻奈美(紗有里)は答えるー。


「ーーそれより、今、誰か話してなかった?

 クラスの子?」

啓太が言うと、

麻奈美(紗有里)は

「ーーえ、、あ、、ううん、誰とも話してないよ。

 啓太くんの見間違えじゃないかな?」

と、答えたー


「ーー啓太くん?」

啓太が表情を歪めるー。

不思議そうな顔だー。


”ーーーー!!!”

その表情を見て、麻奈美になっている紗有里は”しまった!”と思うー。


”麻奈美ちゃん、いつも”啓太”って呼んでたのかな?”


そう思いながらー


「ーーあ、、、ううん。啓太ってば、見間違いだよ~!」

笑いながら麻奈美(紗有里)が啓太の肩を叩くー


「ーー~~~~~~~!」

啓太が顔を真っ赤にするー。

叩かれた肩を見つめながら

「え…?え…?」と、戸惑う啓太を見てー

麻奈美になった紗有里は、ようやく悟ったー


”ち、、ちがっ…麻奈美ちゃん…彼氏のこと

 名前呼びしてないんだ…!

 わたしってば、痛恨のミス…!

 それに麻奈美ちゃん、ボディタッチとかもしないよね”


頭の中で必死にそう考えた

麻奈美(紗有里)は、

「ーーな、、な~んちゃって…い、、石山くんを

 ど、どっきりさせようと思って!」

と、ひきつった笑みを浮かべたー


「ーーあ、、朝倉さんに…急に名前呼びとか…

 その、、心臓が、持たないー」


啓太がドキドキしながら言うと

麻奈美(紗有里)は「ーそんなに!?なんで!?」と

思わず叫んでしまったー。


その叫び方に、

”なんか、朝倉さん、変だなぁ…”と思いながらも

啓太は、麻奈美と、クラスの活発な女子・紗有里が

入れ替わったことに気づかないまま、麻奈美(紗有里)と

ともにお祭り会場の中へと入っていった…。


当たり前のように手をつなぐ麻奈美(紗有里)に、

啓太は「はぅっ!」と心臓が破裂しそうになりながら、

”朝倉さん…大胆すぎるよ!”と心の中で叫んだー


・・・・・・・・・・・・・


「ーーお待たせ…しましたー」

紗有里になった麻奈美は、不安そうな表情で、

彼氏の哲哉のところにたどり着くと、

緊張しすぎて、顔が真っ赤になってしまった上に

敬語になってしまったー。


麻奈美は大人しい女子で、友達も同じような性格の女子が多いー。


一方で、男子とはそんなに接点がなかったし、

啓太とは、同じ図書委員だったからこそ、親しくなれた間柄ー。


普段から、教室で楽しそうに騒いでいる哲哉とは

ほとんど接点がないー、

とも言えた。


「えぇ!?なんで敬語!?」

笑いながら哲哉が近づいてくるー。


「ーーあ、、、あの…ちょっと…」

紗有里のように振舞おうとしても、

なかなかできるものではないー。


紗有里が積極的な性格なのは知っているー。

麻奈美は、必死に紗有里として振る舞おうとするー。


「ーーご、、ごっめ~~~ん!遅刻しそうになっちゃったぁ~~~!」

顔を真っ赤にしながら、紗有里(麻奈美)が、

大げさな仕草と口調で言うと、

哲哉がぽかーん、とした表情で紗有里(麻奈美)を見つめたー


「ーー……ははっ、なんか、今日の紗有里は変だな」

笑う哲哉ー。


「ーーえっ、、あっ、、あぅ」

麻奈美なりに頑張って紗有里になりきったつもりだったが、

オーバーリアクションすぎて、空振りしてしまったー。


「ーさ、行こうぜ、紗有里の金魚すくいの腕前、

 今日も見せてもらおうかな~!」


哲哉はそう言いながら、”当たり前”のように

手をつなごうとしたー


「ひっ!?」

びくっ、としてしまう紗有里(麻奈美)ー


「ーえっ!?」

哲哉もその反応に驚くー


「ーーーだ、大丈夫か…?

 どこか調子でも悪いならー」

哲哉は、紗有里(麻奈美)のおかしな様子に戸惑いを隠せないー。


”相手が麻奈美”であれば、普通の反応なのだが、

入れ替わっている今、哲哉からすれば

”相手は紗有里”にしか見えないー。


いつも明るくて積極的な紗有里が、こんな反応を示すなんてー

と、不思議に思ってしまうー。


”こ、このままじゃ、わたしが神原さんじゃないって

 ばれちゃうー…!

 神原さん、こういうとき、なんて言うのかなー?”


パニックの中、頭をフル回転させた紗有里(麻奈美)は

とんでもないことを口にしたー


「ーーだ、大丈夫大丈夫!わたし、超元気!

 今すぐホテルにいって、セックスしたいぐらい!」


その言葉にー

しばらくの沈黙が走ったー



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


夏ももう終わってしまいますが、

ギリギリでお祭り入れ替わりモノの登場デス~!


二組のカップルの混乱をぜひお楽しみくださいネ~!


今日もありがとうございました~!

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