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「-ー最近はどうだ?」

娘に語り掛ける父親ー。


娘の麻衣(まい)は、「うん!特に何もないよ!」と、

笑顔で答えるー。


如月(きさらぎ)家は、三人家族ー


父親の省吾(しょうご)、

母親の野枝(のえ)、

そして、娘の麻衣(まい)の三人だー。


一人娘であるからか、父親の省吾は、

娘の麻衣を溺愛していて、

とにかく可愛がっていたー。


一方の麻衣も、思春期真っ最中の高校生ではあるものの、

父親とも、母親との関係も良好で、

如月家は、平和的な”家族”と言えたー。


だがーーーー


「---ねぇ、これ以上、わたしに近づかないで」


夜ー。

麻衣に呼び出された同級生の健郎(たけろう)は、

困惑の表情を浮かべたー。


最近、麻衣と仲良くしている健郎ー。

お互いに付き合っているわけではないのだが、

一緒に勉強するために、と、麻衣が、一度だけ

健郎を家に読んだこともある間柄だー。


当然、勉強目的だったために、

何か”他のこと”をしたわけではなかったがー

両親から見れば”まるで付き合っているように”も、見えたー。


そんな健郎を、麻衣は夜に呼び出したのだー。


「--ど、どういうこと?」

真面目そうな男子高校生・健郎が戸惑うー。


「--これ以上わたしに馴れ馴れしくしないでって言ってんの」

麻衣が、普段とは全く違う、険しい表情、きつい言葉を

健郎に投げかけるー


「え…??え?僕、何かした?」

戸惑う健郎に対して、麻衣はさらに続けたー。


「--ーーあんた、馴れ馴れしすぎるんだよー。

 女子との距離感考えろっての」

麻衣が乱暴な口調で呟くとー

健郎は「ご、、ごめん…」と、戸惑いながら謝罪の言葉を口にしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


「ーーー大丈夫?なんか今日、元気ない気がするけど…?」

麻衣が、健郎の様子がおかしいことに気づき、

健郎に声を掛けるー。


「--ーーーべ、、別に…」

健郎はそれだけ言うと、麻衣から逃げるようにして立ち去っていくー。


「---え…?わ、わたし何かした?」

麻衣が首を傾げながら言うとー

健郎は「ごめん」と、だけ口にして、足を止めることなく、

そそくさと立ち去って行ったー。


「--わ、わたし、何かしちゃったかな…?」


その日からー

健郎は露骨に麻衣を避けるようになったー。


そして、そのまま健郎と麻衣は自然と疎遠になったー。

別に、彼女と彼氏の関係ではなかったがー、

もし、あのまま順調に親しい間柄でいれば、

もしかしたらそうなる未来もあったかもしれないー。


けれど、”そうなるかもしれない”未来は

引き裂かれたー。


健郎からすれば、当然の行動とも言えたー

元々、気の弱いタイプの健郎からすれば、


「--ーーあんた、馴れ馴れしすぎるんだよー。

 女子との距離感考えろっての」


と、麻衣本人が言ったのだから、

言われた通りにしただけだー。

女子とトラブルになるのも嫌だし、

正直、あの日の麻衣は怖かったー。


しかも、その上、あの日以降、麻衣が

何事もなかったかのように、”どうしたの?”などと

聞いてくることにも、健郎は腹を立てていたー


”どうしたも何も、君が僕に距離感考えろって言ったんじゃないか”

とー。


とは言え、

またキレられても怖いしー、と

そのまま距離を置き、疎遠になる、という結末を選んだのだったー。


がーー

麻衣からしても健郎の行動は”理解不能”だったー。


自分は、何も健郎を怒らせるようなことをしたつもりも、

避けられるようなことをしたつもりも、ないー。


それなのになぜ、あんな風に自分を避けるのか。

麻衣には全く理解できなかったー。


それもそのはずーー

あの日ー

健郎に”わたしに馴れ馴れしくするな”と

警告した人物はー

”麻衣の姿”をしていただけで、

麻衣本人ではないのだからー


「-------麻衣ーーー」

娘の写真を見つめる男が、静かに呟くー。


「--お前のことは、父さんが守ってやるからなー」

父・省吾は、一人娘の麻衣を溺愛していたー。


”何があっても麻衣を守るー”

例え、この命を賭けてでもー。


そうー

あの日、健郎に”警告”したのはー

父の省吾だー。


父の省吾はー

娘の麻衣を守りたい一心で、

ネットである力を手に入れたー。


それが”他人の姿に変身する能力ー”


その力で、娘の麻衣に変身してー

娘の麻衣に近づく男を、次々と遠ざけていたのだー。


「--麻衣…男は野獣だー。

 お前に近づく男は、父さんが一人残らず追い払ってやるからなー」

麻衣の写真を見つめながら、父・省吾はそう呟いたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・


「--え~?そうなんだ~!」

麻衣の親友・星来(せいら)が声をあげるー。


「うんー。最近は何だか避けられてて、もう全然話してなくて」

麻衣が言うと、星来は「そっか~」と残念そうに呟いたー。


最近疎遠になった男子・健郎の話をしている二人ー。


星来が「最近、健郎くんと一緒にいること無くなったけど、

何かあったの?」と心配そうに尋ねて来たためー、

麻衣が事情を話したのだー。


最も、麻衣は、どうして健郎に避けられているのか

全く理解できていなかったけれどー。


「--わたしって、なんかこう、よくないところがあるのかも」

麻衣が呟くと、

星来は「そんなことないよ~!」と笑うー。


「-だって~…」

麻衣の言葉に、星来も少しだけ表情を曇らせるー。


星来は中学時代からの付き合いで、麻衣のこともよく知っているー。


確かに、麻衣は”男運”がないー。

恋愛的な意味だけではなく、普通に友達として仲良くなったりしても、

必ず”疎遠”になるー。


何故かは分からないー

仲良しな男子が出来たりすると

必ずしばらくすると、今回の健郎のように、

何故か、疎遠になってしまうのだー。


「--ま、、まぁ、でも、麻衣に悪いところなんてないと思うし、

 たまたま相手が悪かっただけじゃないかな?」

星来が、麻衣を慰めようとそう言うと、

麻衣は「それならいいけど…」と、暗い表情で返事をしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


それから、半年の月日が流れたー。


麻衣には、人生で初めての”彼氏”が出来ていたー。

生徒会の選挙管理を手伝った際に、一緒に活動したことがきっかけで

親しくなった、同級生の男子生徒・俊(すぐる)-。


俊はとても優しい性格の持ち主で、

積極的ではないが、細かな気配りが出来るタイプだったー。


「---俊くんとは、順調?」


昼休みー。

星来が微笑むー。


「--あ、うん!順調順調! 

 彼氏とか初めてだから、色々戸惑ったりもしてるけど!」

麻衣が言うと、

星来は「困ったことがあったらわたしが教えてあげるから安心して!」と、

笑いながら言ったー。


「うん!頼りにしてる~!」

麻衣からは、とても幸せそうなオーラが流れているー


けれどー

星来は少しだけ不安に思っていたー


これまでも、”麻衣と距離を縮めた男子”は、

少しすると、何故か疎遠になってきたー。

今回も、そうなるのではないかー、と。


「---(麻衣-。わたし、麻衣のために一肌脱ぐよ!)」

星来は心の中でそう思うとー


その日の放課後からー

探偵のような虫メガネを手に

「--探偵星来ちゃん、出撃!」と、麻衣のことを尾行し始めたー。


「---ふむふむ ふむふむ」

彼氏の俊と一緒に帰宅する麻衣の様子を、尾行しながら見つめる星来ー。


「--(麻衣、ファイト!)」

俊と麻衣はとても楽しそうに会話をしているー。

2人は、とても相性ぴったりと言う感じだー。


親友の星来からしても、このまま二人が幸せになってくれれば

嬉しいー

そんな風に思っていたー。


「--お!麻衣!」

前方で声がしたー。


「--!」

星来が、麻衣たちの方を見ると、

どうやら仕事帰りの父親と遭遇したらしく、

麻衣が、笑いながら、その父親と会話しているー。

そして、麻衣が彼氏の俊を、父・省吾に紹介していたー。


「(お父さんも、娘に彼氏が出来て嬉しいだろうなぁ~)」

星来がそんな風に思いながら、少し離れた場所から

麻衣・俊・父の省吾の様子を見ているとー


「---!!!」


あることに気づいたー


「--(あれ?あのお父さんは、顔は笑っているけど、目は笑ってないー)」


鋭い洞察力を発揮した星来は、心の中で少しだけ不安を感じたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


夜ー


「--さっきの彼氏、いい子そうだな」

父の省吾が、帰宅後に麻衣に言うと、

麻衣は「うん!」と呟いたー。


「--ははは!でも、男はみんな野獣だから

 気を付けるんだぞ~!」

省吾が、仕事に持って行っている鞄の

整理をしながら言うと、

麻衣は「俊は、そういうことしないから大丈夫!

だからわたしも付き合い始めたんだし!」と、ほほ笑むー。


麻衣が言うには、

俊は、エッチな話題がニガテで、そういう話をしている

男子からは距離を置いているタイプなのだというー。

麻衣と意気投合したのも、お互いにそういう下心を

感じない、自然体だからのようだー。


「--そうかそうか。つまり安心なやつなんだな」

父・省吾はそう言うと、静かに笑みを浮かべたー


自分の部屋に入る省吾ー


「エッチなことがニガテなタイプーか。」

省吾はそう呟くと、

「麻衣は俺が守るー」と、言いながら、麻衣の姿に変身したー


「---麻衣…」

麻衣の姿になった自分を抱きしめて、顔を赤くするとー

部屋の入口に耳を当てたー。


麻衣がお風呂の方に向かうのを”足音”で確認した省吾は、

麻衣の姿のまま、自分の部屋から飛び出し、

麻衣の部屋に向かうー。


「---あら、麻衣ー

 お風呂に入るんじゃなかったの?」

廊下で妻の野枝とすれ違うー


「あーー、う、うん!これから入るよ!」

麻衣の姿をした省吾が言うと、野枝は「そう」と、ほほ笑みながらー

そのまま立ち去って行ったー。


麻衣の姿をしたまま、麻衣の部屋に入る父・省吾ー


机の上にあるスマホを見つけると、

”指紋認証”を解除して、娘のスマホを操作し始めたー。


娘・麻衣の姿に変身している省吾はー

”指紋”も娘の麻衣と全く同じ状態ー


だからこそ、指紋認証を解除することが出来るのだー。


麻衣に”パスワード”の危険性を説きー

そして、指紋認証を導入させたー。


そのおかげで、父・省吾はこうして麻衣の姿に変身しー

難なく、麻衣のスマホを覗くことが出来るのだー。


「麻衣ー

 これも、父さんが麻衣を守るためだー」


麻衣のスマホを見つめながら

彼氏・俊の情報を探る省吾ー


そしてーーー


”今週の土曜日 麻衣と俊がデートする”

ことを、父の省吾は知ってしまったー


「--で、、、ででで、、、ででででででで

 でーーとぉぉぉぉぉぉぉ?」

麻衣の姿をした省吾はその場に崩れ落ちたー


まるで、この世が終わったかのようにー


片手で顔の半分を多い隠しながら

麻衣の姿をした省吾は震えたー


「----排除せねばーーー」

麻衣の声で呟く省吾ー


「-------娘に近づくやつはー排除してしまわなければー」


父・省吾が自分に変身しているー


そんなことを夢にも思っていない麻衣は、

のんきにお風呂に入っている最中だったー


・・・・・・・・・・・・・・・


土曜日ー


デートの日がやって来るー


麻衣と俊が、映画館に入るー。


「----」

その様子を少し離れた場所から見つめる人物がいたーー


「-ーーー麻衣ーーわたしが、チェックしててあげるからね!」

探偵のような格好をした親友の星来ー。

”男運がない”親友・麻衣のために、

今日も星来は麻衣の尾行を続けていたー


麻衣と俊を応援している星来はー

2人の様子がどうしても気になって、こうして尾行していたのだったー。


「--映画始まる前にトイレに行っておこうかな~!」

麻衣が言うと、

彼氏の俊は「あ、うん。じゃあここで待ってるよ」と、ほほ笑むー。


トイレの方に向かう麻衣ー。


俊は、その間、映画のグッズが売られているコーナーを

見つめているー。


その時だったー


「--俊~!」

麻衣が姿を現すー。


「--あれ?早かったね!」

俊が笑うー。


姿を現した麻衣は心の中でニヤッとするとー

「ねぇ、俊、ちょっと映画より、一緒に行きたい場所

 思いついちゃったんだけどー」

と、言うと、強引に俊を映画館の外に連れ出したー


「--!?

 --!?」


2人を尾行していた星来は表情を歪めたー


”えーーーー????

 今ーーー????”


星来は思うー


”トイレに入ったはずの麻衣が、トイレじゃない方角から出て来たー”


とー。


それもそのはずー

彼氏の俊を連れ去った麻衣は、”父・省吾が変身している偽物”だー。


「-と、とにかく尾行しないと!」

星来は、麻衣が偽物だと知らず、

映画館の外に、彼氏の俊を連れ出した麻衣のあとを追うのだったー。



数分後ー


「---お待たせ…って、あれー?」

トイレから出て来た本物の麻衣は、

俊の姿が見当たらないことに気づきー

困惑の表情を浮かべたー


②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


過保護…というより、狂気すら感じるお父さん…!

怖いですネ~笑

(ついでに、親友の子も、ちょっと過保護モードに…笑)


今日もお読み下さりありがとうございました~!

次回もぜひお楽しみくださいネ~!

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