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修学旅行1日目の夜ー。


そう簡単には、寝付かない高校生たちに

ため息をつく緑川先生ー。


「(まぁ、気持ちは分かるんだけど…)」

まだ20代後半の若さの緑川 凛子(みどりかわ りんこ)は、

”わたしが高校生の時も、みんなと同じように夜、遊んでたしなぁ…”と

心の中で呟くー


けれど、今は仕事ー

”もう、わたしは女子高生じゃないんだし、今は教師ー”


騒いでいる女子の部屋の扉を開けて、

「-もう消灯時間はとっくに過ぎてるでしょ!ちゃんと静かにしなさい!」と、

生徒たちをしかりつけたー。


「-でも先生だって、わたしたちぐらいのとき、起きてたでしょ~?」

笑う女子生徒ー。


「--ギクッ」

緑川先生は、露骨に分かりやすい反応をしてしまうー。


「-あははは!先生ってば、図星~!」

ギャル風の女子生徒・愛(あい)が、笑いながら、

緑川先生の方を見るー


「-わ、わたしの高校生の頃の話はいいの!

 早く寝なさい!」


「は~い!」

ギャル風の生徒・愛と、最初に緑川先生に指摘した

女子生徒・美野里(みのり)が、笑いながら返事をすると、

緑川先生は”やれやれ”という様子で部屋の扉を閉めたー。


「---いったいった!」

愛が言うと、美野里と他の女子生徒が嬉しそうに騒ぎ始めたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・


騒がしい子供たちの声を聞きながら、

旅館の女将は、微笑ましそうに笑みを浮かべたー


”修学旅行の宿泊先を引き受けてよかったー”


先祖代々受け継いでいる決して大きくはない旅館ー

そんな旅館が、今日はひときわ賑わい、活気を取り戻したような

感じもするー。


子供たちの姿を見ながら

自分にも、あんな時代があったなぁ…と、懐かしさすら覚えながらー、

入り口付近の小さなお土産売り場の整理をしようとしたその時だったー。


旅館の扉が開くー。

”貸し切り”の札を外にかけておいたはずなのに、

こんな時間に、誰だろうー?


そんな風に思いながら、入口から入って来た人物を見て

旅館の女将は表情を歪めたー。


「--た、、た、、す、、けて…」

入って来たのは、若い女性ー。

修学旅行中の生徒ではないー。


20代前半ぐらいだろうかー。

血を流していたり、そういう感じには見えないが、

耳のあたりを押さえたり、

喉のあたりを気にするような素振りを見せているー。


「ど、どうかしましたか?」

女将が駆け寄るー。


しかしー

苦しそうに床に倒れていた女性は、

そのまま動かなくなってしまったー


「--だ、大丈夫ですか!?」

女将はそう叫ぶと、すぐに救急車を呼ぼうと、カウンターの方に

戻ろうとするー。


ガシッー


「ーー!?」

倒れたまま動かなくなっていたはずの女性の手が、女将を掴んだー。


「-----!!!!!!」

女将は、女性の顔を見て、目を見開いたー


耳からー

寄生虫のような無気味な虫がうごめいているー


「--この人間の身体、げ~っと♡」

さっきまで苦しんでいた女性が、目に涙を浮かべながら笑っているー


「--ひっ……」

女将は、あまりの恐怖にそれしか声を出すこともできなかったー


そしてー


女性は狂ったように笑いながら、口からも

ミミズのような寄生虫を飛び出させると、

呟いたー


「---仲間になろうよ♡」


その言葉と同時に、

女性は女将にキスをしたー


女同士のキスに、しばらくビクンビクンと震えていた女将は、

やがて、ふらりと立ち上がると、鼻から寄生虫を飛び出させながら

ゆらゆらと歩き始めたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「--みんな、寝ないだろ?」

男性教師の小久保(こくぼ)先生が苦笑いしながら言うー。


緑川先生にとって、修学旅行に同伴するのは、今回が

初めてだったー。

こういう状態だということは、大体予想はしていたからこそ、

驚きはしなかったものの、いざ、実際に体験してみると

”わたしが高校生だったころの先生も、大変だったんだろうなぁ…”と

思わずにはいられなかったー。


「ま、元気なのはいいことなんだけどな」

小久保先生が笑うと、緑川先生は「ですね」とほほ笑んだー。


「とは言え、ハメを外し過ぎないように、俺たちがちゃんと

 見張ってやらないとな」

小久保先生はそれだけ言うと、”俺はこれから男子の部屋の見回りだ”と

苦笑いしながら、そのまま立ち去って行ったー。


緑川先生は、このあと、女性教師たちが宿泊している部屋で

休む予定だー。

交代で、鮎原(あゆはら)先生が、見回りに向かうことになっているー


「---寝れるときには、寝ておかないとね」

3泊4日の修学旅行ー。

引率は引率で、ついでに観光もできるし、

楽しい部分は楽しいのだが、疲れる部分は疲れるー。


まだ1日目だし、休める時に、たっぷり休んでおかないと、

後半、身体が持たない可能性もー


「---!?」

緑川先生が気配を感じて振り返ると、そこには旅館の女将が立っていたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「--でもさ~、別れて正解だったんじゃない~?」

2階は、女子生徒たちがそれぞれ宿泊しているー


先程、緑川先生に注意された部屋の女子生徒・美野里は、

ギャル風の生徒・愛と一緒に深夜の雑談を続けていたー。


他の女子生徒も、何名か雑談しているー。


この部屋の女子たちは、比較的明るいタイプの子が

揃っている部屋で、

それ故か、ちゃんと寝ている女子生徒はいなかったー


一人だけー

”寝ている”ように見えたものの、

中学時代の同級生の彼氏と、布団の中でスマホをいじりながら

LINEでお話しているだけだったー。


「--でも、あたし、このままじゃクリスマスも一人かも!」


「そしたら、その時でしょ」


美野里と愛が笑いながら雑談を続けるー。


その時だったー。

部屋の扉が乱暴に開かれたー。


あまりに急に扉が開かれたことで、美野里と愛はドキッとしてしまうもー

すぐに、入って来た先生の姿を見て、ため息をついたー。


修学旅行についてきている先生で

うるさいのは、B組の担任の小久保先生とD組の井口先生ぐらいだー。


B組の小久保先生は男の先生だから、女子の部屋には来ないー

D組の井口先生は口うるさいおばさんだから、来る可能性はあるがー


入って来た先生は、若い女性教師の緑川先生だったー。


「--先生~!急に乱暴に扉開けないでよ~!」

ギャル風の愛が笑いながら近づいていくー


するとー

ニヤァ、と緑川先生が、突然無気味な笑みを浮かべたー。


「--え、先生、、それ、なに?」

愛が、緑川先生の耳から飛び出している”寄生虫”に気が付いて

指をさしたー


その直後ー

緑川先生が、大口を開いてー

寄生虫を飛び出させると、そのまま愛にキスをしたー


「せんせっ!?!?むぐっ、、あっ…」

キスをされた愛がビクンビクンと震えるー。


「--ちょ!?先生?!何してんの!?」

美野里が声をかけるー。


だが、キスをされた愛は青ざめていて、緑川先生は

愛にキスをしたまま愛を放そうとしないー。


「-え?何してるんですか?」

奥で雑談していた別の女子生徒2名も、部屋の入り口の方に

やってきて唖然とするー。


緑川先生がキスを終えて、愛を押し飛ばすとー

愛はそのまま仰向けに倒れて、口元にミミズのようなものを

じゅるじゅるさせたまま震えているー


「愛?!えっ…愛!?!?ちょっと、なにこれ!?」

美野里が愛を見ながら叫ぶー。


愛の口から、ミミズのようなものが中に入っていくー。


「---愛!?しっかりして!ねぇ!」

ギャル風の愛は、白目を剥いたままビクビクと震えているー。


「---きゃあああああっ!」

愛に集中していた美野里が、顔を上げると

緑川先生が、部屋の奥から出て来た女子生徒二人に

続けざまにキスをしていたー


「あなたたちも…仲間になるの…♡」

緑川先生が妖艶な笑みを浮かべているー


耳から、寄生虫のようなものをぶら下げながらー


「--み、、緑川…先生…?」

唖然とする美野里ー。


「---あぁぁ…♡ 人間に…なるって気持ちイイ…」

緑川先生が自分の胸を揉んでいるー


何が起きているのか、さっぱり分からない美野里はー

声を出すことすらできなかったー。


身体が動かないー

人間、あまりにも強い恐怖を体感すると

身動きすら取れない、と言うが、今がまさにその状況だったー


緑川先生にキスされた二人の女子生徒も、

ヘラヘラと笑いながら、まるでゾンビのように立ち上がるー


完全に、正気を失っているー


「-た、、たすけて…!」

美野里がやっとの思いで絞り出した声ー


すると、美野里の手が、ガッと掴まれたー。

美野里は一瞬、映画やアニメでよくある展開、という

希望を持ってしまったー


”絶体絶命のピンチ”に、誰かが手を引いて助けてくれるー


そんな、展開をー


だがー

すぐに、そんな展開は存在しないことを悟ったー


最初にキスされたギャル風の愛が、

大口を開けながら、美野里の腕を掴みー

笑みを浮かべていたのだー


「みーのーり…仲間に、、なろぉ?」

愛は、ゴボゴボと口を鳴らしながら、そう呟くと

容赦なく美野里にキスをしたー


涙を流しながらもがく美野里ー


”これって、夢だよねー?”

そんな風に思いながら、自分の喉の奥に異物が入り込むのを感じー

その直後、まるで、テレビの電源が切れるかのように、

ぷちっ、と美野里の意識が途切れたー。


しばらくすると、美野里が起き上がるー。


「-どう?生まれ変わった気分は?」

緑川先生が、普段出さないような妖艶な声で言うと、

美野里も、愛も、他の2名の生徒も、嬉しそうに

「--最高ですぅ♡」と呟いたー


緑川先生は満足そうに微笑むと

「さぁ、他の人間どもも、仲間にしてやりましょ」と

呟いて、そのまま立ち去って行ったー。


あっという間の出来事だったー。

この部屋の女子生徒は、全員が、寄生されてしまったー


いやーー


「-------」

身体を震わせながら布団に潜りこんでいた女子生徒を

除いてはー。


彼女は”運よく”無事だったー。

乗っ取られた緑川先生がやってくる前からー

布団に潜って、別の学校の彼氏とLINEをやっていたためー

寄生虫に支配された緑川先生たちに”気づかれず”に

済んだのだったー


「---……な、、、な、、何…今の…」

唯一この部屋で無事だった女子生徒、

花澤 奈美(はなざわ なみ)は、表情を歪めたー。


今、見た光景はいったいー?

この世のものとは思えない光景だったー


様子のおかしな緑川先生が入って来たと思ったら、

愛にキスをして、愛がもがきはじめて、

美野里たちも次々とキスされて、

まるで”乗っ取られた”かのようにー


それにーー

”あの、ミミズみたいな無気味なやつは何だったの…?”


布団から顔を出して、誰もいないことを確認すると

そっと部屋の外に顔を出したー


夜ということもあり、通路は薄暗いー。


「----」

ゴクリ。


唾を飲み込みながら、

すぐ隣の部屋をノックする奈美ー


隣の部屋は、優等生タイプの子が集まっている部屋だー。


現役生徒会長の穂乃果(ほのか)という子もいるー。


「--夜遅くにごめん!誰か!誰かいないのー?」

奈美が言うー


「----きゃあああああああああああ!!!!」


「--!?」

廊下の少し離れた場所から悲鳴が聞こえるー。


いや、それだけじゃないー

他の方向からもー。


”どうなってるのー?”


そう思いながら、隣の部屋に飛び込むと、

部屋の中には、既に誰もいなかったー。

部屋は、少し散らかっているー。


「----!」

奈美は表情を歪めるー。


”既に”ここもやられたのだと理解したー。

あの変な虫みたいのに乗っ取られた女子たちは、

”仲間を増やすため”既に、ここから立ち去ったのだろうー。


「---!」

背後から気配がして振り返る奈美ー


奈美は、口をふさがれてー

声が出ない状況に、悲鳴を上げようとしたー。


しかしーー


「---しーーーーーーーーーーーっ!」

奈美の口をふさいだのは、生徒会長の穂乃果だったー。


「--ほ、穂乃果…!」

奈美が塞がれた口で言うと、

穂乃果は指を立てて、部屋の扉を静かに閉めると、

不安そうに、奈美の方を見つめたー。


「--無事でよかったー」

穂乃果の言葉に、奈美は、少しだけ安心した様子で、

「--何が起きているの…?」と、生徒会長の穂乃果に対して

言葉を投げかけたー…。



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


久しぶりの寄生モノですネ~!

謎の寄生虫によって乗っ取られていく修学旅行中の生徒と先生たち…!


次回もぜひお楽しみくださいネ~!


お読み下さりありがとうございました!

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