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この王国では、長い間”平和”を謳歌していたー。


遥か昔ー、千年以上も前に

魔物率いる皇帝と、人間が激突したー、という

伝承が残されているものの、

それも、遠い昔の話ー。


今でも、”王宮騎士団”の警備範囲内の森や渓谷などに

足を踏み入れれば、魔物と遭遇することはあるけれども、

その数は少数かつ、その少数の中に高い魔力を持つような魔物はおらずー

時折、魔物による事件が起きる程度にとどまっていたー。


しかしー

そんな、1000年以上の平和を謳歌していた

ここ”アクア王国”に、恐ろしい魔物が迫りつつあることを

まだ、誰も知らなかったー。


「-----」

窓の外から朝日が差し込みー

アクア王国の姫、ルミナが目を覚ますー


「---」

眩しそうに朝日を見つめるルミナー。


アクア王国では、代々、姫が王国のトップに立ち、

人々を導いていく決まりがあり、

現在、この王国を統治しているのは、このルミナ姫だったー。


ルミナ姫は、とても穏やかな性格で、

心優しく、王国で暮らす人々からの信頼も厚かったー。


「---姫様」


だがー

”それ”はやってきたー。


「---アリスー」

姫の身の周りをするメイドの一人・アリスが、顔を出し、

ルミナ姫がアリスの方を見つめたー。


「ーーよく、眠れましたか?」

アリスがにっこりとほほ笑むー。


「---えぇ。よく眠れたわ」

ルミナ姫が、穏やかに微笑みながらそう呟くー


いつものようなやり取りー。

今日も、いつものような、平和な時間が、流れるはずだったー。


しかしー

突然ー

アリスが無気味な笑みを浮かべたー


ルミナ姫は表情を歪めるー。

普段のアリスが浮かべるようなことのない笑みに

”違和感”を感じたのだー。


けれどー

その違和感が”確信”に変わった時には、もう遅かったー。


ルミナ姫の背後に回ったアリスが、

いいやー

”アリス”を脱いで飛び出した醜悪な何かがーー

ルミナ姫の後頭部に手をかざしたー。


「--ぐへへへへへ 俺 姫 なるー」


と、呟きながらー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「-ーお疲れ様です」

廊下ですれ違った”王宮騎士団”の団長・フォボスに頭を下げる

メイドのリリアー。


リリアも、2年ほど前から、アクア王国の王宮で、

ルミナ姫の身の回りを世話するメイドとして、働いているー。


辺境の貧しい村の生まれで、身寄りのなかったリリアに、

ルミナ姫は、優しく手を差し伸べてくれたのだったー。


あれから2年ー

リリアは、自分を助けてくれたルミナ姫のためにー、

一生懸命ルミナ姫のために、献身的に尽くしていたー。


「--ー姫様?」

ルミナ姫の私室の前にやってきたリリアは、首を傾げたー。


ルミナ姫の部屋の扉がわずかに開いたままだったからだー。


「-----」

リリアは、ルミナ姫の部屋を、扉の隙間から覗いたー。


そしてー

目を見開いたー。


「---!!!!」


「--あ…あ、、、あっ…あ…」

ルミナ姫がビクンビクンと震えながらー。

背後に立つ”何か”に後頭部のあたりを触られて、

苦しそうにしているー。


ルミナ姫の背後に立っているのはー

醜悪な容姿のオークー。


”ま、、まものっ!?”

リリアは、瞳を震わせながらー

部屋の中に飛び込むこともできずに震えるー。


かつては、このアクア王国は魔物との激しい戦いを

繰り広げていたようだがー、

それが大昔の話ー

今では”実際の魔物”を見たことがない人間も多かったー。


このリリアもそうだー。


ルミナ姫を助けたいー

そう思いながらも、恐怖で身体が動かなかったー。


オークが、ルミナ姫を後頭部から引き裂いていくー。


ルミナ姫は、真っ二つー。

まるで、洋服のようにペラペラになって、

無残に床に崩れ落ちたー。


「--(姫…様…)」

リリアは、絶望の眼差しで、部屋の中の光景を

ドアの隙間から見つめ続けるー。


”オークに、ルミナ姫が殺された”

リリアには、そう、見えたー。


だがー

次の瞬間、オークは、奇妙な言葉を口走ったー。


「--ぐふふふふふ…俺… 姫にー なる」

オークがカタコトでそう喋るとー

”皮”のようになってしまったルミナ姫を掴みー

頭上まで持ち上げたー。


まるで、”獲物”を狩った後の動物のようにー

高々と皮になったルミナ姫を見つめるー


「---俺が… 姫…!」

オークが叫ぶー。


「--!?!?!?!?」

リリアは、目を疑うー。


オークが皮のようになったルミナ姫をー

”着”はじめたのだー。

まるで、着ぐるみを着るかのようにー


(え…待って…何を…何をしてるの?)

リリアは目から涙をこぼしながら、

その様子をただ見つめることしかできなかったー。


オークが、ルミナ姫を”着た”-

そう、表現するのが、正しいだろうかー。


オークの姿は無くなりー

さっきまで無残な姿を晒していたルミナ姫が

笑みを浮かべながら、

自分の手を握ったり、開いたりしながら、

笑っているー


「--俺…… 人間…!」

ルミナ姫が、そう呟いたー


「---俺……王国の……女王…!」

信じられない言葉を呟くルミナ姫ー


(嘘……そんな…何が起きているの…?)

目の前で起きている光景が、

現実とは思えなかったー。


ルミナ姫が、オークに”皮”のような状態にされてー

オークが、ルミナ姫を着て、ルミナ姫になったー。


そんな、”あまりにも非現実的な”光景が目の前で

繰り広げられたー


「俺…… 気持ちイイ…」

ルミナ姫が、淫らな格好で、信じられない行為を始めるー


胸を揉んだりー

スカートの中に手を入れて、ニヤニヤしながら

甘い声を出すルミナ姫ー


「俺…きもちいい… 俺…きもちいい♡」

ルミナ姫の声ー

でも、話している内容は、オークの言葉そのものー


「---!」

ドアの隙間から左の方を見るとー

そこには、メイド仲間のアリスが”皮”のようになって

転がっていたー。


(アリス…!?)

リリアは驚きを隠せないー。


リリアが姫の部屋にやってくる前にー

オークは、メイドのアリスの身体で姫様の部屋に入り、

アリスからルミナ姫に乗り換えたのだー。


アリスは、数日前に、食材調達のために、

アクア王国城下町から少し離れた、ベリアル山脈という地で、

偶然オークと遭遇してしまいー

”皮”にされてしまったー。


これまで、そんな力を持つ魔物は確認されていなかったがー

いつの間にか、力を身に着けていたのだろうー。


アリスを乗っ取ったオークは、アリスの身体で王宮に入りー

姫の部屋に入りー

そして、ルミナ姫を乗っ取ったー。


「----俺…… 俺… こほん、、 こほん…」

部屋の中のルミナ姫が

何回か咳き込んで喉を調節すると、

「-今日から、わたしが姫ー…ふふふふ」

と、”いつもの”ルミナ姫のような口調で囁いたー。


「---!!!」

リリアは驚くー。

ルミナ姫を”着た”オークは、ルミナ姫になりきっているー。


「--この女…処分」

ルミナ姫は、床に横たわっている”脱がれた”メイドのアリスを

見つめると、そう呟いたー。


部屋の外からその様子を見つめていたリリアは、

必死にその場から逃げ出していたー。


あまりの恐怖にー

ただ、ひたすら逃げ出しー、

そして、部屋に戻ると、一人、震え続けたー。


震えが止まらないー。


同室のメイド・メイが「どうしたの?」と心配そうに

リリアの方を見つめるも、

リリアは返事をすることもできず、

そのまま、震え続けたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「----……」

気付けば、リリアは寝落ちして、

夕方になっていたー


「---姫様!」

起き上がったリリアは、すぐに部屋から飛び出したー


”誰かに、助けを求めないとー”

そう思って、姫の私室がある王宮西側から、中央部へと向かうー。


「---っと! どうしたんだい?」

軽い口調の男ー

4人いる王宮騎士団長のうちの一人、レビンと

ぶつかってしまったリリアは、慌てて

「も、申し訳ございません、レビン様ー」と、

頭を下げたー。


「---ははは いいさ。

 いつも姫様の世話、ご苦労さん」

それだけ言うと、レビンは立ち去って行こうとするー


「あ、、あの!」

リリアは、振り返ってレビンに向かって叫ぶー


「ん?どした?」

レビンも振り返ってリリアの方を見つめるー。


「---あ、、あの…姫様は…」

リリアが言うと、レビンは「ん?あぁ、今日も美しかったぜ」と、

軽口を叩きながら、そのまま立ち去って行こうとするー


「--あ、、あの!!そうじゃなくて…

 姫様に、何か変わったところはありませんでしたか?」

リリアが、すかさず叫ぶー。


レビンは再び立ち止まりー、

「変わったことー?」と、呟くと、すぐに笑みを浮かべて

「別に、何もなかったぜ」と、答えたー。


立ち去るレビンー


「--…あれは…夢だったの…?」

リリアはそんな風に思いながら、ルミナ姫の姿を探すー。


だがー

「--あ、リリアー」

同室のメイド・メイが、表情を歪めながらリリアに

近づいてくるー。


「--あ、メイ…

 あの、姫様に変わったことはなかった?」

リリアがそう聞くと、メイは「は?何言ってんの?」と

険しい表情のまま、本題を切り出したー。


「--アリスの姿が見えないんだけどー

 知らない…?」

とー。


「----!!」

リリアは、今朝、見た光景を思い出すー。


”皮”のように横たわっていたアリスー。

そして、オークに乗っ取られたルミナ姫が

アリスを処分するようなことを、口走っていたことをー。


「-ーーーメ…メイ、あのねー」

リリアは”ルミナ姫がオークに着られた”という状況が

夢ではないと確信して、

メイに相談することにしたー。


「--姫様がオークに着られてるのー

 早く、姫様をお救いしないとー!

 騎士団長様たちにもー」


リリアが慌てた様子で言うと、メイは笑ったー。


「--は?あんた何言ってんの?

 姫様がオークに着られるー?


 意味わかんないんだけどー。


 あたし、アリスを探さないといけないから、

 そういう話に付き合ってる暇はないの。


 じゃ。」


メイが呆れた様子で立ち去ろうとするー


「--ま、待って!本当なのに!」

リリアは、立ち去っていくメイを見ながら”もぅ!”と叫ぶと、

他のメイド何人かに相談してみたが、

誰もまともに取りあってはくれなかったー。


ルミナ姫は”エナジー”と呼ばれるこの世界に存在する

エネルギーを使うことが出来る能力者の一人だー。


かつて、魔物と戦争状態だったころはー

王宮に仕える人間のほとんどが、この”エナジー”の

能力者だったようだが、

今は姫や、騎士団長、一部の人間ぐらいしか、

能力者はいないー。

それだけ、長い間平和が続いたということを、意味しているー。


だがー

”エナジーの能力者”である、ルミナ姫が

オークなどにやられるはずがないー。

みんな、そう思っていて、

リリアの必死の叫びを聞く人間はいなかったー。


「---姫様ーーー」

夜になって、焦りだけが募るー。


そんな中ー


「---ぐふ… うまい… 人間のメシ… うまい…!」


「--!?」

夜の食堂で、ルミナ姫が一人ー

手を使って下品に、食料を食い荒らしていたー


「--うめぇ… うめぇ… うめぇ…」

ガツガツと口から食べ物をこぼしながら

食事を続けるルミナ姫ー


ルミナ姫を”着た”オークは、

人前ではルミナ姫として振舞い、

人のいないところでは、素を出して振舞っているー


リリアは、それを見て、再び震えたー。


”やっぱり、姫様は乗っ取られているー”

そう思ったー


・・・・・・・・・・・・・・・・・


深夜になりー

リリアは、いつものように、ルミナ姫の部屋に

着替えを運ぶー


「姫様ー

 お着替えの時間ですー」


「--リリア、ありがとう」

ルミナ姫がにっこりとほほ笑むー


”一見すると”

いつも通りー。

着替えも、問題なくこなしていくー。


リリアは、そんなルミナ姫の方を見つめながらー

心の中で深呼吸をすると、

口を開いたー


「--あの、姫様…お身体に何か変わったことはございませんか?」

とー。


「--ふふ、わたしは大丈夫よー。心配してくれて、ありがとう」

ルミナ姫は、就寝時の服装に着替え終わると、

「これ、お願いね」と、脱ぎ終わった服を畳んでから、

リリアに渡したー


これも、いつも通りー。


”完全に姫様になりきってるー”

そう思ったリリアは、心臓をバクバクさせながら、思い切って口を開いたー。


「-ー今朝、見ましたー」

とー。


「--え?」

ルミナ姫の表情から、笑顔が消えるー。


「---今朝…わたし…姫様がオークに…”着られる”のを見ましたー」

リリアがそう言い切ると、ルミナ姫は少しだけ微笑みながら

何度も何度も頷いたー。


そしてー

無気味に沈黙してから、口を開いたー


「俺…姫に…なったー」

とー。



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


ファンタジー世界を舞台とした皮モノデス~!


姫様がオークに乗っ取られてしまったことを知っているのは

メイドただ一人…!


今日はプロローグ的な部分でしたが

次回以降は、ドキドキな要素もたっぷり楽しんでくださいネ~!


今日も、ありがとうございました!!

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